亦野さんが麻雀弱いわけないだろ! 作:てーやー
今回は咲さん視点、
早速原作改変が始まっているので注意です。
あと、今回から三話くらいまではプロローグのようなものなので勘違い要素はありません。
1翻役 宮永咲は困惑する
「嘘、宮永さんって麻雀できたの!?」
昼休みの最中、隣のクラスの新子さんが嬉しそうに聞いてくる。
彼女が、同年代の麻雀ができる人を探していることは私のクラスでも有名だった。
なんでも今の麻雀部は、面子が彼女自身を含めても4人しかおらず、加えてそのうち一人がしばしば釣りに出かけるために四人打ちすらできない状態らしい。
そのためにもう一人を部に入れて、その問題を解決する…だけでなく、あわよくば団体戦にも出ようとしているとか。
その話は私の耳にも入っていたが、名乗り出る気は全くなかったし、伝わった今も面倒くさいと感じている。
ならなぜ、彼女が私の事を知っているかというと…
「おう、牌効率が~、とか役が~、とか言ってたからかなり詳しいと思うぜ。」
京ちゃんが暴露したからだ。
レディースランチが食べたいからと食堂に付いて行った際、やっていたゲームの捨て牌を指摘したことでばれてしまった。
そこからすぐに新子さんのいる教室へ連れられて、その後に、京ちゃんがどこか別の場所へ行ってしまい、今に至る。
そのまま彼女が話を切り出してきたが、連れてこられた理由は分かっているため、話の内容は簡単に予想がつく。しかし、予想と異なる可能性もあるので一応聞いておく。
「じゃあさ、お願いがあるんだけど、麻雀部で一緒に打ってくれない?」
やっぱりそうだ。思わず、ため息を吐いてしまった。これなら、京ちゃんの手を払ってでも図書室に向かうべきだったか。
「たまにでいいから、ほんとお願い!」
彼女が必死に頼み込んでいるのが分かる。本当に麻雀のことが好きなんだろう。
それが少しだけ、羨ましく感じた。
でも、私は、
「…私は麻雀それほど好きじゃなくて。いつも家族麻雀でお年玉を巻き上げられていたので…」
麻雀が好きじゃない。
その返答が予想外だったのか、新子さんは驚いた表情をした後、「…ごめん」と素直に謝ってきた。
おそらく、私に気を遣って強く言えないのだろう。見た目からは考えられなかった優しさに、少しだけ罪悪感を覚える。
でも、まだ油断はできない。
彼女はまだ諦めていないだろうから。四人打ちにおいて、全員が経験者である場合と一人でも初心者がいる場合とでは大きな違いがあるから。
だからこそ、今から彼女の、”私が経験者として機能する”という前提条件を崩してやる。
「そのせいか…どんな条件で打っても最終的にプラスマイナスゼロになってしまうんです。ごめんなさい。」
「なっ…」
これでいい。こう言えばこれ以上誘ってはこられないはずだ。初対面の彼女が、この問題を解決する方法を残り僅かな時間中に提示できるとは思えない。
唯一の問題点は、これからの関係に深い溝ができてしまうこと。だが、そもそもこの事を話した時点で麻雀ができる人と仲良くできるとは思っていない。
「…」
その考えが正解だと証明するように、新子さんも驚きの声をあげて以降、考え込むようにして黙り込んでいる。
そうして二人の間に静寂が流れると、それを埋めるかのように昼休み終了のチャイムが鳴りだした。
…ようやく、この長かった時間が終わった。
やけに長く感じたこの束縛からの解放感と、ほんの少しの寂しさとを胸に納めながら教室に戻って___
「麻雀部の亦野先輩なら、そのプラマイゼロを崩せる、って言ったらどうする?」
初投稿でした。
コメディにしようと頑張っているので次からはこんなシリアスにはならないはずです。
最初の数行を書くのに4時間ぐらいかかった時から、麻雀描写をこまごまと書くのは諦めてます。