亦野さんが麻雀弱いわけないだろ! 作:てーやー
今回は亦野視点を先に置いてみます。こっちからの方が書きやすそうでしたので。
県予選の決勝戦に、私が休憩中に控室へ戻らなかったという理由で、休憩中には宮永さんと新子さん、いや咲ちゃんと憧ちゃんが会場へみんなの助言を伝えに来てくれるようになった。
それ自体は嬉しかったし、そこから後輩二人を下の名前で呼ぶようになったため有り難かったが、一つだけ困ったことが発覚した。
咲ちゃんが典型的な中二病だった。
だから助言をもらっても、彼女が勝手に内容を翻訳して話すから意味が理解できない。しかも、本人はいたって真剣な表情で話してくるため余計にたちが悪い。
確かに、入部当初からプラマイゼロしか出せないと言っていたり、気配の隠し方についての話をしていたりとそれらしい場面はあったが、それらは全て彼女の天然と優しさによるものだと思い、特に気に掛けなかった。
しかし、休憩時間中に話してみると、その深刻さが理解できた。
それは一回戦でのこと。
当時の私は前半戦をマイナスで終え、休憩時間を迎えてそのまま椅子に座っていた。事前にチームから、アドバイス係が来ることを伝えられていたからだ。
少しして、出入り扉の向こうから憧ちゃんと咲ちゃんがやって来た。
どうせ純かまこが来て、休憩時間中ずっとダメ出しを食らう羽目になると考えていたから、その瞬間は安心していた。
そのまま咲ちゃんに、控え室にいるメンバーからの助言を伝えてもらう。これで、後半から少しでも楽になればいいなと期待しながら耳を傾けた。
「流れ自体は非常に良いので、そのまま能力を隠していても問題はありません。むしろ、南三局ではオーラが少しだけ漏れていたので、そこを注意すべきかと思います。…あれがわざとだったならごめんなさい。」
「え、ああ、うん。」
へっ?
能力って何?!オーラって何?!
一緒に来た憧ちゃんに助言を求めようにも、「咲の方が詳しいですし、咲が二人で話したいって言ってますから。」と、全然取り合ってもらえない。この会話が耳に入る距離にいるのなら、少しは解説を挟んでほしい。
能力とやらを隠す方法は不明だが、数週間前にも気配の隠し方を聞いてきたことを考えると、私を同類だと思っているのだろうか。それとも、彼女の設定では私が暗殺者にでもなっているのだろうか。
結局、その助言をもらった時は、意味が分からな過ぎて適当に話を合わせることしかできなかった。
そしてその咲ちゃんは、今回の休憩中にもすごいことを言ってきた。
「亦野先輩なら全て分かっているとは思いますが、後半戦の南場で、再び神様が降りてきます。
ですので、それまではマヨヒガの人を削りつつ、導火線を着火させないために適度に調子に乗らせておく。そして、神上げ以降は逃げに徹するのが一番だと思います。」
…咲ちゃんの中ではすでに一度神様が降りていたのか、とか時間まで詳しく分かる理由はなぜなのか、それぞれの暗号は誰もしくは何のことを表しているのか、とか聞きたいことは色々ある。
しかし、一番疑問なのは、
なぜ私に、そんなことが予想できると思っているのだろうか。
先鋒後半戦開始
東場 永水女子高校 神代小蒔 85600
南場 宮守女子高校 小瀬川白望 120300
西場 姫松高校 上重漫 89900
北場 清澄高校 亦野誠子 104200
いきなり今回の咲さんの助言内容を聞かされて、麻雀に関する話だと理解できる人は何割くらいいるんでしょうか。私はできません。