亦野さんが麻雀弱いわけないだろ! 作:てーやー
今回で清澄のメンバーが全員明らかになりましたが、この人選にした理由は自分が鳴き麻雀好きだからです。
「来ねえな。」
「来んのお。」
同期の染谷まこと二人でそう呟く。
思い浮かべるのは、最近この部屋に通うようになった後輩、憧の事だ。
来たばかりの頃の憧は、単純に麻雀を楽しむためだけに来ていた。だが、誠子と卓を囲んで以降は、「次こそ倒しますから!」と本気で打ち込むようになっている。
そして、本来なら今日もやって来て、この時間には半荘程打ち終えているはずだった。
そして、ずっと待っている状況にしびれを切らしたのか、まこが不安げに問うてきた。
「諦めたんじゃろか?」
「まあ、仕方ねえか。同じ相手にあそこまでやられ続けたらなあ。」
言葉上は同意をする。しかし、完全には諦めきれない。
あいつはそんな簡単に逃げるやつじゃねえ。数回しか会っていないが、そう思える程にはあの後輩を信頼していた。
なら何かあったか?などと思考を巡らせていると、勢いよく部室のドアが開かれ、話題にしていた彼女が現れた。
「すみません、遅れました!」
そして、謝ってくる彼女の後ろには大人しそうな女子の姿が。
「お、お邪魔します。」
おどおどした話し方から、彼女が見た目通りの性格だと分かる。入部希望者だろうか。
気にはなったため、謝罪への返答をしてから聞いてみる。
「おう、遅かったじゃねえか、遅れたのはその後ろの奴と関係あんのか?」
それと同時に、憧が「私が来て部員が4人になったので、後一人でも増えれば大会に出られますよね!」と言っていたのを思い出した。
ならさっきまでの時間を使って部員の勧誘をしていたのだろう。一人で勧誘をしていたのは、俺らが部員の勧誘に消極的だったからか。
確かに、憧の意見に対して興味がないとは答えたが、後輩の頑張りを無視するほど薄情じゃねえつもりだ。
言ってくれれば手伝いくらいするし、大会にも全力で挑む。なんなら、ここにいない誠子の説得だって引き受けるというのに。
そんな風に考えていると、後ろの少女がおずおずと質問してきた。
「あ、あの。亦野先輩はこちらにいらっしゃいますか?」
…どうやら入部希望ではなかったらしい。
その後、二人から詳しい話を聞いて内容を理解したが、それならば、と実際にこの面子で打って、見てみることにした。
散々待たされていたため早く打ちたかった、というのもある。だがそれよりも、プラマイゼロを狙ってできる人間が誠子以外にいるわけがない、という思いの方が強かった。
この新入生は、誠子とは違って、能力で無理やり点数をプラマイゼロにしているだけ。しかも解除できない。なら、あいつよりは弱い事は確実なため、この三人だけでも問題ない。
どちらにせよ、誠子はいつ帰ってくるか分からないため、それまで待つしかないだろう。
「まじかよ…」
「しんどいのお…」
「うっそ…」
全っ然崩せねえ!?
正直甘く見てた。三人いて誰も止められないとは思ってなかった。
上家と下家の二人も三回目のプラマイゼロを止めようとしているが、その目からは諦めの表情が浮かんでいる。
これは…どうしようもねえな。悔しいがあいつに頼るしかねえか…
そしてついに俺も匙を投げようとした時、
「お疲れ…えっ、また新入部員!?」
救世主が来た。
ようやく次の話から主人公の登場です。
あと、先輩キャラの視点が難しかったので、基本的には一年の視点か亦野の視点で書こうと今思いました。