亦野さんが麻雀弱いわけないだろ!   作:てーやー

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今回で二回戦は終了です。全部がこういうシーンなら書きやすいんですけどね。

後、今回は二千字を少し超えちゃいました。すいません。


20翻役 亦野誠子は見守りたい

大将戦の休憩時間、嬉しそうな表情の咲ちゃんが、アドバイス係の憧ちゃんに案内してもらいながら控室へ相談をしに来た。

 

 

「今回の相手になら、能力を解禁してもいいと思いますか?」

 

 

いつものアドバイスとは違い、この言葉の意味は理解できる。

 

 

要するに、「友達になりたい人がいるので、こちらも性格を隠さずに話しても良いと思いますか?」と聞いているのだ。

 

 

県予選の決勝戦でも、同じ様な質問をした後に龍門渕の難しい言葉を使う子と仲良くなっていたから、気の合う相手になら積極的に行けるらしい。

 

 

今回の相手は宮守の大将だろうか。ロンを宣言したときにわざわざ帽子を深く被り直していたし、咲ちゃんも何度かチラチラと見ていた。何か通じるところがあったのかもしれない。

 

 

そしてもちろん、今回も咲ちゃんに友達が増えるのは大歓迎だ。しかし、

 

 

「えっ、あー、…今はまだやめておいた方がいいんじゃない?」

 

 

対局中に恥ずかしい言動を晒すのは許容できない。そんな事をすれば、確実にテレビに映って記録に残ってしまう。

 

 

ご家族も見ているだろうし、その映像を治った後で見て後悔するのは咲ちゃんだ。暴露するのなら試合後にした方が良い。

 

 

「ほら、えーと、相手が咲ちゃんと同じレベル(妄想力)の人間だと分かるまでは隠しておいた方がいいと思うから。」

 

 

それに、相手がまだ同じ症状の人だとは限らない。あの時は単純に帽子を被り直したいだけだったのかもしれない。引かれてしまわないためにも慎重に行くべきだ。

 

 

何とか言いたい内容をオブラートに包んで助言すると、咲ちゃんも納得してくれた様だ。そのまま嬉しそうに会場へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

そうして大将戦が終わった。危ないところもあったが、清澄はなんとか一位を死守できていた。

 

 

大将の咲ちゃんには毎回ひやひやさせられるが、なんだかんだ一位抜けしている。しかも、友達候補のいる宮守も二位に付けている。運がいい。

 

 

みんなで喜びを共有しながら待っていると、咲ちゃんが色紙を持って部屋に帰ってきた。

 

 

何でも、先程友達になりたいと言っていた姉帯さんから記念のサインを頼まれたとか。敗退した二校にも頼んだらしい。書き終えた後に、宮守女子高校の控室への道案内をしてほしいとお願いされたので、もちろん了承する。

 

 

待っている間、せっかくなので姉帯さんと友達になれたのかをさりげなく聞いてみた。

 

 

「咲ちゃん、姉帯さんとはどうだった?」

 

 

彼女はその質問に、手を止めてこそいないが、顔いっぱいに喜びを表しながら答えてくれた。

 

 

「はい! とっても相性が良かったので、次はもっと上手くやれると思います。」

 

 

どうやら仲良くなれたらしい。さすがにいきなり友達にはなれなかったらしいが、幸運なことに次も一緒の卓に着く。あせらずに少しずつ距離を縮めていけばいい。

 

 

嬉しそうな咲ちゃんをほほえましく見守っていると、どうやら書き終えた様だ。なので、早速一緒に渡しに行く。

 

 

 

 

 

 

そして宮守女子高校の部屋に入ると、

 

 

「わー!ありがとー、宮永さん!ちょーうれしいよー!」

 

 

満面の笑みで姉帯さんが迎え入れてくれた。そしてそのまま、咲ちゃんと姉帯さんの二人で話し始めてしまった。二人は予想以上に仲良くなれているのが見て取れる。

 

 

咲ちゃんが部屋の奥に行ってしまったことで一人ぼっちになってしまったが、そんな空気を察してくれたのか、副将の臼沢さんが話しかけてくれた。

 

 

彼女の事は、試合中にしていた片眼鏡のインパクトが強かったので覚えていた。今は外しているが、それで見えているのだろうか。簡単な挨拶をしてから早速聞いてみる。

 

 

「そういえば、あの片眼鏡はどうしたのですか?さすがに見えないと不便では?」

 

 

すると彼女は、敬語を外して話してもいいかと聞いてきた後、気まずそうな顔をしながら答えてくれた。

 

 

「あー、あれね。実は、私のじゃなくてさ。視力には関係ないから安心してよ。」

 

 

そう言って後ろを指差す。その先では、同じ眼鏡を掛けているおばあちゃんがこちらを見ていた。その状況から、この人は試合中におばあちゃんの片眼鏡を借りていたと予想できた。

 

 

そして、そこまで考えたところで閃く。

 

 

 

 

 

 

もしかして、この人も咲ちゃんや姉帯さんと同類なのでは?

 

 

彼女はおばあちゃんから片眼鏡を借りて試合に出ただけでなく、試合中にも執拗に眼鏡を拭いていた。絶対そんなに曇らないのに。しかもポーズも決めていた。そのポーズがカッコよく感じているのだろう。この予想には自信がある。

 

 

そこまで考えて部屋を見渡す。すると、また新たな考えに辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮守女子高校って、そういう人たちの集まりなのでは?

 

 

思い返してみれば、そう思い当たるだけの理由があった。

 

 

小瀬川さんだ。試合中に何度も「…ダル。」と言いながら頭を抱えていた。あの時は頭が痛いのかと心配していたが、今見ても誰も心配していない。つまり、あれは彼女の決めポーズ。口癖もクールなのが格好いいと思っているに違いない。

 

 

鹿倉さんとエイスリンさんだけは不明だが、前者は自身を充電する必要があるとか言っていた。アンドロイド的な設定が気に入っているのだろう。

 

 

後者は絵を描いているからアニメーターでも目指しているのだろうか。ペンを両耳に掛けているのは、アニメの影響を受けて、ペンがミサイルになると考えているのかもしれない。

 

 

するとちょうど咲ちゃんが戻ってきたので、そのまま挨拶をしてから部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

…咲ちゃんに友達候補を考え直させるべきかもしれない。




亦野(一人で仲良くしたい子のところに行くのは緊張するからね。)

咲(敵情視察なら、やっぱり亦野先輩もいた方が確実かな。)

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