亦野さんが麻雀弱いわけないだろ!   作:てーやー

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今回は勘違いが少なかったので、亦野視点はお休みです。彼女は多分、控室に帰れずにその辺をブラブラしてます。


23翻役 宮永咲は奥の手を知る

不味い。

 

 

先鋒戦終了時の点数を見てから、勝手に焦燥に駆られている。

 

 

別に最下位だったのは構わない。先輩はただ、ここで一位になっても臨海が付いてくる事を考慮し、決勝戦まで強さを隠し通す方を選んだだけだろう。それに、収支こそいつもマイナスだが、ちゃんと私たちが捲れる範囲を考えてくれている。

 

 

問題なのは、去年のベスト4が 清澄( こっち)に標準を合わせている事。

 

 

前の永水でも安定して勝てる自信がなかったから落としたのに、今回はそれよりも上。

 

 

そしてそのせいで、亦野先輩も最後の二局は本気を出させられていた。恐らく、あれ以上削られると私たちが巻き返せなくなると考えたのか。

 

 

…悔しいがその通りだろう。

 

 

画面の向こうで闘っている染谷先輩も難しそうだ。相性だと言われればそれまでだが、この調子だと区間最下位になると思われる。

 

 

「…咲?」

 

 

憧ちゃんも稼げるとは思えない。つまり、井上先輩と私がどうにかしなければいけない。

 

 

それは理解しているが、私も宮守の大将の能力解析が終わっていない。せっかく、二回戦の後に先輩に頼んで一緒に偵察をしてもらったのに、まだ確信には至れていない。

 

 

…これなら、姫松を連れていくべきだったか?

 

 

「咲!」

 

 

と、呼ばれていたらしい。急いで表情を繕い、憧ちゃんの方へ顔を向ける。ただでさえまずいこの状況で、彼女に更なる不安を与えるのは宜しくない。

 

 

「あっ、ごめんね。ちょっとぼーっとしてて。」

 

 

「…大丈夫?顔真っ青だけど。」

 

 

…流石に顔色までは誤魔化せなかったか。私はまだ、亦野先輩とは違ってそこまではできないみたいだ。

 

 

「…咲がそこまで不安になるってつまり、このままじゃ勝てないってことよね。」

 

 

言葉に詰まる。

 

 

答えられない。言える訳がない。この状況での最善策は、憧ちゃんに早く流してもらって私が稼ぐ事。私が、私が五万点くらいプラスにできなければ敗退はほぼ確実で___

 

 

 

 

 

 

「…しょうがない。アレを使うわ。」

 

 

 

 

…"アレ"?

 

 

「前回までは先輩たちに止められてたし、私も決勝までとっておきたかったから使わなかったけど、仕方ないか。」

 

 

先輩たちも知っていると。つまり、知らなかったのは私だけ?

 

 

「ほら、咲も誠子先輩も普段は強さを隠してるでしょ?それに思うところはあるけど、戦略としては有りかなーって。」

 

 

でもおかしい。亦野先輩や私は強さを隠してると言っても、それは能力があって初めて出来る技だ。つまり、

 

 

「憧ちゃんも能力持ちだったの?」

 

 

思わず疑問が口から出たが、彼女は笑って返してきた。

 

 

「違う違う。私のは…いや、やっぱり楽しみにしておいて。」

 

 

自分で質問しておいてなんだが、今その中身はどうでもいい。この状況で私が知りたいのはただ一つ。

 

 

「それを使ったとして…勝てるの?」

 

 

その瞬間、ここでそんな質問をすべきではなかったと後悔したが、彼女はニヤリと口角を上げて返答する。

 

 

 

 

 

 

「勝つわ」




という訳で、ここの憧ちゃんは原作とは異なる方向に成長しています。こういうのも原作改変の醍醐味だと思うんですよ。

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