亦野さんが麻雀弱いわけないだろ!   作:てーやー

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最後のいつもの置いときますね。…結局最後まで描写できませんでした。


次鋒戦終了
清澄高校 染谷まこ 113500(-6000)
白糸台高校 弘世菫 82200(+7900)
阿知賀女子学院 鷺森灼 88700(+1400)
臨海女子高校 郝慧宇 115400(-3300)


32翻役 新子憧は賭けに出る

「…玄。」

 

 

「憧ちゃん…。」

 

 

会場の入り口でお互いに見つめあう。目の前にいるのは幼馴染の一人。私のここに来た目的。緊張はあるが、自然に口が開いた。

 

 

「…勝ち上がって来たのはテレビで見てたけど、実際に見るのとはやっぱり違うわ。あの時からみんな成長してた。」

 

 

「憧ちゃんこそだよ。今まであんな打ち方してなかったよね?清澄高校の先輩達のトレースが完璧にできてる、って赤土さんが言ってたよ。」

 

 

どうやら向こうも会話を望んでいたようで、嬉しそうに話を続けてきた。って、もう準決勝の戦い方が分析されてたのか。いや、確かに晴絵ならやりかねない。

 

 

「そう?その言葉が一番嬉しいわ。でも、玄も苦手だった槓を使いこなしてたし、和に至っては考え方から変わってた。ほんと、これ以上強くなってどーすんのよ。」

 

 

「え?…そ、そうだよね!私も準決勝で和ちゃんに会った時はびっくりしたもん。あれだけオカルトはあり得ないって断言してたの「もうそろそろ対局が始まりますよ?」…ひゃあ?!」

 

 

と、ここで中堅を務めるもう一人の幼馴染が、対局の開始を知らせに来てくれた。本当は彼女とも色々話し込みたいが、まだその機会ではないらしい。なら今は、

 

 

「じゃ、仕方ないか。もっと二人とも話したいし、シズ達にも会いたけど、

 

 

 

 

 

 

それはここを一位抜けしてからにするわ。」

 

 

最高の勝負をしよう。

 

 

中堅戦開始

東場 臨海女子高校 雀明華 115400

南場 清澄高校 新子憧 113500

西場 白糸台高校 原村和 82200

北場 阿知賀女子学院 松実玄 88700

 

 

最高の勝負、なんて格好つけたけどやることは決まってる。待ちの広さを優先した早和了り一択。千里山の江口でも稼ぎ負けるのが分かってるから高い手を作る気は一切ないし、単騎待ちだと玄に止められる。

 

 

ただ、風牌もドラも来ないからタンピンか特急券以外は難しい。和もそれを学習してか、早くて待ちの広い手を優先して仕上げてる。

 

 

さらに、この半荘は席順が最悪。鳴いても和のフォローになるし、準決勝みたいに牌をずらしても被害を被るのは私。せめてドラが風牌になって食い合ってほしいが、それを考えるのはあまりにも非現実的だ。

 

 

 

 

 

 

昔から玄の打ち方を知っている私と和が流しているから何とかなっているが、それでも削られていく一方。平均打点15000オーバーはさすがに抑えきれない。

 

 

この局面、先輩達ならどうしただろうか。

 

 

打開策を練ってはいるが、良案は出てこない。前までの玄ならカンで手を縮ませてたけど、準決勝のカンドラとツモ封じを見た後では意味があるとは思えな___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にそうか?

 

 

本当に意味がないのか?

 

 

 

 

引っかかりを覚えた。というのも、準決勝ではカンのインパクトが強すぎて考えられてなかったけど、結局あの二回以外は鳴きもしなかった。加えて他の試合でも、誰かがカンをするシーンを一度も見ていない。

 

 

それに、途中で途切れたから深く意識してなかったけど、さっきの会話で自分の話になった時もあからさまに会話をずらしてた。何のために?

 

 

 

 

 

 

…もしかして。

 

 

自分でカンした時じゃないとドラを操れない?

 

 

思い返してみれば、あの和了り止めもカンドラもろ乗りもどっちも自分から宣言してた。それを利用して、カンをしても意味のないかの様に見せていたのか。

 

 

けど残念。こういう思い込ませるやり方は、誠子先輩に何度もやられた手だ。先輩と違うのは、玄が嘘を付けない人間だってこと。

 

 

これが外れてたらどうしようもないけど、賭ける価値はある。

 

 

そうと決まればやることは一つ。カンを狙う。それだけ。幸いにして暗刻は二つある。

 

 

咲は単純な実力で槓材を集めてるって言ってたっけ。私にそんな真似はできない。一応、流れを読むことはできるが、槓材が揃えられるかどうかは別問題で…。

 

 

「…!カン!」

 

 

と、ここで和が出してくれた。最後の槓材差し込みなんて普通はできっこないけど、どうやら察してくれたらしい。

 

 

でも、ここが本当の勝負。めくられたカンドラがあたしの待ち牌ならもう諦める。でも、これがそうでないなら…

 

 

 

 

 

 

「ツモ!」

 

 

まだやれる。…この嶺上開花は偶然だが。

 

 

下家を見ると、玄が涙目になってこっちを見ていた。牌を自動卓に落とす手も震えている。そして和も、驚いた顔でこっちを見ている。多分二人とも、あたしが咲のトレースをしたと考えているのだろう。

 

 

もうあんな形でのカンも和了りもできないだろうが、これを利用しない手はない。

 

 

 

 

「…うん。玄の強さも分かったし、ここから反撃と行きますか!」

 

 

さっきまでやられっぱなしだったんだ。この後半戦くらいは騙されていてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

中堅戦終了

白糸台高校 84300(+2100)

臨海女子高校 109300(-6100)

清澄高校 115900(+2400)

阿知賀女子学院 90300(+1600)




「…さすがですね。いつから玄さんがカンに弱いままだと気付いていたのですか?」

「んー。おかしいって思ったのは試合直前の会話からだけどね。あのままだと稼ぎ負けるのは目に見えてたし、賭けに出たって訳!」

「うっ…。やっぱり、そこだよね…。」

「玄は昔から嘘をつけないからねー。」




「疎外感…。これが、国境…。」

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