亦野さんが麻雀弱いわけないだろ!   作:てーやー

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今回の話は、何回見返してもコメディになってくれませんでした。

後、次回で完結です。


34翻役 宮永咲は願いを叶える

ここまで、本当に長かった。

 

 

会場へと続く廊下を歩きながらつくづく思う。

 

 

きっかけは、新子さんの挑発に乗った事だった。当時の印象は最悪。でも、そのお陰で先輩達に出会えた。

 

 

特に、亦野先輩に会えたのは私の人生における大きなターニングポイントだ。先輩に助けてもらえたからこそ、お姉ちゃんと卓を囲みたい、なんて夢を持てた。

 

 

そして、そのお姉ちゃんが扉の向こうにいる。はやる気持ちを抑え、中に入る。

 

 

「…。」

 

 

いた。準決勝までと同じように、本を読んでいる。

 

 

一瞬だけ目が合ったが、すぐに目線を本に戻してしまった。やはり嫌われているのだろうか。

 

 

すぐにでも確認したいが、他の二人も集まってきているし、もうすぐ試合が始まってしまう。だから、対局を通してお姉ちゃんの気持ちを知ることにする。

 

 

正真正銘、これが最後の対局だ。気を引き締めろ、私。

 

 

 

 

 

 

東場 阿知賀女子学院 高鴨穏乃 107600

南場 清澄高校 宮永咲 105200

西場 臨海女子高校 ネリー・ヴィルサラーゼ 106500

北場 白糸台高校 宮永照 80500

 

 

最初の一局、お姉ちゃんは様子を見る。なので、他の二人に追い付かれない範囲で、できるだけ高めを和了っておく。

 

 

「カンっ…嶺上開花」

 

 

…?一瞬だけ準決勝の最後みたいな気配がした。お姉ちゃんでも臨海の人でもないから、阿知賀だろうか。

 

 

単なる気のせいかもしれないが、この感覚は昨日、亦野先輩が試合後にわざわざ確認してくるくらい警戒していた。用心しておこう。

 

 

 

 

 

 

数局掛けて、やっと違和感の正体が理解できた。

 

 

これは、局や巡目が進むほどオカルトの効果を弱体化させてくるのか。お姉ちゃんが鏡で見ても怪訝そうにしてたし、臨海も露骨に嫌そうな顔をしている。

 

 

しかも、配牌前の王牌への干渉も封じるため、準決勝オーラスみたく、あらかじめ嶺上牌を確認しておくのも不可能になった。

 

 

この能力を知りつつ決着まで隠してたのならよほどの知将だが、彼女にそんな素振りは見られない。なら彼女の監督か。

 

 

その影響で、お姉ちゃんは早和了りこそまだできているが、そこから点数が伸びていない。昔のお姉ちゃんをそのまま強くしたみたいな打牌から見ても、今は素の実力だけで勝負していると予測できる。

 

 

そして私も、学校のみんなから能力を使わずに打つ方法を教えてもらってはいたが、所詮は付け焼き刃。一位を守るので精一杯だ。

 

 

 

 

 

 

…楽しいな。

 

 

決勝戦でこんな思考になるべきではないが、どうしてもみんなが離ればなれになる前の家族麻雀を思い出してしまう。

 

 

そういえば本当の勝負って、こんなにハラハラするものだったんだ。

 

 

麻雀を始めた頃の私は、一巡進むごとに一喜一憂できてたんだ。

 

 

能力ありきの麻雀も否定はしないが、プラマイゼロしか打てなくなる前は、こんな風に、純粋に楽しめていた気がする。

 

 

ああ、勝ちたいな。

 

 

 

 

 

 

そしてオーラス。

 

 

順位は三位。お姉ちゃんにも憧ちゃんの幼なじみにも負けている状況。それでも、気分は最高潮だ。

 

 

配牌から役を考えるのが楽しい。相手の捨て牌から手を予想するのが楽しい。手を進めるのが楽しい。

 

 

しかしこのままだと、お姉ちゃんの待ちに勝てない事が理解できてしまっている。

 

 

鳴けば広くはなるが点数が足りなくなる。かといってそのままでは和了される。

 

 

と、

 

 

揃った。

 

 

 

 

五筒が四枚。つまりは槓材。

 

 

いつもなら迷わず宣言するが、今回はさすがに手が止まる。確かに、これで嶺上開花ができれば私の勝ちだが、できなければ役なしになってしまう。

 

 

どうする。

 

 

 

 

 

 

そして、決断した。

 

 

「カンっ…!」

 

 

槓材となった牌を晒す。

 

 

今までの人生で、間違いなく一番の緊張をしながら嶺上牌を掴み___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…懐かしかったよ。」

 

 

試合後、声をかける。返事をしてくれなくても構わない。対局で、お姉ちゃんが私を嫌ってない事が理解できたから。ただ、それでも謝りたかった。

 

 

「お父さんとお母さんが離れるまでは、何かある度にああやって一緒に麻雀してたよね。あの時が一番楽しかった。さっきの対局でまた思い出せたよ。」

 

 

「…。」

 

 

「でも、私がプラマイゼロしかできなくなったせいで、みんなバラバラになったか「それは違う」…えっ?」

 

 

話の途中でお姉ちゃんが口を開いてくれた。それも、聞いたことのない、力強い声で。

 

 

「…原因は、私たちだ。家族が困っているのを知りながら、助けることを諦めてた。

 

 

…ずっと謝りたかった。でも、どう声を掛ければいいのかが分からなかった。てっきり、嫌われていると思ってたから。

 

 

今日も、咲に罵倒されると思ってた。だから、さっき見てきた時も、怖くて目を合わせられなかった。

 

 

ただ、これだけは言わせてほしい。咲は悪くない。今まで、本当にごめん。」

 

 

昔のまま不器用な、それでいて堰を切ったように話し出したお姉ちゃんを見て、つい目頭が熱くなる。それでも何とか返事できた。

 

 

「ううん、こっちこそ、今までごめん。」

 

 

 

 

やっと、お姉ちゃんと仲直りができた。

 

 

これで、ちょっとは前に進めたかな。

 

 

 

 

 

 

大将戦終了

清澄高校 106800(+1600)

白糸台高校 106600(+26100)

臨海女子高校 82500(-24000)

阿知賀女子学院 103900(-3700)




「咲は、あの時に比べて戦い方がずいぶん変わってる。それに、性格も明るくなった。」

「そ、そうかな?ならやっぱり、先輩たち、特に亦野先輩のお陰かな。先輩はすごくてね、私のプラマイゼロをたった一手で崩したんだよ!」

「…!」
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