亦野さんが麻雀弱いわけないだろ!   作:てーやー

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やっと主人公視点です。この回から亦野さんの強さを伝えることができます。


4翻役 亦野誠子は和了りたい

私は麻雀部があまり好きじゃない。

 

 

とは言っても、別に麻雀が嫌いな訳ではないし、部員の二人ともいい友人だと思っている。

 

 

しかし、二人と一緒に麻雀をする時に限り二人の性格が豹変し、毎回と言っていいほど私で遊んでくるのだ。

 

 

ただ点数を取られて飛ばされるだけなら悔しいが仕方がないと思えるし、実際最初の内は何度も飛ばされたが楽しいと思えた。

 

 

しかしそれが飽きてきたのか、東場で百点棒以外を根こそぎ奪ってそのまま北場のオーラスまで行ったり、最初から最後まで点棒に全く触れられなかったりと勝敗以外の方法で遊ばれるようになった。

 

 

新学期に入ってからは、新入部員の前で最終結果がプラマイゼロになるように調整されて遊ばれ続けている。

 

 

ただ、救いだったのはその後輩は優しい子だったこと。

 

 

二人が私をプラマイゼロにする度に「次こそ(二人を)倒しますから!」と私を元気づけてくれるのは本当にありがたい。

 

 

そのため最近では、四人打ちのほうが得意だと言っていた彼女のために、釣りをできるだけ速く切り上げて部室に向かうようにしている。

 

 

そうして部室の前に少し早めに着きドアを開けたが、今日はその中に一人だけ見慣れない子がいた。

 

 

「お疲れ…えっ、また新入部員!?」

 

 

疑問形になってしまったが恐らく正解だろう。

 

 

そして卓を囲んでいる四人を見る。いつもの三人の嬉しそうな顔と新しい子の悲しそうな顔を見る限り、今回は彼女が標的にされているのか。

 

 

念のため、各ゲームの最終点数をPCで確認する。すると思った通り、彼女の欄には二回とも±0と書かれていた。

 

 

次にテーブルを見る。点数は少しマイナス。強いて手牌を見ると一つだけ見えない牌があるが、これなら後1~2手で和了れそうだ。

 

 

そしてこれを上がれば±0になる様に調整されているのだろうが、それよりも大事な問題がある。

 

 

「それ…早く直した方が良いよ?」

 

 

 

 

 

 

彼女の牌の内1つが裏返ってしまっているのだ。

 

 

おどおどしていたことからも初心者だと分かる。ただでさえ遊ばれていたところにドアが開いたことで動揺し、裏返してしまったのだろう。

 

 

そう一人で納得し、他の三人に聞かれない様に指摘した。すると、目の前の子がおずおずと聞いてくる。

 

 

「もしかして、先輩もプラマイゼロになってしまうんですか?」

 

 

なるほど。今まで私の事をプラマイゼロにする側の人間だと思っていたのか。それなのに、周りに聞こえない様に指摘してきたから苛められる側かと考えた、と。

 

 

「え、うん。…最近は、だけど。」

 

 

そう返事をすると、彼女の顔は目に見えて明るくなった。新しく来た先輩が怖くないと分かってもらえたらしい。

 

 

ここで席を代わるべきだろう。この子にこれ以上こんな麻雀をさせてはいけない。

 

 

そう考えていると、まこが彼女の紹介をし始め、ついでとばかりに席を譲ってきた。この子の名前は宮永咲といい、初めから私と打つことが目的だったらしい。

 

 

なぜ私なのかは分からないが、たぶん同じくらいの実力を持った人間と打ちたかったのだろう。

 

 

言われてみれば、このまま帰らせるよりも初心者レベルの自分が入り、麻雀の楽しさを知ってもらうほうが良いかもしれない。

 

 

…そこまで理解していて、なぜあの二人はいじめるような真似をしたのだろうか。 

 

 

 

 

 

 

結局そのまま対局を開始してからオーラスになった。しかし、今まで何もできていない。

 

 

目的こそ宮永さんに楽しんでもらうことではあるが、せめて初心者相手なら一回は和了りたい。

 

 

そしてついに、その局の11巡目に一向聴が出来た。単騎待ちではあるが、ようやく上がれるかもしれない。

 

 

しかし、そのタイミングで彼女も動いた。

 

 

「ポン」

 

 

 

 

 

 

ってちょっと待って、それ私の待ち牌なんだけど!?

 

 

待ちを変えようにも、捨て牌が三段目に入りそうな状況で変えられる状況ではない。

 

 

その次の手番に聴牌できたが一巡遅かった。

 

 

もう和了りが絶望的になってしまっているが、できるだけ顔には出さないように努め、最後の一枚が残ってくれているように天に祈る。

 

 

しかし二巡後、彼女はその一枚を自身の右奥に移動させてしまう。

 

 

「カン」

 

 

 

 

あっ

 

 

…もしかして和了れる可能性が消えた?

 

 

必死に焦りを鎮める。さすがに、初対面の後輩の前で恥ずかしい真似はできない。

 

 

そして心を落ち着かせた時、あることを思い出した。確かカンをした相手から直撃をとる役があったはずだ。一昨日に純にやられたおかげで覚えていた。

 

 

その役の名前は確か…

 

 

 

 

 

 

「ロン、槍槓。」

 

 

…合ってる、よね?




満足しました。釣り雑誌の表紙を飾るほどの腕を持ちながら、麻雀ランキング一位の高校のレギュラーに選ばれる人が弱いはずないですからね。

満足はしましたが、今のところは全国大会決勝戦ぐらいまでは書こうかなと考えています。

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