亦野さんが麻雀弱いわけないだろ! 作:てーやー
35翻役 亦野誠子は逃げ出したい
咲ちゃんがオーラスに牌を倒した瞬間、清澄メンバーがいる控室内の時間が停止した。そしてその直後に一気に騒がしくなる…と思いきや、全員がある程度は落ち着いていた。
「ヤバっ、ほんとにあたしたち優勝したの!?…なら、後でシズ達に自慢しに行こーっと。」
「まさか、優勝するたぁ思わんかったわ。咲もよおやったの。」
「おいおいおい、優勝しちまったのかよ、俺たち。結局、俺とまこは何もできてねえじゃねえか。」
たぶんみんな、私と一緒でまだ実感が湧いていないだけだ。実際に打ってる咲ちゃんだってまだ唖然としてるのに、画面越しに見てるメンバーが先に実感できる訳がない。後、純とまこが活躍できていないなら、私は一体何をしたのか。
そうして静かに喜びを共有してから咲ちゃんを迎えに行ったが、彼女はお姉さんと二人で会話していた。内容は聞こえないが、その理由は前々から聞いている。なので、みんなでしばらく見守ることにした。
二人をしばらく眺めていると、言葉のトーンが気まずそうなものから明るいものへと変わってきた。どうやら仲直りに成功した様だ。久しぶりに姉妹で会えたのだ。話すことも多いだろう。
もう少し待つか、と三人に提案したところで、咲ちゃんがこちらを指差しているのが見えた。
ずっと待っている私たちを気の毒に思ったのだろうか。そのまま姉を連れてこっちに来て、メンバーとお姉さんとを順番に説明していく。気持ちは嬉しいが、いきなり来られても困る。照さんも笑ってはいるが、あれは営業スマイルだ。絶対気を遣ってる。
その絶妙な空気の中、ようやく最後に私の紹介がされた。これ以上邪魔をするわけにはいかないので、咲ちゃんにその旨を伝えようとするが、
「すみません、亦野さん。まずは、お礼を言わせていただいてもよろしいですか?」
姉の方が話し掛けてきた。それも全員でなく、私一人に。
チャンピオンである彼女が私だけに感謝する事があるか?と疑問に思いつつも、とりあえず続きを促す。すると、
「咲の、妹の呪縛を解いていただいて本当にありがとうございます。昔の私ではどうしようもなかったので、本当に感謝しています。」
…姉妹揃って中二病だったか。
しかし、咲ちゃんですでに慣れているからか意味は理解できた。恐らく、「妹は昔から人見知りで友達ができにくかったが、仲良くなってくれてありがとう。」ぐらいじゃないか?
それなら、一番咲ちゃんの話に付き合っている私に礼を言ってくるのにも納得がいく。
ただ、自信がないためここは適当に話を合わせてからなんとか流す。この手の内容は、長引かせすぎるとボロが出る。過去の経験だ。
そしてそのまま話を切って立ち去ろうとしたが、まだ話したい事があるらしい。頼むからこの空気を読んでほしい。天然なところは妹そっくりで___
「国麻に出る気はありませんか?」
…えっ?
「立ち話も何ですから、私たちの控え室で卓を囲みながら話しませんか?ちょうど、うちの大星が亦野さんや咲と打ちたがっていましたので、面子には困りませんよ。」
「」
「…本当はお姉ちゃんが打ちたいだけだよね?」
「…うん。」
「でも、お姉ちゃんでも先輩に勝てるかは分からないよ?」
「…!」
「」