亦野さんが麻雀弱いわけないだろ!   作:てーやー

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役満手の中では大三元が一番好きです。出しやすいので。

ただ、今までの中で一番衝撃を受けた役満は、鳴き清一色ドラ10の数え役満です。二回カンしたら二回ともモロ乗りしていた時の興奮は何年経っても忘れられません。


9翻役 新子憧は理解する

もしかして、唆し文句を間違えた?

 

 

前半戦終了時点での清澄学園の点数を見て少し後悔してしまう。

 

 

この控室にいるメンバー以外がこの結果を見ても、ただ焼き鳥になっただけにしか見えないだろう。しかし、ここにいるメンバーには分かる。

 

 

「あれ絶対早く終わらせることしか考えてないですよね?!」

 

 

部屋にいる先輩二人に同意を求めると、案の定、肯定の返事が返ってきた。

 

 

「ほおじゃのう。自分が親の時は絶対和了らんくせに、それ以外んときはすぐ親以外に流させとる。ありゃあ確実に終わらせることしか考えとらん。」

 

 

「しかも、相手が安い手を作ればすぐ振り込みやがるから、結果的に他家の高い手を防げてるときた。実際、風越の親っ跳を鶴賀の2000で流してたからな。」

 

 

そのまま先輩二人と、前半戦における誠子先輩の打牌について不満を垂れていると、咲がぽつりと反論した。

 

 

「でも…後半戦はちゃんと本気を出してくれると思います。」

 

 

あれ?先程まで言葉には出さなかったが、咲もうんうんと一緒になって頷いていたはず。そんな友人の唐突な心変わりに驚きながらも、とりあえず理由を聞いてみる。

 

 

「なんでそんなことが分かるの?」

 

 

 

 

「だって先輩は優しいから。わたしや新子さんが全国に行きたいことを知っているなら結果で示してくれるよ。」

 

 

…こんな言葉で信じたくなる自分が悔しい。急に恥ずかしさを感じ、こぼれ出た笑みを隠そうとしたが、どうやってもにやつくのを抑えきれなかった。

 

 

そして、そんなあたしを見てか、ついさっきまで味方だったはずの先輩二人の顔からも、笑顔がこぼれていた。

 

 

「そうだな、今までずっとマイナス収支だったんだ。決勝の後半戦ぐらい、かわいい後輩のために重い腰を上げるだろ。」

 

 

 

 

 

 

そうして待っていると後半戦の東一局が始まった。

 

 

席順は先程から変わり、

東場 鶴賀学園 津山睦月、

南場 清澄高校 亦野誠子、

西場 風越女子高校 竹井久、

北場 龍門渕高校 南浦数絵となっている。

 

 

「ポン」

 

 

そしてその三巡目、早速誠子先輩が動く。しかし、泣いたのは…オタ風の北?

 

 

混一色を狙うならまだ理解できるが、配牌から色も数字もバラバラ。それならまだ、平和の頭や待ち牌として使った方が良かったのに。

 

 

意味不明な打牌に困惑し他の三人を見るが、純先輩と咲は首を横に振る。

 

 

「まだ分かんねえな。流れは変わってねえし、他の奴が警戒して早和了りするように仕向けてんのか?」

 

 

「カンしても有効牌は来ないから…一枚だけ持っている白か中を三枚持ってこられる自信がある、とか?」

 

 

すると、まこ先輩が眼鏡に触れながら呟いた。

 

 

「この河の感じ、どこかで見たことある気がするのお。」

 

 

そのまま、「どの試合じゃったかのう…。」と上を向いて記憶を探り始めた。この捨て牌に心当たりでもあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

そうして疑問が解けないまま試合が進んでいく。

 

 

しかし、捨て牌が二列目に差し掛かったところでありえないことが起こった。

 

 

「…は?」

 

 

このツモで聴牌にできたはずの風越が、突然降り始めたのだ。

 

 

理解できない。対局相手の龍門渕はまだ一向牌で、鶴賀に至ってはほとんど手が進んでいない。先輩も、鳴いて以降は混一色に染めようとしているが、手が遅すぎて流局までに和了れるか分からない。

 

 

それだけでなく、その次巡には龍門渕もほんのわずかに顔をしかめて安牌を捨て始めた。

 

 

共通しているのは、どちらも風牌を掴んだ事。そこでようやく気付く。

 

 

「先輩が鳴いて以降、誰も北以外の風牌を捨ててない…?」

 

 

つまり、あの二人は先輩の四喜和を警戒している?

 

 

肝心の東は鶴賀が三枚掴んでいるが、降りた二人には分からない。

 

 

そして、

 

 

「ツモ」

 

 

先輩が海底ぎりぎりのタイミングで満貫をツモることに成功した。

 

 

上がられた三人の内、二人が特に驚いた表情をしていたが、その理由は先輩が和了ったことではないだろう。

 

 

「…まさか、初めからこれを狙ってたの?」

 

 

驚きで心の声が漏れてしまう。

 

 

「なるほどな。ただ和了を狙っても相手に追いつけねえ。流れも変わらねえ。だから相手を止めるしかなかった訳か。」

 

 

純先輩も素直に感心している。と、まこ先輩が納得した顔を上げた。

 

 

「ほうじゃ、思い出した。永水女子高校じゃ。薄墨とかいう選手が四喜和を連発する戦い方をしておったけえ、そんときの河と似ておったわ。」

 

 

はあ!?四喜和連発とか訳分かんないんですけど!?

 

 

でもそれなら、攻めていた二人が降りた事は理解できる。さっきの戦法は、全国の牌譜をちゃんと見ている相手にほど効果があるため、いち早く察してしまった風越が先にオリたのだろう。

 

 

しかし逆に言えば、今回の作戦は他の有名選手の威を借りただけだ。こんな作戦が何度も通じるとは思えないし、実際にその虎と戦わなければいけない時が来る。その時に全く勝てる気がしない。

 

 

そう、つい思考が諦めの方向に向きかけた時、純先輩が説教をしてきた。

 

 

「…憧。お前、もしかしてもう諦めてんじゃねえだろうな。

 

 

確かに、俺らには神は見えねえし、役満も連続で出せねえ。だからこそ、今回の誠子みたいに技を使うんだろうが。全国に行くんだろ?」

 

 

…そうだ。今になってやっと理解できた。あたしの目指しているのはそういう相手がいる場所で、今のあたしにはもっと経験も技術も必要なんだ。だったら、

 

 

 

 

もっと強くなってやりますよ、先輩方。




「もしかすると、この一撃を入れるために、前半は全く点数を取らなかったのかもな。」

「うそお!?」
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