宇宙戦艦ヤマト イスカンダルへの旅   作:GrandFleet

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訂正。第1話において、ガミラス艦は陽電子砲をゲシュ=タムフィールド(波動防壁)で防いだと記載しましたが、作中でゲシュ=タムフィールドを展開した様子はありません。詳しく調べてみると、ガミラス艦は装甲に帯磁特殊加工(ミゴウェザーコーティング)と呼ばれる特殊な加工を施しているという設定を知り、ゲシュ=タムフィールドから帯磁特殊加工を施された装甲による防御に訂正しました。リサーチ不足でした。


第7話 号砲一発 宇宙戦艦ヤマト始動

防衛軍司令部

メインレーダーのスクリーンを見つめる電測員。そこに映っていたのは····

電測員「長官、敵空母が降下して来ます!」

藤堂「何だと!!」

降下してくるガミラスの空母が映っていた。今までは艦載機を降下させての偵察や地上攻撃をさせていたが、今回は母艦ごと降下してきた。司令室に、激震が走る。

土方「敵は、気付いたようだな···」

土方は一人呟く。どうやらガミラスは、ヤマトに気付いたようだ。

芹沢「何か、動かせる艦艇はいないか」

参謀長芹沢虎鉄が艦艇による迎撃を命じる。だが、これに返ってきた返答は···。

防衛軍職員「ドックにいる艦艇は、どれも修理が進んでいません。きりしまも応急修理が済んでいません。まともに戦うことはできないでしょう」

芹沢「くっ、このままでは···」

苦虫を潰したような表情を見せる芹沢。そこへ藤堂が口を開く。

藤堂「ヤマトに迎撃させよ」

藤堂は、ヤマトに迎撃するように命じた。この一言に、驚きの表情を浮かべる芹沢。

芹沢「しかし、現在ヤマトは出港準備中です。それに、まだ波動エンジンの点検が終わっていないとか。大丈夫なのですか?」

芹沢は、ヤマトへの出撃の指示に難色を示した。

藤堂「今、戦うことができるのはヤマトだけだ。ヤマトに賭けるしか無い。それとも、他に迎撃の案があるのかね?」

芹沢「······ございません」

藤堂「なら、急いで連絡をとりたまえ」

芹沢「はっ···。今すぐヤマトへ連絡せよ」

命令を受け、通信員が打電キーを叩く。ヤマトへ敵空母迎撃が命じられた。

 

 

 

 

一方、この時ヤマトでは積み込み作業が終わり、古代·島·雪以外の第1艦橋に勤務する人が揃って自己紹介が行われ、出港へ向けてのミーティングが開始されようとしていた。

宇宙戦艦ヤマト 第1艦橋

南部「砲雷長の南部康夫です。古代さんの指揮下で主砲や副砲をはじめとする各種兵装の管理や制御を行います」

太田「気象長の太田健二郎です。航路の監視が主な仕事になります」

相原「通信長の相原義一です。雪さんの元で通信業務を担当します」

真田「私が技師長の真田だ。これから副長も兼務していく。以後よろしく。あと、今はここにはいないが徳川機関長も出港の時にはこちらで機関の制御を行われる。その時に各自挨拶をしておいてくれ」

「「「よろしくお願いします」」」

軽い自己紹介を終えて、それぞれが各々の席に着く。そこへ、沖田が艦長室から下りてきた。

沖田「徳川君以外の第1艦橋要員はこれで揃ったな。私が艦長の沖田十三だ。これから君たちは私の指揮下に入ってもらう。この艦は、一人の力だけでは動かせん。皆の力があってこそ動かせる。諸君らは、力を合わせて任務に従事してくれ」

「「「「はっ」」」」

そこへ、一台の赤いロボットがやって来た。

南部「何なんだこいつは?」

相原と南部が怪訝そうな表情で見つめる。

「技師長、整備アリガトウゴザイマス」

ロボットは真田にお辞儀した。

真田「どうってことは無い。君は、ヤマトにとって必要な存在だからね」

真田もロボットに返答する。どうやら二人は知り合いのようだ。古代が声をかけた。

古代「副長」

真田「なんだい?」

古代「そいつは一体?」

真田「こいつは、AU-O9。この艦の、自律型サブコンピューターだ」

アナライザー「アナライザーと呼ンデクダサイ」

真田「元々は別のユニットが搭載する予定だったんだが、不具合が見つかってな。急遽、中央病院で利用されていたこいつをヤマトに搭載することになったんだ」

古代「中央病院?何でそんなところに」

真田「元々AUユニットは工場や研究所での使用を前提に製造された解析ロボットだ。だが、ガミラスの遊星爆弾で閉鎖された施設が数多くあるのは知っているだろう。」

古代「はい」

真田「それで、働き場所を失ったロボット達が本来とは違う別の場所で利用されるようになった」

アナライザー「ワタシはソノ一例デス」

真田「それに目を付けたという訳だ。元から高性能なAIを登載しているから、この艦のサブコンピューターにした訳だ」

真田が説明を終えたその時、地響きと振動が艦橋を襲った。

相原「艦長、司令部より入電です。「現在ガミラス軍ノ宇宙空母ガ降下中。艦載機ニヨル空襲ニ注意シ、コレヲ迎撃セヨ」以上です」

相原が司令部からの入電を読み上げる。

沖田(この艦に気付いたか、蛆虫どもめ)

沖田は、内心毒づいた。波動エンジンの整備が終わっていない今、どこまで戦えるかどうかは不明だ。だがやるしかない

雪「艦長、本艦のレーダーでも捉えました。メインパネルに出します」

雪がレーダーで捉えた。敵艦の様子が、メインパネルに映し出される。

雪「敵空母は月軌道を離脱、降下してきます」

さらに艦載機に姿も映る。揺れの後に爆発音が響く。敵は艦載機による空襲を開始したようだ、地響きが断続的に続く。だが、沖田からの指示は無くただ黙っている。

古代「艦長、まだこの艦は戦えないんですか?このままではやられてしまいます!!」

古代が沖田に戦わないのかと問いかける。それに対し沖田の返答は····。

沖田「待て」

ただ、その一言だった。

沖田「相原、ドックの作業員に退避の指示を」

相原「了解」

退避命令が出るとすぐに作業員はドックから退避していく。

沖田「徳川君、波動エンジンは動かせるか?」

徳川「いいえ。しかし、補助エンジンなら大丈夫です」

艦橋と機関室での連絡が行われる。波動エンジンはまだ動かせないが、補助エンジンは動かせるようだ。

沖田「総員配置に付け、砲雷撃戦用意!!」

号令が掛かり、各自が己の席に付く。機関室では機関員が補助エンジンに駆け寄り、各種操作を開始する。

沖田「補助エンジン始動5秒前、重動力線コンタクト」

徳川機関長の指示の元、機関員がレバーを引く。コスモタービン改にエネルギーが入った。エンジンが唸りを上げ、動き出す。

相原「艦長、作業員の退避完了しました」

ドックにいた作業員の退避も完了したようだ。

沖田「よし。偽装解除、船体起こせー!!」

 

 

 

巨大な構造物に対して、艦載機による空襲を開始するポルメリア級空母。艦載機を続々と発進させる。

メルトリア級 艦橋

「艦長、第2次攻撃隊発進しました」

「第1次攻撃隊は帰還後に第3次攻撃隊として送り出す。補給準備を急げ」

「艦長、冥王星基地より命令です「艦載機ニ任セズ、降下シ攻撃セヨ」です」

「冥王星基地に「了解」と伝えてくれ。これより本艦も降下し攻撃に入る。砲撃用意!!」

降下をしながら搭載するミサイル、地上攻撃用の大口径砲の発射準備に入る。地球の大気圏内に侵入。高度を取り、目標を見失わないように進路と高度を調整しながら照準を合わせる。第1次攻撃隊として出撃していた艦載機が戻って来たため収容を開始した。格納庫でミサイルと燃料の補給の最中、思わぬ報告が飛び込んで来た。

「か、艦長!!」

「どうした?」

「あ、あれを見てください!」

メインパネルに映された映像を見たガミラス軍は、驚愕の事実を知ることになる。

「な、何だと!!」

そこに映っていたのは、動き始めた巨大な鉄の塊であった。

「艦載機の出撃と攻撃準備を急げ!!」

補給作業を急ぐように指示をする。

「エネルギー充填、開始」

艦底部に備え付けられた、大口径砲へエネルギー充填が開始される。

 

 

 

 

 

 

戦艦大和の残骸は、大きな振動と共に傾いた船体が起き上がった。船体にひびが入ると、そこから別の船が出現する。まるで、生き物が脱皮するかのように、新たな姿が顕になる。

 

宇宙戦艦ヤマト 第1艦橋

古代「これが、あの沈没戦艦····?」

つい最近知った沈没戦艦の残骸が、自分の乗艦する宇宙船と知り、驚く古代。メインパネルには、全く別の姿が映っていた。

沖田「これが、かつての超弩級戦艦の甦った姿·····。これが、宇宙戦艦ヤマトだ」

古代「ヤマト···」

沖田「古代、奴を攻撃する。ミサイル発射用意!!」

沖田が指示を出す。これから本格的に戦闘に突入するのだ。

古代「はっ。南部、ミサイル発射用意」

南部「了解。ミサイル発射用意」

兵装起動レバーを引き、起動させる。煙突を模した8連装ミサイル発射塔へ、動力となるエネルギーの供給が始まる。弾薬庫から揚弾塔で揚げられ、発射筒に装填される。

雪「現在、空母は本艦の上空。高度3万mにいます」

真田「古代、艦載機の発進中を狙え。あの空母は、四方に伸びているアームの発艦口から射出している。発進中に回避運動を取れば大事故になりかねないから動けないはずだ」

古代「了解」

真田のアドバイスを受け、狙うタイミングが決まった。

南部「ミサイル装填終わる」

古代「目標、敵空母!!」

制御室では、ミサイルの誘導のために、敵艦の座標データが入力されている。

南部「測敵よろし。自動追尾、定点固定」

古代「発射準備よし」

太田「艦載機、発進が始まりました」

発進を開始した艦載機は、編隊を組むために空母の周囲を飛行する。

古代「南部、防御弾幕セット」

南部「分かりました」

対空戦闘を担う、パルスレーザー砲が駆動する。迎撃に向け、即応体制が取られた。

沖田「攻撃始め!!」

沖田から空母への攻撃開始の号令が掛かった。

「発射始め!!」

8門の発射口からミサイルが撃ち出された。目標の空母目掛けて飛翔する。

 

 

その頃空母では、補給作業を終え艦載機の発進が開始された。

メルトリア級 艦橋

「第3次攻撃隊、発進しました」

「よし、では攻撃の準備だ。照準を合わせろ」

「はっ」

操舵手が操縦桿を握り締める。砲術長がスコープを覗いて、中心にヤマトが来るように照準を合わせる。砲術長の指示に従い、航海長が細かく進路を調整する。

「艦載機隊に、攻撃終了後すぐに退避するよう伝えろ」

「はっ」

「照準よろし。エネルギー充填完了まであと2分」

(よし、あと少しだ)

任務完了まで後僅か。一撃で仕留めようと決意した矢先だった。

「艦長、ミサイル接近が接近して来ます」

「何だと!!」

「数8。回避不可能域まで、後20秒」

「くっ··。回避ー!!」

スラスターを限界まで吹かして回避行動取るが、避けきれずに被弾。爆発による震動が艦を包み込む。非常警報が鳴り始めた。

「何事だ!!」

「艦底部、砲口に被弾!!」

「こちら格納庫。火災発生、これより消化に···うわぁぁぁぁ」

報告を言い終える前に爆発が掻き消した。

「船体中央部にも被弾しました!!」

上がってくる報告に耳を傾けるが、意識を艦の状況把握に切り替える。

「被害の復旧に努めろ」

「第1·第3ブロック、隔壁閉鎖!!」

艦内で繰り返し爆発が起きる。格納庫内のミサイルに誘爆し炎が広がって行く。乗員が必死にダメージコントロールに励む、それでも食い止めることが出来なかった。

「メッセージを頼む」

通信長は通信機の録音機能を作動させた。艦長はマイクを掴み、報告内容を話す。

「シュルツ司令、あれの正体は宇宙船です。これまでの宇宙船とは違います。本艦は反撃を受け、もう艦が持ちそうにありません·····。ガミラスに栄光あれ」

メッセージにそう言い残した。そして、空母は爆沈していった。

 

宇宙戦艦ヤマト 第1艦橋

雪「ミサイルの命中を確認···撃沈しました!!」

古代「やった!!」

南部「良しっ!!」

撃沈の報告を受け、拳を握る古代と南部。最初の脅威を退けることに成功した。

雪「敵艦載機接近」

雪の声が艦載機の接近を伝える。

古代「パルスレーザー、対空戦闘用意」

パルスレーザーの砲身が、艦載機を睨む。艦載機は高空で急降下する体制に入り、ヤマトに襲い掛かるつもりのようだ。

古代「撃ちー方始め!!!」

降下開始直前に対空射撃始まった。メランカは果敢に急降下するがパルスレーザーの火線に舐められていく。たちまち機体は蜂の巣となり機体は空中で火だるまになっていく。運良く掻い潜った機体も攻撃しようとするものの、当たらない。それもそのはず、急降下前にパルスレーザーによる掃射が始まったことにより進路を変更したためだ。小さなズレは、降下していけばいくほど大きなものになつ。それにより命中率は大きく下がる。一度目の攻撃を終え、退避しようとしたところをパルスレーザー砲によって撃ち落とされれる。艦載機は数分の対空戦闘で全て撃ち落とされた。

古代「お疲れさん。流石、主席の名は伊達じゃ無いな」

島が、古代に労いの言葉を掛ける。

古代「俺一人だけじゃない、南部のサポートのおかげだ。もし、サポートが無かったら喰らっていたかもしれない」

南部「そう言ってもらえて光栄です」

敵艦の撃沈に沸く、第1艦橋。

沖田「古代、良くやった」

古代「艦長···」

沖田「諸君、ご苦労だった。各自、休憩を取るように」

そう言い残すと、艦長室へ戻って行った。

 

 

 

防衛軍司令本部

電測員「レーダーより敵艦の反応消失。撃沈を確認しました!!!」

「「「やったー!!!」」」

撃沈の報告に歓喜する防衛軍司令部。張つめていた空気が消えていく。

藤堂「危機は脱したようだな、土方君」

土方「ええ。ですが長官、敵は何をしてくるか分かりません。〈ヤマト〉の存在が敵に知られた以上、警戒は続けるべきです」

藤堂「ああ、勿論そのつもりだ」

空母を撃沈したからと言っても、まだ地球の危機が去った訳では無い。人類が生存可能な一年以内で、放射能除去装置を受け取りに往復29万8000光年の旅に行かなければならない。

藤堂「総員、警戒体制を強化せよ。どんな些細な動きも見落とすな」

「「「はっ」」」

新たに発せられた命令。ヤマトを護るために防衛軍は、最大級の警戒体制を取った。ヤマトの出港は明日、地球の運命がかかった旅の始まりの日。ヤマトは、何が何でも守ってみせるという雰囲気が司令部に流れ始めた。

 

 

 

 

 

冥王星基地

通信員「司令、地球にて作戦中の空母からの通信が途絶えました」

シュルツは、部活からの報告黙って聞いていた。

通信員「この音声メッセージの報告が最後に通信になります」

次に、音声メッセージと一緒に送られてきた映像が再生される。そこには、鉄の塊から姿を現した宇宙船が映っていた。

ガンツ「テロンが、こんな宇宙船を作っていたなんて····」

誰もが、宇宙船の姿に言葉を失った。

ガンツ「司令、今すぐに艦隊を差し向けましょう」

ガンツが艦隊を差し向けるように進言する。

シュルツ「待て。動かぬ標的に物量を投じる必要は無い」

ガンツ「しかし!!」

シュルツ「よく見るんだ、ガンツ。あの艦は、飛んでいない。これが何を表しているか分かるか?」

ガンツ「ええと····」

画面を食い入るように見つめる。

ガンツ「そうか。まだ機関が動かせない状況にあるという訳ですね!!」

シュルツ「そうだ。我々が出向いて攻撃するより、ミサイルを撃ち込んだほうが容易い」

ガンツ「では、あれを···」

シュルツ「惑星間弾道弾の発射準備を」

ガンツ「はっ」

新たな命令が発せられた。再び、ヤマトに脅威が降りかかろうとしていた。人類滅亡まで、あと364日。


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