攻めろ!!千聖さん!!   作:面心立方格子

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服屋とかってどんな感じなんですかね。


いざ服買いへ

『服を買いに行く時は、制服で行ってください。』

 

氷川さんにそう言われたのを思い出し、制服へと手を通す。着物では何か不味いことでもあるのかな.......?

 

「.....あら?風人くん?学校に用事があるの?」

 

「ううん、今日は洋服を買いに行くやらなんやらで呼ばれてるんだ。」

 

「へ、へぇ......ちなみに、誰と行くのかしら?」

 

「若宮さん。若宮さんは服に詳しいらしいから整えてくれるんだって。僕知らなかったよ.......」

 

(イヴちゃんと買い物......何かしら。この異様な胸騒ぎ。.....でも待って、確か占いで。)

 

しばらく黙り込んだ後、白鷺さんはカバンの中から何やら書物を取り出し何かを探し始めた。

 

(運勢占い......牡羊座の私は、『意中の子は何かを隠している!!!慌てず大人な態度で構えよう』ね.......風人くんが私に都合の悪いことを隠すはずは無いし、これは慌てることでは無いわね。大人だもん、私。)

 

「いいんじゃないかしら。風人くんもそろそろ洋服の私服を買っておいた方がいいと思っていたのよ。」

 

「やっぱり15歳を超えたら外に行く機会も増えるのかな。」

 

「....ん、ま、まぁ風人くんは元々外に出ることは多かったけれど......私用というのも経験が必要ね。(それを今まで遮断してきたのは私だけれど...)」

 

「白鷺さんはよく知ってるね.....」

 

朝食を取り、氷川さんがくれた地図を頼りに集合場所を目指す。白鷺さんとの本番の為だけにここまで尽力してくれる氷川さんには感謝しかない。周りの人達より俗世間に馴染めてない僕の理解力に合わせた対策を用意してくれている。

 

「待って風人くん!!!忘れ物!!」

 

「え?忘れ物など.....」

 

「『生活録』よ。風人くん、これが無いとまともに買い物も出来ないじゃないの.......」

 

『生活録』......僕がこの俗世で生きていく為に母が教えてくれた諸事を記録したものである。これまでの僕はこれが無ければ何も出来なかったが最近はそうでもない。買い物、特に安い時は果断即決。お会計の際は端数がキリよくする為に硬貨を利用する。そういった学びを得たのだ。

 

「む。それは少し心外だな白鷺さん。人は慣れるもので、最近はそれが無くても出来るようになったんだよ。」

 

「そう言ってこの前の買い出しで500円玉と寛永通宝を間違えたのは何処の誰かしら.......?」

 

「うっ....お金で丸いのは同じ......」

 

「どう見ても作りが違うでしょ。いい風人くん、これから女の子と私用で出かけるのよ。私はともかく、他の人の前でそんなミスをしたら相手に迷惑がかかるわ。万全を期して、女の子.....イヴちゃんを先導するつもりの勢いで臨むべきなのよ。」

 

「は、はい......誠にその通りでございます......」

 

白鷺さんに喝を入れられる。僕を叱る時の白鷺さんの声や威圧は間違いなく父など比でもない......我が家で1番怖い母にも並ぶくらいである。

 

「『生活録』、慎んで受け取ります。........行ってまいります。」

 

「いってらっしゃい。ちゃんと門限までには帰ってくるのよ。(キリッとした風人くんの顔もいいわね.....ギャップ萌えかしら。)」

 

そして白鷺さんに見送られ、改めて地図を開き、目的の場所へと目指した。......のはず。

 

「.......今、どこ?」

 

「はぁぁぁぁ......しまらないわね。」

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駅前

 

無事集合場所へとたどり着き、周りを見回す。休みの日でありながら人の行き来は多く、楽しそうに歩いているつがいも多くいる。

 

(なんと.....って言っても、普段の朝に比べれば制服のようものを着て死んだ目をしている大人の男性方は少ない。きっと英気を養ったんだろうな......)

 

 

 

数分後

 

「師匠ー!お待たせしました!」

 

「若宮さん。おはようございます。」

 

「はい!!おはようございます!!」

 

こちらが頭を下げると、若宮さんも丁寧に頭を下げて返してくれる。頭を上げて若宮さんを見ると......普段とは違う雰囲気があった。普段の三つ編みを下げていない。

 

「髪型、変えたの?」

 

「はい!それとサングラスも持ってきました!!」

 

「さ、サングラス......?それは何故。」

 

「あっ......日差しが眩しいんです!!師匠も使ってみますか?」

 

「ん?......なるほど、黒い眼鏡で陽の光を弱めているのか。」

 

「そ、それはそうと師匠.......ど、どうでしょうか。」

 

「どう......?装いは大変美しいよ。学校での若宮さんしか知らなかったから、新鮮なんだ。」

 

「......!!!ありがとうございます!!師匠に褒めてもらえて嬉しいです!」

 

若宮さんが頬を赤らめ、キラキラした目で喜んでいる。

 

「.........」

 

「どうしました?師匠?」

 

「若宮さん....少し面倒な相談をしてしまうんだけど、言葉遣い、どうしたらいいんだろ?」

 

「言葉遣い?普段通りでいいんじゃないんですか?」

 

「その.....私用で白鷺さん以外と出かけるのはこれが初めてなんだ。学校では一応剣道における師弟関係のようなものがあるから丁寧語を心がけていて、教室にいる時は同じ立場にあるからざっくばらんな話し方。.......完全な私用は、どれに該当するのかな......?『生活録』にも載っていないんだ。」

 

「『生活録』.......?師匠!!この古めいた書物がそうなんですか!?これは何処で手に入れたんですか!?」

 

「え、家に沢山あるよ.....これ、そんなに珍しいのかな。」

 

若宮さんに『生活録』を渡す。勿論文字も全て草書体で書いているので、書道の教養がある程度持っている人でないと読めない。

 

「おおー!!これ、師匠が書いたのですか!?」

 

「うん。そうなんだけど......それは母の言伝を全て記しただけの物で.....僕が全部考えて書いた訳では無いんだ。」

 

「でもスゴいです!!昔の書物と見間違える程です!!やはり師匠はブシドーを極めていますね!!!」

 

「驕るべからず....僕なんてまだまだひよっこ。果ては無く、道がただただ続いてるだけだよ。」

 

「おおー......!!!!」

 

「僕の話は置いておいて.....言葉遣い、どうしたらいいかな。」

 

「私はそのままでいいですよ?師匠によそよそしくされても困ります!!」

 

「分かった.....じゃあ、このままにしようかな。」

 

「はい!では行きましょう!師匠!!」

 

そして若宮さんに手を引っ張られ、目的地へと向かうことになった。若宮さんが楽しそうで何よりである。

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ショッピングモール 入口

 

「ここです!!」

 

「へぇ....大きいね。どれだけ畳を敷いているんだろ....」

 

「師匠!畳は無いですよ。」

 

とても大きい建物だった。何階層まであるんだろう....

 

「これだけの広さであれば、服の数はどれほどの物なんだ.....」

 

「??師匠、ここを知らないんですか?」

 

「うん。」

 

「ここはショッピングモールって言って、色んなお店が揃っているんです!!ここに来れば、必要な物はおおかた揃います!まさしくゴエツドウシュウ、ですね!!」

 

「店同士の仲は悪いの?何か違うような......」

 

「じゃあ行きましょう!!師匠を、とびきりカッコよくしてみせます!」

 

胸をどんと叩き、若宮さんがフンスフンスとやる気に満ちている。稽古の時といい、やる気に満ちている若宮さんを見るのは楽しい。

 

 

 

 

「あれ、あれって若宮イヴちゃんじゃない!?」

 

「え、ホントだ!」

 

「あの一緒にいる人、誰だろう?」

 

「有名人....じゃないよな。あんな周りをキョロキョロしてる奴が若宮さんと何か関係あるわけないし。」

 

そして周りがざわつき始める。若宮さんはこの辺りで名を馳せているのかな.......僕は知らなかったけど、もしかしたらここら一帯を仕切っているのかもしれない。

 

「あう......師匠!!少し外しましょう!!」

 

「え?ちょっ.....!?」

 

若宮さんに引っ張られ、少し人気の少ないところに行く。しょっぴんぐもーる.....?の端の方の路地裏へと行く。

 

「うぅ.....すみません師匠。懸念していた事が....」

 

「懸念?何かあったの?」

 

「.......師匠。」

 

「何も言うな。そんな顔で伝えることなんて、あまりいい事では無いだろ。」

 

「ですが.......」

 

今こそ.....今こそ僕が先導する時。若宮さんの不安を取り除かなければならない。ただ、若宮さんはそもそもの髪の色を含めて目立つ要素が多い。ちょっとの施しで解決するほど簡単なものでも無い。対策はある、けれどそれは今日気合いを入れて装いを磨いてきた若宮さんへの侮辱に当たる行為になってしまう。だがせめて.....せめて髪型さえ変えられたら、どうにかなるかも......しれない。

 

「若宮さん、櫛持ってる?」

 

「櫛、ですか?ありますけど.....」

 

「.....髪型を、髪型だけ変えていい?今日のために整えたのに崩すような事になるんだけど......」

 

「全然大丈夫ですよ!別にこの髪型は普段よくしていますし!!」

 

「ありがたい。あとは.....僕が持ってる眼鏡、これをかけて。」

 

「これは伊達眼鏡....ですか?」

 

「僕は使わないんだけどね....白鷺さんが持っていけと言うもんだから持ってきたんだけど.....こんな形で役に立つとはね。」

 

「では師匠!お願いします!師匠の手で、私を変えてください!!」

 

「承知。」

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「ねぇ、あれ....イヴちゃん、じゃない?」

 

「え....まぁ髪色とかそうだけど、あんなダサい眼鏡かけるの?モデルなのに?」

 

「しかもあの髪型も、外国人らしいイヴちゃんの魅力を分かってないみたいな感じだよね........多分似てる他人だよ。」

 

「だよな。イヴちゃんなら多分しないよな......あれだけ写真とかだとクールだし。」

 

 

 

 

「大丈夫みたいだね。それにしても心外だな.....僕は渾身の出来なのに、おかしく言われて......」

 

「私は、この姫カットは大満足です!!師匠、買い物へと参りましょうぞ!!」

 

若宮さんの髪型を.....姫カット?なるものにした。平安時代より伝わっている髪型に似たような形にした。

 

「師匠、髪を解く手が慣れていましたね!!練習されたんですか?」

 

「昔、母や白鷺さんの髪の手入れを手伝った時に教えてもらったものなんだ。最近はやらなくなったけど、体は覚えてるんだ。」

 

そうやって話しているうちに服屋へとたどり着いた。長かったな.....

 

「では師匠!あちらの試着室でお待ちください!!服を持っていきますので!!」

 

そして若宮さんは楽しそうな目が、真面目な目になり、服の吟味を始めた。僕は指をさされた試着室とやらへ足を運び、その前で待つ。

 

 

 

「お客様、本日はどういった服をお探しですか?」

 

「私もそこは分かりません.......連れの者が今私に合った服を選んでくれているんですよ。」

 

「あちらの外国人の方ですか?」

 

「はい。」

 

「いいですね。彼女さん、なんですか?」

 

「いえ、友であると共に師弟に似た関係です。」

 

「そうでしたか....ごゆっくりお選びください。」

 

店員さんも少し微笑ましいような顔をして去っていく。僕と若宮さんの関係.....師弟といっても正確に門を叩いて弟子入りしてる訳でも無いし、友と言っても僕は若宮さんの事はほとんど知らない。

 

「師匠!第1陣です!!こちらを試着してみてください!!」

 

若宮さんが店員に何かを告げた後、服の山を両手で抱えてこちらに向かってくる。店員さんは何故か笑っている。

 

「お、多い.....これは何着と......」

 

「えっと.....ざっと20着くらいはあると思います!!」

 

「に、にじゅ.....ちょっと多くないかな.......?20も持っているとほかのお客さんも見れないし.....」

 

「それもそうですね......普段の仕事のノリでやってしまいました......。候補を絞るとなると、それだと.......うーん、少しお時間を!」

 

そして僕の前で服を構え始め、悩み始める。そしてそこから8着ほどにまで数を減らし、残りは元のところまで戻した。その後試着を続けて、若宮さんの反応が良かった3着を買うことになった。複数買っておくべきとの事だけど.....そんなに着る機会があるのかな。

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夕方 帰り際

 

「今日はありがとう。色々お世話になったよ。」

 

「いえ!師匠のお役に立てて嬉しいです!あの姿なら、チサトさんもきっと気に入ってくれます!」

 

「氷川さんといい、若宮さんといい....なんでここまで尽力してくれるの?僕は特に何もしてないのに.....」

 

「そんなに不思議ですか?」

 

「僕は単純に家族や協会の人以外の、こういう私的な付き合いを殆どした事が無いから......距離感とか、話し方とか分からないんだよ。」

 

「困っている方の力になる、ブシドーを歩む者として当然の事です!!」

 

「当然、か......白鷺さんも、そんなふうに考えてるのかな。」

 

「チサトさんも、師匠と話す時はとても楽しそうです!!大事にしなきゃダメですよ師匠!」

 

「うん、頑張るよ。」




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