攻めろ!!千聖さん!!   作:面心立方格子

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東京というか、関東圏の高校生って大学受験の併願で12、13校も私大を受けるってマジですか.....?


補習の時だけ異様に優しい先生

先生「よし、風野。まずはこの問題からだな。」

 

「は、はいぃ......」

 

結論から言うと中間考査は落ちました。点数は46点。一見すると赤点を回避しているように見えたが、学年平均は70点だった。その3分の2は46.6点。先生は四捨五入で47点を赤点のボーダーに定めた。つまり、ぎりぎり引っかかったのである。

 

先生「今回は風野も頑張ったが、あと少しだったな。....にしても、1年の学年末の英語の点数が1桁だったのに4ヶ月ちょっとでよく立て直したな。」

 

「白鷺さんや氷川さんが教えてくれたんです。ただ、そのおふたりの力をお借りしてこのザマですから....まだまだですよ。」

 

先生「へぇ.....氷川はともかく、白鷺まで協力したのか。」

 

「そうですけど.....」

 

先生「珍しいな...白鷺って普段忙しくて遅めに登校する事も多いくらい忙しいんだ。先生もいくらか授業は持ったことあるんだが.....松原以外と話すところはあまり見ないな。」

 

「それが意外とそうでも無いですよ。松原さん以外でも氷川さんや若宮さんとも交友はあるみたいですし。」

 

先生「よく知ってるな。....ほら、手が止まってるぞ。」

 

「あ、すみません。」

 

先生と雑談をしながら「50問正誤問題」という補習課題を進める。これを1週間(土日込)続けてやれば宿泊研修にも間に合うように措置を取る、と先生は明言していた。それもあるのか、補習になった生徒も数人来ていたが、皆すぐに終わらせて帰ってしまった。今いるのは僕ともう1人。もう1人の桃色の頭の子はとてつもなく悩んでいるのが目に見えるほど苦戦している。

 

先生「丸山の方は....まだ8問目じゃないか!?」

 

彩「だ、だって分からないんですよ先生!」

 

先生「風野ですらもう20問目にいってるんだぞ!!」

 

彩「え!?風野くんが20問目まで!!?」

 

「先生、さらっと僕を馬鹿にしてませんか......?」

 

さらっと毒を吐く先生とそれに驚く桃色の髪の子。2人して酷いな....

 

先生「うーん....先生、ちょっと一旦職員室に戻るから、2人で協力したり単語集とか見ながらでいいから進めといてくれ。多分しばらく終わらないだろうから休憩したい....」

 

時計を見て少し走り気味に職員室に向かう先生。最後に本音が漏れていた。そして課題の紙と単語集を持って僕の隣にとことこやってきて座る桃色の髪の子。雰囲気は大人びていたが、顔を見ると幼さが少し残っている。

 

彩「えーと....よろしくね風野くん。」

 

「あ...うん...君は?」

 

彩「あ、そっか。丸山彩です。1年生の時はクラス一緒だったけど覚えてる?」

 

「1年生....ごめん、覚えてない。」

 

彩「あちゃ....自己紹介頑張ったんだけどなー。」

 

「芸術選択って何にしてた?」

 

彩「音楽だよ♪風野くんは書道だったよね?」

 

「うん。書道の先生もやってる。元々は書道の先生がいた筈なんだけど....定年と、新しい教員を探す時間が足りなかったらしくて....誰も空いてなかったんだって。」

 

彩「だから風野くんが代わりでやってるんだ....凄いね!やっぱり達筆なの?こう....シュババって感じで!」

 

身振り手振りでこちらに伝えようとする丸山さん。感受性が豊かで、白鷺さんとは対照的なんだなと感じる。

 

「えっと...どういう感じ?」

 

彩「あれ...ほら、合気道みたいな服着て、広い場所で大きな筆持ってやるやつ!こう....字が豪快に書かれてて。」

 

「あぁ...合気道の服とあれは全然違うけどね。確か描いたやつは誰かが持っていってたかな....」

 

彩「そ、それって市長とか凄い人なんじゃ...」

 

「よく分からないけどね。飾りたい!って言うし、披露した後だからいいかなって。」

 

彩「それ絶対凄い人だって!!!へぇ....千聖ちゃんの言う通り凄い人なんだね風野くん。」

 

「白鷺さんの事を知ってるんだ。」

 

彩「うん!今は一緒に活動してるんだ!しっかりしてて凄いんだよ!」

 

「それは僕も重々分かってるよ....」

 

何度生活面のだらしなさを叩かれた事か......本当に助けられている。

 

彩「風野くんと話してる時の千聖ちゃんってどんな感じなの?」

 

「そうだね....簡単に説明するのが難しいんだけど....まず初めに浮かんだのは礼儀正しいところかな。」

 

彩「確かに!千聖ちゃん、(撮影の)現場で初対面の人と会っても動じずに挨拶してるんだよ。」

 

「確かに.....(出稽古で協会の重役と会っても確かに動じていなかったな)」

 

やっぱり白鷺さんの知り合いだけあって、そういった話も聞いているんだな......

 

彩「後はどんな感じ?」

 

「すごく献身的な所かな.....朝家に入ってきて起こしに来たり、家の中の道場の清掃とか、食事作りの手伝いもしてくれるし。」

 

彩(あれ....?思った以上に親しい....?しかも家....!!!?)

 

彩「ちょ、ちょっとストップ!!!え?家?普通に入ってるの!!?」

 

「え?うん....うちって屋敷みたいな感じだからさ。庭から入ろうと思えば入れるんだけど、律儀に渡した合鍵で入ってきて...」

 

彩「そ、そういうのじゃなくて!!普通に庭から入ったら犯罪なんだけど....そ、そういう事でもなくて!!そんな.....か、通い妻みたいな....ダメだよ!!(アイドルとして)」

 

「だ、ダメなの?(普通に親しい間柄なのに.....?)」

 

丸山さんが想像以上に慌てている。もしかして....僕が知らないだけで、何かダメなことしてる....!!?

 

彩「あ、あのね風野くん。よく聞いてね。」

 

丸山さんが僕の肩を掴み、顔をちかづける。迫真に迫った顔をしている。

 

彩「風野くん、世間に疎いから知らないかもだけど.....高校生になったらね、よっぽど親しい間柄....それこそ恋人くらいじゃないと異性を家に招かないんだよ!!」

 

「そ、そうなんですか?」

 

彩「そうなんだよ!!(じゃないとスキャンダルに撮られる!!)」

 

「でも以前、氷川さんの家にも行ったことあるし.....」

 

彩「日菜ちゃんの家に....?あれ、もしかしておかしいの私.....?」

 

再び混乱し始める丸山さん。心に思っていることがこうも目に見えてわかる人というのも珍しい。

 

彩「と、とりあえず風野くん、よく聞いてね。女の子との距離感を間違えたら、関係が拗れるかもしれないから!!適切な距離を取ろうね!!」

 

「う、うん。」

 

今が適切な距離かが疑問ではある....とりあえず離れてみよう。

 

彩「ま、待って!まだ話終わってないから!」

 

離れようとしたら丸山さんに肩を強く掴まれ引き戻される。ふわっとかすかに甘い匂いがする。

 

彩「あのね、仲が良いのはね、良いんだよ。問題なのは相手!!千聖ちゃんとあんまり近すぎると大変な事になるんだよ!!(スキャンダル)」

 

「大変な、事....(確かに近すぎると自然と依存しそうになるかも....)」

 

彩「特に、千聖ちゃんは色んなところで顔を知られてるから、尚更大変なんだよ!!現場とかではいつも千聖ちゃんは注意してるし!!」

 

「なるほど....」

 

つまり、白鷺さんは多くの方面で顔が知られていて、僕との関係が露呈することは白鷺さんの損に繋がる....ということ。確かに納得はできる。あれだけ周りに目を向けられて献身的な人はなかなか居ない....それこそ分家の香奈はそれに近いけど、香奈の場合は育ちがそうだから。白鷺さんの場合は育つ中で特別な躾を受けている訳でもなく、元からあんな感じ....確かに惚れる人がいてもおかしくないし、惚れている人からすれば僕は敵の1人なのかもしれない。

 

「でも....やっぱり厚意を無下には出来ないよ。」

 

彩「あ、勿論千聖ちゃんを追い返せって言ってる訳じゃ無いからね!仲が良いのはいいんだけど、ちょっと良すぎるし周りから勘違いされちゃうから.....」

 

「忠告ありがとう。気をつけてみるよ。」

 

彩「こっちも無理言ってごめんね。」

 

「そういえば....さっき現場って言ってたけど、白鷺さんってそれで普段は忙しいの?」

 

彩「え?うん、そうだよ。だって千聖ちゃんは....(あ....これ口止めされてたんだっけ.....?)」

 

「白鷺さんは?」

 

彩(ど、どうしよう...流れ的に無かった事には出来ないし、かといって千聖ちゃんからは女優兼パスパレである事は隠しておいて欲しいって言われてるし...あーバカバカ!なんで現場なんてうっかり言っちゃったのー!!!)

 

「ど、どうかしたの?」

 

丸山さんの焦り具合が最高潮に至っている。そんなに言うとまずい事なのだろうか......

 

彩「え、えっとね!えっとえっと.....」

 

「....言いづらい事だったら言わなくていいよ。」

 

彩(良いの?って言いたいところだけど、風野くんに疑惑を持たれたら嫌だからなんとかごまかさないと......!!)

 

彩「だ、大丈夫!えっと....千聖ちゃんはね、外部の演劇の指導をやってるんだよ!!」

 

「外部の、指導?」

 

彩「千聖ちゃんはね、演劇がとても上手なんだ!」

 

「やっぱりそうなんだ.....以前、共に能を見に行った時に沢山感想を述べていたから。でも僕そんな事一言も聞いた事無かったな.....話してくれてもいいのに。」

 

彩「ほ、ほら!千聖ちゃんって謙虚だから!そんな他の人に演劇ができるとか、外部が〜って言わないんだよ!!」

 

「なるほど、確かに....」

 

丸山さんの説明を受けて腑に落ちた。僕は立場上、必ず自己紹介をしないといけない場面が多いから気づかなかったけど....普通の人は聞かれない限り言わないのが普通だよな......

 

彩「ふぅ....伝わって良かった♪」

 

丸山さんが落ち着いて息を吐く。でもよくよく考えたら、白鷺さんはちゃんと自分の中身を気兼ねなくさらけ出せる友人が.....丸山さんや松原さんのような人がいる、ということになる。それがどことなく嬉しかった。

 

「うん、ちゃんと理解出来たよ。ありがとうね丸山さん。」

 

彩「うん♪あ、あと彩でいいよ!丸山さんって同級生から言われるのちょっとかゆいから....」

 

「呼び捨ては....では彩さんで。」

 

「さん付けかぁ....えへへ。それもいいかな♪じゃあ私も、風人くんって呼んでいいかな?」

 

「はい、ご自由に。」

 

随分お気に召した様子だった。この人は明るくて...羨ましい。こういう明るさや気さくな所が白鷺さんには居心地が良いのだろう....

 

「僕も白鷺さんには肩の力を抜いて欲しいし....どうやったらいいかな?」

 

彩「うーん....(千聖ちゃんを見る限り、風人くんと一緒にいる時が1番楽しそうなんだけどなぁ.....)」

 

彩さんが随分と悩んでいる。それはそうだ、この人は意図してこんな人柄を形成した訳では無い...根っからの優しく明るい子だろうから、意識なんてした事が無いのだろう。

 

彩「風人くんは風人くんのままでいいと思うな。千聖ちゃんと話してても、風人くんの話をしている時の千聖ちゃん、とても嬉しそうなんだよ。」

 

「そうなの....?」

 

彩「うん!!人それぞれだしさ....方法とか無いと思うよ。男女の距離の違いもあるし、風人くんと千聖ちゃんの関係は2人だけの物だから!」

 

彩さんから助言をもらう。こういう親身なところも見習わないとな....

 

「ありがとう彩さん。頑張ってみるよ。」

 

彩「うん!あ!あと....」

 

彩さんが元の位置に戻って、改めてこっちを見つめる。

 

彩「今日話したことは....2人だけの秘密!だからね!」

 

「うん。約束するよ。」

 

シーっとしながら目配せをする。可愛い。

 

「あと....もし何か悩んだらいつでも相談乗るから、連絡先渡すね!」

 

彩さんがメモ帳の1ページを切り離し、何かを書き出し、僕に渡す。番号と、ID....なるものが書いていた。

 

「これは?」

 

彩「え?電話番号とSNSのプライベート用のIDだけど....まさか。」

 

「僕、これが何か分からない....」

 

彩「あ、やっぱり.....お父さんお母さんは?」

 

「今は海外で、日本文化の教室をやっている方々の指導を。」

 

彩(こういうのって親御さんいないと契約出来ないしな.....)

 

(彩さんが悩み出した...本当に表面に出て分かりやすい....)

 

彩「家に固定電話ある!?それくらいはあるよね!!?風人くんの家、道場の人達とも連絡先取るだろうし!!」

 

「固定電話....探してみるよ。」

 

彩「そこからかぁ.....じゃあ、ノート一冊あげる!」

 

そう言って彩さんは鞄の中からノート?を取り出しこちらに渡してくる。

 

彩「交換日記って訳じゃないけど...何かあったらここに書いて私に渡して!!必ず返事するから!!」

 

「は、はい....ご丁寧にありがとうございます.....」

 

彩「いえいえ!じゃあこのメモも!」

 

「はい。」

 

勢いに押される。しかし、強力な助っ人が付いた。ここまで積極的で明るい子を、なぜ僕は覚えてなかったんだろう.....

 

「ところで、彩さん。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「この課題....まだ、ひとつも進んでないよね?」

 

彩「えっ......あっ!!!!!」

 

彩さんの顔から血の気がどんどん引いていく。本当に分かりやすい....

 

彩「どどどどうしよう!!そろそら先生戻ってきちゃう!!」

 

「とりあえず進められるだけ進めて....叱られるなら一緒に叱られましょう。」

 

彩「が、頑張って進めよう!!怒られるのはヤダ!」

 

その後、彩さんと必死になって問題をすごい速さで進めた。しかし先生は当然のごとく焦ってやったことを看破し、2人とも怒られた。

 




前島さん、大丈夫ですかね。契約終了したみたいですし、本人が望む人生を過ごせてるといいんですが。
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