今日は確か昼休みに風人くんが放送に呼び出されて、生徒の質疑応答に答えるっていう内容の放送があったかしら.....楽しみね!
「あれ?千聖ちゃん、いつにも増して笑顔だね?」
「ええ、花音も風人くんが何話すか気にならない?」
「風人くん.....あっ、風野くんのこと!?」
そう、この学校では風人くんは私たちとほぼ同い歳の為、風野先生とは言われず、皆からは風野くんと呼ばれている。風人くん自身はそれでいいって言ってるし良いのかしら.....
「ええ、そうなのよ。」
「でも、少し心配なところがあります.....」
「心配?紗夜ちゃんには何か不安な要素があるのかしら?」
「はい、それは.....」
『皆さんこんにちは!!放送部です!!今日は風野先生.....もとい風野くんに来てもらいました!!どうぞ!!』
『.....この密室でそんな大声で話すのですか?』
『え?マイクから全校生徒に発信されるんですよ?聞こえにくかったらまずいじゃないですか!!』
『マイク.....?』
「.....これです。」
「そうだったわね.....風人くん、そういうのに疎いのを忘れていたわ。」
『まぁ先生はそれくらいの音量で喋ってくれたらいいです。じゃあ今から質疑応答に入るので答えてくださいね!!』
『あ、はい。よろしくお願いします。』
『まず1通目!!風野くんは色んな部活の顧問をやっていますが、掛け持ちとかは大変じゃないんですか?』
『いえ、そんなに。5歳の頃から一通り嗜んでいましたから、苦でもなんでもありませんよ。』
「さすが風人くんね。」
「そんなに長く.....知りませんでした。」
『それでは2通目!!なんで先生は私たちと歳が変わらないのに先生をやっているのですか?』
「そういえばそこ気になってた.....千聖ちゃん、知ってる?」
「ええ、知ってるわよ。だって.....私が斡旋したんだから。」
「え!?」
『学校側から日本文化の正しい知識や色々なことを教えて欲しいと書簡にて知らされまして.....その後、赴いたのですが、そこで書道の教師を兼任することを義務とした契約をしましたので.....だから、未成年なのですが、教師をやっているんです。実際父のおかげもあってか僕自身がかなり業界にも名が広まっていたので、反対意見は特に出ませんでした。』
「白鷺さんが斡旋したんですね.....」
「....本当なら近くの高校に合格してもらって、一緒に通うっていう夢を見ていたのだけれど.....風野くん、入試を全部筆で受けちゃって....」
「筆!?」
「ええ、それでコンピューター採点が厳しいってことで落とされたのよ.....でも風人くんの親御さんからは高校生活を経験して欲しいって手紙を貰ったから....」
「親公認の仲なんだね.....」
「あ、でもこれは内緒よ。ばれたら後で色々怒られちゃうから。」
『次は3通目!!風野くんから見て、1番親しめている女の子は誰ですか!?』
「ふーん.....こんな質問する人がいるのね(私が選ばれなかったらどうしよう.....)」
「白鷺さん、殺気が漏れていますよ。」
「千聖ちゃん、怖いよ....」
「あら、ごめんなさいね。(これで名前が上がらなかったらってら考えたらと思うと....死んでしまうかもしれないわね。)」
『そうですね.....特に親しい.....全員ですかね。僕は集団と接する時に誰かを差別するような真似はしたくありませんから。』
(風人くん、教師としてはおそらく満点の返事だと思うわ.....けど....)
「あわわ、千聖ちゃん!?大丈夫!?」
「大丈夫よ、花音.....」
「白鷺さん、一瞬で雰囲気が暗くなりましたね。」
「そ、そうかしら.....」
「はい、見たら分かります。」
『では4通目!!風野くんにとって1番楽しい時間っていつですか?』
『楽しい、ですか。やはり皆さんが文化に触れて楽しそうな表情を浮かべた時、でしょうか。魅力が知られて良かったと心の中で思います。』
『そうですかー....では、最後の5通目!!風野くんが大切な人に言葉をかけてあげるならどんな言葉をかけますか!?』
「た、大切な人.....(こ、恋人とかそういうことよね.....録音しておかないと。)」
「風野くんの無茶ぶりされてるね.....」
「でも答えには興味があります。風野くんがどのように考えているかは。松原さんはどうですか?」
「うーん.....あんまり風野くんにそういう雰囲気は合わないかなぁって。」
「確かに.....それはそうですね。」
『大切な人、ですか。.....そうですね、どんな仮定でも良いのですか?』
『はい!!それはご自由に!!』
『はい、では.....言葉にして伝えるのはとても恥ずかしいのですが、あなたに会うことを、心のどこかで楽しみにしている自分がいます。少し寝坊助なところがある僕を起こしてくれたり、何かときを使ったり、どこかそっけないけど気持ちを伝えてくれる.....不器用だけど優しいあなたの事をお慕いしています。.....こんな感じでいいでしょうか。』
『....素晴らしい!!まさしく、大和男児ってる感じですね!!』
『そ、そうでしょうか.....』
風人くん.....羨ましいわ。いつか私も、そういう言葉をかけて貰える日が来るといいわね.....そして、安心したし少し恥ずかしい気持ちになったわ....
「千聖ちゃん、今度はどうしたの!?顔が赤いよ!?」
「花音、大丈夫よ、少し照れるというか.....」
「白鷺さんでも風野くんの言葉には、弱いですね。」
「紗夜ちゃんも少し頬が緩んでいるわよ。」
「はい、私も普段の風野くんを見ていますから、意外というか弱々しいけどやっぱり男の子らしい所はあるんだなって、安心しました。」
「同士ね。」
私と紗夜ちゃんは固い握手をした。終始花音に迷惑をかけてとても申し訳なかったけれど、今度お茶でもした時に風人くんのこと話そうかしら.....
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夕方
「風人くんの放送、面白かったわよ♪」
「あれが全校生徒に聞こえてたんだよね.....恥ずかしい。」
「ばっちり答えられていたから大丈夫よ。」
「親しい人は明言を避けたんだけどね.....」
「.....今は私と風人くんしかいないから、その答え、教えてくれてもいいんじゃないかしら?ふふっ、口外はしないから。」
「....白鷺さんだよ、1番親しい人は。」
「えっ....」
「中学からの付き合いだし、数年前の約束を今でも守ってくれて、おまけに僕を支えてくれて....ありがたいよ。」
「え、えっっっっっっ.....」
「し、白鷺さん!?ちょっと、大丈夫!?」
「きゅ、急には.....卑怯よ....バカ」
声優さんも大変だなぁ.....