準備と試着と見える影
明久side
散っていた桜も姿を消し、新緑が芽生え始めたこの時期…僕達が通う文月学園は新学期最初の学校行事である学園祭…通称『清涼祭』の準備が始まっていた
お化け屋敷のためにクラスの改造を行うクラス、料理のために調理器具を手配するクラスなど、学園祭準備の為の
そんな中、我らがFクラスはAクラス教室で、Aクラスとの合同出店のための準備を始めていた
「さて、お前たち。Aクラスとの戦争が終わった後で行ったことは覚えてるな?あのことは一時的にやるんじゃなく、継続的にやることが大切だ。モテたいなら、彼女が作りたいなら、一生懸命頑張るんだ。そして、利益もAクラスとの分配が決まっている。そのクラス利益を使って、設備をよくすることを学園長に交渉する予定だ!だからお前たち、働けよ!」
『オオォーー!』
雄二のおかげで、Fクラスのモチベーションも特に低下することなく、準備も順調に進んでいた
ちなみに、AクラスとFクラスの出店は、Aクラスからの案により【メイド&執事喫茶『ご主人様とお呼び!』】に決まっている。Aクラスの人には悪いけど、このネーミングはどうなのだろうか…
ちなみに、担当の配分だが、僕と咲夜はホールも厨房も両方やることになっており、両方のトップにされている。こんなわけのわからない担当配分、絶対輝夜のせいだ
とりあえず、責任者として僕と咲夜はメニューの調整をしていた
「うーん、こんな感じかな?」
「メニューの組み合わせも、このくらいでいいでしょう」
それもかなり終盤に来ているのだが
「明久、十六夜ちょっといいか?」
「雄二、どうしたの?」
雄二が僕たちを呼ぶなんてどうしたのだろう
「康太が衣装の準備ができたから、一度試着してほしいらしい。違和感がないか確かめたいそうだ」
なるほど、そういうことか
「わかったよ。その衣装はどこに?」
「そこの更衣室に置いてあるそうだ。試着したら一回ここに出てきてくれ」
「了解ー、行こう、咲夜」
「わかりました」
僕と咲夜は、作業していた場所を離れて、それぞれの更衣室へ向かった
数分後
「雄二、康太これでいいかな?」
「私も準備できました」
僕と咲夜はほぼ同じタイミングで着替え終わり、雄二に声をかける
「おぉ、準備できたか…って、十六夜がメイドだということは知ってたが、こう見るとクラスの男女が一人ずつメイド服と執事服なのに、なんというか…空間的な違和感が全くないな」
「………(コクコク)」
どうやら、何も問題はなかったようだ
「そう、それならよかったや。そうだ雄二、メニューの確認をしといてもらってもいいかな?」
「わかった、それは任せろ
そうだ、明久。放課後、学園長のところに設備の交渉に行くから、藤原と一緒に放課後待っててくれ」
「わかったよ」
雄二はそう返すと、僕の元を離れる
それにしてもさすが雄二だ。うまく統率がとれている
そのおかげで、今のところAクラスとFクラスの間に特に問題も起きていない
それにしても、学園長室か。ちょうどいいし、スペルカードルールに関しても詳しく聞いておこう
「あら、明久。なかなか似合う格好をしてるじゃない」
「ほんとだ。こういうのも見れるなら、この出店は既に成功だな」
ふいに話しかけてきたのは、輝夜と妹紅だった
この二人も、去年は喧嘩が多かったけど、学校に通い始めたおかげか、学校での喧嘩は減ってきた(たまに煽りがヒートアップして喧嘩になったりするが)
「そういえば、妹紅はメイド服を着るの?」
「いや、執事服にする。そうするように坂本と土屋には頼んできた」
そうなのか。妹紅がスカートとか、そういうのを身につけないのはわかっていたけど、すでに手をまわしていたのか
「あら、明久は妹紅のメイド服姿を見たかったの?」
「いや、妹紅は嫌がるだろうから、どうするのかなーと思って」
「そういうことね」
流石に、本人が嫌がってるのを無理強いはできない
「そうだ、雄二が放課後に学園長のところに行くから待っててほしいって言ってたよ」
「坂本が?わかった
輝夜、私たちはあっちの作業に行くぞ」
そう言いながら妹紅は別の場所へと移動していった
「そろそろこれは脱いでもいいのかな…?」
「どうでしょう…坂本君も土屋君も何も言ってなかったですし…着替えてもいいんじゃないですか?」
「よし、そうしようか」
「咲夜は見慣れてるけど…明久がそんな恰好をするなんて、珍しいじゃない」
咲夜と着替えるか着替えないかを話し終えたところで、また声をかけられた
声の主はアリスだった
「採寸…というよりも、見た目に違和感がないかのテスト試着をしてほしいと言われたからね」
「そう、それにしても土屋君、裁縫スキルがすごいわね。私もいっしょに裁縫作業をしてたけど、かなり早かったわ」
そういえば、アリスは趣味の人形作りを生かして衣装製作チームに居るんだった
康太の裁縫スキルを見て驚いたみたいだけど、アリスが驚いたのだからよっぽどのものなのだろう
「康太って行動力が若干常人の斜めを言ってるからね…」
「ま、そんなことを言ったら、私達は常人に入るのかしらね?」
僕の言葉に、アリスは笑いながらそう返してくる
確かにそうだ
「確かにね」
「とりあえず…それ、似合ってるわよ、明久。私はまだ作業があるから、戻るわ」
「ありがとう、アリス」
僕の返事を聞いたアリスは、元の作業場に戻っていった
その後は特に何もなく一日が過ぎていき、放課後…
僕と妹紅と雄二は、学園長室前に来ていた
『……賞品の……として隠し……』
『……こそ……勝手に……如月ハイランドに……』
扉の向こうからは、誰かが言い争っている声が聞こえた
賞品?如月ハイランド?何の話だろう
「雄二、中でだれか話してるみたいだけどどうする?」
「そうか、だったら無駄足にならなくて済んだな」
そういうと、雄二はノックをして、返事を待たずに学園長室の中に入っていった
いや、何してるのさ雄二
「ちょっ、坂本!?」
妹紅もさすがにその行動は読めなかったようだ
というか、今から交渉しに行く人に対しての行動か…?
「失礼なガキだねぇ。普通は返事を待つもんだよ」
学園長もあきれ顔だ
「
とりあえず謝っておこう
「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。これでは話を続けることもできません
……まさか、貴女の差し金ですか?」
眼鏡をいじりあがら学園長を睨み付けたのは教頭の竹原先生だ。この人は少し怪しい噂も多く、僕はあまり好きじゃない
「馬鹿を言わないでおくれ。どうしてこのアタシがそんなセコい手を使わなきゃいけないのさ。負い目があるというわけでもないのに」
「それはどうだか、学園長は隠し事がお得意のようですから」
どうやらさっき言い合ってたのは僕たちの前ではできないような話で、竹原先生も学園長もお互いに牽制しあっているようだ
「さっきから言ってるように隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」
「……そうですか。そこまで否定されるならこの場はそう言うことにしておきましょう」
そう告げると、竹原先生は部屋の隅に一瞬視線を送り
「それでは、この場は失礼させていただきます」
学園長室を出て行った。どうしたのだろう、何かを確認したようだったけど…
「んで、ガキども。アンタらは何の用だい?」
竹原先生との会話を中断されたことを気にする様子もなく、僕らに話を振る学園長
「本日は、学園長にお話があって来ました」
学園長の前に立ち、雄二が話を切り出す。以外にも敬語を使ってる
「私は今それどころじゃないんでね。学園の経営に関することなら、教頭の竹原に聞きな
……と、普段なら言っているところだが、気が向いたから話くらいなら聞いてやろうじゃないか」
「ありがとうございます」
学園長は追い返すのかと思いきや、意外にも話を聞くという選択肢を取ってきた。意外だ
「Fクラスの設備について改善を要求しに来ました」
「そうかい。それは暇そうで何よりだね」
「今のFクラスの教室は、壁は穴だらけ、窓もひび割れており、畳に関しては腐っている。それだけじゃなく、黒板もボロボロでほかの設備も今にも壊れそうなものばかりです」
「…なんだって?」
うん?それは予想してない反応だ
「このままでは、Fクラスの生徒は体調を崩してしまう恐れがあるので、設備の改善、もしくは勝手に設備を改善することを要求しに来ました」
「坂本、アンタ今、Fクラスの設備では体調を崩しかねないといったね?写真かなにかはあるかい?」
「これです」
「これがFクラスなのかい?…竹原の奴、こんな設備を用意していたのかい」
雄二が写真を見せると、学園長は信じられないといった顔になる
「わかった。学園からある程度の支援をしようじゃないか。だが、支援するのは畳、壁、窓、黒板、教卓だけだよ。それ以外は、あんたたちのクラスの売り上げを使いな」
「ありがとうございます!」
意外にも、あっさりと要求が通った。何か学園長は企んでいるのだろうか
「ただし、こちらからも条件があるよ」
「…条件?」
「なに、簡単なことだ。ちょっとそこの二人を借りたいだけさ」
そう言って、学園長は僕と妹紅に目を向ける
「…そいつらは俺たちのクラスが出店するにあたっての重要な戦力だ。特に何も不利なことがないならいいだろう」
「それなら交渉成立だよ。要件はそこの二人に直接言うから、坂本は下がりな」
「わかりました。またな、明久に藤原」
「あ、うん。じゃあね」
「またな」
雄二は学園長の言葉に対して、素直に引き下がる
「で、あんたたちに頼みたいことだが、清涼祭で行われる召喚大会は知ってるね?」
「はい。前回の̪試召戦争でのスペルカードルールが楽しかったので、妹紅と二人でエントリーをしています」
「そうかい、それなら話は早い。その大会の賞品である『如月ハイランド プレオープンプレミアムチケット』によからぬ噂を耳にしてね、出来れば回収したいのさ」
『如月ハイランド』確か、如月グループが経営するオープン間近遊園地の名前だった気がする
それが景品に出るということは、如月グループとの正式な契約だし、覆せないということだろう
「そのチケットが何か?」
「どうやら如月グループは如月ハイランドにジンクスを作ろうとしているようなんだよ『ここを訪れたカップルは幸せになれる』っていうジンクスをね」
ふむ…そういう噂が悪い噂として流れる。そしてプレミアムチケットの回収…ということは
「もしかして、プレミアムチケットを使って行ったペアを強引にでも結婚させて、外には『ここに来たことがきっかけで結婚出来た』みたいなことを流すっていうことですか?」
「吉井は頭の回転が速いと聞いていたが、まさかここまでとはね。まぁ、大体その通りだ。だからそれを阻止したいんだよ」
なるほどね…
「わかりました。そういうことであれば、協力します。いいよね、妹紅」
「そうだな私も、協力します」
「そうかい。ありがとう」
っと、聞きたいことが色々とあるんだった
「あと、これは別件なんですが、スペルカードルールってどのくらいのことができるのか気になって、それを聞こうと思っていたんですけど…」
「ほぉ?何が聞きたいんだい?」
「スペルカードは召喚獣と召喚者に関係のあるもの以外は使えない…って項目、僕の召喚獣は武器が木刀なんですけど、点数を消費してビームを撃つ…みたいなことはできるんですか?」
「そういうことかい。そのくらいだったら可能だよ。点数を消費して弾にする。それがつながってないかつながっているかの違いくらいにしかならないからねぇ」
なるほど、出来るのか。これで戦いの幅がある程度変わる。前回は剣を主軸にした戦いって考えに囚われたおかげで、少し戦いにくかったけど、これならいろいろできそうだ
「私からもいいですか?実はこういうのほ考えていて、こういうのは可能かなって思って…」
そう言って妹紅は、『パゼストバイフェニックス』についての大雑把な説明を始める
「なるほど、腕輪の復活で召喚獣そのものを復活させるのではなく、憑依という形で味方の召喚獣に装備させる…時間が経てば憑依は解けて召喚獣が復活する…面白いじゃないかい。これは当日までにできるように調整しておくから、遠慮なく使いな」
「ありがとうございます!」
どうやら、現時点では使えないけど、学園長が使えるように調整してくれるようだ
「それでは、失礼しました!」
「失礼しました!」
「あぁ。いい結果を期待しているよ」
こうして、僕と妹紅は学園長室を出て行く
波乱だらけの清涼祭が、まもなく幕を開ける
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東方側の第一章、序章が終わりましたので、本日からはバカテス第二章、清涼祭編がスタートです!