明久side
「ウェイトレスが連れていかれようとした!?」
召喚大会準決勝が終わり、教室に戻った僕と妹紅、雄二は秀吉にクラスで起こった出来事を説明された
「うむ…突然変な連中が来て、ウェイトレスをどこかへ連れて行こうとしたのじゃ
十六夜とムッツリーニのおかげで捕縛済みじゃが…」
秀吉によると、時間的にも少しずつ閉店の準備をしていると、怪しい連中が数人入ってきて、丁度働いていた姫路さんや島田さん達を連れ去ろうとしたけど、咲夜と康太の活躍によって阻止されたらしい
咲夜も康太も目に見えないほどの速さで動いていたとか言ってたけど…咲夜はともかく康太は本当に人間なのかな…
「その連中は今どうしてるんだ?」
「鉄人が連行して事情聴取をしているのじゃ。ちらっと聞いたことじゃが、明久や藤原、竹原教頭の名前を話していたようじゃ」
僕と妹紅、竹原先生か…これは学園長がらみで間違いないね…
一日目の営業は終わったし、これは学園長に直接聞くしかないね
恐らく学園長の本当の狙いはチケットなんかじゃなくて、もっと別のもののはずだ…
「この事件に関係がありそうな人に心当たりがあるから、僕と妹紅はその人のところに行ってくるよ
皆は先に解散してて?」
「…はぁ、お前がそこまで言うんなら何か事情があるんだろう。言葉に甘えて、俺たちはここで解散とするか
お前たち、二日目の働きにも期待してるぞ!」
雄二は何も聞かずにいてくれた
そして、僕達の一日目の清涼祭はお開きとなった
少年少女解散中…
「明久、原因が何かわかったみたいだけど、何が原因なんだ?」
解散して、学園長室に向かう途中で妹紅が質問してくる
学園長室でわざわざ学園長に言うことでもないし、妹紅にはここで説明しておこう
「歩きながらにはなるけど…疑問に思ったことは色々あるんだ。最初に、学園長が持ち掛けてきた交渉。タイミングが良かったのかもしれないけど、如月グランドパークのチケットくらいなら優勝者を買収すれば済むことだし、僕達が学園長室に行ったときに竹原先生と言い合うこともしなくていいはずだ」
「それは確かに…」
それなのに、学園長はわざわざ僕達を指名してまでチケットの回収を依頼してきた
「それと、僕達が学園長室に行ったときに退室した竹原先生は学園長室の隅にある植木鉢を見ていた
あの時は何とも思わなかったけど、わざわざ僕達のクラスに対して妨害行為が繰り返されているってことは、あの時の学園長室での会話を誰かが聞いていたってことになるんだけど…そう考えると竹原先生は盗聴器を学園長室に設置している可能性が高い」
「…なるほど、だから学園長が何かを隠しているっていうことになるのか」
「そういうこと」
さて、妹紅に説明しているうちに学園長室の前にたどり着いた
「(コンコン)二年Fクラスの吉井明久です」
「同じく藤原妹紅です」
『入りな』
「「失礼します」」
僕は学園長室の扉をノックし、学園長の返事が来たことを確認して部屋に入る
「何の用だい---」
「あぁー!足が滑ったぁー!(棒読み)」
僕は学園長室に入り次第、学園長室の隅にあった植木鉢を蹴り上げる
「---って何をするんだい!」
「すみません。実は、これが…」
僕は植木鉢の残骸を漁って取り出した盗聴器の破片を学園長に見せる
「盗聴器?…竹原の仕業かい
それで、何の用だい?」
「実は、一時間ほど前に僕達のクラスのウェイトレスが何者かに連れ去られようとしました
それに、何度か営業妨害もあったので、学園長との交渉に何かあるのかと思って話を聞きに来ました」
「…そうかい。向こうはそこまで手段を選ばなかったか…すまなかったね」
僕の言ったことを聞き、学園長が頭を下げる
やっぱり、学園長は何か知っているのか
そしてわざわざ召喚大会を条件に出してきたということは…おそらく狙いはもう一つの景品…
「僕達のクラスは優秀ですからね、被害は最小限で食い止めました
それで、学園長の真の目的を教えてもらえませんか?と言ってもある程度予想できていますが…」
「…噂には聞いていたが、ここまで頭が回るやつだとは思わなかったよ
私の目的はペアチケットなんかじゃない。もう一つの優勝賞品『白金の腕輪』だよ」
やっぱりそうだったか…
「やはりそうでしたか…それで、白金の腕輪の回収を僕達に頼んだ理由は?」
「白金の腕輪は二つあるんだよ。一つは教師の代わりに召喚フィールドを展開できるというもの。もう一つは、点数を分離して二対の召喚獣を出すもの…って、あんた達は元から召喚大会に出ようとしていたなら知っているだろうが…」
もちろん知っている。僕達の目的は楽しみたかったことなのは間違いないけど、白金の腕輪にも興味があったからだ
「もちろん知っています。それで、どのような不具合が?」
「代理召喚には不具合はないんだが、問題はもう一つの方さ。召喚獣の同時操作なんて、普通に扱える代物じゃないし、致命的な不具合は『観察処分者』にしか扱えないということだよ」
『観察処分者』にしか扱えない。つまり、この学園の歴史上で僕しかいないのだから、実質僕にしか扱えないということか
「…なるほど。そしてそんな不具合がある腕輪を大会後のデモンストレーションで使ったら、何が起こるかわからないから、文月学園のイメージや存続にかかわるってことですか」
「そういうことだよ。そして、あんた達を騙したような形にしたのは悪かったが、改めてお願いがあるよ。どうか、白金の腕輪をあんた達に回収してほしい。あんた達なら暴走は起きないから、回収したらそのままあんた達が持ってていいよ」
そう言いながら頭を下げる学園長。騙される形にはなったけど、学園の危機だ。なんだかんだこの学園のことは気に入ってるし、ここで協力しないなんてこと、あるわけがない
「頭を上げてください、学園長。僕達は大丈夫ですし、事情は知らないものの、頼もしい仲間がいます。あんな奴らに、学園を渡せるわけなんてありません!」
「明久の言うとおりだ。私達はこの学園のことが好きなんです。この日常を奪われてたまるか!」
「あんた達…ありがとう…明日は頼んだよ」
「「はい!」」
こうして、僕達の長い清涼祭一日目が終わった
誤字脱字ありましたら、報告お願いします
清涼祭編もクライマックスです
それと、2.5章として如月ハイランド編も一応やる予定ですが、それまでやってから東方の2章紅霧異変の投稿とする予定です