明久side
時間も午後三時になり、僕と咲夜は係員に言われていた場所に来ていた
「ここでいいのかな?」
「どうやらそのようですが…」
おかしい…誰もいない…
グランドホテルの入口とはいえ、こんなに係員はいないものなのだろうか…
そういえば、さっきあちこちで係員がドタバタしてたけど…何か関係があるのかな?
「すみません、お待たせしました!吉井明久様と十六夜咲夜様ですね?」
そう思っていると、一人の係員が僕達の元へとやってきた
入場口でカメラを持ってきた係員だ
「はい、そうですけど…何かあったんですか?凄い汗が出てますけど…」
「いえ、少し別件でバタついてまして…それでは、こちらへどうぞ」
そう言って係員は僕達をホテルの中へと案内して、僕と昨夜はそれについて行く
案内されたのは、大広間のような部屋だった
この部屋からは結婚式で使うような雰囲気が溢れ出ている
…ここで体験するのか…
「それでは、お二人をコーディネートするので、咲夜様は私に、明久様はそちらのスタッフについて行って下さい」
女性の係員がそう言うと、僕の元へ男性の係員がやってくる
何故かこの人は仮面をつけてるけど…何かあるのだろうか?
「わかりました。それじゃ、咲夜。またあとで」
「ええ。またあとで」
こうして僕達は、係員に案内されるままに別の部屋へと入っていった
明久side out
咲夜side
私は女性の係員に案内された部屋に入ると、中には二人の別の係員がいた
「はぁ、バレないかヒヤヒヤしてたけど…まさかここまでバレないとは…流石は天然二人組というかなんというか…」
私を案内した係員は、目深に被った帽子をとりながら、口調を崩す
この声…まさか…
「妹紅…?」
「ああ。ここまでバレないとはある意味予想してなかったぞ。坂本には一発でバレたんだが…」
予想してなかった人物の登場により、私は少し驚いた
「どうして妹紅がここに…?」
「妹紅だけじゃないわよ」
「明久も貴女も…少し鈍すぎない?」
そう言いながら、既に部屋にいた係員が正体を明かす。輝夜とアリスだ
「輝夜とアリスまで…本当に一体どうして?」
「本当は慧音もいるんだけど…今は別室で待機中だ
そうだな…本来の目的は坂本と霧島の二人だったんだが、時間が空いてな」
どうやら妹紅達は坂本さんと霧島さんの仲の後押しが目的で、時間が空いたからこっちにも来たらしい
「だからって、なんで明久の誘いを断ってまで…?貴女、明久のこと…」
「いやいや、私は明久に対してそういった感情はあまりないさ。どちらかと言うと親心かなって感じだし、意外とアンタと明久の事を応援してたりするんだぞ?」
妹紅は私の感情を見透かすようにそう言ってくる
私が明久のことを好きだと言うのは、バレていたようです…
それにしても、妹紅は私のことを応援してくれていたのですか…
「---ま、紅魔館に明久を渡すつもりは無いし、明久の意思を尊重したいから今までは触れてこなかったけど、こんな機会があってもいいだろう?
早く告白しないと、私の気持ちが変わるぞ?告白するなら今のうちだ」
応援…してくれていたのですか…?
この人はどうも私の事を弄って楽しんでいるように感じます…
「とにかく、輝夜とアリス、咲夜のコーディネートは任せたぞ
あまり長話をしすぎると、明久に迷惑をかける」
「分かったわ!」
「任せてちょうだい!」
こうして、私のコーディネートが始まりました
咲夜side out
明久side
僕はタキシードに着替え終わって一時間ほどが経過した
女性の着替えは長いようで、僕は用意されている別室で待機していた
「吉井明久様、お待たせしました。十六夜咲夜様の準備が終わりましたので、こちらへお願いします」
僕達をここに案内した女性の係員がやって来て、移動するように促される
僕は係員について行き、先程の大広間にたどり着いた
同じタイミングでウエディングドレスを身にまとった咲夜が、反対側の入口から二人の係員と共に現れる
すごく綺麗だ…
そして、大広間にはもう一人、神父役であろう女性の係員がいた
神父役なのに女性なのか…
僕達が大広間に揃ったことを確認した神父が、口を開いた
「吉井明久様、十六夜咲夜様、ようこそ如月ハイランドへ。本日はお楽しみ頂いているでしょうか?
ウエディング体験ですが、記念撮影を十分後に行うので、それまでの間は新婚のような気分をお楽しみください」
そう言って、神父は席を外す。同時に、三人の係員も席を外した
大広間にいるのが僕と咲夜だけになって、咲夜が口を開いた
「あの、明久」
「咲夜、なにかな?」
「…この際なので、伝えたいことがあります」
咲夜は神妙な面持ちでそう告げる
「私は…ずっと前から明久のことが好きでした!
私と…私と付き合ってください!」
「…え?」
咲夜から告げられる突然のカミングアウトに、僕は驚く
「と、突然すみません!迷惑ですよね…忘れてください!」
咲夜は申し訳なさそうな顔をして、俯きながらそうやって言い足した
これは…僕の気持ちも伝えておくべきだよね…咲夜が勇気を振り絞ったんだから
「…咲夜、顔を上げて?今から僕の気持ちも伝えるから」
「…明久…?」
咲夜は僕の言葉を聞いて顔を上げた
「ごめん。僕はまだ、その気持ちに応えることは出来ない。僕はまだ、僕がこれからどうしたいのかが分かってないんだ。幻想郷と現代、どっちも立派で、どっちも魅力がある。そして、いずれかはどちらかだけを選ばないといけない…僕はそう思ってる」
「…」
「だから、僕の気持ちがそんな中途半端な状態で、咲夜の気持ちに応えるのは、咲夜にも失礼になる、僕はそう思ってる」
「…明久」
「僕は文月学園を卒業するまでに、僕自身どうしたいのかを決めるから、もし、その時も咲夜の気持ちが変わってなかったら、その時はまた僕にその気持ちを教えて欲しい
…逃げてるような答えでごめん…」
僕は、僕の気持ちを咲夜に伝える
「…わかり…ました。今はそういうことにしておきます。ですが覚悟してくださいよ?私の気持ちは…そう簡単には変わりませんから」
咲夜は、僕の気持ちに納得してくれたのか、笑顔で、そう返した
今日一番の笑顔だ。ウエディングドレスも相まって、咲夜自身が輝いて見えた
「失礼します。時間になりましたので、記念撮影を始めたいと思います」
時間がきたのか、さっきの係員四人が大広間に入ってくる
僕と咲夜は立ち位置を指示され、その指示に従う
「それでは、撮りますよ。笑ってください」
僕と咲夜はその言葉を言われて笑顔になる
その写真に写る笑顔は、今日一番の笑顔だった
明久side out
咲夜side
ウエディング体験も終わり、私はコーディネートをしてもらった部屋に戻ってきた
すると、その部屋に既にいた妹紅が私に声をかけてきた
「お疲れさん。ま、なんというか…まさか明久があんなことを考えてたとはな」
「…妹紅も知らなかったんですか?」
意外です。明久のことだから、真っ先にそういうことは妹紅には伝えてそうですが…
「全く。まぁ、私の予想では明久は幻想郷に残るとは思うが…明久のことだからぶっ飛んだことは考えそうだよな」
「そうね。明久の目指してるところがたまに分からないことは良くあるわね」
「その内、蓬莱人とか、魔法使いとか…仙人にでもなってるんじゃないかしら?」
妹紅の言葉にアリスと輝夜が続ける
…あまり否定出来ません
「…有り得そうで怖いですね…」
「…そうだな
さ、とりあえず着替えて帰ろう。明久も待ってる」
苦笑いする妹紅。そして着替えるように促進する
確かに、このまま話してると帰るのが遅くなりそうです
こうして、私は着替えて明久の元へと急ぐのだった
帰宅路にて…
「うーん…結構遅くなっちゃったね。
…妹紅達が待ってるだろうな…」
明久は帰り道で家にいる(と明久は思っている)妹紅達の心配をする
付き合ってる訳では無いけど、それはそれで少し妬きます…
「明久っ!」
「うわっ!?どうしたのさ咲夜」
そう思った私は、明久の腕に腕を組むように絡みつきました
「いえ…今日だけは…こうして一緒に帰ってください」
「…うん、いいよ」
明久は返事を遅れさせた後ろめたさがあるのか、特に咎めることなく許可を出してくれる
今はまだこんな関係ですか…いつかは…きっと…
…今日の思い出は、一生の宝物です
そう思って、鞄にしまった記念写真を思い浮かべながら、明久と一緒に家まで帰りました
誤字脱字ありましたら、報告お願いします
これにて如月ハイランド編完結です!
明日からは、東方側の話、第二章・紅霧異変に入ります!
概要欄にリンクが貼ってありますので、そちらに投稿します!
この作品の次回は、紅霧異変が終わり次第投稿するので、半月〜一ヶ月お待ちください