明久side
Dクラス戦の翌日、僕たちは学校に登校していた
「雄二おはよー」
「坂本、おはよう」
「やっと来たかお前ら
今日は遅かったな。何かあったか?」
珍しく遅刻ギリギリになった僕たちに向かって、雄二がそう質問した(昨日も危なかったけど…)
「今日は補充試験やるんでしょ?少しでも点数を上げたいから、昨日帰って勉強してたんだけど…
起きたら時間が結構危なくて…」
昨日学校から帰り、ご飯とお風呂を済ませて妹紅と一緒に勉強して、いつの間にか寝ていたおかげでアラームをセットし忘れ、慧音に起こされるまで寝ていたという訳だ
「そういう事か。お前ら、たまにそういう事あるからな…」
「否定はしないよ
それで雄二、設備のことは文句出なかったの?」
「あぁ、皆にもきちんと説明したからな。問題ない」
僕は気になっていた事を質問する
よかった、一応クラスメイトは理解してくれたみたいだ
「で?勉強したって言ったが、今日の補充試験の自信はどうなんだ?」
「うーん…いまいちかなぁ…
僕も妹紅も慧音も、現代国語、現代社会、情報はどうも苦手で…
つまりは教えてくれる人がいないから、何とか調べながらやったんだけどね…」
妹紅と慧音は幻想郷での暮らしが長いため、現代に若干疎く、僕も中学から幻想郷を出入りしているため、現代に疎いんだ
歴史関連は何とかなるんだけど…
「そうか。だったらBクラス戦はなるべくその三科目以外を中心に戦わないとな」
「そうしてくれるとありがたいよ…
さて、そろそろ始まるし、勉強モードと入りますか」
数時間後
「これで午前が終了か…」
「よし、とりあえず昼飯にするぞ!今日はラーメンとカツ丼とチャーハンとカレーにすっかな」
そんな事を叫びながら雄二が勢い良く立ち上がった
午前中のテストだけでこれだけ食べるなんて、コイツの体の構造はどうなってるんだ
「お弁当を作る時間も無かったし、僕たちも一緒に行くよ」
「私は何にしようかな…」
「私も一緒に、行って良いですか?」
「ん?島田か。別に構わないぞ」
そう言って島田さんがメンバーに加わる
咲夜と秀吉、康太もいるし、どうやらこれがFクラスでの普段のメンツになりそうだ
「あ、あの。皆さん…」
立ち上がり、学食に向かおうとすると声をかけられた
「あ、姫路さん。一緒に学食に行く?」
「い、いえ。え、ええっと…お、お昼なんですけど、その、昨日の約束の…」
姫路さんはもじもじしながら僕の方を見ている。どうしたんだろう?
「おお、もしや弁当かの?」
「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞっ」
と、体の後ろに隠したバッグを出してくる
…ほかの皆は理解してるんだけど、僕はいまだに状況が呑み込めてない
「えぇっと…どういう状況?」
「そういえば明久は昨日、この話をしていた時はいなかったわね
姫路さんが料理のアドバイスを欲しいからお弁当を食べてほしい、と昨日明久がいないときに言っていたのよ」
咲夜が説明してくれた
なるほど、そういうことか
「全然迷惑じゃないよ!ね、雄二」
「ああ、そうだな。ありがたい」
「そうですか?良かったぁ~」
どうやら姫路さんは断られないか心配だったようだ
さっきまでの緊張した顔が崩れる
「それでは、せっかくのご馳走じゃし、こんな教室ではなく屋上にでも行くかのう」
「そうだね」
こんな腐った畳の上だと美味しさが半減しそうだ
「そうか。それならお前たちは先に行っててくれ
俺はお前らに飲み物でもご馳走してやる。昨日頑張ってもらったしな」
「じゃあ僕も行くよ。さすがの雄二でもこの人数分はきついでしょ?」
「悪いな。それは助かる」
「皆は先に行って食べてて!そんなに遅くなるつもりはないから!」
そう言って僕と雄二は教室を出た
明久side out
妹紅side
明久と坂本と別れて、私たちは屋上に向かった
「天気が良くて何よりじゃ」
「そうですねー」
屋上へと続く扉の向こうは抜けるような青空。絶好のお弁当日和だ
「あ、ビニールシートもあるんですよ」
そう言って姫路さんはビニールシートを取り出す。準備万端だが、最初から屋上で食べるつもりだったのだろうか
「あの…あまり自信は無いんですけど…」
ビニールシートを広げ終わり、各々座り終えたところで、姫路さんがお弁当を取り出した
『おぉ!』
見た目はかなり美味しそうだ
から揚げやエビフライ、おにぎりなど定番のメニューが重箱に詰まっている
「………(ヒョイ)」
動きの素早い土屋は一目散にエビフライを手に取った
そして流れるように口に運び……
「………(パク)」
バタン ガタガタガタ
豪快に倒れ、小刻みに震えだした
「……」
「……」
思わぬ出来事に咲夜と顔を見合わせる
いったい何が起きた…?
「わわっ、土屋君!?」
姫路さんが慌てて、配ろうとしていた割り箸を落とす
「………(ムクリ)」
土屋が起き上がった。よかった、生きていたか
「………(グッ)」
そして、姫路さんに向けて親指を立てる
姫路さんを気遣って『美味しい』と伝えたいのだろう。私には『生きている』にしか見えない
「あ、お口に合いましたか?良かったですっ!」
姫路さんは土屋からのメッセージが伝わったのか、喜ぶ
だがまだ彼の足は小刻みに震えている。一体彼女は何をあのエビフライに盛ったんだ
「良かったらどんどん食べてくださいね」
姫路さんが笑顔で勧めてくる。その笑顔が今は怖い
(咲夜、あれをどう思う?)
私はたまらず咲夜に小声で話しかける
(見ただけでは分かりませんが、危険物が入っているとしか)
だよなぁ
(だがあの姫路さんの純粋な笑顔を傷つけたくない。どうしようか)
(あなたが全部食べればいいでしょう?死なないのだし)
(バカ言えっ!確かに私は死なないが、現代で、それも人前で死ぬ訳にはいかない!)
痛いのは痛いし、苦しいのは苦しいのだ。しかも、危険物を摂取するなら体に残るだろうし、何回死ぬか分からん
(ならどうしろと?あなたが彼女の笑顔を傷つけたくないと言ったんですよ?)
(うっ…それは…お前の能力で時間を止めて処理するとか…)
(食べ物を粗末にするならあなたの口に全部処理してあげましょう)
(はぁ!?なんて事言いやがる!それに、あれは食べ物じゃ無くて立派な殺戮兵器だ!)
「おう、待たせたな。へー、こりゃ美味そうじゃないか。どれどれ?」
そんなやり取りをしてたら坂本が来た
「待てっ、坂本」
止める間もなく、坂本は素手で卵焼きをつまみ口へ運ぶ
パクッ バタン---ガシャンガシャン、ガタガタガタガタ
ジュースの缶をぶちまけて倒れた
「ちょっ、雄二!?いったいどうしたのさ!」
遅れてやってきた明久が坂本に駆け寄る
それにしてもこれは間違いない。本物の殺戮兵器だ…
すると、坂本は私の方を見て目で訴えてくる
『毒を盛ったな?』
『違う、姫路さんの実力だ』
『えっ、何それ怖い』
すかさず私は目で返事をした。明久はそのやり取りである程度理解したようだ
明久程じゃないが、坂本は一年の頃からの仲だ。このくらいは出来る
「あ、足が…攣ってだな…」
坂本は姫路さんを傷つけまいと嘘をつく
「あはは、ダッシュで階段を上ったからじゃないかな?」
「うむ、そうじゃな…」
「悪い、島田、姫路さっき転んだ勢いで飲み物がダメになってしまってな…
二人で買ってきてくれないか?買う物は任せる」
「「わかりました」」
坂本はこう言って若干震えている島田さんと、余り気づいていない姫路さんをこの場から離した
「さて…これをどうやって処理しようか…」
明久がそう呟いた。これは確かにまずい…
でも、悩んでても時間が過ぎる一方だ…こうなったら…
「坂本、木下、土屋。これは私たち三人で処理しとくから、三人は姫路さんたちを追って、学食にでも行っててくれ」
「じゃが、大丈夫かの?」
「うん、秀吉たちは行ってて」
「………(グッ)」
「…死ぬなよ?」
「アハハ、善処する」
私はそう言って坂本たちをこの場から離す
「さて、これでここに居るのは私たちだけだ。明久、念のために人払いと防音の結界を張っておいてくれないか?」
「うん、分かったよ。妹紅、無理はしないでね?」
「善処するよ」
そう言って明久は結界を張った
結界を張るのは博麗の巫女の十八番だが、明久はそれには劣るものの、そこそこ良い結界を張ることが出来る
「じゃぁ…いただきます…」
余り気が乗らないが、やるしかない!
そう言って私は箸を進めた
数分後
「なんとか…食べ終わった…だめだ、一回死ぬ…というか新しく体を構築する…」
そう言って私は一度死んだ
妹紅side out
明久side
妹紅が一度死んで数分後、妹紅は体と魂を切り離して、魂を起点に蘇生した
「だめだ…あれは殺戮兵器だ…この体になって毒キノコを口にしたことは何度かあったが…ここまで毒一色のご飯は初めてだ…」
「妹紅…大丈夫?」
「大丈夫じゃない…ちゃんとしたご飯を食べたい…」
「妹紅に任せきりになるのはアレだし、さっきの間に適当にご飯を買ってきたわ。皆で食べましょう」
咲夜は気を遣ってご飯を買ってきてくれたらしい
「それにしても…姫路さんには今度一から教えないとね…ご飯は化学じゃないのに…」
「そうね。いつ死人が出るか分かったものじゃないわ」
僕の意見に、咲夜が賛同する
もう、このような地獄は見たくない。そう思い、僕たちは決心するのだった
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