堕落した人のIS生活   作:番号26

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第11話

やりたかったことが出来て満足した後。

もうやることは無くなったので観戦をする。

 

白式はSEこそ大幅に削れてはいるが、駆動系にダメージを与えることが出来なかった。そのせいで、レーゲンから一定の距離を保ちながら一撃を虎視眈々と狙っている。

 

普通に一撃を当てれば倒せるのだが、そうは問屋が卸さない。

自称男が使うラファール。やはりこいつがネックになってくる。

 

レーゲンが一人目の元に行こうとすれば壁になり、レールカノンを撃とうとすればライフルで削ってくる。

先にラファールを撃墜しようとするとワイヤーブレードのギリギリ有効射程外からマシンガンで牽制してくる。

激情に駆られているラウラを完璧に制御している。正直ここまでの技量があるのは想定外だ。

 

そんなトンデモ技量見せつけておいて男性ですよは流石に無理があると思う。一人目が見つかって半年ぐらいしか経ってないことを忘れているのだろうか。

 

感情的になっているとはいえ現役軍人を技量で圧倒するその正体に疑問を持っていると、ついにラウラがしびれを切らして停止結界を使った。使ってしまった。大ポカやらかしやがった。

瞬間、こちらに傾いていた天秤が一気にむこうに傾いた。

 

後三分もしないうちにエネルギー切れになる白式が最後の力を振り絞って突っ込む。それを不敵な笑みを浮かべながらラウラは対応する。それが敗北への道だとは知らずに。

停止結界の対象を白式に変更する。瞬間、ラファールがレーゲンの懐に潜り込んでパイルバンカーをぶっぱなした。

大ダメージを受けたレーゲンが吹き飛ぶ。

 

やっぱり持っているよなあ。超火力兵器。

 

白式はエネルギーがもう残ってないと言って良いほどだが、ラファールはそこまで大きなダメージを受けていない。対するレーゲンのSEは1/3ぐらいしかない。

いくらレーゲンが一対一に強いとはいえ、このままいけば厳しいだろう。

 

ため息をつくと、ふとボーデウィッヒの方から違和感。

黒いISの時とは比べ物に成らないくらい微弱だが、確かに感じる。

これは、厄介事だ。

 

途端、レーゲンが泥を纏い、一つの形を成す。

どこか織斑先生に似たその姿は、どこかで見たことがあるものだった。

刀一本で敵をなぎ倒し、世界最強の座を得た機体。戦い方が珍しいものだったからこれだけは覚えている。

 

暮桜。泥が成したその姿はまさに暮桜そのものだった。

 

この変化が良いか悪いかでいったら間違いなく悪いのだろう。

感情が飲まれている。ノイズが走る。ボーデウィッヒの意識が薄くなっている。最後に見せた感情は──

 

 

ああ、くそ。そんな感情を俺に伝えるな。それで俺がどんなことになってきたか。ろくなことがあったものじゃない。

しかし、だ。心が動く。体が動く。頭が動く。いつもバラバラなものたちが一丸となる。全ては、本能ともいえるただ一つの目的のため。

心は恐怖を取り除き勇気を与え、体は寸分の狂いなく動くようになる。頭は全ての情報を利用し、最善を導き出す。こうなったとき、こいつらは本当に優秀だ。

止まらない。後先考えず、それを変えることしか出来なくなる。その先にどうなるか知っている癖に。そのせいであれが俺の心に住み着くようになったのに。

 

でも、それこそが俺だ。だからこそ俺は俺だ。俺が俺たりえるものなのだ。これが無くなったら俺は俺ではない。

 

彼女を救い、悲哀という感情を拭い去ろう。

 

全ては、幸福のために。

 

 

 

 

予備の銃を呼び出し、泥に向かって撃つ。泥はその弾丸を躱し、こちらに迫ってくる。走ってくる。

俺はそれを待ち構える。天地を逆にした状態で右手を前に左手を後ろの壁にあてる。珍妙なこの姿は、ただ勝つためにある。

 

泥はこちらに近づくと、そのまま刀で切りかかってくる。典型的な胴撃ちだ。右から左に振り抜かんとしている。いや、逆さまになっているから左から右と言うべきか。逆さまな敵と戦うことは無かったのだろう。だいぶ精細が欠けている。予想通りだ。

刃が当たる瞬間、刀を呼び出し盾とする。剣道は義務教育で習っている。刀を左側に差している姿を想像するのはそう難しいことではなかった。

 

防いだとはいえ衝撃は来る。そのまま俺は吹き飛んでいった、訳ではない。

慣性制御システム。こいつを使うことで一部分を空間に固定する。

そのおかげで、吹き飛ぶ代わりに固定した場所を軸に体が横回転する。それと同時に左手を押し、固定を解除する。

 

相手の力を利用したラリアットもどきは、ひっくり返った体が元に戻ると同時に泥を撃ち抜く。胴撃ちによって左側に流れた両腕で右腕を防がれることはなかった。

 

泥が飛び散る。泥の体が小さくなる。一瞬、肌が見えた。

 

右腕が当たったことにより回転は止まったが、前方への推力は残っているためそのまま泥と衝突。抱き抱えるような体勢になる。

泥はそのままこちらを斬ろうとしてくるが、そうはさせない。すぐさま抱き抱えたまま左側に回転し、壁に叩きつける。

腕から壁に突っ込んだ泥は体勢を崩す。

 

これが最後のチャンスだ。予備のSEはあの一撃によってほとんど消し飛ばされ、そろそろISの展開すら出来なくなるし、何よりもう一度あの攻撃を防ぐことは出来ない。

 

全てのエネルギーを右腕に込めて、泥のなかに突き刺した。

 

瞬間、どこかと繋がったような感じがして、意識が遠くなる。

暗くなっていく視界は最後に、確かにそれを写した。

 

泥が退いてラウラが出てくる。

 

ああ、よかった。

その思考を最後に、意識は完全に閉ざされた。




TIPS:ISは戦闘において格闘することはない。与えたダメージと同量のダメージを食らってしまうからだ。
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