堕落した人のIS生活   作:番号26

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第16話

あれから少したった後。

 

臨海合宿に行くためにバスに乗っている。

参加拒否をしたがそうは行かないようで、連行されるような形でバスに放りこまれた。

 

駄目元で言ってみただけだからしっかりと着替え等の用意はしておいたが、本当に行こうとしなかった場合どうなっていたのか。

 

 

 

専用機は受け取ったが、データ取りのために一次移行をした時を最後にほとんど使っていない。訓練しようと思えるほどの気力なんてない。

 

待機形態は黒いチョーカー。俺にとって少しきつく、首を締め続けている。

 

最適化した筈なのに待機形態が合っていない事に技術者たちは首を傾げていたが、俺にとって最適だからこうなったのだろう。

 

俺を罰するかのようなこの痛みが有ることによって生の実感が湧きでてくる。

 

 

 

本音とは一応は元の関係に戻った。

 

しかし、向けられる感情には今までとは別の感情が混ざるようになった。

知らない感情だが、悪い類いのものではない事は確かだろう。むしろ良いものだと言える。

 

でも、それは俺に向けていいものではない事だけは分かる。無価値な俺には余りにも過剰すぎるものだということは分かる。

 

 

それは、救われるべき人に向ける感情だ。

 

 

だが、悪感情ではないのは確かで、だからこそ何も言い出せずに関係は続いている。願ってもないことだったのだが、自分の咎を見せつけられているような気分になる。

 

本音は何も悪くないのに。

 

 

 

ラウラとは親友になった。

ラウラからの一方的な宣言でそうなった。

 

あの時言いたかったのはこういうことだったらしい。それにしても宿敵はないだろうクラリッサ。

 

それに伴って、本音と3人で話すようになった。

タッグトーナメント前の刺々しさはすっかり鳴りを潜め、猫のような性格から犬のような性格に変わった。

いや、もともとこれが素だから変わったというよりは元に戻ったというべきか。

 

 

後は自称男が女になったぐらいで特に変わりはなかった。

あの後アリーナを借りて決着はつけたらしいのだが、ラウラは相変わらず一人目を敵視している。一人目もラウラとついでに俺を敵視している。

 

ラウラは、今までのは暴論だったとは認めるがそれはそれとして嫌い。何だそうな。

 

一人目は流石に今までの理由とは変わっているらしいが、よく分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近を振り返っていたら目的地に到着した。

 

宿泊先は高級そうな旅館だ。国営だからか色々と豪華だな。

しかし、ここまでのランクだと出てくる料理はさぞ豪勢なことだろう。少し残念に思う。

 

出迎えてくれた女将さんに挨拶をして、荷物を部屋に置きに行く。

俺の部屋は山田先生と同じ部屋だ。色々とあって先生と同じ部屋にするのが一番なんだとか。

一人部屋でないことは残念だが、クラスメイトと一緒でないことだけは感謝だ。変な視線に刺されることもない。

 

 

一日目は自由時間ということで部屋でゆっくりしようとしたが、山田先生にちゃんと外で遊んでくださいと部屋から追い出された。

 

仕方がないので人がいないところを探しているとラウラに捕まった。

一緒に泳ごうと誘ってくるが、水着など持ってきていない。カナズチでも潔癖症でもないが、海で泳いだりするのは面倒だからだ。

 

水着が無いと言うと、じゃあ必要ないものにしようかということで砂遊びをすることになった。

 

何がどうしてこうなったのかは分からない。記憶を知るのと思考回路を知るのは別だったらしい。

 

途中で本音が加わって三人で作り上げたそれは、身長の半分ぐらいの大きさの砦だった。かなり完成度が高い。

 

本音は鼻高々になっていた。

それはそうだろう。七割がたは彼女が作ったものだからだ。残りの三割はラウラが作った。俺は土台組みぐらいしか出来なかった。

 

何故そこまで器用なのか聞くと、ISの整備科志望なのだとか。

 

なら今後専用機のことで頼るかもしれないな。

 

そう言うと本音から目一杯の喜びが溢れだした。

何をそこまで喜ぶ必要があるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに、日が暮れてきた。

夕食の時間となったので、二人と別れて部屋に戻る。

部屋で何時も通りの食事を済ませると、全員が夕食を摂っている間に風呂に入る。

 

風呂からあがって部屋に戻る途中、ふと妙な予感がして外に出る。

そこには、うさみみを埋めているうさみみを着けている人がいた。

 

早々に立ち去ろうとしたが、体が動かない。心が引かれる。眼が吸い寄せられる。

喉が乾く。足が震える。頭が鈍る。体が冷える。鼓動がうるさくなる。毛が逆立つ。

 

 

理解した。理解、してしまった。

 

あの人こそが黒いISをけしかけた張本人。俺を貫いた視線の主。我らがISの産みの親。怪物。

 

 

篠ノ之束

 

 

そんな人が、ウキウキとした感じでうさみみを埋めている。一人言をこぼしている。フヒヒとか言ってる。

残念な感じしかない。

 

その絵面のせいで緊張感が抜けるが、体はまだ動かない。

 

一段落着いたのか、篠ノ之束がこちらを向く。

この反応だと俺が視認したときからこちらの存在を把握していたのだろう。その上で堂々と奇行を優先する。

 

人でなし。その言葉が浮かんだ。

 

俺を貫くその視線は、以前と変わりない。

相も変わらず、グチャグチャだ。

好きと嫌いと無関心。同時に成立することのない感情が共存して襲いかかってくる。

 

そしてその表情。

その顔を忘れる事はないだろう。

 

 

 

 

皮肉げな。無感情な。とろけそうな。意味深な。妖艶な。獲物を見るような。氷のような。影が差すような。光輝くような。慈しむような。花開くような。嫌悪するような。嘲るような。弄ぶような。

 

 

そして、何よりも純粋な笑顔だった。




TIPS:伏線は回収するもの
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