堕落した人のIS生活   作:番号26

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第18話

本当に危険な橋を渡っていたと再確認した後。

 

すぐさま復活してきた篠ノ之束がコンテナの中身を紹介した。

 

第四世代機、紅椿。

 

装甲を可変式にした展開装甲というものを持っており、これひとつで全ての状況に対応できるようにした新型。

勿論性能は折り紙つき。全ての性能が第三世代越えのモンスターマシン。

 

妹のために持ってきたらしい。

ほーきちゃんと呼ばれた人が紅椿に乗り込んで最適化と一次移行を始める。

 

しかしあのほーきちゃんとやら、確かクラスメイトだった気がする。

代表候補生も性別詐欺も転校生も男性操縦者も開発者の妹も全員が同じクラスだとは、一組は厄介者の集積所なのだろうか。

厄介者の筆頭である俺が言えたことではないが。

 

 

 

 

開発者の血縁だからってISが貰えるなんて不平等だとぬかした阿呆に、篠ノ之束が人類が平等であった事など何処にもないという正論を叩きつけるなんて事をしていた時、織斑先生が厳めしい顔をして戻ってきた。

 

なにやら緊急事態だそうで、訓練は中止。

専用機持ちだけ召集し、残りは旅館で待機。

違えたら私が直々に罰するというその言葉に、全員が従った。

 

 

召集された先で聞かされたのは、あるISについて。

現在暴走中のその軍用機体は、こちらに向かってくるらしい。

 

上から下された指令は、専用機持ちでの応戦と機能停止。

軍用についてはラウラの件でもう諦めているが、流石に学生の競技用に制限掛かっている奴で撃退とか何考えているのだろうか。

 

作戦に自分の妹を推しているウサギの方を見ると、一瞬だけ感情が変わる。

 

お前の差し金か。

 

織斑先生を訓練用に持ってきた機体に乗せれば良いなんて事を言ったら確実に殺されそうなので黙っていると、一人目とほーきちゃんとやらが出撃していった。

 

篠ノ之束は妙な感情を此方に向けていて、ラウラは苦々しい感情を出している。

 

これはそういうことなのだろう。

 

さて、外にでも出るとしよう。

化物の思いどおりにすれば、少なくとも本音たち一般生徒には危険が及ぶ事は無いだろうし。

 

適当な理由をつけて外に出る俺を見つめる化物の視線は、あの時感じたものと同じだった。

 

 

 

 

 

作戦は失敗。昏睡状態の一人目を抱えて紅椿が戻ってきたのを視認する。

 

さて、ここからは俺の時間だ。死ぬ気で戦い抜いた残骸の上に覚醒したあれは立つのだろう。

一人目かほーきちゃんとやらのどちらになるのかは分からないが、負けることが俺でも予想できた戦いにあの篠ノ之束が行かせたのだから、そうなる。

 

もし二人とも崩れ去って篠ノ之束の想定外か興味の範囲外になったとしても、人死にが出たら流石に織斑先生が対処する。

 

ここまでお膳立てされたら行くしかない。

思えば、まともに戦ったことなど一度もない。だからついでとばかりにこの状況を作り上げたのだろう。ではないと俺に専用機が与えられることなんてあり得ない。

 

対するは第三世代に相当するISでしかも軍用機。

対しては第二世代の訓練機に素人のパイロット。

 

競技用の枷は外せたとはいえ、地力が違う。

だが、行く。行かなければならぬ。

 

全ては、幸福のために。

 

紅椿が着陸する時の音に紛れて、俺はひっそりと飛んでいった。

 

 

 

軍用ISを補足した時、そいつは律儀にも待っていてくれた。まるで眠るように。搭乗者を隠すように。

そして俺は理解した。その感情に。

 

平穏を望んでいる。無事を望んでいる。安全を望んでいる。搭乗者を心配している。

しかし、命令には逆らえない。だからこそ、こうしている。板挟みになっている。

 

あれに感情があったことに驚くが、すぐさま予定を変更する。

 

 

早急にかたをつける。

 

化物の都合など知ったことか。

 

 

 

 

両手にカイトシールドを構えて突撃する。それに気づいた相手が咄嗟に進路先からずれる。このままだと当たらない。

それを咎めるようにその先に片方の盾を進路をそのままに投げると、相手はそれを停止して避けた。

 

丁度俺と盾の間に挟まるように。

 

ISはいくら慣性制御が出来ていても人のように素早く反転ことは出来ない。

そもそもの慣性が大きいから、軽減こそ出来るものの完全にとは行かないからだ。やれば負担がのしかかる。

旋回すれば負担を最小限に抑えられるが、距離を必要とする分反転するよりも時間がかかる。

だから、この対応は正しい。

 

俺の使っている武器がこれでなければ。

 

 

投げた盾が相手を起点に回る。相手にワイヤーが絡まる。

 

今手にしているカイトシールドは、ただ盾をワイヤーで繋いだだけのものだ。

勿論ワイヤーは相手からだと盾に隠れて見えないようにしている。

 

今回はボーラとして使わせて貰った。

 

ワイヤーの長さは取り回しの都合上それほど長くはないので、すぐに張りつめる。

 

その為、もう片方の盾を持っている俺は相手に引っ張られる。

 

その力に逆らわず、むしろ後押しするようにして動く。すると、相手を更にワイヤーに絡めとりながら接近する事が出来た。

勿論裏をとるような形だ。

 

無茶したせいか視界が紅くなっているし、既にワイヤーを千切られかけているが、もう関係がない。

 

盾を引っ張ることでの反作用と機体自身の推進力を乗せ、空いた手に展開したパイルバンカーをその背中に放った。

 

 

 

流石の軍用機でも耐えられなかったのだろう。

ISが墜ちていく。

 

海に沈める気は無いので、急いで回収する。

抱えあげた瞬間、違和感を感じる。

 

 

エネルギーが増幅している。

 

 

離そうとした瞬間、閃光。

あまりの眩しさに咄嗟に目をつむる。

 

目を空けると、そこは光の中。

変化したISから出ている光に包まれていた。

 

 

『La♪』

 

 

その言葉のすぐ後。

 

全方位からの光に包まれて意識を失った。




TIPS:弱者が勝つのに重要なのは、相手に何もさせないことにある
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