堕落した人のIS生活   作:番号26

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第2話

 俺が倒れた後。

 色々と大変だったらしい。

 霞む思考のなか、俺は両親からそう聞いた。

 

 そして、俺は高校一年生からやり直しらしい。

 霞んでいた思考が真っ白になった。

 

 色々とあった後の落としどころとして、そうなったらしい。

 

 両親はなぜ俺という存在が子供になったのか疑問に思わない日は無かったほどに良心を持ち、愛に溢れている。

 死にかけのこの体が、激しく反応するぐらいには。

 

 両親は悔やんでいるような顔をしている。

 どうあがいてもこれ以上の最良が無かったのだろうということはわかってしまう。

 

 だから、最悪でもなんでもどうだって良かったなんて考えている俺自身の心が軋む。

 両親の愛にすら、答えることは出来ない。この心に。憎悪する。

 

 ただ、わかったとだけ言い、それ以上は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして、月日が流れ、四月。

 用意された車に乗り、地獄の門をくぐった。

 その地獄の名はIS学園。

 生徒は2人を除いて女子のみ。島に建てられ、外に出るのに許可が必要。

 何処にも逃げ場が無いその場所に、俺はやって来た。

 

 月日が流れても、自分は変わったわけではない。

 相変わらずなにもできず、なにもしないままでいた。

 

 鬱の治療とかで心理学者はごまんと来るようになった。

 けれど、誰も彼もが害意を持っている。

 猫を被っているが、滲み出ている。

 それに心を削りとられ、しかし拒否出来る立場にはもう俺は居なかった。

 

 ISについて学べと、分厚すぎる本を渡された。

 結局手をつけることは無かった。

 それについては何も言われなかった。

 

 護衛という人が増えた。

 その人が生かしてくれるからと、独り暮らしをする前に戻った。

 自分で生きることすらしなくなった。

 

 あいつと話した。

 これからに対する心配をあいつは言った。

 最後の言葉は、頑張れでも応援してるでもなく、待ってる、だった。

 何を待っているのかを分からないほど腐っている訳ではないが、それすらも出来ない自分に歯噛みした。

 

 更に退化した毎日を過ごしていたら、もう行かなくてはならなくなった。それすらも、自分では分からなかったけれど。

 

 

 

 

 IS学園に着くと、一人の女性が立っていた。

 織斑千冬という名前で、俺の担任らしい。

 今はSHRの時間で、このまま教室に行くという。

 入学式に出なくてもいいように手配されていたのだと知った。

 自分は無価値なのにそこまでしなくても、と思った。

 だけど、そうと言うことが出来ない現実を突きつけられた気がして、気分が悪くなった。

 

 そういえば、担任は有名なのだろうか。

 俺が名前を知らないことに対して驚いていた。

 何故か少し頬を緩めていた。

 会う人の殆どに知られている状態が長く続いていたのだろう。

 何処か懐かしんでいる気がした。

 

 担任に連れられて教室へ。

 1ー1。

 ここが俺の教室らしい。

 他のクラスの前を通らなくてもいいのはいいことだ。

 けれどやっぱり、1という文字に、俺はヘドロを飲み込んだ気分になった。

 年下と同じクラスということに嫌悪感を持っているらしい。

 死にかけているくせに、自尊心はあるのか。

 相手がどの年齢だろうと、対応はどうせ同じだろうに。

 

 先に入って後から呼ぶ。

 そういって担任は教室へ入っていった。

 待っていると、何かを叩くような音が二回。

 そして、甲高い嬌声。

 直接喰らったら倒れそうになるほどの声量だ。

 喜びが溢れた、焦がれる声だ。

 

 やや落ち着いたであろう頃、担任がドアを開け手招きをした。

 入って来いということなのだろう。

 ああ、始まる。始まってしまう。

 穢れだらけの生活が。

 俺は動けなくなった。恐怖という感情を今さら思い出した。

 

 怪訝に思った担任が手をとってきた。

 ああ、そうだ。もう手遅れなのだ。

 俺は担任に軽く頭を下げ、自分から教室に入った。

 

 見ている。この中の誰もが、こっちを見ている。

 感じる感情はグチャグチャで、何も分からない。

 知りたくも、ない。

 

 ただ、教壇に立ち、名前を言う。

 

 嬌声は、あがらなかった。

 




TIPS:主人公は感受性がとても高い
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