馬鹿みたいなイザコザに巻き込まれた後。
一人目がやってやろうとほざいてきた。
拒絶したら、敵になるんだもんな!などといって離れた。
そんな低俗な理由ではない。一生涯関わらないでくれ。
放課後、悩みに悩んだ。
一週間後にIS戦が始まる。
一週間だけで、貴族様に勝たなくてはならない。
奴隷にならないようにするしかない。
皮肉なことに、地獄に囚われた後の方が生きようとしている。
自分などどうでもよかったのに、負けたくないなどと、この口から吐き出せたのか。
辞退する。ボツ。
あの二人に絡まれるし印象が悪くなる。
ハンデをつけてもらう。ボツ。
一人目にとやかく言われそうだし、何より女に比較されてしまう。あいつはハンデ無しだったのに、と。
公平なルールのなかで勝つ。
考え付く限りでは最高のものだ。
それが道が無いのなら、選択肢は一つ。
公平なルールを作って、勝つ。
どうあがいても卑怯者のレッテルはまぬがれないが、逆に考えてしまえ。
この一戦で、誰もが関わりたくないと思えるような勝利をすればいい。
そうと決まれば後は考えるだけだ。
だれもが気づけないほどの勝ち筋があるルールを。
音声ファイルを整理しながら、俺は考えた。
翌日の放課後、貴族にルールを確認したいと言った。
何も知らなかった。ついでに奴隷の事も諦めていなかった。
近くにいた担任が、詳細を説明してくれた。
1戦目が俺と貴族。2戦目が俺と一人目。
みる限り、俺はただの前座扱いなのだろう。
そんなことはどうでもいい。
少しルールを変更してもらった。
合図ではなく事前に時間で戦闘開始。開始時間内にアリーナ内にいなければ反則負け。
制限時間ありでシールドエネルギー...SEの残存量ではなく消費量での判定。勿論SEが0になればその時点で負け。
それだけだ。
怪訝な目をされたが、何とか受け入れて貰えた。
二人のルール確認はすぐに済んだ。
どちらもやる気をだしていた。何も考えずに。
戦闘日まで授業は全て休んだ。部屋に籠った。
行く気力がないのともうひとつ。必要なことをする。
拾い集める。自分を構成していた殻を。
今の俺に大舞台は不可能だから。
寄せ集めろ、不格好でも。崩れ落ちた自分を纏え。
結局作り上げられたのは、一日も保つことのない脆弱なもの。
それでも、それを纏うだけで、力を取り戻せた気になった。
当たり前ができるぐらいで喜ぶ心を、俺は嘲笑った。
そして、当日。
貴族にはルールを利用して勝った。
戦いたくないと言いながらISを起動しないでいるだけで良かった。
貴族は臆病者だの意気地無しだのわめいている。
圧倒的優位を持つ戦いに無理矢理巻き込み、あまつさえ隷属を強要する屑に言われたところで何も感じない。
観客はブーイングをあげていた。侮蔑の視線が突き刺さる。
他のクラスはまだしも、クラスメイトにまでぶつけられるとは。愚かだ。
試合終了の合図で、勝敗が確定する。
結果は完璧試合。SEを1すら削られずに勝つことができた。
貴族も観客も驚愕の色に染まった。
おいおい貴族。仮にも代表候補生なのにISはSEで動いていることすら知らないのかよ。
それともISを動かす分のSEは無限に沸いて出てくるとでも思っているのか。
お疲れ様、と笑顔で言ってやると、更にやかましくなった。恥を知れ、と言ってきた。観客も五月蝿くなる。
だから、ISを使って録音していた貴族の今までの発言をアリーナ中に届かせる。
一方的に有利な戦いを挑み、負けたら奴隷という馬鹿げた契約を強要し、しかし負けたときに代償を支払うわけでもない。
恥でしかない言葉を響きわたらせる。
そして言う。
「恥を知ろうね」
静寂が満ちた。突き刺さっていた視線は無くなり、誰も彼も視線を反らした。
次はちゃんと戦えと担任からお叱りを受け、一人目と戦った。
あそこまでやる必要はないだろう。正々堂々やれ。卑怯だぞ。
戯れ言を言うその目は義憤に燃えていた。
白く輝く専用機を纏い、黒く鈍い貸し出し機を睨み付けている。
さながら彼は正義で、俺は悪なのだろう。
実際は、ただ弱いものいじめをしているだけなのに。
やはり嫌いだ。
こういうやつは、弱いものを悪にする。
結果は当然のごとく、負けた。
とりあえず動作確認のために軽く飛ぼうとしたら、こちらの数倍もの速度で近づいてきて一刀両断。
機体差も勿論あるが、あの機動は瞬時加速を使ったと見ていいだろう。
高等技術のはずなんだけどなぁ。それ。
というか一撃で倒せるなんて、ゲームバランス崩壊してるじゃねえか。
絶対守ってないだろうけれど、ISって一応競技用なんだぜ?
間違った使い方すら守らないのはどうかと思う。
まだ不満足げな顔をした一人目をおいて、俺はさっさと寮に戻った。
自己満足に付き合ってやるほど、今の俺は優しくない。
TIPS:対セシリア戦はまだ自重しているほう