堕落した人のIS生活   作:番号26

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第4話

 馬鹿みたいなイザコザに巻き込まれた後。

 一人目がやってやろうとほざいてきた。

 拒絶したら、敵になるんだもんな!などといって離れた。

 そんな低俗な理由ではない。一生涯関わらないでくれ。

 

 放課後、悩みに悩んだ。

 一週間後にIS戦が始まる。

 一週間だけで、貴族様に勝たなくてはならない。

 奴隷にならないようにするしかない。

 

 皮肉なことに、地獄に囚われた後の方が生きようとしている。

 自分などどうでもよかったのに、負けたくないなどと、この口から吐き出せたのか。

 

 辞退する。ボツ。

 あの二人に絡まれるし印象が悪くなる。

 

 ハンデをつけてもらう。ボツ。

 一人目にとやかく言われそうだし、何より女に比較されてしまう。あいつはハンデ無しだったのに、と。

 

 公平なルールのなかで勝つ。

 考え付く限りでは最高のものだ。

 それが道が無いのなら、選択肢は一つ。

 

 公平なルールを作って、勝つ。

 どうあがいても卑怯者のレッテルはまぬがれないが、逆に考えてしまえ。

 

 この一戦で、誰もが関わりたくないと思えるような勝利をすればいい。

 

 そうと決まれば後は考えるだけだ。

 だれもが気づけないほどの勝ち筋があるルールを。

 

 音声ファイルを整理しながら、俺は考えた。

 

 

 翌日の放課後、貴族にルールを確認したいと言った。

 何も知らなかった。ついでに奴隷の事も諦めていなかった。

 

 近くにいた担任が、詳細を説明してくれた。

 1戦目が俺と貴族。2戦目が俺と一人目。

 みる限り、俺はただの前座扱いなのだろう。

 

 そんなことはどうでもいい。

 少しルールを変更してもらった。

 

 合図ではなく事前に時間で戦闘開始。開始時間内にアリーナ内にいなければ反則負け。

 制限時間ありでシールドエネルギー...SEの残存量ではなく消費量での判定。勿論SEが0になればその時点で負け。

 それだけだ。

 

 怪訝な目をされたが、何とか受け入れて貰えた。

 

 二人のルール確認はすぐに済んだ。

 どちらもやる気をだしていた。何も考えずに。

 

 戦闘日まで授業は全て休んだ。部屋に籠った。

 行く気力がないのともうひとつ。必要なことをする。

 

 拾い集める。自分を構成していた殻を。

 今の俺に大舞台は不可能だから。

 寄せ集めろ、不格好でも。崩れ落ちた自分を纏え。

 

 

 結局作り上げられたのは、一日も保つことのない脆弱なもの。

 それでも、それを纏うだけで、力を取り戻せた気になった。

 当たり前ができるぐらいで喜ぶ心を、俺は嘲笑った。

 

 

 

 

 そして、当日。

 

 貴族にはルールを利用して勝った。

 戦いたくないと言いながらISを起動しないでいるだけで良かった。

 

 貴族は臆病者だの意気地無しだのわめいている。

 圧倒的優位を持つ戦いに無理矢理巻き込み、あまつさえ隷属を強要する屑に言われたところで何も感じない。

 

 観客はブーイングをあげていた。侮蔑の視線が突き刺さる。

 他のクラスはまだしも、クラスメイトにまでぶつけられるとは。愚かだ。

 

 試合終了の合図で、勝敗が確定する。

 結果は完璧試合。SEを1すら削られずに勝つことができた。

 

 貴族も観客も驚愕の色に染まった。

 おいおい貴族。仮にも代表候補生なのにISはSEで動いていることすら知らないのかよ。

 それともISを動かす分のSEは無限に沸いて出てくるとでも思っているのか。

 

 お疲れ様、と笑顔で言ってやると、更にやかましくなった。恥を知れ、と言ってきた。観客も五月蝿くなる。

 

 だから、ISを使って録音していた貴族の今までの発言をアリーナ中に届かせる。

 一方的に有利な戦いを挑み、負けたら奴隷という馬鹿げた契約を強要し、しかし負けたときに代償を支払うわけでもない。

 恥でしかない言葉を響きわたらせる。

 

 そして言う。

 

「恥を知ろうね」

 

 静寂が満ちた。突き刺さっていた視線は無くなり、誰も彼も視線を反らした。

 

 

 次はちゃんと戦えと担任からお叱りを受け、一人目と戦った。

 

 あそこまでやる必要はないだろう。正々堂々やれ。卑怯だぞ。

 戯れ言を言うその目は義憤に燃えていた。

 

 白く輝く専用機を纏い、黒く鈍い貸し出し機を睨み付けている。

 さながら彼は正義で、俺は悪なのだろう。

 実際は、ただ弱いものいじめをしているだけなのに。

 

 やはり嫌いだ。

 こういうやつは、弱いものを悪にする。

 

 結果は当然のごとく、負けた。

 とりあえず動作確認のために軽く飛ぼうとしたら、こちらの数倍もの速度で近づいてきて一刀両断。

 機体差も勿論あるが、あの機動は瞬時加速を使ったと見ていいだろう。

 高等技術のはずなんだけどなぁ。それ。

 

 というか一撃で倒せるなんて、ゲームバランス崩壊してるじゃねえか。

 絶対守ってないだろうけれど、ISって一応競技用なんだぜ?

 間違った使い方すら守らないのはどうかと思う。

 

 まだ不満足げな顔をした一人目をおいて、俺はさっさと寮に戻った。

 自己満足に付き合ってやるほど、今の俺は優しくない。




TIPS:対セシリア戦はまだ自重しているほう
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