のほほんさんと約束をした後。
授業が始まって、授業を受けて、部屋に戻って。
そして明日になった。約束の日だ。
アリーナに行くとちょうどのほほんさんがいた。
数名のクラスメイトと一緒に居る。名前はまだ聞いたことがない人たちで、そのまま話したことが無い人だと分かった。
どうでもいいことだ。
おはよう、と挨拶をしてなし崩しに中に入ろうとする。待って待ってと呼び止められた。
まあ、そうなるよな。
クラスメイトはそれぞれ相川清香、谷本癒子、夜竹さゆか、という名前らしい。
感じる視線からして、悪くは思われていないらしい。苦笑されてはいるが、仕方がないだろう。
返答として改めて名乗ったら、一緒にアリーナの中に入った。
中はまだあまり人がおらず、よさそうな席がまだまだ空いていた。
席に座ると、視線が殺到した。半分以上は侮蔑の感情だ。
嫌な予感がした。
ああ、そういえばまだ駄目だったような。
パキパキと音がなる。
懐かしさすら感じる幻聴だ。
あの日名付けられた感情が膨張してヒビが入る音だ。心が濁る音だ。
壊れきったはずの心が痛む。
潰れるのではなく、痛む。
意外だという理性を置き去りにして、心と体が壊れ始める。
まだ慣れないのかという思考に対して、その答えを示すように顔が青くなっていく。
血の巡りが悪くなり、意識が遠くなっていく。
ふと、手を握られた。
そうだ。いつものことだ。大丈夫。
記憶が囁いた。
元に、戻った。
握られた手の先を見ると、のほほんさんがいた。
心配そうに見つめていた。
「...大丈夫だよ」
そう言った。
のほほんさんは、ほにゃりと顔を崩した。
だけど、瞳の奥は変わっていなかった。
自分の弱さでそんな顔をさせてしまった。
そういえば、なんで普通の授業に出ないの?
のほほんさんにはもうバレているだろうが、他の生徒は俺が精神病だということは知らないだろう。
話題が俺に移ったとき、この話が出るのは自然なことだ。
「...同じこと、繰り返し、より、未知、を、追求」
「えー?どういうこと?」
「既に習ったことをわざわざ聞くよりもまだまだ知らないISに関して学びたいってことかな~」
「...正解」
「すごーい!本音よく理解できたね!」
「えへへ~」
のほほんさんのお陰で何とかまとまってくれた。
ごめんなさい。嘘をはきました。
ただ、授業に出るだけの力が無いんです。
話しているうちに、開始時刻になった。
一回戦第一試合は、一組vs二組。
因縁でもあるのだろうか、プライベートチャットにしているせいで言葉は聞こえないが、表情で大体分かる。
二組の人は激昂していて、一人目は怒りの中に戸惑いが含まれている。
どうせ一人目が原因なんだろうな。
開始のブザーが鳴る。
一人目が突撃する。二組の人は待ち構える。腕を組みながら。
おかしいと思った次の瞬間、
一人目が弾き飛ばされた。
訳が分からなかった。
触れることなく相手を吹き飛ばす。銃を使った訳ではないだろう。体制は変えていない。
何も見えなかった。
不可視の弾丸。
第三世代機は、スペックの差以外にも大きな特徴がある。
特殊武装。
オルコットのビットや、一人目の一撃刀。
あれもそういったものだろう。
その後も戦闘は続いていく。
始めはただ撃たれ続けていた一人目だが、途中から不可視の弾丸を避け始めていた。
見えないので避けていると断定出来ないが、きっとそうだろう。
理解出来ない。
弾丸を避けられるようになったということは近づけるようになったということと同義で。
激しい近接戦が始まった。
目が回るような攻防はとても解説できる速度にはなく。
両者が弾かれるように離れた時には殆どが終わっていた。
共に疲弊して、大技の準備に入る。
終盤に突入、いや、決着がつこうとしている。
何かを感じ、ふと空を見上げる。
瞬間、今までに感じたことのない視線が俺を貫いてきた。
脊髄反射で立ち上がろうとしたその刹那、
黒い流星が、アリーナのバリアを粉々に破壊して現れた。
TIPS:主人公に戦闘の才能は無い