堕落した人のIS生活   作:番号26

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第7話

 黒い流星が侵入してきた後。

 

 のほほんさんら四人を何故か開かない出入口に押し寄せる人の波から守っていると事態は収束していった。

 一人目と二組の人と応援に駆けつけたオルコットの三人で流星──ISを撃破したらしい。

 気になることは色々あるが、助かっただけよしとしよう。

 

 侵入者が現れたことについては箝口令がしかれた。

 名誉の問題、か。面倒なことだ。

 

 

 

 あれからしばらくの間、時間を忘れて訓練場に籠った。実技に出ることさえもしなかった。

 織斑先生に体を鍛えたいと言ったら、紹介してくれた。

 ため息をつき、眉間にシワを寄せながら。

 やれやれといった感じで、壊れるなよと言ってきた。

 

 

 視線が忘れられなかった。

 無関心と憎悪と喜び。

 ありふれた感情だが決して両立する事のない感情が混じり合っていた、あの視線が。

 あの視線の主は誰だろう。ISを送り込んだ元凶だろうか。それよりも更に上の存在だろうか。

 

 どちらにしても、あれは人間ではない。

 今あれを理解してしまったら、生きることが出来なくなる。

 深淵を覗き込もうとする心を抑えるため、体はがむしゃらに動いた。

 

 

 

 

 ようやく心が静まった頃。

 肉体の許容量を超えて動き続けていたせいで満足に動けない俺は、久々に最初から教室にいる。

 一時間目がIS関連の授業の日ですらもSHRには出なかった俺にとっては珍しいことだが、理由は勿論ある。

 

 転入生が二人、1ー1にやってくる。しかも専用機持ちの。

 一人は軍人。もう一人は男らしい。

 

 この事を伝えに来てくれた織斑先生の目は澱んでいた。背中は煤けていた。

 お疲れ様です。としか言えなかった。

 

 転入生を待っている間寝てようかと思ったら足音がこちらに向かってくる。

 ああ、そういえばのほほんさんと話すのも久しぶりになるのかとそちらに顔を向けると──

 

 

 まずい。これはとてもまずい。

 のほほんさん、果てしなく怒っている。

 

 

 

 

 のほほんさんは怒ると怖い。

 

 骨の髄まで思い知らされた。

 理屈と感情の両方から責め立てて来るのは非常によろしくない。

 それに怒る理由が理由だから頭が上がらない。

 

 心配した、なんて。

 

 後ろめたさのような何かが湧き出てきて、心を埋めていく。

 そのことに何処かむず痒く感じる。悪くない、と感じてしまう。

 

 何故だろう。

 悪い事をした。これは本心だ。

 何故、それを責め立てられる事に対し心が痛まないのか。

 何故、体が焼けるような焦燥がないのか。

 

 何故、嬉しいとまで思ってしまうのか。

 

 時間になって織斑先生がやって来たことによりのほほんさんの説教はようやく終わった。

 一段落はついて、怒りは何とか収まってくれた。

 またね。そう言って彼女は戻っていった。

 

 

 

 転入生は個性的だった。

 

 軍人の方、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 銀髪ロングの小さい子。眼帯を着けている。

 昔世話になったのだろうか。織斑先生のことを教官と呼んで慕っている。

 

 外国の軍の教官をしていたなんて、織斑先生って何者なのだろうか。

 

 性格は外見相応で、小動物のような愛らしさを持っている。

 

 IS学園はぬるま湯だとか、ごっこ遊びでしかないだとか。

 軍人特有のスパルタ気質でこちらを見下してくるが、子猫が必死にニャーニャー威嚇しているようにしか感じない。

 一人目になぜか間違えられて頬を叩かれ、人違いだと指摘した時。

 一瞬だけだが恥じらいを見せたその姿に、俺はそう感じた。

 少し照れながら誤魔化すように一人目を叩いたところもいい。

 ざまぁ、一人目。

 

 

 そんなラウラよりも更に個性的な転入生がいる。

 表面上はただの優男といった感じだが、とんでもない爆弾がいる。

 

 男と言われた方、シャルル・デュノア。

 金髪でスリム体型。

 三人目の男性IS操縦者、という肩書きの女性。

 女性。

 性転換したとかではない、純度100%の女性。訳がわからない。

 顔が中性的だからって、胸が無いからって。女性であることは間違いない。

 なのに何故か男性扱いされている。訳がわからない。

 

 出来うる限り関わらないようにしよう。

 一人目とは別方向で、関わりたくない。

 

 

 

 

 個性的ということは、騒動を起こすことでもあるわけで。

 色々なことがあった。

 

 まず、自称男。

 

 顔はいい。ものすごくいい。

 当然のように女にモテる。女なのに。

 そのせいか学年問わず女が集まってくる。

 実技の時間でアリーナに移動してくるときなんかは一人目と共に女の波に飲み込まれそうになっていた。

 女は恐ろしい。

 

 そして、ボーデヴィッヒ。

 

 実技の時間で班ごとに別れてそれぞれに専用機持ちが教えることになったとき。

 その程度で私の手を煩わせるな、と突っぱねて教えようとはしなかった。

 全方位に敵意を放っている。

 可愛らしいものだが、周りはそう思わないみたいで。空気が完全に死んでいた。

 

 まあ教えてもらえずにただ立って時間を過ごすのは面倒なので。

 織斑先生を指差し、命令。と一言。

 渋々といった感じだが教えて貰えることとなった。

 ちょっと素直過ぎる気がした。

 

 

 

 転入生が入ってきたからといって自分が変わる訳でもなく。

 今までと変わらずISの授業だけ受けていた。

 

 そんなある日。織斑先生が言うことには、

 

 ISタッグトーナメントが開催される。

 お前は強制参加だ。

 

 待ってくれ。

 なんでよりにもよってタッグなんだ。




TIPS:主人公は描写されていること以外は基本的に知らない
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