電源を入れるためのコックを捻る音がする、次にコンピュータ系統が立ち上がる音が聞こえ全体的に低い音を奏だてる。キャリアが上がりきったことによる振動が起こる、いよいよエコノミーが動く時が来た。エコノミーとラーダーが歩き始めればそれに続くように指揮車や他のレイバーが歩き出す、今みほの体は心地よい緊張感が支配していた思考がクリアになるのを感じる
少し歩き始めたところで通信が入る、通信の主は一年生チームのラーダーの通信手、宇津木優希であった
『隊長、これからどうするんですか〜?』
『えぇと、試合前の説明にもあったと思うけど今回の試合形式は殲滅戦だからどちらかのレイバーを一人残らず倒せば勝ちなの。それで私達は高火力の軍用レイバーを持ってるから相手チームを誘導し引っかかった所で叩きます、それでその誘導をする為にエコノミーが偵察していくので他の人達は100m進んだ所で次の通信が入るまで待機して下さい』
『西住ちゃ〜ん、なんか作戦名ないの?こう言うのあったほうが盛り上がるでしょ』
作戦名…そんなもの前の学校では考えたこともなかった。が、今は違う
とは言えいきなり振られて出てくるものでもない、あれやこれやと浮かんでは消え葛藤すること3秒、結論が出た
『それじゃあ「こそこそ作戦」でいきましょう。こそこそ相手を探そてこそこそ隠れる作戦なので』
『何だが可愛らしい名前だね、まぁいいんじゃない?んじゃこそこそ作戦で決定』
こうして“こそこそ作戦”が発動した、100m進んだ所でみほ以外のレイバーは電力温存の為電源を切って待機して、みほ達もそこから50m進んだ見晴らしのいい崖の地点で膝立ちに状態にして電源を落とし全員に伝達する
『各チームの指揮車は索敵お願いします、ひょっとしたら相手チームの指揮車がこちらの方に向かってるかもしれませんので』
指揮車が動く音を確認しみほは降りる、ラーダーの方からも優花里が降り二人は崖付近で双眼鏡を構えて偵察する、偵察開始から3分ぐらい経った頃遠くにレイバーの隊列が見えた
「流石、聖グロですね美しい隊列です。同じスピードで音を立てずに行動出来るとは」
「うん、私達じゃまだあそこまで綺麗にはいかないもんね」
「こちらの武装じゃ余程の近距離か格闘戦に持ち込まない限り機動力でかわされてしまいますね」
「そこは戦術と腕かな」
「あとは知恵と勇気ですね!」
「よし、そろそろ行動開始しようか」
二人はそれぞれのレイバーに戻る、エコノミーの中では麻子がうたた寝していた
「麻子さん、麻子さん起きて。」
「西住さんか…もう昼寝は終わりか」
「昼寝にはまだ早いよ…今から動くから電源入れて、なるべく屈んで動いてね」
「ん、了解した」
エコノミーが動き始めた所で格レイバーに通信を入れる
『これから誘導を開始します、格チームのレイバーは電源を立ち上げて下さい、それと指揮車の皆さん。何か異常はありましたか?』
『こちらcチーム、異常なし」
「Bチーム異常ありません」
『こちらEチーム小山、前方に3台指揮車が目視できます、西住さんどうしよう?』
『小山さんはゆっくりと後退して下さい、その座標にラーダーを向かわせます。山郷ちゃん、ラーダーで小山先輩の方に向かって。あとの二人は合流して下さい』
それぞれに指示を出し通信を終えたみほは自身の行動に移る
「麻子さん、あの白いレイバー…AVS-98を狙って。」
「この位置から撃っても効かんぞ」
「構いません、相手にこちらの存在を気づかせるのが目的だからね」
『優花里さんも同様にお願い』
『了解です西住殿!』
両レイバーは崖の上から隊長車であるAVS-98に狙いを定める、張り詰めた空気を裂くような音を立てながら25mmチェーンガンと37mmリボルバーカノンが火を吹く…この場合は色を吹くと言うのが正しいかもしれないが放たれたペイント弾はダージリンが乗るAVS-98の周辺地面をかすめるだけ終わった
こちらの攻撃に気づいたダージリンは各レイバーへエコノミーを追撃するように指示を出す。エコノミーと同じく37mmリボルバーカノンがみほ達に向かって放たれる、幸運なことにこれらの弾は先ほどのみほと同じ結果に終わった、このチャンスを活かしみほ達はキルゾーンへと誘導する
『麻子さん、優花里さんはなるべくジクザグに運転してください。エコノミーの装甲は薄いので一発でも食らえばお終いだしラーダーも関節に当たったら終わりです!』
しばらくの間役4分間にわたる鬼ごっこが続く、AVS-98の攻撃はさほど脅威ではない。何故ならリボルバーカノンは撃ちつくしたら手動で排莢しリロードしなくてはならない、問題は98を取り巻くサターンである。このレイバーはオートマチック式の銃を武装してる、つまりリロードの時間が格段に速いと言うことである
とにかくみほ達は走らなくてはならない、目的地まであと3分
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その頃一年生チームが乗るラーダーはみほの指示を受け指揮車の撃破に向かいポイントに到着した、柚子が言った通り3台の指揮者がそこにいた。
「指揮車は武装持ってないしこっちの武装が一発でも当たれば撃破判定は出るはず、あや撃っちゃって」
「合点承知の助!」
この攻撃により急な来襲に対応できず聖グロの指揮車3台が成すすべなく撃破された
「よし、ほんじゃ西住隊長のところまで戻ろっか」
「あゆみ前になんか居るよ!」
そう、彼女らの前には指揮車護衛のためのサターンが居たのであった
「まずいよまずいよレイバーだよ!」
「どうすんのあゆみ!?」
「取り敢えず撃つっきゃないって」
慌ててあやはトリガーボタンを押す、だがそう簡単に当たるものではない。サターンは横に避けつつスタンスティック付きのシールド、スタンぺイルを構えてラーダーへ突進する、スタンペイルがラーダーに当たりラーダーがショートを起こし停止した
「あれ、動かなくなっちゃったよ!?」
「モニターも映んない!もう終わりだぁ!」
サターンはコンバットナイフに持ち替えラーダー目掛けて振り落とす、コンバットナイフが突き刺さりラーダーに白旗判定が出る、だがそれが出ると同時に刺した衝撃によりチェーンガンが暴発、サターンのコクピットに命中し白旗判定が出る。
「あれ…勝ったの?」
「試合に負けて勝負に勝ったって奴?」
「なんか微妙に違うと思う…」
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『こちら西住、あと3分でそちらへ到着するので準備をお願いします!』
『ん、りょーかい。んじゃかーしまお客さんが来るから丁重にもてなすようにみんなに言ってちょうだいな』
30秒後キルゾーンではみほ以外のレイバー全てが起動完了し低地に向かって各々の武装を構える。そして杏はみほに通信を入れる
『西住ちゃん、そういやDチームのラーダーやられたみたいだよ。』
『…!?山郷ちゃん達は無事ですか?』
『それに関しちゃ問題ないみたいだよ、あとやられる寸前で相手のレイバーもやったってさ。後で褒めてあげなよ〜』
これにはみほも驚いた初陣で相討ちとは言えレイバーを撃破したのだ、しかもレイバーに触って1週間も満たない初心者であるやはり最高の原石だ。自分の考えは間違っていなかった、そうみほは内心ガッツポーズをした
『了解です、あと100mで有効射程内に入ります。』
『あいよ』
通信を終え15秒歩くとキルゾーンへと着いた。アトラスが見える、そして
…20mmバルカン砲が“こちら”を向いていた
『往生せいやー!!!』
外部スピーカーから響く桃の声と共にアトラスが攻撃を行う、それをすんでの所でみほ達はかわした
「何やってんだあの先輩…!」
操縦しながら麻子が悪態をつく
『河嶋先輩落ち着いて!発砲するにはまだ早いです!』
しかしトリガーハッピーと化した桃にそんな声は届かない。いよいよ聖グロのレイバーが来た
サムソン、ドーファン、パイソンが攻撃を行うがやはりこちらが囮を使用した安直な作戦だと割れていとも簡単に回避行動を取られてしまう。じわりじわりとこちらによって来る。まずい、完全に混乱している。攻撃がもうめちゃくちゃだ
『皆さん落ち着いて!闇雲に撃っては当たるものも当たりません!落ち着いてコクピットを狙って下さい!』
とは言えこの混乱の中その様な射撃ができるかと言われれば答えはノーだ
しかし偶然にもサターン2輌に攻撃が命中し撃破する、これをチャンスだとみほは捉え全員に通信を入れる
『各員、これよりキルゾーンから離脱、山を降りて町へ行きます』
『西住ちゃん、アトラスの右足破壊判定が出ちゃったみたいだから直してから合流するわ』
『分かりました、ではEチームは小山先輩だけついてきて下さい
ではこれより“もっとふらふら作戦“を開始します!』
------------------------------------------------------------------------ダージリンは既に勝った気になっていた、名前も聞いたことがない高校の素人集団、そして腑抜けたレイバー。むしろ敗北することが許されない試合だった。相手には西住流の人間が居るとダージリンの同級生アッサムにより教えられており最初こそ一抹の不安を覚えたが安直な囮作戦を見て杞憂へと変わった、間違いなく勝てる、いや勝つ自信しかない西住流とは言え所詮はこの程度かと判断し前進する。途中で2輌破壊されたがこんなのはまぐれであるから何も心配は要らない、そう思った矢先にダージリンはエコノミーが他のレイバーを連れて逃げるのを目視した。“西住流に逃げると言う道はない”そう言ったまほとは雲泥の差だ、ダージリンは僅かながら怒りを覚えた西住流の看板を背負いながら逃げ出す姿勢が気に食わなかったのだ、そのほんの少しの怒りは彼女の冷静な思考を汚染し彼女は全レイバーにエコノミー達を追跡するように命令した、彼女の目には修理するために降りたアトラスが目に入らなかった…
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一心不乱にみほ達は走り神社を抜けて海岸沿いの道路へと出る、途中追跡に来た聖グロの指揮車と遭遇するも優花里のラーダーによって排除される、タワーを通過し十字路に差し掛かった所でみほはインカムに手をつけた
『これより市街戦に入ります、地形を最大限に利用して下さい。では各自散開しこれ以降の行動は任せます、皆さん先程の戦闘で弾を使い切ってると思うのでリロードを。各指揮車はリロード中の間偵察などをして援護してあげて下さい。以上です』
サムソンに乗ってるcチームは90mmチェーンガンが残り1500発ある、30秒もしないうちに尽きてしまうが聖グロのレイバーならばそこまで気にする必要はない、車長であるエルヴィンはそう判断した
「サムソンと言うレイバーは身長が比較的低い、このような市街戦ではうってつけだな」
「どこかで待ち伏せして引っかかってたところをコイツでスドンと言うわけだなエルヴィン」
「そうだ、後は偵察に行っている左衛門佐達の連絡待ちだな」
エルヴィンは適当な建物と建物の間に入りチェーンガンが隙間から出ないように位置と姿勢を調整してから3分後に通信が入りそっちにサターンが向かってるということ、しばらくするとセンサーが反応した、息を潜めて待つ何も気づかずサターンが歩いて通り過ぎようとした所を撃った、眩い光がサターンを照らしサターンをカラフルにする。それと同時にサターンから白旗が出た
「よし、まずは1輌撃破。あと何輌だ?」
「多分4輌だと思う」
「それじゃあこのままで残り4輌を狩りに行こうじゃないか」
そう言って前へ踏み出したところ鈍い衝撃がアトラスを襲い転倒した、そしてそのまま銃撃音が響いたと思うと撃破判定が出ていた
実はエルヴィン達の方に来ていたレイバーは1輌だけではなく2輌であった、そうとは気づかず前へ出たところサターンによるスタンペイルと射撃によるコンボでやられてしまったのである
『…左衛門佐、『ほうれんそう』は大事だぞ…』
『申し訳ないでござる…』
さてところ変わってBチームは立体駐車場にいた
「ここで待ってればいずれ来るんじゃない?」
「でもこんな小さい駐車場のどこで待つんですか?」
「まずドーファンが立体駐車場の下へ入る、そして指揮車に乗ってる妙子から接近する連絡が来たらボタンを押す、そうすると大きいブザー音がなるから相手はそれに釣られて正面に目を奪われる、そこで背後からアタックする!」
「ボタンを押すのは誰なんですか?」
「それは、私だ。忍頼んだぞ」
「キャプテンが…ですか。わかりました」
「いいか、根性だせ。そうすれば絶対に当たるから」
そう言い残し典子はドーファンから降り立体駐車場の起動ボタンを押す。ドーファンは体育座りの状態で収納された
待つこと4分後典子に連絡が入ると作戦通りにボタンを押し大きいブザー音が鳴る。それに気づいたサターンがまんまと釣られ此方へ入っていく正面に目を奪われ銃を構えるといるはずであるスペースにレイバーが居ないのを確認した、後ろを振り向こうとした瞬間足の力が抜けるのを感じた。ドーファンのリボルバーカノンがサターンの足の両関節を撃ち抜いたのだ、走行不可能となったサターンが撃破判定が出る。だがこのサターンの操縦手は伊達では無かった…後ろ向きで倒れる途中に銃で撃ちドーファンのコクピットに命中させたのだ。つまりは相討ちに終わったのである。
これで聖グロのレイバーは残り3輌
大洗のレイバーは残り4輌となった
今回は少し長めの話となりました、次回はみほvsダージリンを書いていきたいと思います。それではここまでのご視聴ありがとうございました!