では本編どうぞ!
白旗が上がったレイバーが次々にキャリアに乗せられていく、エコノミーは自力では動けないのでクレーン車で引っ張り上げてもらう形で乗せられた。キャリアが学園艦に行くのをみほは黙って見つめるしか無かった、敗北ではあったが初陣としては強豪校相手にいい勝負が出来たと自負している。試合の勝ち負けについては深刻に受け止めてはいなかった。問題は杏が敗北した際にやるといったあんこう踊りだ。どんなのかは知らないが沙織達が拒否反応を起こすぐらいだからよほど酷いものなのだろう、これから起こる事態を想定してため息をつくと目の前にダージリン達が現れた。
「今日の試合はありがとう、みほさん」
「あの…貴方は…?」
「ダージリンよ」
「ダージリンさん、お名前は姉から伺ってます」
「姉というとまほさんでして?」
「えぇ…」
そう言うとダージリンはほんの少し口角を上げた、ひょっとしたらこの人はお姉ちゃんと比べて自分のことを罵倒するのではないか。優秀な姉を持つ以上そう言った経験は少なくはなかった、そう思い少し身構えた
「随分とまほさんの試合とはと違うんですのね」
…あぁやはりこのパターンだ、身構えてはいたがやはり精神的に来るものがある。顔が自然と曇る、そんなみほの表情を察したのかダージリンが優しい声でこう言う
「違うと言っても貴方の事をまほさんと比べて馬鹿にしている訳じゃないわ、まほさんの固いセオリー通りの試合と比べてみほさんのは柔軟性があって奇想天外な作戦を立てて、おまけにレイバー使って柔道をするんですもの。とても面白かったわ」
「そんな、私が指示したのはほんの少しであとは皆んなが…」
「奇想天外な作戦ってのは優秀な指揮官がいて初めて成り立つものよ、みほさん。貴方はもっと自信を持っていいわ」
「ゆ、優秀な指揮官だなんて!私が!?」
「えぇ」
そう言うとダージリンは腕時計を見てキリッとした表情に戻してみほの方を向く
「さてと、私達はそろそろお暇しますわ。みほさん、もし夏の全国大会に出るのでしたら“Light stuff”から“Right stuff”になった貴方達と戦うことを心から願ってるわ。ではごきげんよう」
…“Right stuff”正しい人、かぁ…私達そうなれるかな、いやならなくちゃいけないんだ隊長と言う役職になった以上私にはその使命があるんだ。今日の試合で原石の磨き方は分かった、いい原石だったのは間違いなかったんだ、だからこそ私が磨ける様に導かなきゃいけない。そう心に誓った。とそこで気に抜けた声で自分を呼ぶ声がする、前を見ると生徒会達がいた
「西住ちゃん、負けちゃったね。まぁそう落ち込まないでよ」
「落ち込んでるのは例のあんこう踊りなんですけどね…」
「あ、そうなの。ふ〜ん」そう言いながら杏がみほの顔をじっと見つめる
「なんですか会長」
「いやね、いい目してるなって思ってさ。何かを決心したみたいな目してるね
…まぁそれは置いといて、はいこれあんこう踊りのスーツ」
そう言いピンク色の布を渡す
「…なんですかこのタイツスーツみたいなのは」
「これがあんこう踊りの服装。これ着て踊って貰うからね」
「こんなへ…変態な服…!」
「まぁ諦めてちょーだいな、私も文字通り一肌脱ぐからさ」
着替えた後のことは覚えてない、というか思い出したくない。沙織がお嫁にいけなくなると割と本気で泣きそうになってたのだけは何故か印象に残っている、地獄のようなあんこう踊りが終わった…
試合より疲れた気がするのは気のせいではないだろう
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服とは呼べない代物を脱ぎ制服を着ると普段着るのが面倒だと思ってた制服がこんなにも愛おしいものだったのかと言う気持ちがみほ達の頭の中でよぎる、着替え場所に貸し出されてた施設を出ると沙織が口を開いた
「ねぇねぇこれからショッピングに行かない?」
「いいですねぇ、近くにレイバーショップあるんで終わったらそこよりましょうよ」
「悪いが私はパスだ」
「え〜何で?」
「おばぁに顔を合わせなきゃ殺されるからな、そんじゃ」
目的地へと歩いてる途中沙織が声をかけてきた
「みほ、ひょっとして試合に負けた事気にしてるの?」
「…まさかあんこう踊りがあんなものだとは知らなくて、皆んなに酷い目に合わせちゃったなって思っちゃって」
「まぁ確かにあれは恥ずかしかったけど、試合に負けたのはみほのせいじゃないよ、聖グロの隊長さんも言ってたでしょ。私達がRight stuff”になればいいってあんま私にはイマイチ分からなかったけど…そうなるために私達頑張るからさ、みほも元気出してよ」
沙織らしい発言に思わず笑いがこみ上げてくる
「ありがとう沙織さん。そうだね、いつまでもクヨクヨしてはいられないもんね」
やはり沙織さんは優しい人だなと思い心なしか疲れがほぐれた気がした、そうこうしてる内にショッピングモールへと着く、沙織が綺麗な服を売ってる店を見つけそこへ入ろうとするとあるものに気づいた
…人力車?そう浅草でよく見るようなアレである、疑問に思ってると車夫がこちらを見て近付いて来た
「何あのイケメン!ひょっとして一目惚れってやつ!?やだもー!」
体をクネクネさせてる沙織を鮮やかにスルーして車夫は華の元へと駆け寄った
「お嬢、お久しぶりです!」
「新三郎…!?」
「五十鈴殿のお知り合いですか?」
「私の実家で働いてる奉公人です」
そう言うと人力車の幌がしまわれ乗っていた人物が顔を出す
「久しぶりね、華さん」
「お母様、お久しぶりです」
「元気そうでよかったわ、そちらの方々は?」
「はい、私のクラスメートの西住さんと武部さん、そしてこちらの方は…」
「秋山優花里です!五十鈴殿とはクラスは違いますが特車道で知り合いました!」
優花里が自己紹介した瞬間華の母親の眉がピクリと動いた
「特車道…?」
「はい!今日試合だったんです!」
「どういうことかしら?華さん」
空気が重くなってきた、優花里は自分が失言したと思い口を手で覆い隠す
その間華の母親が手を掴み華の手の匂いを嗅ぐ、ますます眉が動く
「鉄と油の匂い、まさか貴方本当に…」
「…ごめんなさいお母様」
「花を生ける繊細な手でこんな事をしてるなんて…信じられない」
そう言うと精神の限界が来たのか気絶して倒れ込む急いで新三郎が人力車に乗せ家へと運ぶ、当然みほ達もそれについて行った。家へ行く途中みほは華の顔を見た、母親が倒れた事を心配してるのは当たり前だがその中に後悔と恐れと言った複雑な感情が見られる表情であった
五十鈴家
華の家はとてつもなく大きかった、みほ達は客室に案内されそこで待機した。お通夜のような雰囲気の中優花里が口を開く
「すいません五十鈴殿、私が余計な事を言ったばかりにこんなことになってしまって…」
「謝らないでください優花里さん、元はと言えば正直に話してなかった私が悪いんですから」
みほは床の間に飾られてある生花を見た、綺麗で優しい雰囲気のする生花だ。今でも自分の部屋には初めて一緒に夕食した時に持ってきてくれた花が大切に飾ってある。生花は人の心を映すと言われてるがそれは間違えではないようだ、そう思った。
ふすまが開き新三郎が現れる
「お嬢、奥様が起きられました。…お話があるとのことです」
「私、そろそろ戻らないと…お母様には大変申し訳ありませんが」
「差し出がましい事を言いますがお嬢は奥様と真剣に話すべきです!こう言ったことを逃げてずるずるそのままにしていると必ず後悔することになります!強い心をもって真剣にお話しして下さい!お嬢!」
そう言い終わると新三郎は息を切らしながら謝罪した
「…分かりました、お母様とケジメを付けて参ります。ありがとう新三郎」
「お嬢…!」
華はしなやかにだが堂々とした勇ましく歩きながら向かった。
華が居なくなった後みほは新三郎の言葉が心の中でリピートしていた
「逃げると後悔する事になる」その言葉は特車道、母親から逃げてきた自分に突き刺さる言葉であった、逃げるのだっていつかは限界が来るんだ。再び特車道に関わった以上立ち向かわなくなるのは必然であろう。その時に自分は華みたいに前へと踏み出せるか?逃げないと誓ったが前へと踏み出す勇気はまた別である。今はまだ分からない、逃げ出した自分をお母さんはお姉ちゃんはどう言うだろうか
不安で仕方がない。あれやこれやと考えに没頭してると沙織が自分を呼ぶ声で現実に引き戻された
「みほ!ど〜したのぼーっとして」
「ちょっと考え事をね」
「あんま考えすぎると老けんのが早くなるよ、これから華の様子を見に行こうと思うんだけどどう?」
「…うん、行こうか」
みほは自分と似た境遇にある華にシンパシーを感じていた。それ故に華がそうするか気がかりであった、盗み聞きなんてはしたないと思ったが聞かずには居られなかったのだ。華が向かった部屋へと向かいほんの少しふすまを開ける、部屋の中は張り詰めた空気で支配されていた。
「申し訳ありません、お母様」
「なんで特車道なんか…花道が嫌になったの?」
「そんな訳ありません、花道は私の人生です」
「じゃあ何か不満でもあるの?」
「そのようなこともありません、ただ私生けても生けても何か違ったような違和感を感じるんです。自分が作りたいのはこれじゃないって…」
「そんな事ないわ、貴方が生ける花は可憐で繊細、五十鈴流そのものよ」
「…それじゃダメなんです。私はもっと力強い生花を生けたい…!私自身の五十鈴流を見つけたいんです!」
そう言うと再び母親が倒れ込みそうになる
「素直で優しかった貴方は何処へ行ってしまったの?これも全部特車道のせいなの?レイバーなんて不格好で時代遅れでうるさいだけじゃないの、そんなもの全部鉄屑になって滅びてしまえばいいんだわ」
鉄屑というワードを聞いてほんの少し優花里がイラッとするのが見えたがスルーする、再び隙間に目を移すと華が立っているのが見えた
「それは特車道に携わってる方々への侮辱…私の友人への侮辱ですよ!いくらお母様でも言っていい事と悪い言葉があります!…謝ってください今ここで!」
「謝りませんわ、貴方がそこまで特車道に毒されてるのはよくわかりました。自分自身の道への探究大いに結構でしょう。でしたら五十鈴流を汚さぬよう二度とこの敷居を跨がないで頂戴」
「分かりました、今までお世話になりました。失礼」
華がピシャリと言うと荒々しくふすまを開け力一杯閉める。その音にみほ達はビクッとした
「あら皆さんここにいらしてたの?さぁ帰りましょうか」
「華さん…勘当って」
「お母様は私に反論されて気が立ってあのような事を言ったのでしょう、でしたら自分の腕をもって認めてもらうまでの話です。」
「…華さんは強いんだね、私とは全然違うや」
「西住さんも十分に強いですよ、何十人を指揮するプレッシャーに耐えれるそれだけで強いと思いますよ」
「わたしも華さんみたいに頑張るよ」
でもやっぱり華さんの方が強いよ、そう言おうと思ったが言えなかった
家を出ると新三郎が人力車を持ち待機していた
「お嬢、先ほどのお姿立派でした」
「いいえ、笑いなさい新三郎。これは私の我がままなんだから」
「それでも、ですいつかお嬢様が自分自身の道を見つけることが出来るまでこの新三郎いつまでも待っています!」
港の入り口まで人力車で送ってもらう。学園艦の側では麻子が港にある足を乗っけるやつに足を乗っけてポーズを取りながら海を見ていた
「よう遅かったじゃないか」
「何カッコつけてんのよ麻子…」
学園艦のタラップを上るとそど子が待っていた
「出航時間ギリギリよ」
「すまんなそど子」
「そど子言うな!」
デッキへと上ると杏がいた
「やぁ西住ちゃん、これからはさ作戦立案は西住ちゃんに任せるよ。今日の作戦は見事だったしね。んでこれ聖グロからのお土産、小洒落たバスケットなんかに入れてさ、いかにもお嬢様学校って感じだよね」
バスケットの中にはティーカップと手紙が入っていた。手紙には公式戦での貴校の試合を心から応援するとともに再び試合出来ることを楽しみにしていますと書いてあった
「凄いですよ!聖グロは好敵手と認めた相手にしか試合後にティーカップを渡さないと聞いたことがあります!やっぱり西住殿は凄いです!」
「んじゃご期待に応えるべく公式戦じゃ頑張らないとね」
「ねぇさっきから公式戦って言ってるけど何?」
「公式戦って言うのは夏の全国大会のことですよ!」
翌日、みほ達は第63回特車道全国高校生大会のトーナメントを決めるため会場に来ていた。舞台に上がりテーブルの上にある箱から一枚の紙をめくる、そこには番号が書いてありその番号は「8」であった。夏の全国大会、大洗女学園第一回戦の相手は「サンダース大学付属高校」に決まったのである
試合相手が決まり益々士気高まる大洗女学園特車道チーム、日夜汗を流してるのは彼女たちではない。料理人が使う包丁に職人がいるようにレイバーにはそれを支える職人がいる、そう彼女らこそ「自動車部」である!みほ達がレイバーを発掘したあと、ぶっ壊した後彼女らは何をしてたのか今そのベールが明かされる。次回
「こちら大洗女学園自動車部」ターゲットロックオン!