では本編をどうぞ!
みほの元を離れた優花里はラーダー内でスナイパーを倒すために指揮を出していた
「五十鈴殿、あそこに見える小坂までジクザクに走ってください、その間対レイバーセンサーを最大限にしショートを防ぐためオートバランサーを切断します。」
「でも優花里さん、センサーを最大限にしても範囲外だと思うのですが…」
「センサーは言うなればルアーみたいなものです、こちらの存在を相手に気づかせるために使います。…恐らくそろそろ1発目の発砲が来ると思います。五十鈴殿、操縦お願いします!」
そう言い優花里はキューポラーから顔を出す、双眼鏡を目にやり遠くの山を舐め回すように見る。次の瞬間風を切る音がしラーダーの足元に着弾する
すかさず双眼鏡を銃声が聞こえた方向に向けて目を凝らしつつ次の指示を出す
「五十鈴殿、このまままっすぐ目標地点へと向かってください、次の発砲で更に場所を割り出します」
「分かりました!」
直進して坂の頂上に到着するや否や再び風を切る音がしてラーダーの2番脚に被弾し破壊されたことでガクッとバランスが崩れる。被弾したものの優花里は双眼鏡に煌きが見えたのを見逃さなかった。
(思った通りスコープの反射が見えましたね…目星をつけてたとはいえこの短時間で発見できたのは運がいいとしか思えません)
そう思い最後の指示を出す
「ターンして前面を山の方へ向けて3番脚に力を入れて水平状態に戻した後チェーンガンを左40°、仰角15°にして攻撃して下さい!」
指示を受け華は4番脚を軸にして回転する、回転してから攻撃出来るチャンスは僅か1回…!そこを逃せば今度こそウィークポイントに当てられて破壊されるのは間違い無く仮に外れても敵が位置を変えてしまう。オンリーワンショット、勝敗を分ける一瞬の戦いが切って落とされる。
ラーダーが旋回を終え銃口を山の方へ向ける、3番脚のペダルを踏みながら銃口を調節する。モニターには木々しか写らないが華はそこに明確な敵意を感じた。植物が放つオーラではない、普段から植物を触っている華だからこそ分かることだ。呼吸を止め精神統一を図る、トリガーを持つ指に力が入る。
(華を生ける時の様に集中して…確実に当てなくては!)
2秒ほどの沈黙が流れる…そしてトリガー上部にあるボタンを力強く押した。放たれた光が山へと吸い込まれる、その瞬間ラーダーに強い衝撃が走り思わず2人とも椅子から滑り落ちる。キュポッと言う軽い音が鳴り撃破を告げる。急いで座席に座った華はモニターを凝視する。そこにはもう敵意は感じられなかった。それと同時にキューポラから顔を出してた優花里が大声を出す!
「やりましたよ!五十鈴殿!スナイパーを撃破しました!」
双眼鏡には木々の間に白色があるのが写っていた。結果は相討ちだが彼女らは遂にスナイパーの撃破に成功したのである
車内に戻った優花里は嬉しさのあまり華に抱きつく
「五十鈴殿ぉ…!」
「優花里さん…!」
お互いこのまま勝利の余韻に浸りたかったがそうは行かない。この成果を伝えるという大切な使命が残されているのだ。優花里は震えながらインカムにやりボタンを押す
『…こちら秋山、スナイパーの撃破に成功しました!』
『優花里さん、ありがとう!本当にありがとう!』
『私達はやられちゃいましたけどね…』
『後は私に任せて、必ずフラッグ車を倒してみせる。優花里さんや華さんの頑張りは無駄には絶対にしないから…!』
『西住殿!ご武運を!』
通信が切れ今度こそやるべき事が終わった彼女らはどっと安堵の息をつく。
優花里は首筋に汗が流れてるのをようやく認識してハンカチで拭う。
華はトリガーを掴んだ指が握りしめすぎてジンジンしていたので手のひらを開いたり閉じだりしている。
そしてそれぞれ水筒を取り出して一気飲みをし再び安堵の息をつく
「…五十鈴殿、私は西住殿のお役に立てましたかね?」
そう聞いたのは彼女が自分が本当にみほの役に立ってるか気になったのもあるし自分自身の行動に漠然とした不安を感じたからだ
______独りよがりの独善的な行動になってないか、そう思っていた。
「何をおっしゃいますか優花里さん、優花里さんはみほさんや私や沙織さん、麻子さんだけじゃなくて皆んなのお役に立ててますよ。この試合、優花里さんが頑張ったからこそここまで来れたのですよ?偵察がなければ作戦は立てれなかったし勇気を出して前へと踏み込んだからスナイパーも倒せた…優花里さん貴方は一人で猪突猛進な所はありますがそれにみんな助けてもらったんです。もっと自信を持って下さい。」
「五十鈴殿…」
華からの言葉に優花里は胸が熱くなるのを感じた、これまで友達が居なかった彼女に欠けていた“自尊心”それがパズルのピースのようにハマっていくように満たされていく。
「あ、でももっと仲間を頼ってもらってもいいんですよ?貴方は一人じゃないんだから」
「そうですよね…私はもう一人じゃないんですもんね…!」
そう言うと優花里はペカっと笑顔になった。
本隊到着まで残り3分
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優花里からスナイパー撃破の通信を受け取った一同は湧き上がっていた。不可能かと思われてた7分以内の決着、それが夢物語ではなくなろうとしているのだ。信じてた仲間が難題を達成した、信頼に報いてくれた。ならば私達もそれに応えなくてはいけないそんな思いが共鳴する。もう先程まであった負のオーラはどこにも見当たらない、全員の士気が高まったのを感じてみほはインカムに手をやる
『パイソンとエコノミーでフラッグ車に対応します!サムソンとラーダーはアトラスの護衛を。可能でしたらチェーンガンで援護を頼みます!』
『了解しました!』
『了解した!弁慶の如く守り通して見せるぞ!』
『それではレイバー・フォー!!』
エコノミーとパイソンはこちらへ向かってくるクラッシュバスターに真っ正面から立ち向かうために突っ走る
『梓ちゃん、エコノミーがフラッグ車を取り押さえるからパイソンはそこをスタンスティックで攻撃して!』
『分かりました!』
通信を切るとみほは麻子に話しかけられた
「なぁ取り押さえるって言ってたがどうするんだ?」
「後ろから首に手をかけて足の関節を蹴ってバランスを崩させます」
「…まるで警察みたいだな。いや警備用レイバーだからおかしくはないか。分かった、やってみせよう。だが問題は如何にして後ろを取るかだな。そうじゃなきゃお話にならない」
「そのためのツーマンセルだよ。2体相手なら必ず何処かに隙が出るはず、いくら相手がプロでも対応に限界はあるからね。そこに一気に突き込む、一瞬で決めるよ麻子さん!」
「おうよ、任せな!」
話してる間にクラッシュバスターがサブマシンガンを撃ってきた。落ち着いてシールドでガードするがここでシールドに破壊判定が出る。これ以上ガードすることは不可能だ。パイソンがリボルバーを2発ほど撃つがシールドで防がれてしまった。2輌はクラッシュバスターから距離を取り銃で応戦するがことごとく交わされてしまう
「流石は敵の最新鋭機…機動力がこちらとはやはり段違い」
「どうする、相手がこっちに向かってくるぞ」
「格闘戦に持ち込む気…ならこちらもいきます!」
そして素早く梓に命令をする
パイソンを後ろに下がらせエコノミーはスタンスティックを構える、そして同じくスティックを構えたクラッシュバスターがエコノミーを斬ろうと振りかざす。
だがその攻撃はスティックによって防がれる、重なり合う二つの棒が眩しい閃光を放つ。
「今だよ梓ちゃん!」
そう二人が戦ってる隙を突いて横からスティックで攻撃しろとあの時命じたのだ
だがその攻撃は後ろにひらりとジャンプされ交わされる。
『かわされちゃいました!すいません!』
『大丈夫、これで倒すのが目的じゃないから』
『…?』
『一回相手を後ろに下げることで状況を最初に戻すのがこの格闘戦の目的だったの、次で取り押さえるよ。梓ちゃん!』
そして最後に再びある作戦を告げた、そのことに梓は一瞬驚くも力強く返事をする
『はい!』
再びクラッシュバスターが此方へ向かってくる、お互いの距離が残り4mくらいになった所でエコノミーが残っていた2発の内1発を撃ち防がれるもシールドの撃破に成功する。すかさず最後の1発を撃ち込んだが何と地面を削るだけに終わった、まさか外してしまったのか。誰もがそう落胆した時ヒュッと風を切り何かが飛んでくるのが見えクラッシュバスターの前をかすめるのが見えた
これがみほの第二の作戦である、わざと攻撃を外して相手に油断を与えたあとスタンスティックを投げると言う誰も考えないような行動を取ることで相手を驚かせ思考が鈍ったその隙に押さえ込むことにしたのだ。
みほの予想通りクラッシュバスターはかすめた棒に驚きほんの少しだが後ろへ下がる
「麻子さん!」
「行くぞ西住さん!」
2人はその隙を見逃さず猛ダッシュしてクラッシュバスターの後ろへ回り込む、そして右腕で首を絞め左足で関節を思いっきり蹴る。蹴った瞬間機体に鈍い振動が起こりメインモニターに背中が迫りくるのが見えた、自機の関節に負担をかけないようそのままゆっくりと膝立ちになり拘束が完了した。そしてインカムに手を取り合図する
___これで終わりだ。大洗の生徒は皆そう思った。だがその期待は無慈悲にも砕け散る
みほが望んでいたスタンスティックを当てた時に来る振動がいつまで経ってもやって来ない。代わりに近くに何かが倒れ込む音がした、全身から血がひいてく音が聞こえたような気がして恐る恐る連絡を取る
「梓ちゃん何が起きたの…?」
「…思いっきりアッパー喰らわされました」
レイバーがアッパーを?いや今はそれどころではないどうすればいい?確信してた勝利が砕けた故にみほの思考は今動いてるように見えるが止まっていた、4秒程経った頃けたましい電子音により現実世界へ引き戻される。
「西住さん腕のモーターがもう限界だ!一旦離さなきゃ親善試合の時のようになるぞ!」
「…っ!麻子さん急いで拘束解除!」
『ウサギさんチーム立てますか!?』
『どうやら思いっきり背中打ったみたいなんで思ったように動きません!…どうやら私達はここまでみたいです。西住先輩!後は…後は頼みます!』
『諦めちゃダメ!必ず助けるから!』
だが拘束解除したらパイソンがやられるのはみほだって分かっていた、分かっていたのだが彼女の精神がそれを認めることを許さなかった。諦めたら負けなんだ、勝負は最後まで何が起きるか分からないだから彼女は奇跡を信じたかった。しかしそうそう奇跡なんて起きるものではない、拘束解除したすぐにクラッシュバスターがスタンスティックをパイソンに突き刺していた。そしてパイソンから白旗が勢いよく上がる
みほは何もすることが出来なかった…
だが落ち込んでる場合じゃない、今度は自分の番なのだ。
「西住さん、どうするよ。弾切れにシールド破損、スタンスティックしかないぞ」
「仕方ありません、ひとまず格闘戦に持ち込みます!」
クラッシュバスターがこちらを振り向きスタンスティックを構えたダッシュする、再びつばせりあいとなり閃光を放つ。だが今回は先程とは違った、不意にクラッシュバスターの左手が引っ込むのが見えた。みほはそれが何を意味するのか瞬時に察し麻子に声をかける
「麻子さん後ろに下がって!」
「あいよ」
瞬間クラッシュバスターの左手の拳が伸びエコノミーの右腕に当たる。機体に強い振動が襲いかかりバランスを保つのに精一杯だ安定したところで機体状況をみると右腕がやられてることに気づいた
「…やられた!」
「西住さんありゃなんだ?」
「銃を取り出す時の手が伸びる動作を攻撃に生かしたんだよ。多分ウサギさんチームもあれを喰らったせいで倒れたんだと思う」
「意表を付いてくるのは向こうも同じってことか…!いよいよ後がないぞ。」
「まだです…まだ何か手があるはずです…!」
そしてみほの脳内に電流が走る、見える…突破口が!この危機的状況を打破する策が浮かんだ!
「麻子さん、もう一回鬼ごっこしません?」
「もう鬼ごっこはうんざりなんだがな…んまぁ今の状況じゃまた逃げるしかないか。バッテリーもまだ充分にある、しかし逃げようにもその後がないぞ」
「確かに逃げてるだけでは後がないよ…ただ逃げてるだけじゃね」
「何か策ありって感じだな。そりゃそうか西住さんが何も考えなしに動くことはあり得ないもんな、それじゃあ鬼ごっこを楽しむとするか」
敵本隊到着まで残り1分…!
エコノミーはクラッシュバスターに背を見せダッシュする、途中銃声が聞こえるがその音はすぐ止んだ。どうやら向こうも弾切れになったようだ。
「麻子さん、逃げるときはジクザクじゃなく直線的に相手に攻撃しやすくしてください
…相手の視界を遮るような感じになるように」
「…分かった」少し怪訝そうな顔をしながらうなずく。
無理もないだろう、いくら策があるからとは言え敵の攻撃を避けないようにするなんて体の防衛本能に逆らうことだ不安でしょうがない。だが麻子はみほを信じることにした、いや信じなければ体が勝手に回避運動を取ろうとしてしまうのだ
そんな麻子をよそにみほは通信を入れる
『カバさんチーム、ウサギさんチーム、カメさんチーム。今から“そちら”に向かいます合図をしたら全弾撃ち尽くす勢いで撃ってください』
『ちょい待ち!フラッグ車の方に誘き寄せるってかなりやばいこと考えてない西住ちゃん」
『現状攻撃が通用するのはもうこの3チームしかないんです、時間ももうありません。危険性は重々承知してます!ですがこの手しかないんです!お願いします!』
『…全く無茶な作戦考えるもんだね、でもそうでもしなきゃ勝てないもんな。身を危険に晒さなければ見える勝路も見えないもんだ、西住ちゃんほんじゃやるよ!』
『はい!ありがとうございます!』
エコノミーはフラッグ車の元へと走る、当たりそうで当たらないそんな微妙な速度を維持できるのは天才的な操縦センスを持つ麻子だから出来ることだ。クラッシュバスターがスタンスティックで何度も刺そうとするが当たらない、アトラスが眼前だフラッグ車までの距離まで残り30mとなった。
「西住さん、もうすぐ合流するぞ!」
「合図したらオートバランスを切って両足のモーターも切って!」
「おいおいそれじゃ転倒する…あぁ成る程わざと転倒してフラッグ車達に後ろにいる敵をやってもらうってことか、親善試合と言い西住さんはとんでもないことばかり考えるな」
「何なに何が起こるの麻子!?」
「口を閉じてろ沙織、舌噛み切るかもしれんぞ」
「噛み切るって…も〜どうにでもなれ!」
そうこうしてる間にもフラッグ車の距離は残り10mになる痺れを切らしたクラッシュバスターが確実に当てるために両手で構えて一気に間合いを詰めてきたスタンスティックの先端がエコノミーの背中に当たりかけたその時
「…今です!」
エコノミーのオートバランスと関節のモーターが切れ前屈みになる、そのまま体勢を立て直すことなく地面に寝そべる。座席がガタガタと揺れさながらミキサーのようだ、上下の揺れだけでなく転倒した際地面を滑っているから左右の揺れも発生する。衝撃に耐えるだけで精一杯だがみほは力を込めてインカムのボタンを押しこの試合の決め手となる命令を短く、大声で叫ぶ
『撃て!』
サムソンの90mmチェーンガンが
アトラスの6連装ミサイルランチャーと20mmバルカン砲が
ラーダーの25mmチェーンガンが
それぞれ光を放ち敵へと吸い込まれていく。そのうち土埃で覆われるが構わず撃つ、撃つ、撃つ。全員の弾が切れ煙が晴れた瞬間。そこにあったのは地面に伏せているクラッシュバスターだった。そこには白い旗が風になびかせ立っていた。
『サンダース大学付属高校フラッグ車、戦闘不能!よって大洗女子学園の勝利!』
揺れが収まりあちこち警報音が鳴り響く中みほ達は確かにそのアナウンスを聞いた、強豪校サンダースを破り勝ったと言う事実を。が理解するのには数秒を要した、余りにも衝撃的な内容だったので思考を放棄してしまった。理解した瞬間体の内からブワッと何かが来るのを感じた。声に出したくてしょうがない、内なる衝動が叫ばずにはいられなくさせている
「やった…!!やった!!」
「勝ったんだな…!」
「そうだよみぽりん、麻子!私達勝ったんだよ!」
通信を入れようとすると各チームの勝利の雄叫びが聞こえた。
これは今言葉をかけるのは無粋だな、そう思いみほはインカムの電源を切る。疲れがどっとやって来て眠りの世界へと誘う。回収車が来るまで寝よう…そう思いみほは目を閉じて微睡に包まれた。
はい、今回はここまで!次回は日常会で会話メインだからもうちっと早く投稿出来るかな?なるべく善処しますので応援していただけると幸いです…!それじゃあここまでのご視聴ありがとうございました!