ガールズ&レイバー   作:恵美押勝

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ど〜もどもども恵美押勝でございます、連続模試や池袋遠征でだいぶヘトヘトです(涙)
それでは本編をお楽しみください!


これがアンツィオ戦です!part4

突如現れた敵にカエサル達は驚いた、森林地帯へと逃げ込んだアンツィオのレイバーを追うために同じく森林へと入り込んだみほ達の後に続こうとしたらいきなりハンニバルがこちらに向かって来たのである

「何…!?フラッグ車じゃなくて私達を狙ってるだと!?カエサル!」

「あぁ!」

相手が発砲してくることを見越してカエサルは機体の軸を少し傾ける。そして案の定発砲してきたハンニバルの攻撃を交わすことに成功した、そしてほんの数歩だけ後ろへと下がる

「危ない危ない…って落ち着いてる場合じゃないか、私が隊長に連絡してる間応戦頼む」

カエサルが頷くのを確認してエルヴィンはインカムの電源ボタンを押す

『隊長、どうやら面倒なことに巻き込まれたようだ』

『相手のレイバーと交戦中…と言うことですか』

『あぁ、どうやらこのレイバー私達が狙いらしい』

『分かりました、カバさんチームの健闘を祈ります』

『ああ、ここは任せて隊長達は先に言ってくれ』

そして通信を切ったエルヴィンはこう呟いた

「一度こんなセリフ言ってみたかったんだ」

「…状況が少し違うと思うしんなのん気なこと言ってる場合じゃないぞ」

「だな、相手はこちらと同じタイプの飛び道具しかないレイバー…接近戦には弱いはずだ。なら先に突撃してほぼ0距離から食らわすぞ、相手が行動できる前に叩く!これでどうだ」

「いいだろう…よしいくぞ!」

カエサルはレバーを前へ勢いよく倒し機体を傾けながら前進させる駆け出したサムソンの突進はハンニバルによって軽くいなされ明後日の方向へと行く、これにより戦いの場は森林地帯から木々が一切ない更地へと移る。

「ちぃ!かわされたか!」

外した勢いで倒れそうになるがオートバランサーと操縦のおかげでなんとか立て直す、その間にハンニバルもまたこちらに向かい突進してくる。だが立て直したばかりの機体にかわすのは困難だ、無情にも上半身と下半身の間に設置されてるチェーンガンがサムソンへ襲い掛かろうとする。だがカエサルには策があった。

「エルヴィン、このチェーンガン撃つ以外にも使い方があるって知ってるか?」

「…まさか!?」

「その“まさか”さ!」

サムソンは両手で持ってるチェーンガンを手全体を上に上げることで銃を上に向けさせハンニバルの方のチェーンガンに当てる、まるで鍔迫り合いの様なその動きにより車軸がずれて敵の攻撃はかすめるだけに終わる

「銃でチャンバラか…よくやるよ」

「暴発するんじゃないかとちょっと怖かっけどな」

再びお互いの機体が離れ一瞬の静寂が訪れる、だが今回は前回と違いすぐ去っていった

再び機体を接近させる。今度の鍔迫り合いもハンニバルが制しのけぞったところを狙ったが何とのけ反る途中で左足の機能を停止させガクッとさせる事で機体全体を少しだけ低くし攻撃から逃れたのである、そして避けたと思ったらいきなり立ち上がりチェーンガンをこちらの武器に当ててのけ反らされてしまう

「…!」

カエサルは右足だけを上げけんけんする様に機体を後方へと下がらせた、激しい機体の揺れに顔をしかめるが攻撃を受けずに済んだ

「…向こうのレイバーやるなぁ、避けたと思ったらそのまま反撃か、しかも一切躊躇せず勢いのままでチェーンガンで当てにきた…全く何と言うことを」

「それはお前も同じだ!レイバーでけんけんだなんて初めてだぞ!それも後方で!」

「初めてやってみたけど上手くいくもんだ、これもオートバランスの賜物かな」

「酔いしれてる場合じゃない、また来るぞ!」

今度も互いの機体は勢いよく駆け出す、しかしお互い読みが外れたのかすれ違うだけに終わる。2人の差はこれまでで一番大きく開く、これが何を意味するか分からない人はこの場にはいない。帽子をかぶり直したエルヴィンが威勢のいい声で叫ぶ

「ここの転換が勝負どころだ!カエサル!隊長の言ってたこと忘れてないだろうな!」

「あぁ、

これまでの練習の成果…それが試される時が来た。カエサルは冷静さを装う様にそっけない声で答えるが内心はドキドキしていた、練習は上手くいったが本番で上手くいくか自信がなかった。彼女は本番に弱いタイプだったのだ。だがそんな弱音なことを言ってる時じゃない、不安のドキドキは一気にピークを迎え脳にアドレナリンを大量放出させる合図と変わっていた。

不思議な心地だった、ドキドキしてて心音が聞こえるくらいなのに脳がスッキリ冴えて不安と言うネガティブな感情が一切消えている。そしてその状態のままレバーを握ると手が勝手に動いた。まるで誰かに操作されてる様な気分だ、だけど私はこの感覚を信じよう。これは誰かが操ってんじゃない「私が私を操っている」んだ

そしてバレエの回転の如くサムソンは一切の無駄なく転換が完了した、それは相手も同じであった。

やはり相手は相当な実力者…このまま今までと同じように突撃したらこの距離だ、先に撃たれてやられる。だから…

「エルヴィン、この一撃で決めるぞ」

「…あぁわかった」

息を止めて標準を合わせる、遠距離射撃での経験がカエサルを後押しする。そしてモニターのターゲットサイトが緑から赤へと変わりロックオンが完了した

____撃てっ!

その掛け声と同時にトリガーボタンを押す、光の矢が相手の胴体へと吸い込まれると同時にこちらも光の矢が見えた。次の瞬間機体が激しくシェイクされる、先程のけんけんとは比較にならない程だ、オートバランサーも対応できずそのまま倒れ衝撃が加わる

カエサル達は収まるまで目を瞑って耐えることしか出来なかった。そして揺れが治まり目を開けると最初に見えたのはモニターの〈サムソン 撃破〉と言うメッセージだった。

やられた事は悔しいがカエサルはそれより大事なことがあった、モニターを操作して外の様子を見る。そして思わず笑みが溢れた

「相打ちだが…撃破成功したぞエルヴィン」

「あぁ…接戦だったな」

安堵のため息を吐くと先程の緊張がジワジワと消えて代わりに疲労感がやって来た、ほんの数分間の戦闘だったが物凄く体力を使ったようだ。

「すまない、回収車が来るまで少し寝かせてもらっていいか?」

「構わん、ゆっくり寝てくれ」

「じゃ、お言葉に甘えて」

目を閉じるとさっきの戦闘が浮かぶ、ふとカエサルは疑問を覚えた

あのハンニバルに乗っていた人は誰なんだろうか

初手突撃で攻撃して回避するときは荒っぽい手段で行いそして反撃もまた荒っぽかった。しかし下手くそと言う訳ではない、あれは基本が出来て初めて出来る手段だ…

こんな戦い方をするのは一体何処の誰なのか、気になってしょうがない。

だがそれを知る手段は恐らくないだろう。

…さて、だいぶ眠くなってきた、ここらで考えるのをやめて寝ることに集中しよう

「でも…まさかね」

意識が落ちる前、目に浮かんだのは幼なじみの優しい微笑みだった

 

カバさんが激闘を終えた頃、アヒルさんの戦いも終盤へと差し掛かっていた。

先程まで自分達を鼓舞していた彼女達、しかし今その顔に余裕はなかった。

「後方に2輌…3輌…どんどん増えてきますよキャプテン!」

「何だこいつら!?さっき倒した筈だろ!」

そう、ライオットガンで一掃した筈のミディ軍団がガンバルギーニを追っかけてるドーファンの後ろにいきなり現れ始めたのだ

典子は予想外に来訪者に驚くもそれ以上に困惑した、武装が6発のリボルバーしかない。現時点で後ろにいるミディは5輌だ、ならば1輌1発で倒せば弾が余ることだが自信がない。

「ライアットガンが通用しかなった機体にリボルバーの弾が通用するのか…!?」

と思わず声に出てしまう。打開策を必死に考えるが何も思い浮かばない、その間にもミディはドーファンの前に出てガンバルギーニの所にはいかせんと加速している

3秒待っても思い浮かばずこれ以上の思考は時間の無駄だと考え典子はインカムをオンにする

『隊長、先程倒した筈のミディが復活してます!ありゃ不死身ですか!?』

『…恐らく、機体の軽さを利用してダメージを軽減させてるんだと思います。不死身なわけではありません』

『あの機体にそんな特徴が!』

『しかしそう何度もライアットガンの攻撃に耐えられる訳ではありません、恐らく次当てれば…』

『それが、腕が壊れて撃てないんです!』

『分かりました、ではリボルバーで落ち着いてウィークポイントを狙ってください。アヒルさんチームならば出来ます!』

『了解!』

通信を切った典子は手をレバーに戻して目をモニターに集中させる。

「忍!今の速度を保ったまま走ってくれ!敵が前に出てきたところでおっぱじるぞ!」

「はい!」

モニターを凝視したのは機体の揺れの癖を掴むためだ、揺れさえ読めれば腕を調整して撃つことが可能なので揺れによる照準のブレ問題が解決する、

時間は奴らが前に出るほんの数十秒の間だけだが驚異的な集中力さえ有ればこの時間でも読むのは可能だ。そして彼女は今いわゆる“ゾーン”の状態であった。

………よし、読めた!いけるぞコレは!バレー部の名にかけても絶対当ててみせる!

そう心得た時、ミディは機体の横を走っていた

「よし、忍!そろそろだ!気合入れていくぞ!バレー部、ファイト!」

「オーエス!」

そしてとうとう機体の前に立たれさっきと同様にバック走行をしようと転換する

確かミディは背中にエンジン冷却部があったはず、そこに当てれば確実に倒せる

レバーを強く握り締めてトリガーに指をかけようとしたその時、機体が大きく揺れた、衝撃で思わず押しそうになってしまう

「どうした!」

「すいません!いきなり前方にパイソンとラーダーが出てきてぶつかりそうになりまして…!」

「大丈夫か!?」

「えぇ、すんでの所で避けましたからお互い傷一つ付いてません」

「よくやった!」

短く褒めて再びレバーを握る手に力が込められる、そして照準を合わせトリガーを押した、ドン、と音がして1発の弾が飛び出し見事狙った場所へ命中した。被弾したレイバーはその衝撃で倒れ白旗を上げた

その光景を目にし典子はニッと笑い次の目標…バック走行しこちらを撃たんとしているミディに銃口を向ける

「今度はフロントライトを狙う!」と自分に言い聞かせ再び発砲、命中し撃破を確認した。

「よしよし、良い調子だ!次は…!」

典子は機体を挟み込みように走ってるミディに目をやりこう言う

「忍!胴体を左に曲げてくれ、私が撃ったら今度は逆方向に頼む!」

「分かりました!」

左を向き発砲、右を向き発砲、その度に的確に弱点に当て撃破していく

最後の1輌となったミディはバック走行しながら撃つことしか出来なかった

「これで…ラスト!」

轟音が鳴り放たれた弾薬は一寸の狂いなく弱点であるエンジン冷却部に当たった、白旗が出て動きが止まらせる

「よし!残りはガンバルギーニだけだ!」

「ここまで来たら絶対倒しましょう先輩!」

ドーファンは森林地帯へと入る、このまま真っ直ぐ進めば奴がいる事を妙子達は教えてくれた。典子はモニターを凝視し前方に奴が写ってないか探す、森林地帯を走る事20秒。突然対物センサーが反応して音が鳴る

「いた!距離前方15m!例の赤い奴だ!」

「今の距離ならギリギリ射程内です!キャプテン、お願いします!」

銃を構え落ち着いてガンバルギーニを狙う、目指すはミディと同じエンジン冷却部。相手はまだ気づいていない今がチャンスだ。

そう思いトリガーボタンに指をかけた瞬間、奴が右へ移動した

____気づかれたかっ…!?

再度照準を合わせるも今度は左に移動した

これで確信した

「忍、どうやって私達居るのがバレてるみたいだ…!」

「えっ!?あの機体で!?後ろに目が付いてるんでしょうか…?」

忍があの機体と言ったのはガンバルギーニはレース用レイバー、対物センサーや熱源センサーと言ったものは積んでない、レイバーが接近した事を知らせる要素が何処にもないからだ。

怪訝に思いもう一度照準を合わせるとキラッと何かが光るのが見えた。それで典子は察した

「そうか、サイドミラーだ!!」

「成る程…!レース用レイバーだから普通のレイバーとは違ってそんなものが!」

気づかれてしまったからには圧倒的にこちらが不利になった、照準を合わせる度にチマチマ動き落ち着いて狙えないからだ。

「こんな森林地帯をジクザク運転とは…!」

「よっぽどの腕に自信がないと出来ませんよ、相手の操縦士敵ながら凄いですね」

ダメ元で撃てば当たるかもしれないが弾はもう1発しか残ってないのだ。この状況が典子を撃てなくさせていた、そうしてるうちにもどんどん敵は合流しつつある、彼女は自分の勇気のなさに内心舌を打つのであった

 

 

一方、森へ入り込んだアンチョビ達を追いかけてるみほ達は木々の間を縫って激しい銃撃戦を繰り広げていた。しかしどの攻撃を掠めるか地面を抉るだけに終わる

「流石にこう遮蔽物が多いと当たらんものだな…弾をもう半分使ってしまった…」

「麻子さん、もうすぐ森林地帯を抜けて一旦林道を走るからその時に後ろを取って撃とうか」

「フラッグ車を狙うのか?」

「いえ、護衛として付いてるミディを狙って」

「分かった」

そう言ってる間に森林地帯を抜け先に出ていたアンツィオのレイバーの後ろをつくことに成功した。背後を取られたことに気がついたアンツィオは走るスピードを上げ逃走を図る、が

「ミディは弱点をよく狙ってと…」

と呟きながら撃った麻子の一撃によりあえなくミディは撃破、ハンニバルもやられた今これで護衛のレイバーは全てやられてしまった。

白旗が上がったミディを見てみほはインカムに手をかける

『これで護衛がいなくなりました、合流される前に決着をつけます!』

『前もそんな状況だったような…まぁいいや西住ちゃん、こっから先の予定は?』

『あんこうが高台の頂上に行きそこを占拠しますのでカメさんはプロトタイプを下までおびき寄せてください』

『フラッグ車が単独になるだろ!?』

『大丈夫です河嶋先輩、むしろそれが目的です』

『相手の一発逆転を狙いたい心理を利用するって訳か、西住ちゃんも中々ズルくなったんねぇ。んじゃ行ってくるから西住ちゃんも頑張ってね〜』

と再び森林地帯に入ったタイミングでアトラスは単独行動を開始した

高台へ続く道を歩いてる間みほは通信を入れる

『ウサギさん、アヒルさん、カバさん、現在の状況を教えてください』

『こちらカバ、交戦の末相討ちで終わった』

『アヒルチームはミディを倒してガンバルギーニを追跡中です!』

『ウサギさんはハンニバル小隊3輌の内2輌を撃破、現在残り1輌を追っかけてます』

『了解、アヒルさん、ウサギさんは追跡対象の撃破後そのまま直進して下さい、そうすると敵のフラッグ車を包囲出来ますので』

2人の返事を聞いて通信を切る、ふと麻子を見ると何やらニヤついていた

「どうしたの麻子さん?」

「いや、包囲戦を仕掛けられたこの試合を包囲戦で終わらせようとするのが何だか面白くてな。あんまり今回活躍出来てないから最後ぐらい美味しい所は持ってきたいもんだ」

「まぁ今回はフラッグ車の護衛が優先だからしょうがないよ」

と言いながらモニターを確認する

…もうそろそろ目標地点に到着か

『カメさんそろそろ誘導完了しそうだよ〜』

『了解、こちらももう少しで到着します。誘導が完了しても立ち止まらず機体を前後に動かして照準をブレさせるようにして下さい』

『ほいほい、んじゃね〜』

と言ってる間に高台の頂上へとたどり着いた、見下ろすとプロトタイプに追いかけられているアトラスが見えた。

麻子がレバーを動かし照準を調整する、ラーダーも同様に行う。

そして追い詰めたと確信したプロトタイプが停止しリボルバーカノンを構える。そして発砲するもアトラスが不規則に動いてるせいで当たらない。これを見てみほは再びインカムに手をやる

『次の発砲までにケリを付けます!麻子さん、華さん!』

『分かりました』

「ほ〜い」

____撃てっ!と言おうとした矢先みほは森の奥から何やら赤いものが見えた、何かは分からないが猛烈に嫌な予感がする。ここで撃てば逆にこちらがやられる…そんなビジョンが浮かぶ。

確実にこの予感が当たるのかと聞かれたらそうとは言えない。だが“土壇場の時こそ自分を信じろ”そう華に言われたことを思い出しみほは自分の予感を信じることにした

『優花里さん!ラーダーを真横にずらして!』

『りょ…了解!』

「麻子さんも!」

「このタイミングでどうしてだ!?」

「お願い!」

「…分かった」

互いの機体が横へずれたその瞬間間を通り抜ける光が通り過ぎたのをそこにいた5人は見逃さなかった

『あの光…カノン砲…!もしや!』

『優花里さんの想像通りだよ、来た…!』

『みぽりん、何が来たの!?』

『…ガンバルギーニだよ』

今の攻撃に当たっていれば今頃自分たちはやられていた…そう思うとゾッとしなかった

そして姿をはっきりと表したガンバルギーニはプロトタイプの前に密着する

そして四足走行である筈のガンバルギーニがゆっくりと立ち上がる、まるで盾になると言わんばかりのようだ。そして車体下側に設置してあるカノン砲が動きアトラスを定める

思わずみほは息を飲み込んだ

「二足…!?ガンバルギーニが!?」

「凄いことなのか?」

「四足が基本の機体を立たせるっていうのは物凄く難しいことなんだよ、いくらオートバランサーがあってもね…」

「私に引けを取らない操縦士と言う訳か…」

ドン、と音が鳴り響いたのが聞こえ続いてパイソンとラーダーが現れた

『ウサギさんチーム小隊の殲滅に成功しました…ってアレ、どうしたんですかこの状況!?』

王手と思った矢先この予想外の展開にその場にいた全員が驚愕する

…みほ以外を除いて、膠着状態が続く中遅れてドーファンが見えてきた

『隊長!すいません合流させるまで倒せませんでした!』

『大丈…

『おい、西住どうするんだ!あんな武器もう一度使われたら洒落にならんぞ!』

みほが典子に返事をしようとした瞬間桃が割り込んでくる

『大丈夫です、お二人とも。ガンバルギーニはもう撃てませんから』

確かに、最初の一撃以来あの機体が撃ってはこなかった。そんなに強力な飛び道具なら盾なんかにならずとっととフラッグ車を撃てばいいだけの話である。そうしないのは何故か、疑問は尽きないが桃はこれ以上この掘り下げるのは時間の無駄だと思いやめた

 

インカムから手を離しみほは麻子に話しかける

「麻子さん、敵フラッグ車だけを狙える?」

「無理だな、完璧にカバーされてる。ここからじゃガンバルギーニしか狙えんぞ」

「それじゃあの機体がなければ狙えるってわけだね」

「あぁあれさえ無ければこんな場所から狙うのは造作もないことだ」

「分かった」

『華さん、ガンバルギーニの足だけを狙って』

『足…だけですか?』

『そう、そうするとガクって機体が下に向くからそこを麻子さんが狙います』

『成る程…』

『撃つ時は合図するから』

「麻子さん」

「聞いてたさ、相変わらず突拍子もないことを思いつくな」

「これも麻子さんの腕を信頼してるからだよ」

「…っ!さらっと照れることを言うんじゃない」

ほんの少しだけ顔を赤らめながらも麻子はしっかりと照準を定める、その間華もチェーンガンをガンバルギーニの足へと向ける、その間にも相手は一歩も動かないでいた

『準備完了しました』

『了解…撃てっ!』

チェーンガンから大量の弾が放たれ標的へと命中する、片足をやられたことで機能が停止しガンバルギーニの足が曲がり機体が下を向く。すなわちそれはカバーする面積が減ったことを意味する。こうなってしまった以上ガラ空きになったプロトタイプを狙うことは赤子の手を捻るより簡単なことは自明である

ガンバルギーニが下を向いた瞬間麻子はトリガーボタンを押す。

銃声が山にこだまし静寂が流れる、そしてこだまが響き終わると次にポシュッ、と言う気の抜けた音が聞こえた。

みほはモニターからプロトタイプを見る、その機体のコクピットは色鮮やかに染まっており本来白旗であるはずの物も等しく染めていた。

『アンツィオ高校フラッグ車走行不能!よって大洗女子学園の勝利!!』

勝利したことを告げるアナウンスがはっきりと聞こえる。

2回戦も突破出来たことを理解するとみほは小さく息を吐く、通信機から仲間の喜びに満ち溢れた声、笑いが聞こえる。勝利した時にしか味わえないこの暖かな一時をみほは噛み締め思わず自分も釣られて笑ってしまうのであった

 

キャリアに乗せられコトコトコトコトと夕陽に照らされながら機体が揺れる、麻子はデッキダウンした瞬間に寝てしまい安らかな寝息を立てている

みほは1人にさせてあげようと思いキャリアの助手席へと移動する

「お、西住さんお疲れ様〜」

「ナカジマさんもお疲れ様です、いつもありがとうございます」

「なになに、気にしなくていいよ。これが私達が出来ることなんだからさ」

「ありがとうございます、ところでナカジマさん」

「なんだい?」

「私、試合の最後でガンバルギーニがあんな強力な武器があるのに連発しなかったのは何か事情があると思って『撃てないだろう』と思って指示を出したんですよ、でもその“事情”って何か終わった後物凄く気になっちゃって…」

「成る程ね、多分それはバッテリーの問題だと思うよ」

とナカジマは運転しながら話を続ける

「カノン砲ってのは本来ブロッケンの装備で奴のバッテリーのエネルギーを利用することで発射出来るんだ、んでもガンバルギーニにはこれを撃つだけのエネルギーを搭載したバッテリーが存在しない。ならどうするか、西住さん分かるかな?」

「バッテリーを弄ったとか?」

「その通り!バッテリーを弄って走行するとカノン砲の分のエネルギーを充電するシステムにしたんだと思うんだ」

「でもバッテリーを弄るとルールに引っかかる気がするんですけど」

「う〜んでも本来の性能以上は出してないからね、ガンバルギーニのバッテリーをブロッケンのバッテリーに変えたりなんかしたら問題だけどそうじゃないなら大丈夫だよ」

「そう言うことでしたか」

「ま、あくまでも私の仮説で本当かどうかは向こうの整備班に聞かなきゃ分かんないけど。もしそうなら向こうの整備士達はかなり優秀だと思うよ」

「会ってみたくなりました?」

とみほはいたずらっぽく聞く

「そりゃね、これでも整備士の端くれだからさ。互いの技術を教えあったり聞いたりしたいもんさ…っとほい到着」

車が集合場所へと到着し止まる、ドアを開けるとムアッとした空気が入ってくる。それに若干の気怠さを感じながらみほは麻子を起こしに行く、ハッチを開くとてっきりまだ麻子が寝てるものかと思えば起きていた。曰く最初は眠れたけど暑くてとてもじゃないが寝ていられんと環境になったとのことらしい

暑い暑いとブツブツ言いながら麻子が降りみほもそれに続く、集合場所には既に全員が集まっており沙織達もそこに居てみほ達を見つけると手を振ってきた。

 

集合してから暫く経った頃アンチョビが手を広げながらみほに近づいてきた

「いや〜今年こそいけると思ったんだけどな〜」

と言いながら手を握る

「決勝まで行けよ?私達も全力で応援するからな!!」

「はい!頑張ります!」

「そうそうその意気だ!お前らも応援するよな!?」

とアンチョビが振り返った先を見るとアンツィオの生徒が集結し手を振りながら賛同の声を上げていた。

「ほら笑って!もっと手振って!」

と激しく手を振っているアンチョビをみほはちらりと見る、その顔は輝かしい笑顔だった

あの笑顔は悔しさを隠しながら出す偽りの笑顔ではない、本心から出た純粋で綺麗な顔だ。やっぱりアンチョビさんはケイさんに似てるな、勝ちには拘ってるんだろうけど試合自体を楽しんでるんだ、それに敵味方関わらずリスペクトして自分を負かした相手を称える事もできる。だからあんなにいい笑顔が出来るんだ

去年までの試合は終わった後は虚しいものだった、感じられるものもなく学ぶものもないただ「敵を倒した」それだけのことだった。だが今年はどうだろうか戦う度に新たなことを学び糧にしていく、終わった時の空気が全然違うんだ。爽やかな空気だ、私は2回戦目を勝ってようやく確信できた

「私は特車道を楽しめてる」と言うことと「私だけの特車道の断片が見えてきたこと」を

 

そうみほが思ってるとアンチョビが咳払いをして持っていた鞭を高らかに掲げる、その瞬間アンツィオの生徒達がいそいそと動き始めトラックへ向かうと何やら調理道具のようなものを運んでくる

「何が始まるんです?」

そう聞くとアンチョビはくるりとこちらを向いた

「諸君!試合だけが特車道ではない!試合が終わればそれに関わった選手やスタッフを労う!勿論相手でも同じだ!戦いが終われば私達は等しく特車道の選手だからな!これが、アンツィオの流儀だ!」

そう言ったアンチョビの顔は誇りに満ちていてみほはその顔にまた違った魅力を感じた

あっという間に食事の支度が終わり大洗一同を驚かせる

「凄い物量と機動力…!」

「我が校は食事の為ならどんな労も惜しまない、見よ!この技前!…この子達のやる気がもう少しだけ試合とかに生かすことができりゃ万々歳なんだけどな…んまぁそれは追々やるとするさ!それじゃいいかお前ら!ちゃんと手を合わせろよ!せーの!」

「「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」」」」

そこからはもうドンちゃん騒ぎだった、戦った同志が肩を並べて同じ釜の飯を食らう。最初こそ変な空気が流れたがアンツィオのノリがいい性格と大洗の適応能力の高さがうまい具合に利益をもたらし数十分後にはすっかり打ち解けていた。その中には自動車部も居てパスタ片手に向こうの整備士と語り合いご飯そっちのけでガンバルギーニの整備に行こうとするぐらいだった

そんな暖かい雰囲気を遠くでカエサルが見ている、カルパッチョに呼ばれたのだ。久しぶりに会うのだから静かな場所で2人きりで話したいと言うことらしい

「たかちゃん、あの機体の操縦士だったんだね」

「あぁ、ひなちゃんがあの機体を動かしてるって言うもんだから驚いたよ」

「なぁに?意外だった?」

「う〜ん操縦士自体が意外じゃなくてひなちゃんがあんな操縦をしたことが意外だったんだ、あんな大胆で派手な動きを昔から大人しかったひなちゃんがするなんてさ」

「あら、それを言うならたかちゃんも同じよ?私と同じくらい大人しくて小さい頃スカーフを外したら「返して〜」って涙目になってたぐらいのたかちゃんが銃を使ってつば競り合いするなんてねぇ」

「昔の話を蒸し返さないでよ〜!」

と言いお互い笑い合った、一頻り笑うとカルパッチョが優しく微笑みながら話す

「私達変わったってことかな?」

「いや、変わったと言うより“成長した”と言うことだと私は思うよ。

性格の根っこの部分は変わってないんだお互い大胆な行動が出来る精神に成長した訳さ」

「成長かぁ…確かに私アンツィオに来てから色んなことがあったからなぁ」

「ひなちゃん、来年も戦おうね!」

「うん!来年はもっと成長した姿を見せてあげる!次こそは引き分けなんかで終わらせないからね!」

「こっちのセリフさ!…おや?」

「?どうしたのたかちゃん」

「お〜いお前たちいるんだろう!」

カエサルが木箱に向かって呼びかけるとひょっこりとエルヴィンらが出てきた

「生徒会が隊長達を集めてミーティングするらしくてな、んでも取り込み中みたいだし私が代理で出ようか?」

と申し訳なさそうに帽子を掛け直しながらエルヴィンが言う

カエサルは振り返りながら「今行くよ〜!」と返事をした、そして固くカルパッチョの手を握りしめる

「じゃあね」

「うん、元気でねたかちゃん」

と言うとカエサルは不敵な笑みを浮かべながらこう返事をした

「たかちゃんじゃない、私はカエサルだ!」

そうしてカエサルはエルヴィン達の元へ歩いていく

そうね…たかちゃんはもう私が思ってるたかちゃんじゃなくて成長した『カエサル』として歩いてるんだね、なら私も成長してるのだ。来年会ったらこう呼んでもらおうかしら

_____カルパッチョってね

 




試合が終わりひと時の休息が訪れる、突如我らが生徒会長角谷杏が銚子へお出かけしてくると言い出した
そして銚子で出会ったのは一回戦の相手であるサンダースのケイであった。そして明かされる杏の過去、彼女にとっては人生のターニングポイントである特車道中学生時代について
次回、「杏備忘録」ターゲットロック、オン!
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