今回は一切レイバーが登場しません、それでも良いと言う方はどうぞお楽しみください!
楽しかった宴も終わりアンツィオは撤収の準備をしていた、支度が早ければ片付けも早いものでものの40分程度であんなに賑やかだった場所がただの草地へと戻った。アンチョビは全選手を集合させ集まったのを確認すると咳払いし話し始めた
「よくやったお前ら!1回戦落ちが当たり前であった我らが1回戦を突破したのもこれも一重にお前たちのおかげだ!」
「いやいや!ドゥーチェのおかげですよ!私達バカだからドゥーチェの言うことホイホイ聞くことぐらいしか出来ませんでしたよ!」
と生徒の1人が言うとアンチョビは微笑んだ
「何言ってるんだ、お前たちが私の考えた作戦を私の想像通りに実行してくれたから1回戦は勝てたんだぞ、そう自分を卑下しないでくれ。それにお前たちの操縦技術はそんじょそこらの奴らより上なんだぞ?レイバー使って学園艦内を暴走できるなんて普通の腕じゃないからな。だから自信持てよ、かと言って慢心するんじゃないぞ?自信と慢心は違うからな?」
そう言いながら笑うと生徒達はつられてクスクスと笑うのであった
「さて、お前たちも分かってるとは思うが…私はこの大会を持ってドゥーチェから降りることになる」
驚愕の発言に生徒達は驚きの声を上げる
「えぇ〜!ドゥーチェがドゥーチェじゃ無くなるんですか!?」
「そりゃお前私こう見えても3年生だからな、夏の大会が終われば引退だよ。何十年前は冬にも大会があったらしいがな。まぁドゥーチェの座を退くってだけでOBとしてちょくちょく顔を出すつもりだけど…ってお前ら泣くな!」
何かしらのリアクションはあると思っていたが泣かれるのは予想外のことであったのでアンチョビは思わずペパロニとカルパッチョに助けを求めようと顔を見るがその2人も泣いていた
「えぇい泣くんじゃないお前ら!よく聞けよ!次のドゥーチェはカルパッチョとペパロニをドゥーチェと任命する!私がいなくなってもペパロニ達のことをよく聞くんだぞ!
…どうした、返事くらいしろよ!いつも見たいに元気な声出してさ!だからさ泣かないでくれよ…私だって…私だって泣きたいんだからなっ!」
何故だろう、喋る度に心がキュッとして視界がどんどんボヤけてくる。最後なんてもう誰の顔も見えなかった。ドゥーチェたるもの泣かないと決めていたのに、頬に冷たいのが走った
どうしてこんな感情になるんだ?試合に悔いなんてないしこの役職が辛かったわけでもない。あぁそうだ、やっぱりそうだったんだ。自分はコイツらと、バカで単純だけど素直で仲間思いで試合には全力で挑んでいたコイツらと試合が出来るのが大好きなんだ。こんな最高な奴らと一緒に戦えないのが辛いんだ、だけど泣いてばかりじゃいられない。ドゥーチェとして最後の仕事を全うしなくては、仲間達に大切な事を伝え引き継がなくちゃ…!
アンチョビは目をジャケットの袖で拭き、ドゥーチェのトレンドマークである鞭を星空に向かって突き上げる
「いいか!私がドゥーチェじゃ無くなっても練習は真面目にやれよ!ノリと勢いを大切にしろよ!そして何より特車道を全力で楽しめ!勝ちに拘るあまり楽しさを失うなんてことは絶対に止めてくれよ!…最後に一つだけ聞かせてくれ!お前たちは、私と一緒に戦って楽しかったか!?」
思ってた事を洗いざらい吐き出す、時間が停止したように感じるぐらい静寂に辺りは包まれた。だがそんなものは一瞬だった、スッと息を吸う音がしたかと思うと
「最高でしたよ!!!!アンチョビ姐さん!!!!」
「…ペパロニ!」
「私も!ドゥーチェと一緒に戦えて本当に良かったと思ってます!!!私は貴方のおかげで貴方が私を誘ってくれたおかげで成長することが出来ました!!!」
するとその声に続くように「私も」と言う声が絶えず上がってくる
「カルパッチョ…皆んな…!」
そしてペパロニが再び大声で「ドゥーチェ!」と叫ぶ、カルパッチョが生徒全員がドゥーチェと叫び続けている
「「「「「ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!」」」」」
アンチョビは涙が止まらなかった、もう抑えようとする気力すら湧かなくなる
「お前ら…!本当に、ほんっとうにありがとうな!!!」
暫くの間、ドゥーチェコールが鳴り止むことはなかった。
夜道にキャリアを走らせること数十分、アンツィオの学園艦に到着した。搬入口にレイバーが次々と入れられる、アンチョビは先に降りて学園艦入り口で待機し整備班からの連絡を待った。
待つ間彼女は先ほどの出来事を思い返していた、体からあの熱気が消えない。仲間たちのことを思うと目頭が熱くなりまた皆んなの前で泣きそうになったので別のことを考えて気持ちを紛らすことにした
_____アイツ…西住みほと言う奴は確かに強かった、ペパロニがミスしたとは言え作戦を見破りすぐさまこっちの対策を講じどんどん仲間がやられてくる中まるで一発逆転したい私の心を見透かすようにフラッグ車をちらつかせた。今思えばアレは罠だったんだよな、でもあん時仮に罠だと分かったとしても多分そのまま追うことしか出来なかったと思う。そしてやられてしまった…
改めて考えると本当大した奴だよ西住ってやつはさ、最初こそこののほほんとしたのがあのサンダースを破った奴なのかと信頼出来なかったけど私の目ってのも当てにならないもんだな。すれ違ったあの時奴の表情が見えた、息を飲んだよ。何処が「のほほん」だ、あれは確かに「隊長」としての目だった。常に戦況を見極め最後まで諦めない、不屈の闘志を持つ目だった…この瞬間分かったね、アイツがなんで彼女を隊長にしたのか。あんなパッと性格が切り替わる奴は二種類しかない、まともじゃない奴か天才か、だ。彼女は勿論後者だよ。杏のことだ自分の様な凡人よか天才に任せた方がいいだろうとでも思ったんだろ。馬鹿な奴だな、お前も十分才能があるっていうのに…んまぁここに居ない奴のことをグダグダと考えてもしょうがない、私達はそんな天才と一戦交えることができたんだ。いい経験になったさ、私にとってもみんなにとってもな
そんなことを考えているとレイバーの収容が完了したらしく整備班から連絡が入る。解散指示を出そうとしたが既に全員客席の方へ向かったと聞いて思わずこけそうになる。
『すいませんドゥーチェ、レイバー降りるなり皆んな一目散に駆け出すんだもの止めようがなくて…』
『まぁしょうがないよな、一日中お祭り騒ぎだったんだ。疲れて寝たくなるのも頷けるな、帰っちゃったもんはしょうがない、お前達も解散していいぞ?』
『マジっすか?あぁ…でも遠慮しておきますよ、どうせ暇ですから整備でもしてます』
『分かった、程々にしとけよ?』
通信を切りアンチョビは客室へ向かおうと思ったがおそらく寝てる奴が多いだろうし起こしちゃ悪いから、と思いデッキに行くことにした。柵に両手を乗せ体を預けると夜風が心地よく思わずため息が出る、こんなに気持ちいならいっそここで寝てしまおうかと思う程だった。ボーっとして数分が経ったころ左右に自分と同じ姿勢でもたれかかる人物が見えた
「ペパロニ、カルパッチョ、お前ら寝てるんじゃ無かったのか?」
「少し姐さんと話がしたくて…デッキに行くのが見えて行こうとしたらカルパッチョもついてきたんす」
「話って何だ?」
そう聞くと2人は深妙な顔をして
「アタシよりカルパッチョの方が…
「私よりペパロニの方が…
「「ドゥーチェとして相応しいと思うんです!」」
突然の告白にアンチョビは面をくらう
「い、いきなりどうした!?理由を聞かせてくれ!まずペパロニから頼む!」
「私…馬鹿でアホで間抜けだからいつも姐さんに迷惑かけてて…今日の試合もアタシがバカやらかさなければ勝てたかもしれないのに…!私の…アタシのせいで姐さんの最後の試合が台無しにしちゃったんす!そんなバカにドゥーチェなんて出来っこないんす…!私なんかがやるくらいなら真面目で賢いカルパッチョの方が…!」
泣きながら喋ったペパロニににアンチョビはそっとハンカチを渡す
「…言いたいことはあるが、ひとまず置いておこう。次にカルパッチョ頼む」
「私は皆んなとは全然性格が違くて…正直浮いてるなって思ってるんです。ですから統率していく自信が無くて…ドゥーチェの様にいかないと思うんです、だったら私より人気が断然あってミディ小隊をまとめてるペパロニの方が向いてるんじゃないかって…」
2人の話をアンチョビは腕を組み頷きながら聞いた、そしてゆっくりと顔を上げた。彼女がどんな顔をするのか2人には予想ができなかった。怒るだろうか?呆れるだろうか?
恐る恐る顔を見ると彼女は飛びっきりの笑顔を見せていた
「そうかそうか…お前らそんな風に考えてくれてたんだな。それじゃ今度は私が喋ってもいいか?」
こくん、と首を縦に振るとアンチョビはペパロニの両肩を掴みながら話初めた
「確かにお前は馬鹿でおっちょこちょいな所はある、だが今回の試合負けたのはお前のせいじゃない。作戦が失敗したときの代替策を予め練っておかず敵の罠にまんまとハマった私のせいだからな、んで、お前はさカルパッチョも言ってたが統率力は優れてるんだぞ?荒くれ揃いのウチの生徒達をまとめて指示を飛ばせる、ドゥーチェとしての素質はあるとは思うんだけどな」
話終えると今度はカルパッチョの肩を掴んだ
「人気がないだなんて何を言ってるんだよ、ハンニバルに載ってる奴はみんな言ってるんだぞ、『カルパッチョ姐さんは走りと同じくらい楽しい射撃の世界を見せてくれた』とか『カルパッチョ姐さんは暴走しがちなウチらの面倒を見てくれる頼れる人』とか私にニコニコしながら喋るんだよ。んでな『本人にも言ってあげろよ』と言ったらそいつら口揃えて『なんかが照れくさいんですよね、私達とキャラが違うからどう話せばいいか分からなくて…』って言うんだよ。つまりだな、お前達はお互い心の壁を作ってるんだ、だから壊さなきゃならない。そこは課題だな」
「心の…壁…」
「あとペパロニも言ってたけどお前はここじゃ一番頭がいいと私は思ってるぞ?私の横でよく提案してくれたし実際作戦案が煮詰まった時には物凄く助かったんだよ」
そう言うとアンチョビは今度は2人の片肩を掴んだ
「私がなんでお前らのどちらか1人じゃなくて両方を選んだか分かるか?お前ら2人が合わされば私以上にこの学校を高みに引っ張っていけると見込んでるからだ。
…つまりだ、頭脳派のカルパッチョ、行動派のペパロニ、お前ら2人で1人のドゥーチェになるんだよ」
「「2人で1人のドゥーチェ…!」」
「初めは上手くいかない事が多々あるかもしれない、だがそんな時落ち込まず常に上を向いて歩いて欲しい。笑顔を忘れないでくれ。笑顔は明日の力への糧となりお前らの背中を、皆んなの背中を押してくれる存在だからな。私がお前達に教えたい事はそれだけだ」
「姐さん…」と呟きながらペパロニはハンカチで目を拭い息を大きく吸った
「私やってみるっす!カルパッチョと一緒に!姐さんの教えを受け継いで!」
私も、と言いカルパッチョも息を吸った
「私もドゥーチェをやります!ドゥーチェと同じくらい…いや、それ以上のドゥーチェになってみせます!ペパロニと共に!」
カルパッチョが言い終わるとアンチョビはいたずらな笑顔を浮かべた
「ほう?私を越えてみせるのか?面白いこと言ってくれるじゃないか、お前らが成長するのが楽しみだ」
と言うとアンチョビは2人の肩を掴み引き寄せ互いの顔が密着する
「頑張れよ、ドゥーチェ」
と小さく呟き吸った押し戻した、そして手をパン、と叩きくるりと背中を向ける
「さて、重い話はこれでお開きとしよう。新ドゥーチェを祝って宴会やるかぁ…私達だけでさ」
「良いっすね姐さん、確かお菓子持って来たんでそれ食いましょうよ、んじゃ取ってくるっす」
「それじゃ私は自販機で飲み物買って来ますね」
「頼んだ!金は後で払うからな〜!」
2人が駆け出すのを見てアンチョビは人知れず微笑んだ。
____さっきまで泣いてた奴とは思えないほどのテンションの変わりようだな。だがそれが良いんだよ、それがアンツィオなんだ、こんな楽しい仲間と一緒に戦えたこの3年間はとっても楽しかった…
ふとポケットに手を入れて愛用してた鞭を取り出しじっと見つめる、振り回しすぎてちょっとクセがついたそれを見ると思い出が溢れて止まらない。また涙が出そうになる、泣いた顔で宴会なんか出来ないと思った彼女は急いで目を擦り鞭をポケットに仕舞う。そしてこうポツリと呟いた
さようなら、ドゥーチェ、ようこそ、ドゥーチェ
月明かりに照らされたデッキは何時もより心なしか明るく見えたのだった
「Addio」と言うのは「さようなら」と言う意味なんですがニュアンス的には「もう二度と会えない、暫くの別れ」と言う感じですね。タイトルを付けるにあたって少しイタリア語を調べたのですが同じ意味の挨拶でも沢山の種類に沢山のニュアンスがあってとても興味を惹かれましたね。いつか習いたいな〜
それではご視聴ありがとうございました!