________一方的だ余りにも一方的だ。みほは杏に特車道を進められたのもそうだが存在することを知ってしまい脳のキャパシティが限界突破し思考停止状態になってしまった
…昼休みを終えるチャイムがなり沙織達は心配そうな目で見ながら自分の席へと座った。
「どうして」「何故」「特車道」「強制」「悪夢」様々な負の感情が押し寄せてきた。もはや昼休みの彼女とはまるで別人であった。そんな中自分を呼ぶ声が再び聞こえた、教師が自分を当てたのだ。そのことすら気づかずボーッとしてると保健室に行くことを勧められた。
保健室
みほ以外にも沙織、華が一緒について来てくれた。友達になったばかりとは言え尋常じゃない様子を心配し思わず自分達も保健室へ行くと言ってしまったのである。静寂を割いて沙織が訪ねる
「ねぇみほ、生徒会長に何言われたの?」
「今年から特車道が復活したって…」
「特車道と言うと乙女の嗜みと呼ばれるあの…?」
「それとみほに何の関係が?」
「私に特車道やれって…」
沙織は益々分からず生徒会が恋のトラブルで嫌がらせしてるのではないかと言う頓珍漢な予想をしてみほは否定する。すると華が生徒会長からご指名なんて特車道の達人ではないかと聞いて来た
沈黙がしばらく続きとうとうみほが話した
「…私の家系はね代々特車道で活躍してるの、でも私はあんまりいい思い出がなくて。それで特車道から避けるためにこの学校に来たの」
みほは初めて友達に自身の境遇を明かした
「じゃあ無理してする事はないじゃん」
みほは驚いた、同情されたからである。何も同情されたことに腹を立ててるのではない、今まで弱音を吐いたらすかさず叱られたのだ。誰かに同情されたと言う経験は無かったのである。
そして華も生徒会に断り入れるなら私達が一緒に付き合うと約束してくれた
「ありがとう」
少し涙ぐみながらこう言った。今のみほにはそれしか言う言葉が見つからなかった
授業を終えるチャイムが鳴りこれにて下校と思ったらスピーカーから生徒会が全生徒を招集すると言う声が聞こえた。
体育館
どうやら必修選択科目についての説明があるようだ、しかし教師の姿は何処にも見当たらない。沙織曰くこう言う生徒会が呼び出すことはよくあるのだそうだ
そして辺りが暗くなり目の前で動画が流れ出した。
特車道とは簡単に説明すれば汎用人型作業機械=レイバーを使用して行う武道である、レイバーを使用し指揮車などの助けを借りチームワークでお互い全力を尽くして戦うことでそこから見えるものを習得して清く正しく美しい大和撫子になるにはうってつけの武道である。レイバーを使用した戦いという性質上大衆受けし熱狂的な支持を集め日本政府から「特車道連盟」なるものが作られ更に世界的にも流行してるのである。
尚使用できるレイバーは
・レイバー産業が最も栄えていた1998〜2001年までの機体
であり指揮車は特車道連盟が公認した車両が使用できる
以上の説明が流れビデオは終わり部屋が明るくなった
広報の桃が言うには数年後に特車道の世界大会が開かれるため文科省から全国の高校、大学に特車道に力を入れるようにとお達しが来たということで大洗もその要請を受けて特車道を復活させたそうだ。それにあたって特車道を履修すると様々な特典が付くと杏は言い小山にバトンタッチした。小山曰く特車道を履修し優秀な成績を修めると
・食堂の食券100枚
・遅刻見逃し200日
・通常授業の3倍の単位を与える
と言う正に至れり尽くせり夢のような内容であった
それらのことを告げると杏は「そんじゃ宜しくお願いしますわ」と言って他の二人を連れて帰って行きそこで説明会は終了となった
みほが浮かない顔をしながら教室に帰ろうとすると沙織がこんなことを言った
「私、特車道やる」と。
理由はモテるかららしいがそんなことはどうでもいい、みほは先程まであんなに特車道について不平不満を漏らしてた沙織がそんなことを言うのが信じられなかった。救いを求めるような目で華を見るがその華も特車道をやりたいと言い出したのだどうやら華道よりアクティブなことをしたいとのこと、しかし華はそれだけではなくこう言ったのだ
「西住さんもやりましょうよ」
……みほの中で疑問が生じた先程まであんなに自分の立場を理解して『嫌なら一緒に断ってあげる』と言った華がこうも言うなんて信じられなかったのだ。本人達は軽い気持ちで言ったのかもしれないがみほにとっては裏切り同然である、怒りよりも深い悲しみが湧いてきたしかし彼女はそれを表には出さず心の中で殺しとりあえず考えさせてくれと言い一人で帰路についた。
深夜 みほの自宅
帰ってから何にもする気がなかった、特車道の復活。そして強制、友達の裏切りに近い行為。それが合わさり彼女から行動力を奪った、ご飯も食べず風呂だけ入って思いっきり泣きそしてベットに入り考え事をして今に至る。冷静になって考えてみれば沙織はともかく華は「華道よりアクティブなことがしたい」と言い希望したのだ、彼女は自らの意思で変わろうとしてるトラウマを負い逃げた自分とは大違いだ、彼女は自分自身が情け無くなってきたそして友達が前に進みたいならそれを応援するのが友達と言うものではないかと思い目の前にある必修選択科目の紙にデカデカと書かれてある特車道に丸を付けようとする。しかしその瞬間今日見た悪夢の内容がフラッシュバックし彼女を恐怖で支配した、彼女は印をつけることが出来なかった…
みほの教室
重い顔でみほは沙織達に出会った机には例の紙が置いてあった。
「…ごめんね、私どうしても特車道をやりたくなくてここまで来たの」
ここで嫌われたって構わない、嫌われるのは辛いが一人でいることは慣れっこであるそう覚悟して二人の顔を見た。
すると二人は紙の方に顔を向けて特車道の印に二重線を引きみほのと同じ科目に印を付けた。
みほは自分に気を使ってやりたい科目を辞退したんだと思い堪らず二人は私に気を使わないで特車道を取りなよと言った。すると二人は微笑みながら
「みほのと一緒がいいの!」
「私達が特車道を取るとみほさんに辛い思いをさせてしまいますから」
「私、趣味は彼氏と合わせるタイプなの!」
あぁそうだった、この二人は最初からこんなにも優しかったんだ。彼女みほは彼女らの優しさに涙し大声を出して泣いた。
食堂
3人は適当な席につき食べていた、後ろにいるのは一年生だろうかテンションが高い声で特車道の事について話していた。すかさず空気を変えるために沙織達が帰りにさつまいもアイスを食べないかと誘ってきた、まるで女子高生みたいだと言ったらあんたも女子高生だと沙織に突っ込まれて笑った瞬間警報音に近い音が流れた
「普通一科2年A組 西住みほ 至急生徒会室に来ること」
恐らく必修選択科目についてだろう、覚悟を決めて3人は生徒会室までの長い道のりを勇ましく歩いた。
生徒会室
相変わらず薄暗い部屋にいつものメンバーがいた、高そうな椅子に座ってる杏が口を開く
「西住ちゃん、どうして必修選択科目特車道にしなかったの?ウチら特車道の唯一の経験者である西住ちゃんの力が必要なんだけど」
「私は特車道をやりたくなくて大洗に来ました、どうしても特車道はやりたくないんです」
「嫌がる生徒に強制してまで選ばせる権利なんていくら権力のある生徒会でもないはずです」
「そうだよ!みほはやりたくないって言ってんだから諦めてよね!」
二人が援護してくれた、言いたいことは言えた。汗が額に流れるのを感じそれを拭うことなく返答を待つ
「麗しき友情だねぇ、確かに生徒会には強制する権利はないさ、でもさぁ武部ちゃんと五十鈴ちゃっんだっけ?虚構をでっち上げてこの二人を学校から居られなくする事ぐらいする力はこっちにはあるんだよねぇ」
紛れもない脅しだ、堪らずみほは少し怒りを込めて言う
「脅すなんて、卑怯じゃありませんか?会長」
「脅しなんて人聞きが悪いなぁ、私は『お願い』してるだけだよ」
するとすかさず沙織が
「お願いにしちゃ随分無理があるでしょ」と突っ込む
華もそれに続いて
「どうしてもと言うのならば、私と沙織さんがこの船を降りて構いませんそれでお友達が救われるなら本望です」
と言う、その瞬間みほはハッとした。また「私のせいで誰かが傷つこうとしている」そんなこと再びあってたまるか、二人が犠牲になるくらいなら私が犠牲になる。もう悪夢は懲り懲りだから______
「私、特車道 やります!!」
場の空気が音を立てて凍り、そして沙織達の叫び声によって砕け散る
「んじゃ、西住ちゃん。宜しくね」
この時いつも気の抜けた杏の声が少し真剣になったのを3人は感じた。
帰り道
「本当に良かったんですか?私達に気を遣ったのでは…」
「ううん、それは違うよ華さん。華さんが私が傷つかないように…私を守りたかったように私も沙織や華さんを守りたかったんだ」
「みほ…」
「だから、これから宜しくね!沙織さん!華さん!」
3人は笑いながら、しかし力を込めて握手しあった。
そして翌朝、とうとう特車道の授業が始まった。辺りを見回すと先日食堂にいた一年生、歴史の偉人のコスプレをした集団、バレー部の格好をした集団がいた
「会長、思ったより人数が集まりませんでしたね」と少し心配した声で桃が尋ねるといつもと変わらない気の抜けた声で大丈夫大丈夫と言った。どでかい倉庫を開けると埃っぽい匂いが鼻を刺激する、中には一台の白とオレンジのカラーリングのレイバー…「イングラムエコノミー」が立って居た。みほはそのレイバーの前に行きレイバーの横にある階段を使って関節を触る。
「アクチューターもサスペンションも少し整備しなきゃいけないけど基本的には大丈夫そう、これならいけるかも」
そう言うとたちまち驚きの声で包まれた
さあ、ここから私の戦いが始まる、今度は絶対に逃げない。こうして西住みほ、第二の特車道人生が幕を開けたのである。
やっと始まった特車道、しかしレイバーの数が圧倒的に足りない。「んじゃお出かけしましょ」という杏会長の鶴の一声でレイバー捜索隊が創設された。そして自衛官、蝶野亜美の元模擬戦が開催された右も左も分からない大洗女学園にまともな模擬戦は出来るのか、次回「レイバー、乗ります!」ターゲット、ロックオン!