さて、余計な話もほどほどに
本編をお楽しみください!
一面の雪景色、荘厳で静寂なこの場所にドスン、ドスン、と音が聞こえてきた。それも沢山だ、そして地吹雪のように雪を舞い散る光景が見える。そしてとうとうその姿を現す。そう、地吹雪を起こしたのは紛れもなくプラウダ高校のドシュカだ。
そのキューポラーからひょっこりとカチューシャが顔を出す
『いい!?あんな奴らにやられた奴、この純白の機体に色を付けてきた奴はシベリア送り25ルーブルだからね!』
『日の当たらない教室で25日間の補修ってことですね』
『ガンガンに攻めるけどあえてフラッグ車だけを生き残らせて圧倒的な力の差を目の当たりにさせながら葬ってあげなさい!
たかだがサンダースとアンツィオ倒しただけの奴がこのプラウダには到底勝てないということを嫌というほど分からせてあげるんだから…!分かったわねアンタ達!?』
Ураааааааа!!!!
___特に西住みほ、角谷杏はプライドを完膚なきまでにへし折ってあの憎ったらしい面を恐怖と絶望と悲しみで塗り替えてあげるわ。私を侮辱したことを後悔しなさい…!
『カチューシャ、各員の外部スピーカー正常に作動しました』
『Так(そう)、なら景気付けにいつものアレやるわよ!』
『分かりました、それでは…』
カチッと音が聞こえ低重音が特徴な音が流れる。
ロシア民謡の“カチューシャ”だ、この曲はただプラウダ高校の士気を上げるためじゃない。わざと大きな音を出して“これからお前達を一人残らず倒す”と言うアピールでもあるのだ。綺麗な薔薇にはトゲがあるように綺麗な歌声には闘争心が隠されてるのだ
___誰と勝負をしようとしてるのかまず耳で分かってもらうわ。その次は目で、その次は体でね…!さぁ、この歌を聞きなさい甘ちゃん共!そして震え、怯え、竦みなさい!
暴君の笑い声がフィールド中を覆うかのように響き渡った
✴︎
「…呑気に歌なんか歌ってんなあの高校」
エコノミーの中、音響センサーを最大限にして断片的に聞こえた内容に関して麻子がだるそうな声で呟いた
「それだけ向こうも余裕シャクシャクって事だね。梓ちゃんの考えはあながち間違ってなかったのかも。…麻子さん、足、震えてるけど大丈夫?』
『暖房があまり効かないだなんて聞いてないぞ…西住さん、悪いけどそこの座席横のフックに引っ掛けてる魔法瓶とってくれないか』
『ちょっと待ってね…はい』
温かな魔法瓶を麻子に手渡しすると器用なもので片手で蓋を外した
『ありがとうさん。…さてさて』
開けた瞬間最近嗅いだことのある甘い良い香りがした
「麻子さん、それココア?」
「ん?あぁそうだ、出撃前に秋山さんから貰ってな。西住さんも飲むか?」
「それじゃ、私も御相伴に預かろうかな」
麻子がお猪口みたく蓋にココアをそそぎみほに渡す、量こそ少ないがグイッと飲むと体がじんわり温まるやはり冷えた体にはありがたい。
「レイバーには不凍液を使うが、ココアが私達の不凍液だな」
「本当にね…」
防寒具を持ってしてもしっかりと冷えるこの気温は長引けば操縦や射撃などに影響が出てもおかしくない、そう言う所では短時間で一気に決めた方が最善かもしれない、加えてこの雪だ、レイバーの操縦には慣れた私達と多脚式を使ってるレオポンさん達は大丈夫かもしれないけど二足歩行の96式改に乗ってるカモさんチームは大丈夫だろうか。
そう思いながらココアを飲み干して蓋を麻子に返すと麻子の表情がいつもより少し真剣な事に気がついた。どうしたものかと思いモニターを見ると比較的急な坂道に差し掛かっている事に気がついた。成る程、それなら真剣になるのも当然だ。坂道を登ると言うのは思ってる以上に難しい。レイバーは自動車みたいにアクセル踏んではい終わり、と言うわけにはいかないのだ。バランス、両足の力加減などを考慮しないとすぐに横転してしまう。と言っても普段はオートバランサーがあるからそこまでは気にしなくては良いのだが今回はそのオートバランサーに任せっきりではいけない所に来ているのだ。
そして数分かけてやっと登り切ることができた
「やっとこさいけたか…」
「お疲れ様、他のみんなは大丈夫かな?」
後方を振り返ると次々と仲間のレイバーが、指揮車が登り切っている姿が見える
「…?ちょっと待て、そど子が見えないぞ」
『何やってるんだそど子!前へ進め!』
と麻子の疑問と同時に桃が無線越しに叱咤する、どんな状況かと思いエコノミーを動かすと何回足を踏み込んでも前へと進まないでずるずる滑り落ちる96式改の姿が見えた
『すいませ〜ん前へ進んでるつもりなんですけどこの子が全然言うことを聞いてくれないんです〜』
とゴモ代の悲痛な声が聞こえた後、麻子がレバーを動かしてエコノミーを膝立ち状態にさせた、そしてみほの座席がある上の方を向くと
「ちょっと手伝いに行ってくる」とだけ言い残すとハッチを開けてコクピットから出た
麻子は器用に倒れてる96式改の足を上りコクピットハッチに乗っかるとノックして開けてもらう、中に入り必死にレバーを傾けてるゴモ代に声をかけた
「ちょいと変わってみろ」
座席を代わってもらい麻子は操縦桿を握りしめる
「雪の坂を登るときはな、気持ち強めにペダルを踏まなきゃダメだ。イメージとしては坂道を自転車で登る時の力ぐらいだな」
「ありがとうございます。…でも踏み込みすぎると転んじゃいますよね…?」
「そこは慣れとしか言いようがないな、こけそうになったらレバーを奥に引っ張れ。そうすりゃこける心配はまずない。オートバランサーが無くてもこいつは重心が低いから安定しやすいんだ」
「成る程…」
「ちょっと冷泉さん、人のレイバーに勝手に乗り込んどいて何講釈始めてんのよ!」
「気にするなそど子、出張料金は後で払ってもらえれば良いからな」
「出張料金って何よ!副業は校則違反よ!」
と言ってる間にどうにか坂を上り切ることができた
「それじゃお二人さん、たっさでな」
「…ありがとう、冷泉さん」
「ん〜?」
「二度も言わないわよ!」
と言うとピシャッと閉めてしまった
「可愛げのない奴だ」
そう呟きながら麻子は自機へと戻った。
その頃みほ達は進行方向を雪の壁に阻まれていた
『これエコノミーの腰ぐらいまでありますよ、どうしますか西住殿?』
『ラーダーのスモークグレネードを雪の壁に向かって発射してください。あれには炸薬としてTNTが採用されてるのでこの壁を崩すには十分のはずです』
『了解であります、五十鈴殿お願いします!』
華がトリガーボタンを押しスモークグレネードが放たれ雪へ突き刺さる。次の瞬間爆発音がして雪が崩れる音も聞こえた
『分かってたてはいたんですけど煙幕に雪煙も加わって視界は最悪ですね…』
『まぁ真っ直ぐ進むだけだからあまり気にしなくて大丈夫だよ。それでは全車前進!』
指示通りレイバーが前進し視界が最悪の中を見事な隊列で突破した。
そしてそのまま前進し続けると少し余裕が出来たのか周りの景色を楽しみ始めるものが出て来る
『リスですよ皆さん!横の木にリスがチョロチョロって駆け上ってます!』
『おぉ本当だ、可愛いもんだねぇ』
『これが雄大な自然って奴だね先輩、私リスなんて初めて見たよ』
『リスって焼いて食べると旨いらしいぞ、特に脳みその部分が旨いらしい』
『ちょっとホシノ、何とんでもないことに言ってんのよ。純粋な1年が居るってこと忘れないでよね』
『ナカジマ殿達は面白いことを言うな、しかしどうだこの景色、この状況。雪、ロシア、戦争とくればあれを連想して仕方ないな』
『スターリングラードか…』
『縁起でもないぜよ…』
『私からすれば酒田のソ連軍人亡命事件を連想するねぇ、アレはドシュカ使ってたし。西住ちゃんはどう言うの連想する?』
『へ、私ですか?そうですね…いやいや試合に集中しましょうよ皆さん!そろそろ敵と会ってもおかしくは…』
と言いかけた所で対レイバーセンサーが作動しアラーム音を鳴らした
「噂をすればなんとやらだな」
『皆さん、11時の方向に敵レイバーを探知しました!各車警戒態勢!』
「麻子さん、数は?」
「通常仕様のドシュカ3つだ」
「たったの…?外郭防衛線かな…?」
「そうかもしれない…で、どうする隊長?」
「直進以外は出来ないからね…叩くしかないよ」
そう淡々と告げるとみほはインカムのスイッチを押した
『カバさんチーム、レオポンさんチームは射撃をお願いします』
『了解!』
『あいよ〜、んじゃ攻撃した時に光るから一応気をつけてね』
電源を切った直後、サムソンの99mmチェーンガンが発射された音とガネーシャの荷粒子砲の独特な発射音が聞こえた。どちらも正確にドシュカのコクピットと兼任している砲塔部位に着弾し赤く染め上げた
『凄いよみぽりん、一気に2両も!』
『昨年の優勝校を撃破出来たぞ!』
『あらら、当たっちゃったよ。私みたいな初心者が当てて良かったのかなぁ』
『これはいけるぞ西住!』
『ドシュカを初期の自衛隊機で撃破なんて凄いことですよ…西住殿、どうしたんですか。急に黙って…』
みほはこの時怪訝な表情をしてモニターを凝視していた
「何か引っかかることでもあるのか?」
「…上手く行きすぎてる」
周辺地域の状況をモニターで確認しながら喋ると相手の残り1輌がこちらに向かって発砲してきた
「外れたか」
「…向こうとの距離は長く見積もっても10m、そんな近距離を外すものかなぁ」
「向こうの砲手が河嶋先輩並だったんだろ」
「だといいんだけど…」
運良く外れそれを状況不利と判断したのか相手は再攻撃せずそのまま目の前から走り去ろうとしていた。怪しい匂いしかしないがここでこの機体をそのまま返すと言うわけにはいかない。見られたからには叩くしかないのだ
『全車前進!追撃します!』
警戒態勢でゆっくりと歩いていたレイバー達がその一声で瞬時に走り出す、たった一輌を相手に九輌で追いかける姿はまるでシャチやハイエナのようであった。追いかけ始めてから10秒がたった頃再びセンサーに多数の反応があった。メインモニターを拡大してみるとそこにはドシュカ(通常仕様)が3輌、86mm砲塔仕様が2輌固まって待機していた
『フラッグ車の通常仕様のドシュカまでいるじゃないか、これは千載一遇のチャンス!一気に叩くぞ!』
桃がそう言うと我先へと前進して発砲する、ショットガンやチェーンガン、荷粒子砲と言った銃火器が音を鳴らして重なり合った。そしてこちらの存在に気付いた相手も負けじと砲撃をしてくる、お互いの攻撃が地面を何度も擦りその度に雪を舞い散らせだが先に勝負を決したのはサムソンの攻撃であった。
「よし、またまた撃破だ!」
「案外プラウダというのも大したことがないんだな」
「それだけ私達が強くなったと言うことだな」
「間違いない、これは勝てるぞ!」
エルヴィン達が談笑してる中みほは後方で一人考え込んでいた
___おかしい、こうもあっさり3輌の撃破を許すほどプラウダと言う高校は弱くないはずだ。
黒森峰にいた時はこの数を倒すだけでも随分苦戦した、なのにこうもあっさりと…?
私達が強くなったと素直に認めるべきなのかも知れないけどでもこれは何かがおかしい
根拠はないけど私の…私の長年試合をやってきた私の勘がそう囁いている
そんなことを考えているとインカムの音が鳴りハッとして急ぎ気味に電源を入れた
『西住ちゃん、これって…』
『やはり会長も…?』
『あぁ上手く行きすぎてる、それに戦法が違う。数の暴力で叩くのが十八番なのに単独行動や小隊に分けてる』
『えぇ、でも何の為なんでしょう?』
『恐らくは私達を油断させるためだ、身構えてる私達をあっさりやられることで肩透かしにさせ油断を作る…そして万一怪しいと思われてもフラッグ車と言う希望の糸を垂らすことでその思考を放棄させるつもりなんだろうね』
『寄しくも私がアンツィオ戦で使った戦法を使われてるってわけですか…』
『そうじゃなきゃプラウダと言う名門がこんなトーシロー同然の戦いをする訳がない、間違いなく私達はハメられつつあるよ。西住ちゃん…!』
『えぇ、直ぐにでも!』
だが時すでに遅し、みほがインカムに手を伸ばした時には当てられて逃げた…いや正確に言えば誘いこむために動いたドシュカ軍団を大洗のレイバー達が追いかけてる最中だった
『皆さん、ちょっと待ってください!これは敵の罠です!戻って下さい!』
『西住ちゃん、もう遅い!こうなったら渦中の栗を拾うしかない!覚悟決めるしかないよ!』
『やむを得ません…!』
___一か八か敵の罠に完全にハマる前にフラッグ車を倒せれば罠は罠でなくなるんだ、これは最早皆んなの腕を信用するしかない!
「麻子さん!」
「あいよ、突っ込むぞ」
勢いよく麻子がペダルを押してエコノミーは駆け出す。みるみる内に前方との距離が縮まってくる、積雪地帯をこれほどのスピードで走れるのは麻子の驚異的な腕があってからこそである。
しばらく走ると景色は何もなかった雪畑から廃村地帯へと変貌していた。
追いつくと全員がフラッグ車に向けて撃っている姿が見える、だがそんな猛攻撃を嘲笑うかのように相手は廃家屋の死角を出たり入ったりを繰り返している
「麻子さん、射撃頼める!?」
「私がか?…分かった慣れないがやってみよう」
「ありがとう、その間私は退路の状況を見張っているから!」
その時、再びセンサーが鳴り出した。それもこれまでとは比較にならないぐらい大きな音で鳴っている
「退路の方にドシュカ2輌が…!」
素早く目視で確認するとインカムの電源を入れた
『皆さん、東へ移動して下さい。これ以上ここに居るのは危険です!一度引き返して再度…』
だが、その東からもプラウダ一高火力を誇るドシュカ(KV-2仕様)が2輌行く手を阻んだ
「南南西に方向転換…あっ!」
そう、南南西もまた塞がれたのだ
「今度はIS-2仕様…!」
「どうもこれは囲まれたな」
そして敵の無慈悲な一斉掃射が始まった、こちらは何とか避けようと固まらずほんの僅かに動いて射軸をずらそうと試みてるがそれも時間の問題であろう、そのうちドシュカの攻撃がパイソンの左腕に当たりリアクティブアーマーが反応を起こして爆発した
『隊長!左腕をやられました!』
『梓ちゃん、大丈夫!?』
『はい!私は何とか大丈夫ですけどライアットガンがもう撃てません…!』
これは痛い、やられた訳ではないがライアットガンが使えなくなった以上実質撃破されたに等しいのだ。
『周り全部敵まみれだよ!どうするみぽりん!?』
『西住殿、北に廃教会があります!ひとまずそこに逃げると言うのはどうでしょう!?』
あからさまに北にだけ敵がいない、建物がある。これも一つの罠だとみほは考えたが
「…このままここで往生してもやられるだけ、あそこに誘い込むのが敵の目的なのは確かなんだけどそれしかこの状況を打開する道はない…」
「行くしかないだろ西住さん、あそこに立て籠ればウサギさんチームの修理も可能だし形勢を立て直せるかもしれん」
よし、と決心してみほは通信機に手を伸ばす
『皆さん!あの廃教会に立てこもります!優花里さん!あゆみちゃん!私が合図をしたらスモークを!』
『了解であります!』
『分かりました!』
『…準備はいいですか、行きますよ!撃て!』
ラーダーのスモークが一気に放たれ廃教会までの道を煙で見えなくさせる、その間も相手の攻撃が続けられるがどうにか当たらずに済む。フラッグ車であるドーファンを先頭に次々と入って行く最中、運悪くサムソンの足に攻撃が命中してしまった
『隊長!左足をやられた!片足だけで何とか動けないかやってみるが…!』
『待て、エルヴィン。私にいい考えがある』
そう言ったのは指揮車に乗っている左衛門佐だ。
『もんざ、何をする気だお前?』
『隊長、10秒弱でいい。その間だけサムソンの盾になってくれないか!?』
『お前何言ってるんだ!?隊長、私のことは構わんから先に…』
『…分かりました、10秒弱ですね。左衛門佐さんの作戦を信じます』
『西住隊長…!?』
『ここでサムソンを失い火力が大幅に下がるのは勿論避けたいことですが…何よりも味方を見捨てるような真似はしたくありませんから!』
『かたじけない!では頼む!』
通信を切り麻子に指示をしようとした瞬間彼女はすでに機体をサムソンの前に設置していた
「…西住さんなら断らないだろうと思って先に動かしておいた。どうやら私の予想は正しかったようだな」
「麻子さん…」
「感傷に浸るのは後回しだ、取り敢えず赤外線センサーだけを頼りに当てていくしかないか…!」
『ちょっと待った、私らも手伝うよ〜』
『ナカジマさん!』
『装甲からすればエコノミーよかこの子の方が硬いし攻撃力も高いからね、エコノミー単体よりはいいでしょ?』
『分かりました、ではレオポンチームは荷粒子砲をなぎ払うように掃射して下さい!』
『了解、任せなって!』
視界が悪い中放たれた攻撃は1輌、2輌と撃破していった。僅かながらか絶望の中でほんの微かに希望が見える、行く行くはこのコンビネーションアタックである程度倒せるのではないかと思ったからだ。しかしそんなに現実は甘くなかった、突然ガネーシャの砲塔からインクではなく煙が吹き始めてきた
『げ!バッテリーが上がる寸前だこりゃ!ごめん西住さん、これ以上攻撃出来そうにないよ。…でもまぁ盾としてならまだまだ行けるよ!』
『いえ、レオポンさんは急いで建物の中に入ってください!万一ここでバッテリーが上がってしまったらミイラ取りがミイラになる展開です!そうなる前に引き下がってバッテリーを休ませて下さい!』
『…分かった!ごめんねカバさんチーム!』
『気にしないでくれ!こちらの準備はもう完了した!』
そう、彼女らが頑張っている中左衛門佐とおりょうもまた頑張っていたのだ。
彼女らは通信を切った直後急いで車から出てサムソンに駆け寄った
___ワイヤーを抱えながら
左衛門佐は器用に仰向けに倒れ込んでるサムソンのハッチの外側にある手すりにワイヤーをひっかけ、指揮車と繋げた
「しかしもんさにこんな才能があったとは…知らなかったぜよ。てっきり忍者は専門外かと」
「伊達に戦国史を研究してる訳じゃないからな、当然忍者にも興味があった!さておりょう、感心してないで早く引っ張ってくれ!」
そう言うと指揮車が最大限でアクセルをふかして前へ進もうとする。マフラーからはずっと煙が出っ放しである
「やっぱり無理があるぜよ。指揮車でレイバーを引っ張るなんて…!」
「んなこと言ってもこれしか方法がないからしょうがないだろ!」
懸命にアクセルを押し続けるが一向に進まない、こうしてる間にもタイムリミットである10秒が経とうとしてる
「万事休すか…!」
そう思ったその時、何といきなり指揮車が前に進み始めたのだ
「いけるぞこれは!」
そしてズルズルと金属が擦れる嫌な音を立てながらどうにかサムソン共々建物に入ることができたのだ
みほはそれを後方モニターで確認した
『隊長!収容完了だ!すまない、本当に恩に着るぞ!』
『大丈夫、気にしないでください!』
そう言いながらみほは機体を入り口の方に向けて駆け出しどうにか彼女も入ることの成功した
何とか目的を達成して安心する間もなく敵の攻撃の音は止むことはない。だがそれらの攻撃は彼女らを狙ってではない。この建物を狙ってるのだ
「建物の当てた時に響く音で萎縮させるつもりか…」
「最も、私らにはもうここで引きこもるしかないけどな」
何とかして次の作戦を考えなければ、このどうしようもなく圧倒的不利な状況を少しでもマシにするための作戦を…!
砲撃音が響く中みほは唸り続ける、そんな時いつもとは違うセンサー音がなった。はっきり聞こえたことを見るとどうやらいつの間にか攻撃が止んでいたようであった。
「…レイバー反応じゃない?」
「対人センサーに反応か、拡大してみるか」
麻子がモニターのつまみを弄り拡大すると二人ばかりの人物が白旗を持ちながらこちらに近づいてきた
「話し合いでもしようって言うのかな?何のために…」
「取り敢えず、降りるしかないだろうな」
膝立ち状態にさせ、みほはエコノミーから降りる。それに引き継いでそれぞれのレイバーのコクピットも開き続々と降りていった
プラウダから来た人物と目が合う、その表情はキリリとしており薄寒さを感じる程だった。みほはその人物らにある程度近づき止まる
「大洗女子学園隊長の西住みほです」
「…カチューシャ隊長からの伝言を持ってまいりました」
「…」
「“降伏なさい、全員土下座すれば許してやる“だそうです」
「土下座…ですか」
「隊長は心が広いので3時間回答を待ってやる。との事です、その間にどうか賢明なご判断を。ではこれで」
淡々と告げると彼女らは背中を向けて帰ってしまう
「…全員自分より身長低くないと気が済まないのか!」
桃がそう叫んだのを最初に次々と仲間からも声が上がる
「徹底抗戦あるのみだ隊長!」
「土下座だなんてする必要ありません!戦い向きましょう先輩!」
「勿論私も土下座は嫌です。いえ、正確に言えば私が土下座する分には一向に構いません。ですが皆さんが土下座をする様な事は絶対に嫌です。しかしこうも囲まれては作戦の立てようが…」
「私はみほさんの判断に従います」
「華さん…」
「私も土下座ぐらいしたって構わないよ!」
「西住殿だけが土下座なんてそんな事はごめん被ります!」
「沙織さん、優花里さん…」
「準決勝まで行けたんだ、ここらで散っても悪くはないだろう」
「麻子さん…皆んなの言う通りかもしれない。準決勝まで行けただけでも喜ばしいことだよ。でも…」
言葉を続けようとした瞬間、桃の声が遮った
「絶対に負けるわけにはいかんのだ!徹底抗戦しか我らに残された道はないのだ!」
「…河嶋さん」
「勝つんだ!絶対に勝たなきゃダメなんだ!」
「先輩、どうしてそこまで勝たなきゃいけないんだ」
熱くなった桃の言葉を麻子の一声が冷やす
「初めて出場してここまで行けたんだぞ?それだけでも十分に凄いことじゃないか。随分前から『勝て」だの『勝たなきゃダメ』だの、アンタは特車道ってのを戦争にでも思ってるのか?勝ち負けだけじゃないって事ぐらいアンタでも分かってるんじゃないのか?」
「勝つ以外の何が大事だと言うんだ!貴様だって勝たなければ単位は単位は入らないのだぞ!いや…負ければそんなこともどうでも良くなるか…」
「悪いな、今の私にとっては単位なぞどうでもいい。
今の私に必要なのは親友を守る心だけだ」
「親友…だと?」
「そうだ、西住さんは私の親友だ。彼女は長い間勝たなゃ行けないという呪縛に縛れられ来たんだ。だが、ようやくそこから解放されたんだ、アンタはもう一度彼女を縛りつける気か!もう彼女を解放してやっていいだろ!普通の女子高生として過ごさせてやってくれ!」
「…何を言ってるんだ冷泉麻子、負けたら普通の女子高生として過ごすなんてこと無理になるんだぞ」
「…!?どう言う意味だ!」
「この大会で負ければ我が校は無くなるってことだ!」
桃の涙が混じった声が建物全体に虚しく響き渡る
「…な」
「学校が無くなる…?まさか本当に…」
みほが声にならない声を呟くと神妙な顔つきで杏が桃の隣に並んだ
「…河嶋の言う通りだ。今回の第63回特車道全国大会で優勝できなければ我が高校、大洗女子学園は廃校となる」
追い詰められた大洗女子学園、そして遂に明かされた廃校の危機!全員の士気が低下する中みほは索敵班を選抜し少しでも打開できないか考えた。そしてとある作戦を思いつくもこの作戦には全員の士気が高まってないと無理だ!
困り果てたある決断をする
次回「絶対絶命です!」ターゲットロック、オン!