長話もアレなんで、本編をどうぞお楽しみください!
相変わらず雪がしんしんと降ってきている、傍から見れば風情のある光景かもしれないが、特車道をやっている側からみるとそうは言ってられない。レイバーの性能がダウンするとか照準が合わせ辛くなると言うのは勿論だが、何よりも怖いのは寒さによる低体温症、手がかじかみ思うように動かなくなる事だ。それ故にこう言った寒い地域で戦う場合は寒さに対するそれ相応の準備をしなくてはならない。この場合上着などの防寒具だけではなくココアやスープといった精神的にも温めてくれるものが必要なのだ。その点をプラウダは重々理解しており3時間に及ぶ待機時間中の対策は十分すぎるぐらいに用意していた
プラウダの陣営にはあちこちに焚火が設置されておりそれを囲むようにして選手たちが談笑している。彼女らにとってこの待ち時間は単純な待ち時間でしかない、別に何も悩む必要はないからだ。ただ時間が過ぎるのを待ち向こうが降伏したらそれでお終い、しなくても直ぐに全滅させることが出来る。だから悩む必要などこれっぽっちもないのだ。
そんな中選手達が集まってる場所から少し離れた静かなところでカチューシャとノンナがひっそりと暖を取っていた。
「大洗女子への通達完了しました」
「そう。ねぇ、降伏したら土下座ついでにウチの学校の草むしり3ヶ月、麦ふみとじゃがいも掘りの労働を課したらどうかしら?このカチューシャを侮辱したもの、それぐらいして当然よね」
熱い具沢山のボルシチを掻き込みなながらカチューシャはそう言った
「…また付いてますよ」
「分かってるわよ!この間もそうだけど恥ずかしいんだから…!」
差し出されたハンカチを強引に掴み取りカチューシャは口周りを拭った
ごちそうさま、と言い彼女はかご型のベットにもたれる
「やっぱり大洗の連中大したことなかったわね、所詮は甘ちゃんとアマちゃんの集まり。場数を踏んだ私達に勝とうと思うこと自体おごがましいのよ。
まぁサンダースを倒したから多少は食えるものだと思ったけど…結局は私の思った通り中身の無い空虚な自信だったわけね。今頃奴らはどんなセリフで謝れば良いのか考えて慌ててるわよ。どんな風にあの二人が土下座するのか楽しみだわ」
カチューシャはそう狡猾な笑みを浮かべながら喋った。話終えると疲れたから寝る、と言って掛け布団を被り目を瞑った
「降伏までの猶予に3時間もあげたのは疲れて仮眠をとりたかったからですか。食べてすぐ横になったら牛になるって言いますよ?」
「うるさいわね…カチューシャの心の広さを見せてあげてるだけよ…ウラル山脈より深くバイカル湖よりも広い…そう言ってくれたのはノンナ、貴女でしょう…?それじゃ時間が来たら…起こしてね…」
そうとだけ言うと寝息を立て始めた
「おやすみなさい、カチューシャ」
____あとは2時間と30分…向こうはどう出るのか。私個人としては彼女達は降伏するとはどうしても思えない、彼女らには確か廃校と言う使命がかかっている筈、そんなのを背負いながらそう簡単にはいごめんなさい、とするのか…?確かにカチューシャの言う通り空虚な自信かもしれない。でも確固たる覚悟、芯があると言うことを私のこの目で、西住みほと言う人間の目を見て分かった。一瞬の出会いとは言え私の目に狂いがなければそう見えた…
私はその目を信じたい。あんな瞳を見るのはカチューシャが入学してから1年生のリーダーを任された頃就任式で皆の前で「貴方達は万年2位で満足させないわ、私がこの学校を一位にさせてみせる。だから私についてきて。何度でも勝利の味を味合わせてあげるから」と言った時に見えた以来か…
私はその瞳に導かれるようにカチューシャと共に成長し優勝を勝ち取った。勝利の味を堪能できた
だからなんだろうか、彼女には降伏をして欲しくないのだ…カチューシャと同じ瞳を持った彼女が降伏することは私にとってもの凄く苦痛な気がするのだ。上手く言葉では言い表せないが…「裏切られた」と言うべきか。
皆には、カチューシャには…申し訳ないが私は彼女の土下座姿は見たくありません。必ずや足掻いてください。足掻いて足掻いて…私達に倒されてください。カチューシャ為にも、私のためにも…
夢の世界に入り込んだ地吹雪の女の頭を撫でロシアで古くから伝わる子守唄を歌いながら彼女はそう考えた。ブリザードと呼ばれる彼女であるがこの時ばかりはそうではなかった。
✴︎
その頃大洗陣営では刻一刻と迫るタイムリミットを前に各員がそれぞれのやるべきことをこなしていた。
「パイソンの左腕のリアクティブアーマーがペッチャンコだ…痛そう」
膝立ちの状態になっている己の愛機を見ながら香里奈はそう言った
「リアクティブアーマーが正常に作動しただけだから痛くはないと思うけど…」
「でも動かなくなっちゃったね梓ちゃん」
「そうなんだよね、普通はそんな事にはならないように出来てる筈なんだけども」
「そのためのリアクティブアーマーだもんね〜?」
声がした方を振り向くとチェーンガンのジャラジャラした弾を持ち運んでる優希がいた
「優希ちゃん、ラーダーの方は大丈夫なの?」
「うん、あの時一発も貰わなかったしね〜、ただ…」
「ただ?」
「暖房が無いから寒くてもうしょうがなくて」
その言葉に二人ともこけそうになった
「しょうもない事で悩まないでよ…」
「こっちは今左腕が動かなくて困ってるんだからね!」
「ゴメンゴメン〜でも、こう言うのって叩けば治るんじゃない?お母さんも動かなくなったレイバーは叩けば治るって言ってたもの」
「叩く…ってどこを?」
「え〜と確か壊れた箇所のレバーだったかな」
「んなアホな…」
「騙されたと思ってやってみてよ〜」
まぁ、ペイント弾の判定による破壊判定じゃなくて単に機械上のトラブルなら私にはどうしようもないからそれしかないか…
と、直れば儲け物と思いながらコクピットに梓は乗った
「それじゃあやってみるよ」
梓は思いっきり左レバーをチョップし、ブルブル揺れるのが治るのをヒヤヒヤしながら眺めた、しばらくすると治ったので電源を入れ直す
モニターにOSの起動画面が流れ訳の分からない英語が黒い背景に羅列される。そしてメインモニターに風景が映り起動が完了した。梓はコンソールを弄り苦笑しながら機体状況を把握する、だがその笑みはすぐに驚愕の表情に切り替わった
「嘘…本当に直っちゃってる…」
モニターには[機体に異常ナシ]と言う文字がデカデカと映されていた
「自動車部の人達が見たら腰抜かしそうだね梓ちゃん…」
「もうめちゃくちゃだ…」
外部スピーカーから聞こえる梓達の声を聞いて優希らはケラケラと笑いながらラーダーへと戻っていった
サムソンはサムソンで足の修復に追われていた。エルヴィンとカエサルが持参した布巾をこれまた持参した洗剤につけ力強く磨く
「手が悴むなぁ…霜焼けになりそうだ。カエサル」
「霜焼けなんて勲章勲章。…しっかし中々落ちないもんだな」
それなりに力を込めて磨いてるが一度へばりついたペイントはそう簡単には落ちてくれない。それでもめげずに磨き続けること5分間、ようやく大元の汚れは取り除けた
「まだうっすらと残ってはいるが…センサーを再起動させてくれ」
コクピットに座っているカエサルがエルヴィンの指示でボタンを押すと何も音がしなかった、修理が完了した合図だ。念のために機体を自己スキャンさせたがこれも異常ナシとでた
「やっと終わったか…」
「いや、まだだあとリロードが残ってる」
「あぁ、そうだな…にしても背面が傷だらけだ。これも勲章か?カエサル」
「きっとそうだろうさ、後でもんざ達にお礼を言わないとな。…おや?」
カエサルの目の先にみほが映ったどうやら何方かに用があるらしい。みほは二人の前に立つとポケットから何かを取り出した
「お疲れ様です、カエサルさん、エルヴィンさん。手の方がだいぶ悴かんだと思うので良かったらこのカイロを使ってください!」
「あぁ、ありがとう隊長。ところで私達に何用かな?」
「はい、実はエルヴィンさんに偵察をお願いしたいんです」
「私にか?」
手に持ったカイロを握りながらカエサルが反応した
「はい、詳しいことは是非こちらで…」
「分かった」
とエルヴィンは廃教会の中心に作った即席作戦室に連れてこられた。そこには生徒会、麻子、そしてそど子がいた
全員が集まったのを確認すると桃が咳払いをして話し始める。この時、全員の視線は卓上に置かれた地図に注がれていた。
「甚だ簡易的ではあるが、これが現在の状況だ。…と言っても分かってるのは入り口に4輌あると言うだけで後は分からん、ここを突破するのが私達の目的ではある。だがその為には敵の正確な位置を把握せねばならん」
「成る程、それで我らが呼ばれたと言うわけだな」
「そういうことです、偵察するときは裏口からお願いします。そこにも居るかもしれませんが馬鹿正直に入り口から出るよりはマシですから。ではチーム分けをしたいと思います」
そうしてみほの指示の結果
・優花里、エルヴィン
・麻子、そど子
と言う風に分かれた
偵察メンバー達は音もなく静かに己の責務を全うしに雪が吹き荒れる極寒の面へと出て行った
✴︎
ザッザッザッと小気味良いリズムを奏でながら歩く二人組の少女が居た。麻子とそど子だ、彼女らはプラウダの生徒に見つからないようになるべく必要なこと以外喋らず黙々とレイバーを発見して行った。というのも万一敵に発見された場合捕虜として確保される危険性があるからだ。ルール上では捕虜として扱い、尋問することは認められている。最も捕まえたところで有益な情報を持っていない彼女らを尋問もしようと思う人物はそう居ないだろう。だが捕まったら試合が終わるまでは解放はしない筈だ、そうなったら味方に痛手を与え得る事になる、それだけは絶対避けたいことだ。
「あそこにT-34、85、それから奥にモロトフ…」
「そんな砲塔のタイプはないぞ、そど子」
「ちょっと間違えただけしょ!モロトフじゃなくてスターリン2よ!」
「JS-2…と、しかしまぁここまで多種多様なドシュカがあるもんだ。その内列車砲仕様のドシュカが出てもおかしくはないな」
「列車砲…?まぁいいわ。それより大体なんであなたと一緒に偵察しなきゃならないのよ!」
「お互い視力が2.0だからに決まってるだろ、そど子」
「なんであなたそんなに視力がいいのよ…勉強ばっかしてるくせに」
「日頃の行いがいいからだろ、そど子」
「何よそれ…てかさっきからそど子そど子うるさいのよ、西住さんはみほって呼べるのに私のことは本名で呼べないわけ!?」
「そど子はそど子だろう?」
「…っ!何よ貴方なんか冷泉麻子略して“れまこ”よ!れまこ!」
そう言いながらそど子は地面の雪を丸めた雪玉を麻子に投げつけた、しかしそれは麻子に当たることなく背後にあった木に当たる。その衝撃で揺すられ枝に積もっていた雪が大きな音を出して落ちた
「敵だ!」
すると近くにいたプラウダの生徒に見つかってしまった
「逃げるぞ、…全くこんな所で雪を投げるな。どう責任を取ってもらおうかそど子」
「悪かったわよ!…あそこにKV-2!」
「よし、今ので許した。KV-2…っと」
走りながらも麻子は冷静に地図に記入していく、暫く走ると諦めたのか足音は再び2つだけに戻った
「…ココア持ってきてるんだ。帰ったら飲まないか?」
「あら、冷泉さんにしては気が利いてるじゃない」
「タダでいいぞ」
「当たり前じゃないの!やっぱり前言撤回するわ!」
静観な雪景色に二人の少女の声がこだました
✴︎
「吹雪いてきた…」
みほは廃教会の窓の景色を見てそう思った、外はいつの間にか試合開始時よりも雪が強くなっており入り口前に出来ていたはずのレイバー達の足跡はいつの間にか消えていた。とすると当然気温の方も下がってくる、ようやくこの寒さに適応しつつあった体が再び冷えようとしている
___これはまずい
みほはポツリと呟いた
戦場において「寒さ」が恐ろしいものは何も身体的な問題ではない。人間と言う生き物は寒さと空腹に見舞われると意気消沈してしまう繊細な生物なのだ、だからこそ柚子達が用意していたインスタントのスープは非常にありがたかった。こう言った暖かくて美味しいものは身体的にも精神的にも癒してくれる、この場において最適な代物と言えるだろう。みほは渡されたスープを飲みながら別のことを考え始めた
…この天気、この膠着状況…下手すると運営側が試合中止を提案するかもしれない、そうなった場合はどうなるんだろう…いや、そんな事よりも偵察に行った皆は視界が悪い中発見出来るのかな。…帰ったらまずは暖を取らせよう。話はそれからだ
そんなことを思ってると風に乗って陽気な歌声が聞こえてきた
「「どうせ生きては帰らぬつもり〜っと!」」
「優花里さん、エルヴィンさん!」
目の前に現れた二人は敬礼しながら口を開いた
「只今帰還しました!」
「雪の進軍は楽しかったな、クランシー巡査部長?」
「えぇ!こういうのってやっぱり最高ですね!」
「雪の進軍…?」
「旧陸軍の軍歌だ、八甲田山って知ってるか?高○健主演の…あれで歌われてる歌だ」
「いやぁ…私あまり映画とか見なかったから…」
「そうか、であれば今度うちに来るといい。丁度この前ブルーレイを入手したんだ」
「え!?エルヴィン殿!いつの間に入手したんですか!私にも見せてくださいよ!」
「勿論」
「それじゃ、私も見てみようかな…でもその前にはまず勝たなきゃね」
「そう…だな、勝たなければ誘う家も無くなるんだものな…」
しばしの沈黙が訪れたがそれは陽気な足音により破られる
「只今戻りました!」
「寒い…早く毛布に包まりたい…」
「お疲れ様でした!麻子さん!温かいスープがあるからその前に報告をお願いします。優花里さん達もお願いします!」
それぞれから報告を受けみほは地図に書き起こす
「凄い…あの雪の中でこんなにも正確に出来るなんて、これで作戦が立てやすくなります!」
「見つかったのが逆に功を成したな、そど子」
「何言ってんのよ!見つかるのも作戦の内よ!」
「そういうことにしといてやるから耳元で騒ぐのはやめてくれ…そろそろキーンとしてきた…」
二人の少女らが騒ぐのを他所にみほは書き起こした地図を見つめていた
地図上には教会の入り口から一歩も通さんと言わんばかりに二重の構造でレイバーが配置されていた、しかしよく見てみてると所々その陣形に薄い所が確認できた
___これは罠だ。
みほは直感でそう感じた、さっきと同じようにワザとこちらに有利な状況を作ってそれに引っかかった私達を今度こそ物量で殲滅させるつもりだ。でなければこうもあからさまに隙間を設けるはずがない、相手はエースなんだから。それなのにそうすると言うことは私達を舐めている証拠だ、無理もない、こちらは一度相手の手にはまっていたのだから…
だが逆に考えればこれはある意味チャンスではないだろうか?相手は私達の行動を予想してそれに向けた準備をしている、となれば相手の「まさか」と言う行動を取れば陣形が乱れ勝利…いや絶対絶命の状況から脱する糸口になるのではないだろうか。
…だとするならば策は見えた。早速これをみんなに発令しよう
そう思いみほは時計の方を見た
(後1時間か…寒さがさっきよりも更に増してきた。みんなは大丈夫かな…?)
辺りを見回すと何やら寒気が増したような気配がした
カバさんチームらは吹雪いてる景色を見て恐らく例の八甲田山とか言う映画の寸劇をやっていて落ち込んでるのか盛り上がっているのかよく分からない。
アヒルさんチームは全員が死んだ魚のような目をし「ビーチバレーよりスノーバレーの時代だ」とかこれまた訳の分からないことを言っている。
ウサギさんチームは全員が同じ毛布に包まり温めあってはいるが彼女らから発せられる言葉は身体的だけでなく精神的な面も負担が掛かっていることが伺えた
アヒルさんチームに至っては寝落ちしかけている
現状、元気と言えるのは熱心にガネーシャの整備をしているレオポンさんチームだけだった
周辺の確認を終えるとみほは少し空腹を覚えた、スープのおかげで胃が活性化されたのだろう。間が悪い、と彼女は内心溜息をつきながら隣にいた柚子に声をかける
「あの、食料品っていうのは…?」
「それが、こんな風になるなんて思いもしなかったからスープしかないのよ…固形物に辛うじて乾パンがあるけど…」
「乾パン…ですか」
これは実質食料が無いに等しい発言だった
(これは本格的にまずいことになってきた…)
みほが焦るのも無理はない、寒さで怖いのは身体的であることは再三も述べたが本当に恐ろしいのは精神的な面なのだ、寒さは容赦なく体力を奪うのと同時に思考力も奪っていく。これによりテンションが下がる、端的に言えば士気が大幅に低下するのだ。しかもそれに加え空腹をと言うマイナス要素もプラスされる、空腹と冷えと言うのは士気を下げるのにはこの上ない最良の組み合わせなのだ。既にその効果は現れつつある
____この作戦にはみんなの士気が十分に高まってなきゃ出来ないんだ。
気持ちがバラバラじゃこの状況を打破するための作戦なんて夢のまた夢だ。だけど士気を上げるための方法がない…上げるために必要な食事や吉報などはこの場にありはしない。一体どうすればいい…
そう考えながらみほはせめて何かないかと周囲を見渡すと窓辺に立つ沙織達の姿が目に入った。顔は見えないがその背中は物憂げていた、彼女はそれが気になりこっそりと耳を立てた。
「…プラウダの奴ら、私達の苦労も知らず呑気にコサックダンスを踊ってるな、それも焚き火に当たりながら…」
「それに美味しそうなボルシチも…私、少々お腹が…」
「やはりあれだけの軍用レイバーを備えてる学校ですしプラウダはこういう状況が一番慣れてますからね…備えが完璧なのも必然かと…」
「学校、無くなっちゃうのかな…?」
「そんなの私は嫌ですよ…この学校でいたい!ようやく私の居場所が出来たここでみんなと…!」
「私だって分かってるよゆかりん、でも…」
「どうして廃校だなんて無粋なことを…ここでしか咲けない花もあると言うのに…」
4人の背中はさらに物寂しくなり周辺の空気はお通夜さながらだった。見かねたみほは彼女らに歩み寄り声をかける
「どうしたの皆んな、元気出していきましょうよ!」
だが、反応は芳しくはない。死人のような生気のない返事が虚しく廃教会に響くだけだった、周りを見渡しても誰一人顔を上げようとしない(最も、レオポンさんチームは顔を上げたくても修理中なので上げれないのだが…)空気はさらに重たくなるばかりだ、たまらずみほはさっきよりも大きな声を出す
「さっき皆んなで決めたじゃないですか!降伏しないで最後の最後まで足掻くって!あれはその場のノリだったんですか!?」
彼女は最後にほんの少しだけ毒ついた、こうする事で発奮を促せると思ったのだが…返ってきたのは「はぁーい」「分かってまーす」と言う気の抜けた返事だった。その光景が尺に触ったのだろう、桃が声を荒げてみほの名前を読んだ
「おい、西住。もっと士気を高めろ。このままじゃ戦えんだろう?私が声をあげても無意味だろうしな。こう言うのは隊長であるお前がやれ」
「…はい」
と、なすがままに返事をしたが気の利いた言葉なんて思いつかなかった。
____何か良い言葉は…いや、言葉じゃダメだ。一度言葉で団結させようとした結果が今の現状だもの…となればプラウダみたいに何か体を動かす事をすれば、そうダンスとか。踊れば体も暖まって士気も高まるはず、でも皆んなで踊れるダンスなんてそんなの…
みほは目を瞑りこれまでの人生の中で触れた踊りについて振り返った。しかしどれも決定打に欠けるもので全員が踊れる、と言うものではなかった。悩みに悩んだその時、ふと頭の中にある光景が蘇った
「あんこう鍋…」
まったく踊りとは脈絡がないそれは瞬く間に彼女に突破口を見つけさせる切り札になった
「あんこう…それだ!」
彼女は思いつくや否や表情をキリリと変え靴音を鳴らして正面を向いた。
『アアアン アン アアアン アン』
軽快な振り付けと共に声に出したそれは大洗特車道の生徒ならば全員が知ってる赤面物の踊り…『あんこう踊り』であった
今回はここまで!次回はいよいよプラウダへの反撃です!