ハンガー内
みほ達が乗るイングラムエコノミーのハッチは首の後ろにある、みほはまずはそこを開けてするりと入り込む。シートの水のシミはタオル&天日干しでどうにかするとしてモニターの状態やペダル、レバーなどがまず動くかどうか問題だ。錆びてるなら錆び取りをしなくてはいけないが非常に面倒くさいので、そうならない様祈りながらレバーに触れ前へと押す、幸いなことにレバーはすんなりと前へ倒れた。次はペダルだがこれもセーフだった、モニターも埃は被ってたがヒビ一つも無かった、それにしても驚くほどに保存状態がいい…倉庫の中で眠ってたとは思えない程だ。取り敢えずみほはモニターやレバーを雑巾で拭くことにした、一仕事を終えたみほはハッチから出てハンガーに隣接してある階段を使い下へと降りた。下では沙織達が長いモップを使ってエコノミーの胸の部分や腕、足を拭いていた。
「なかなか落ちないよ〜」と沙織がくたびれた様子で嘆く
「しかし頭の方はどう清掃すればいいのでしょうか?ここからだとモップ掛けは出来ませんし…」
「あぁそれなら直接頭の上に乗って磨けばいいんでありますよ」
「え、乗るの?危なくない?」
確かに頭の部分の清掃は危険だ、エコノミーは8mもある。ここは自分が行くしかないと言おうとしたみほだったがその声は優花里の声で遮られた
「じゃあ、自分がやりましょう!高い所は得意なんで!」
一同が心配する中優花里はひょいひょいとエコノミーの頭の上に乗っかり鼻歌を歌いながら磨き始めた、これには経験者であるみほも驚いた
(私も怖いのに優花里さんは平気なんだ…すごいなぁ)と感心してしまった恐らくそれは沙織達も思ったであろう
夕方になり全てのレイバーの清掃が終わった。
桃が汚れが残ってないか確認しそれが終わると後の整備は自動車部が仕上げると言う事で解散を命じた
解散を命じられ皆んなが帰る中優花里がレイバーに乗れるなんて楽しみですね西住殿と言ってきた。その言葉に少し複雑な気持ちを抱きながらもうんと答えた、この時みほは不安だったのである。理屈ではここまで来たから逃げちゃダメだと理解してるのだが、いざレイバーに乗った瞬間トラウマがフラッシュバックしないか、所謂PTSDになってないか不安だったのである。暗い顔をしてると沙織が学園艦にいい景色が見れる場所があるからそこで飲み物でも飲まないかと誘ってきた一同はこれに賛成しみほも賛同した。
学園艦公共休憩スペース
____夕日が綺麗だ。ここに来てから夕陽など見る余裕が無かったため随分久しく感じた、自販機で買ったジュースの甘みが疲れた体に染み渡る。この学園艦は現在何処かの港へ向かっているのだ
「あ〜あそろそろ陸に上がりたいなぁ〜買い物もしたいしさ」
「今週末には帰港する予定でしたよ」
「どこの港だっけ…?私港ごとに彼氏が居るから困っちゃうんだよね」
「沙織さんが言う『彼氏』は行きつけのカレー屋さんのことでしょう?」
相変わらず華のツッコミは辛辣でブレない、そんなことを言い合いながら笑ってると突然優花里から寄り道したい所があるから一緒に行ってもらえてもいいかと誘ってきた。本人は自信はないのか弱々しく尋ねたがここには友達の誘いを無下にするような輩はいない、皆んな優花里に案内してもらいついて行った。
10分くらい歩くと優花里が止まった、目の前を見ると「れいゔぁ〜倶楽部」と言う看板が見えた。どうやらレイバーに関する店らしい。一同は早速入店した
れいゔぁ〜倶楽部
店の中はとても不思議な雰囲気だった、レイバーのパーツが展示されていたりレイバーもプラモ、フィギュアも売っている。壁には警視庁のレイバー部隊特殊車両二課の制服が飾られていた。
「でもレイバーって皆んな同じに見えるよね、今日見つけたアトラス…とサムソンだっけ?あれも一緒に見えるんだもん」と言うと優花里は全力で否定した
「どれもこれも個性があって同じレイバーは無いんですよ、勿論乗ってる人でも変わって来ますからね!あぁ〜第二小隊の泉隊員と黒いレイバーの闘いは最高でしたね〜!と言っても私が生まれる前なんですけどね」
「華道と似たようなものですね」
すると分かったような分かってないような沙織がまた恋愛に結びつけて話した。
話が噛み合ってないのでは?とみほは突っ込もうとしたがやめた
みほが前を見ると優花里がレイバーが題材のゲームを遊んでいた。ゲームはあんまり知らないみほだがグラフィックから見て相当古いことが予想できた
「そういえば優花里さん、特車道って銃を使用したりするんですよね?私達が発見したレイバーにも銃が付いてましたし…」
「そうそう危なくないの?」
「大丈夫ですよ、特車道に使用する銃の弾は特車道連盟公認のカラーペイント弾ですから…
あぁっ!負けちゃいました…」
優花里がしょんぼりしてる姿が面白くて思わずクスッと笑うとみほの後ろにあるテレビが特車道についてのニュースを取り上げた、思わず後ろを振り返ると茶色の髪の毛の少女…みほの姉であるまほが映っていた。どうやら前回の大会でMVPになり国際強化選手となったことを記念してのインタビューらしい
『まほ選手、特車道の勝利の条件とは何ですか?』
『諦めないこと、そしてどんな条件でも決して
_____「逃げ出さないこと」です』
その一言はみほに深く刺さった、その言葉は自分に向けられたものではないがまるで自分が言われてるような錯覚を覚えた。「逃げ出さないこと」…それが出来るほど昔のみほは強くなかった、だが今は、少なくとも今はそうじゃない。逃げ出さず前へ進もうとしてる
そう頭では理解しても心は「それは詭弁だ」と囁く、いたたまれず思わず下を見る。
そんなみほの心情を察したのだろう。沙織がこれからみほの家へ遊びに行ってもいいかと聞いて来た
ハッとした、なに下に俯いてるんだ。こうして自分と仲良くしてくれる友達、守りたいものが居るではないか。危うく前の自分に戻る所だった。みほはもう治ったから心配しなくていいよと言うように明るい顔でうんと答えた
「あの〜…自分も付いて行って宜しいでしょうか?」
恐らく知り合ってからまだ時間がそこまで経ってないから断られると思ったのだろう優花里は恐る恐る尋ねた
「勿論、秋山さんもいいよ!」
優花里は顔を明るくして
「本当ですか西住殿!?ありがとうございます!」と言った。
帰路
コンビニに寄って少し物を買い自分の家へ向かう途中でみほは沙織に囁いた。
「沙織さん…いつもありがとうね」
「大丈夫だって、みほは一人で溜め込んじゃうタイプ何だから友達に頼らなきゃダメだよ?」
本当にいい人だ、そう思い首を縦へとふった
さあ、記念すべき友人を招いての初料理は肉じゃがだ
みほの部屋
明かりを付けて部屋に入りまずは荷物を下ろす、最初はみほが自分で作ると言ったら沙織がみんなでやろうよと言ったので華が野菜担当、優花里がご飯担当(何故か飯盒一式を持参していた)、みほが肉じゃがの調味料担当、沙織がサポート役というふうに割り振られた
…だが華がジャガイモの皮を剥くのに失敗し自分の指を切ってしまいそれに驚いたみほが絆創膏を探しに慌てるなどグダグダになったのを見かねた沙織がコンタクトを外し眼鏡をかけ本気モードと化し以降の調理は全て沙織によって行われた
「それじゃあ皆んないい?せ〜の」
「「「「いただきます!」」」」
沙織の肉じゃがは予想以上に美味しかった。沙織曰く男は胃袋から落とさなくてはいけないから料理は得意とのこと(すかさずそれでモテた試しが無いですけどねと華と突っ込む)
「でも男性って本当に肉じゃがが好きなんですかね、私の父親は別に肉じゃが好物じゃないんですよ」
「都市伝説でしょうね」
「雑誌のアンケートで書いてあったから間違いないもん!」
もはや様式美となりそうなやり取りを見て笑い華が持ってくれた花へと目をやる
「華さんが持ってきてくれたお花とっても綺麗だね、やっぱりお花が部屋にあると落ち着くよ」
「今日はこれしか持ってこれませんでしたけど次回は大きい花を持ってくるので期待してくださいね」
「楽しみにしてるね!」
そんなことや適当に雑談し夜も更けてお開きとなった。やはり友達を持つのはいいな、そう思いながら床へと着いた
まずい寝過ごした、昨日夜遅くまで起きてたのが災いし遅刻ギリギリの時間に起きてしまった。急いで家を出て走って学校へと向かう、走ればギリギリ間に合う時間だ(これならなんとかいけそう)そう思った矢先に目の前で今にもぶっ倒れそうな感じでフラフラ歩く少女がいた。余りにも体調が悪そうに見えたので思わず声をかける、すると
「…辛い。生きてるのが辛い、どうして朝はやってくるんだ…もう少し夢の世界に入り浸らせてくれても良いじゃないか…」
とよく分かんない愚痴を呟きながら地面へへたり込んだ。ただの睡眠不足だから大丈夫だとは思ったが放って置けず肩を貸してその少女と一緒に登校した、結局ついたのは遅刻確定の時刻であった。校門には風紀委員のおかっぱの少女がいた。どうやら自分が助けた少女の名前は「冷泉麻子」と言うらしく今日で245回の遅刻だということ
「仕方ないじゃないかそど子、低血圧の私に無許可でやってくる朝が悪いんだ」
「訳の分かんないこと言ってないで遅刻しないように努力しなさいよ。成績はいいのに遅刻で留年なんて馬鹿げた事になるわよ」
どうやら麻子はこの風紀委員と知り合いの様だ、そど子と呼ばれた風紀委員が自分に今度冷泉さんと会ったら無視して構わないと言った。今回は特例としてみほの遅刻は見逃してくれるそうだ。校門に入り昇降口に向かう途中で麻子がみほに話しかけた
「悪かったな…西住さんだっけか。この借りは必ずいつか返すから」
「ううん気にしなくていいよ、それにしても245回も遅刻なんて驚いたよ」
「さっきも言ったが重度の低血圧でな、朝を起きると言うのは無茶があるんだ。そど子の奴もその辺を考慮してくれたらいいんだけどな…」
流石にそれは無理があるだろう、そう思ったが言うのは野暮だと思い言わなかった
「じゃあ私グラウンドの方だから」
「グラウンド…?西住さんは特車道の履修者なのか、まぁ頑張れ。それじゃここまでの援助ありがとう」
麻子と別れみほは駆け足でグラウンドへと向かった
グラウンド〜ハンガー前〜
ハンガー前には既に自分以外のメンバーが集合していた。まだ教官はやって来ないようである、ふと遠くからエンジン音がしたそれはどんどん近づいていき音の正体が姿を現した、
「あ、あれは航空自衛隊のC-4輸送機です!」と優花里が興奮して叫ぶ
輸送機のハッチが開きそこから一つの人型の物体が降りてきた
「優花里さん、降りてくるあの物体…レイバーだと思うんですけど何でしょう…」と華が尋ねる
「あれは恐らく99式空挺レイバー、通称ヘルダイバーでしょうね」
ヘルダイバーはパラシュートを開き地面へと着陸、が着地地点には理事長が乗る高級外車があった。ペチャンコになる車を見て全員が絶句する中ヘルダイバーのハッチが開いた。
とそこに杏がやってきた
「やぁやぁ皆んなおはよう。さて皆んな気付いてると思うけどいまレイバーに乗ってるこの方が私達の教官を務めてくださる陸上自衛隊1等陸尉の『蝶野亜美』さんだ」
「蝶野です、皆さんは特車道は始めての方が多いでしょうが楽しみながら頑張りしょうね」
亜美が簡単な挨拶を述べ桃が号令をかける。
「さてこれから模擬戦をやる訳なんだけど…あら、西住流師範の娘さんじゃない。お姉さんは元気かしら?」
ギクっとした、まさか教官が自分の家と関わっていて尚且つ自分のことを知ってるとは、当然周囲は「何故教官がみほのことを知ってる、それに西住流とはなんだ。みほと関係があるのか」と言う話題で持ち切りになる
「西住流はね、特車道の流派の中で最も由緒あるものなのよ」
この説明に益々ざわついてきた。この空気を変えるべく沙織がお得意の恋愛の事について聞いて話を強引に変えた。またみほは助けられた
「そういえば教官、先程模擬戦と仰いましたが…」と優花里が聞く
「そうそう、早速だけど今日はみんなに模擬戦をやってもらおうと思うの。100の練習より1の実戦って言うじゃない?」
いきなりの模擬戦と言うことで一同は困惑した。そこで杏が
「まぁこう言うのはチャチャっとやって慣れた方が良いんだよ、それにみんな早くレイバー動かしてみたいでしょ?」と言い嗜めつつ士気を上げる。その言葉に呼応するように一同はハンガーへと向かった
ハンガー内
一年生で眼鏡がトレードマークな少女大野あやは悩んでいた、レイバーに関する知識がこれっぽっちもなく操縦方法をネットで聞いてもロクな返答が無かったのである。はてさてどうするべきか…横を見るとバレー部が円陣を組んでいた。どうやら自信があるようだ、更に隣を見ると歴女達もテンションを上げて勝どきを上げていた、どうやら露頭に迷ってるのは自分達だけみたいだ
「どうするあやちゃん?」と一年生の中で一番背が小さい阪口桂利奈が聞いてきた
「もうノリで行くしかないでしょ」と諦めた声で答える
「ノリでレイバーって動かせるの?」と長髪の山郷あゆみが聞き
「説明書があればなぁ」と澤梓が答えた。
迷ってる時間はない、一年生達はとりあえずレイバーに乗ることにした
「そういえばさ、レイバーって二人乗りなんだよね、余った人はどうするの?」
「そういう人は指揮車に乗ることになってます、指揮車はどうやら会長が連盟にレンタルしたらしいですよ。と言っても私達が指揮車じゃなくラーダーなんですけどね」
「それでレイバーの車長は誰が良いのでしょうか」
「それは勿論西住殿ですよ!」
「えぇ!私!?う〜ん。自信はないけど分かった。この中で経験者は私だけみたいだしやってみるよ」
そう言うと優花里はまるで犬が尻尾を振るかのように喜んだ。
「じゃあ華さんはレイバーの操縦手、優花里さんはラーダーの車長兼操縦手、沙織さんはラーダーの通信担当でお願いします。それでは皆さん頑張りましょう!レイバー・フォー!」
いよいよ模擬戦が始まろうとしていた。
さて、いよいよ次は模擬戦。てことでお待ちどお様でした!待ちに待ったレイバー戦!次回はガッツリ戦闘シーンを書くのでお楽しみに!それではご視聴ありがとうございました!感想など是非是非お願い致します!