カチカチカチカチカチカチ
「あ、三沢っち、乗ったから一旦攻撃止めて」
「む、了解。今のうちに回復しておこう」
「ぬおおおお!よし、倒れた!三沢っち頭よろしく!」
「任せろ、そっちも尻尾頼む」
「ラジャ!もうそろそろ切れても良いんだけど…って切れた!」
「ナイスだ!よし、こっちも…っておい!尻尾の剥ぎ取りは後にしろ!」
「あ、つい…」
「おい、ブレス来るぞ!」
「え!?まだ剥ぎ取り途中…ギャー!モロに食らったー!三沢っち回復、回復プリーズ!粉塵使って!」
「もう演奏してるぞ」
「おー、ナイスタイミング。助かったー」
「そりゃ食らうのは分かりきってたからな…」
現在時刻は午前7時ちょっと前。僕と三沢っちは学校の前で狩りをしていた。ちなみに僕はスラッシュアックスで三沢っちは狩猟笛だ。
なぜこんな早い時間帯に学校にいるのかと言うと、今日はあの伝説のデュエリスト、武藤遊戯のデッキの展示会のチケット発売日だからだ。本来は今日の放課後17時から購買部にて販売が開始されるのだが、実は放課後に用事がある人のために、朝の7時半から先着10名分だけ先行販売されるのだ。放課後で取れるかどうかは怪しいため、こうして1時間前から並んでいる。ちなみに十代達は声かけても起きなかったのでスルー。
「しかし、お前の事だから武藤遊戯のデッキを見たら、自分でも作ってみるんじゃないのか?む、足を引きずりだしたぞ」
「もう作ったよ。あ、先回りして巣に落とし穴張っとくね」
「ほう?どんなデッキになった?というか、レアカードが多いからまともなデッキにならないんじゃ…お、落とし穴にはまったな」
「いや、それが…って捕獲玉1個しか残ってなかった!三沢っち後1個投げて!」
「な!?残弾くらい確認しとけ!」
三沢っちが慌ててこちらに近づいて捕獲玉を投げつける。落とし穴から脱出されるギリギリの所だったが、これで何とかクリアーだ。
「あー、そーいやさっき1個外してたや。ゴメンね」
「予備は用意しておけ、全く。間に合ったからいいもの」
「いやー、ボックスに残り4つしか無くて。あ、さっきの続きだけど、さすがに武藤遊戯のデッキをそのまま回すのは無理だからいろいろ改造したら、別のデッキになってた」
「何のデッキになったんだ、一体」
「ブラマジデッキ」
「は?」
「だから、ブラックマジシャンのデッキになってたの」
「待て待て、何故お前がブラックマジシャンを持ってるんだ。どこで手に入れた」
「ああ、ブラックマジシャンでも、武藤遊戯の持ってる初期版じゃ無くてEX版だよ。それでも2枚しかないし」
ちなみにEX版ブラマジは、初期版やパンドラ版とは違って髪が金髪で服装が青くなっている。
「確かに市場価格的には下がるだろうが、それはそれでかなりのレアカードだろうに」
「ちなみにブラマジガールも入ってたりする」
「…もう驚かんが、それはパックでか?」
「いや、これ実は親からもらったカードで…」
「親御さんが当てたのか」
「それが違くて、どうも会社内のデュエル大会での優勝賞品だったらしいよ」
ちなみに海馬コーポレーションオリジナルデザインで、このカード専用のソリッドビジョンのプログラムも存在する、事実上世界に一つだけのカードだ。優勝を逃した男性社員の一部が血の涙を流して悔しがったらしい。
「ああ、確か両親二人共KC社で働いているんだったな。やはり強いのか?」
「どうなんだろう?優勝したのは母さんだけど、決勝が父さんと母さんだったらしいし…」
「流石お前の親なだけはある、と言うべきなんだろうな、ここは。と、開いたな。行くぞ」
「おk。あ、後ろやっぱ人いるね」
「だな。やはり早めに来たのは正解だった」
「同感」
こうして、僕と三沢っちは無事にチケットを手に入れる事が出来た。
レッド寮に戻ると、十代達が朝食を食べていた。
「あ、連夜!なんで起こしてくれなかったんだよ〜!」
「いや、起こそうとしたけどお前が『俺は後でいい〜』って言うから」
「え?マジ?」
「マジ。だから三沢っちと2人で取ってきたよ。ホラ」
そう言って十代に先程買ったチケットを見せる。
「ちぇー、俺もあとちょっと早く起きてたらなー」
「あの列合流禁止だからどっちみち無理だったと思うけどね。ま、諦めて放課後に頑張りなよ」
「もちろんだぜ!なんてったってあの遊戯さんのデッキのためだもんな!」
まあ、遅れたとはいえこうやって十代が早起きしてるのは間違い無いんだし、やはり武藤遊戯のデッキは楽しみにしてるんだろう。
でも放課後には人が集中するだろうから、僕達は朝早くに並んだ訳ですがね。まあ十代の事だし、放課後授業終わったと同時に駆け出すんだろうけど。
「で、これはどういう状況?」
放課後、既に整理券を入手済の僕と三沢っちは2人で公開される武藤遊戯のデッキについて話していた。
気が付いたら時間が販売開始時刻をまわっていたので、様子を見に購買部に行くと、そこでは人だかりが出来ていて、その中心では翔くんがラーイエローの生徒とデュエルをしていた。
「おう、連夜か。実は翔のやつ、俺と並ぼうとしてたんだが財布を忘れたらしくてな。慌てて寮まで取りに帰ったんだが、戻った時には結構列が出来ててな。ちょうど翔のとこで最後の1枚になっちまってよ。それで隣の列で並んでたやつとデュエルして、買った方が整理券を手に入れられるって事になったんだよ」
「なるほど把握。で、翔くんの相手は?」
「神楽坂だな。ラーイエローの中でも座学での成績はかなり優秀な方だ。ただ、実戦となるとな…」
「何か問題でもあるの?」
「それが…まあ見てろ。ほら、ちょうど神楽坂が動くぞ」
デュエルに目を向けると、神楽坂くんのターンに移っていた。
「俺のターン!魔法カード『大嵐』を発動!場の魔法、罠を全て破壊するノーネ!」
「…ねえ、あの口調」
「それだけじゃ無いぞ。見てろ」
「そして俺の破壊された『黄金の邪神像』の効果発動!2体の邪神トークンを召喚される!この邪神トークンを生け贄に、『古代の機械巨人』を召喚するノーネ!」
ああ、コピーデッキ使いなのね。口調までマネするなんて凝ってるなあ…
「バトルだ!行け!古代の機械巨人!」
「『ジェットロイド』の効果発動!攻撃対象にされた時手札から罠カードを発動できる!『魔法の筒』を発動!僕の受けるダメージはそのままお返しだあ!」
「うわああああ!」
決まったか。というか、ギアゴに戦闘時の魔法、罠封じの効果ついて無いんだ。なんか微妙だな…
「えへへ、やったよアニキ!」
「おう、良かったな、翔」
あっちは盛り上がってるな。まあ、武藤遊戯のデッキが観れる事もあるだろうけど、翔くんは自分がラーイエローの生徒に勝てた分余計に嬉しいんだろうな。一方で、相手の神楽坂くんはかなり落ち込んでいる。格下に負けた事がショックだったのだろうか。周りの反応もよろしくない。
「ドンマイ、まあツイてない時もあるさ」
三沢っちが笑顔で励ます。哀れみではない、本気でそう思ってるのだろう。
「うるさい!何時でもオベリスクブルーに行けるようなやつに俺の何が分かる!」
神楽坂くんは三沢っちの手を跳ね除けてそのまま走り去って行った。
「三沢っち…」
「…あいつはデッキを作ろうとする時、人のデッキを参考にするんだが、どうしてもそのデッキとデュエリストの印象が頭に残ってしまい、結果的にほぼ同じデッキに仕上がってしまうそうだ。プレイングに関しても同じ事らしい。その事についてずっと悩んでいたんだがな。俺では結局何も解決してやれなかった」
「でもそれは…」
「分かってるさ。これはあいつの問題で、あいつの責任だ。…あいつにも、何か変わる切っ掛けがあれば良いんだがな」
切っ掛け、か。十代あたりとデュエルすれば何か分かるかな?
その日の夜。十代達が僕の部屋に来た。
「なあ、連夜も一緒に一足早く遊戯さんのデッキ見に行かねえか?」
「んー、でも、見せてくれるかな?」
「今の時間なら、ちょうど鍵が先生に返却されてる頃っす。頼み込めば先生によっては見せてくれるかもっすよ」
「なる。なら行ってみようかね。あ、三沢っちにも声かけとこう」
えーっと、『デッキ見に行くよ。今から』っと、送信。…あ、もう返事きた。えー、なになに『もう向かってる』?
「三沢っちもういってるってさ」
「マジか。なら俺たちも行こうぜ」
「だね。三沢っちなら上手く交渉してくれそうだし」
「…で、これはどういう状況なのかな?」
本日2度目のこのセリフである。
展示会場に向かった僕らは、会場の近くでクロノス教諭の悲鳴を聞きつける。現場に到着すると、そこには割れたガラスケースと、腰を抜かしたクロノス教諭の姿が。
「まさかクロノス先生が!?」
「ち、違うノーネ!ワタシはやって無いノーネ!信じて欲しいノーネ!!」
「いや、そもそもクロノス教諭鍵持ってるからガラスケース割る必要ないでしょうに」
「そ、そうなノーネ。鍵持ってたノーネ」
「ならば犯人は別にいるということだ。とにかく、さっきすれ違った警備員に連絡を…」
「それも勘弁して欲しいノーネ!校長にバレたら下手したら免職処分なノーネ!!」
「いや先生。確かにお気持ちは分かりますが…」
「まあいいじゃん。それより、早く犯人探しに行こうぜ。まだそう遠くには行って無いだろ」
「仕方ないな。よし、皆んなで手分けして探すぞ!」
「「「「おー!」」」」
「うう、ありがとなノーネ」
「いや、先生も探しに…行ったら怪しまれますか。先生はここでこれ以上他の生徒がここに近づかないように見張ってて下さい」
「了解なノーネ。頼みまスーノ」
「わかりました」
さて、ちゃっちゃと犯人見つけてついでにデッキを拝むとしますか。
「見つかったか!?」
「いや、そっちはどうだ?」
「ごめん、僕もまだ」
「俺もなんだな」
皆んなで探し回るも、なかなか犯人が見つからない。
「あれ、そういえば翔のやつは?」
「まだ探してるとか?でも一度ここで合流する事になってるのに」
『うわああああ!!』
「この声、翔か!」
「向こうのほうからだ!急げ!」
急いで翔くんよ悲鳴が聞こえた場所に向かうと、そこには翔くんと、神楽坂くん!?
「あ、アニキィ…ゴメンなさい。僕、負けちゃったっす…」
「ふ、ふふふふふふ。凄い、凄いぞ!俺がこんなに強かったなんて!はーはっはっはっは!!」
「神楽坂…お前まさか…」
「この伝説のデュエリスト、武藤遊戯のデッキなら…俺は、誰にも負けない!」
「へえ、誰にも負けないか。なら俺と」
「待て」
三沢っちが前に出ようとした十代を手で制する。
「このデュエルは連夜、お前がやってくれ」
「え!?僕!?」
「ああ。本当ならおれがやらなきゃいけないのだろうが、俺はあいつを止める事が出来なかった。だから俺が今あいつに何か言ってやれる資格が無い。だから頼む」
「でも何で僕が?」
「適任だと思ったからだ」
…そんな事言われたらやってやるしかないじゃ無いか!
「ならば期待に応えようじゃないか!十代、悪いけどここまで言われたんだ。僕がやるよ」
「しゃーねえな。だけど、負けんじゃねえぞ!」
「当然!」
「誰だっていい!今の俺は最強なんだ!お前にも勝って、それを証明してやる!」
「「デュエル!!」」
「先攻は僕だ、ドロー!『バニーラ』を守備表示で召喚。カードを2枚セットし、永続魔法『凡骨の意地』を発動!効果は後ほど。これでターンエンド」
「俺のターン、ドロー!手札から『融合』発動!手札の『バフォメット』と『幻獣王ガゼル』を融合!来い!『有翼幻獣キマイラ』!」
初ターンから素材の指定された融合召喚か。やるね。だけどそれは十代で見慣れてる!
「バトル!キマイラでバニーラを攻撃!」
「リバースカードオープン!『同姓同名同盟』発動!場のレベル2以下の通常モンスターと同名のカードをデッキから2体特殊召喚する!バニーラ2体を守備表示で特殊召喚だ!」
バニーラの左右に、さらにバニーラが並び立つ。
「ならば右側のバニーラに攻撃だ!
キマイラがバニーラに向かって走り出すと、それを見たバニーラが慌てて地面に潜り込み、そのまま出て来なくなった。…あ、これで破壊された扱いになるのね。
「さらに俺は『クイーンズ・ナイト』を召喚、カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー!僕はドローしたカード、『ワイト』を公開し、凡骨の意地の効果発動!ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった場合、追加でドロー出来る!さあ、凡骨の凡骨による凡骨の為ではないデッキの真髄を見せてやる!ドロー!ドローしたカード『バトル・フットボーラー』を公開し追加でドロー!ここで打ち止め。ここでリバースカードオープン!『凡人の施し』!カードを2枚ドローする!『大砲ダルマ』を公開しドロー『くいぐるみ』を公開、ドロー『封印されし者の右腕』」
「何!?」
「ドロー、ここで打ち止めだ。凡人の施しの効果で、くいぐるみを除外する。魔法カード『アームズ・ホール』発動。デッキから装備魔法『下剋上の首飾り』を手札に。カードを3枚伏せ、ターンエンド」
「エンドフェイズ時に罠カード『融合準備』発動!融合デッキの『アルカナ ナイトジョーカー』を見せ、融合素材の『キングス・ナイト』を手札に加え、墓地の融合を回収する。」
「む、揃えちゃったか。改めてターンエンド」
「俺のターン、ドロー。お前のそのデッキ、まさかあの伝説のカード、エクゾディアか?」
「さあ?でも言ったでしょ。これは凡骨の凡骨による凡骨の為ではないデッキだって」
「どんなデッキだろうと、俺は負けない!俺はキングス・ナイトを召喚し、効果発動!このカードが召喚に成功した時、自分の場にクイーンズ・ナイトがいればデッキから『ジャックス・ナイト』を特殊召喚出来る!来い、ジャックス・ナイトよ!そして融合!絵札の三剣士を融合し、アルカナ ナイトジョーカーを融合召喚!バトル!アルカナ ナイトジョーカーでバニーラに攻撃!」
「リバースカードオープン!『カバーカーニバル』!効果により僕の場にカバートークンを3体特殊召喚!そして、相手はカバートークンにしか攻撃出来なくなる!」
フィールドにサンバの衣装っぽい服をきたカバが3体現れ、踊り始める。
「ちい!ならアルカナナイトジョーカーとキマイラでカバートークンを攻撃!」
ジョーカーとキマイラによって2体のカバートークンが破壊された。バニーラたちは…残った1体のカバートークンの陰に隠れていた。
「ターンエンドだ」
さて、状況的にはかなり厳しいけど、がんばりますかね。
「ああ!連夜君が押されてるっす!」
「…妙だな」
「ん?どうしたんだよ三沢?」
「いや、今日の連夜はやたら守るなと思ってな」
「でもそれはエクゾディアを揃える為なんじゃ無いか?」
「いや、本当にただエクゾディアを揃えるなら、あいつはもっと別のデッキにしている。以前そういうデッキとやったが、あれは酷かった」
確かあいつは『図書館エクゾ』と言っていたな。ただひたすら自分のデッキを回す、相手の事など知った事かとでもいうようなデッキだった。あいつも、『このデッキの対戦相手の9割9部は壁』とか言っていたしな。
「何かする気なんだろ?連夜の事だし。ワクワクするなあ!」
「そうだな。あいつはそういうやつだな」
やはりこのデュエル、あいつに任せたのは間違いじゃなさそうだ。
「僕のターン、ドロー。む、凡骨の効果は発動しない。1枚伏せてターンエンド」
「俺のターン、ドロー!装備魔法『稲妻の剣』をアルカナナイトジョーカーに装備!」
突如、アルカナナイトジョーカーの持ってた剣に、雷が落ちた。え、大丈夫なの?あ、剣が帯電してる。しかも形が変わって稲妻の剣になってる。
「アルカナナイトジョーカーでカバートークンに攻撃!ライトニングサンダーブレード!」
「罠発動『和睦の使者』!モンスターの破壊と戦闘ダメージを防ぐよ」
「また守りの…ターンエンドだ」
さて、次はどう動こうかな?
何回やっても何回やってもイビルジョーが倒せないよ。
あの狂暴龍何回切っても死なない。
後ろに回って尻尾切るけどリーチが全然足りて無い。
鬼人化乱舞叩き込んでても四股踏みされたら意味が無い。
だから次は絶対勝つために僕はスラアックスの練習をやっておく。
そんな3rd時代を過ごした図1のようになります。です。
デッキの内容はまだ伏せておきます。分かる人はいるかな?いるだろうなあ…
後編も直ぐに投稿します。というか、デュエルが長引き過ぎて前後半分けたんですけど。でわ!