デュエルアカデミアは、優秀なデュエリストを養成するための学校である。となると、当然教師はデュエルを教える側として、それ相応の実力が求められる。そこで、デュエルアカデミアの教師となるためには、ある条件が必要となる。それが、
“アカデミアの生徒50人に勝利する”
というものである。で、何でこんな話題が持ち上がったというと…
「む、無理だよアニキ〜、相手は教育実習の先生だよ」
「先生もクソもあるかよ!だいたい人のカード奪うなんてデュエリストとして許せねえ!なあ!連夜!!」
「同感!教師が生徒にアンティルール仕掛けるなんて人としてどうかと思うね!」
「「絶対取り返してやる!!!」」
事の始まりは、とある噂だった。
「なあ連夜。お前龍牙先生の噂って知ってるか?」
「龍牙先生?ああ、確か教育実習の先生で、今採用試験の最中だったっけ?」
「今のところ45連勝中らしいぜ」
「45!?さすが教育実習生、相当な実力だね。で?その龍牙先生がどうかしたの?」
「ああ、その噂ってのがな、負けた生徒からカードを奪ってるって話なんだよ。ほら、ここ最近生徒がカード忘れたって実技授業休んでただろ?」
「そういえば最近そんな生徒がちらほらいたような…」
「それでな、今日は翔が対戦相手に選ばれてんだ。だから…」
「翔くんから先生の実力を聞くついでに噂の真相を確かめようって事だね。了解、付き合うよ」
「連夜ならそう言うと思ったぜ!早速翔のとこ行こうぜ!」
デュエル場に続く廊下で、トボトボ歩いてる翔くんを見つけた。
「オイ翔!どーだったデュエルは!?」
十代が肩をドンと押すと、翔くんは何の抵抗もなく、ペタンと床に手をついた。
「お、おい、どうしたんだよ」
「いやそこは空気読もうよ。それにしても、そんなに強かったの?」
そう尋ねると、翔くんはゆっくりと顔を上げた。
「ア、アニキィ、連夜くん…ぼ、僕のカードが…取られちゃったっす…」
「な…なんだってェ!」
「単なる噂じゃなかったんだ…」
これはさすがに見過ごすわけにはいかないね…
この様な経緯で冒頭部分に至るわけだが、僕らはその龍牙先生のもとに向かっていた。
すると、ちょうど龍牙先生がクロノス教諭の部屋から出てくるところだった。
「「ああ!いた!!」
「おいアンタ‼︎翔から奪ったカード返せよ‼︎」
「ん?アンタとは私のことかい?確か君達は…」
「オシリスレッド1年、遊城十代だ!」
「同じく、天城連夜です」.
「そうそう、オシリスレッドのワリにはそれなりのウデを持っているらしいね」
「それよりも、先生はデュエルで負かした生徒からカードを奪っていると耳にしたのですが」
「ああ、そのことか。実は私はカードコレクターでね。そこの丸藤くんが私の持っていないカードを所持していたんで譲って貰ったんだ」
「そんな…僕は譲ってなんか…」
「どうかね?君達も何枚かカードを譲ってくれないか?そうすれば、来年からの私の授業で成績に多少色をつけてあげてもいい」
「「だが断る!!!」」
「…何だと?」
「カードはデュエリストの魂だ!アンタみたいなヤツに簡単に渡せるもんか!」
「僕も同意見です。僕がカードを渡すのは、僕が認めた人だけなんで」
「ほう?そんな態度でいいのかな?来年には私はこの学校の教師だ。成績次第では君達の退学だってあり得るんだ」
「へ!関係ないね!」
「それに、まだ決まった訳ではないでしょうに」
「決まったも同然さ!なんせ、あと一勝すればいいのだからね!」
龍牙先生が声を上げて笑っていると、後ろのドアが開けられた。
「私の部屋の前が騒がしいと思ったら、アナタ達でスーノ」
「「ゲッ、クロノス教諭」」
「お疲れ様です、クロノス教諭。お騒がせして申し訳ありません」
「おや、龍牙先生、アナタもいたんでスーノ?」
「え、ええ。先程の翔くんとのデュエルについて少し」
「結構でスーノ。そうなノーネ、シニョール十代にシニョール連夜、アナタ達のどちらかが龍牙先生の50人目の相手をするノーネ」
「おやおや、二人ともクロノス教諭に勝った相手、なかなか厳しそうですね」
「い、イヤなこと思いださせないで欲しいノーネ」
「イイぜ、そのデュエル受けてた…」
受けて立つ、と言いかけた十代を遮る
「連夜?」
「十代、このデュエルは僕に任せて欲しい」
「…しゃーねえなあ。今回は連夜に譲るよ」
「サンキュ、十代」
「では、キミが相手ということでいいんだね?なら、私は先にデュエル場へと向かうよ。…せいぜい頑張ってくれたまえ、なんせ、君達の退学がかかっているのだからね」
すれ違いざまに、僕と十代にだけ聞こえるような声でそう言い放ち、龍牙先生はデュエル場へと歩いていった。
「さて、それで?龍牙先生の実力はどうだったの、実際」
「うん、デッキは恐竜と爬虫類の混合デッキで、プレイングにも無駄が無かったよ。でも、問題はそこじゃないんだ」
「どういうこと?まさか、十代みたいなとんでもないドロー運とかじゃ…」
「そんなんじゃないんだ。その、実は何故か魔法カードが使えなかったんだ…」
「ま、まさか俺が昨日デュエルディスクをフリスビーみたいに投げたから…」
「あれはアニキのデュエルディスクだったでしょ!」
「何やってんだよ二人とも…で、結局メンテ不足だったの?」
「それが、デュエル終わった後にもう一度起動したら、今度は普通に使えたんす」
「ちょっとデュエルディスク貸して。っと、デュエルディスク起動、んで死者蘇生を発動っと、…うん、普通に反応するね」
「でしょ?何であの時だけ…」
「やっぱ偶然じゃねえ?」
「うーん…ま、これ以上考えても仕方ない。とりあえずデュエル場に向かおう」
ただの偶然にしては出来過ぎだ。何か裏があるのだろうけど、それが何かは分からない。これ以上は直接確認するしか無いな…
僕らがデュエル場につくと、既に龍牙先生が待ち構えていた。
「遅かったね。それで、相談はもういいののかね?」
「ええ、お待たせして申し訳ありません。始めましょう」
「「デュエル!!」」
「先攻は私が貰う。ドロー!私はモンスターをセット、さらにカードを1枚伏せターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー!手札から魔法カード「ピーッ、ピーッ、ピーッ」これは…」
魔法カードを発動した瞬間、デュエルディスクからアラーム音が鳴り響いた。
「すみません。タイマー機能を切るのを忘れていました」
「な、何だただのタイマーか…驚かせないでくれたまえ」
やたら驚いている龍牙先生を横目に、デュエルディスクを操作していく。
(このアラームはデュエルディスクに何らかの異常が生じた際に発せられるものだ。原因は…電磁波によるシステムの異常?発信源は…近っ!半径6mかよ!?こんな近くに電磁波が発生する様な物は…ああ、そういうことね)
「まだ終わらんのかね?」
「すみません、設定の解除に手間取ってしまって。続けましょう。僕は手札から魔法カード『竜の霊廟』を発動!」
「なっ!?」
「ただの魔法カードです。そう驚かれることもないでしょうに。霊廟の効果により、デッキから『アレキサンドライドラゴン』を墓地に。さらにこの時送ったモンスターが通常モンスターの場合、もう1枚墓地に送ることができる。さらに『焔征竜ブラスター』を墓地に。さらに魔法カード『おろかな埋葬』を発動。デッキから『レベルスティーラー』を墓地に。」
「(何故だ、何故ヤツのデュエルディスクは魔法が使える…!そういえば、ヤツのデュエルディスクは他の生徒の物とは違う…っち!特注品か!まあいい。所詮オシリスレッド、実力でどうとでもなる)…1ターンでそれだけのモンスターを墓地に送るとは。なるほど、腕は確かなようですね」
「それはどうも。『強欲な壺』を発動。2枚ドローします。『聖刻龍 トフェニドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚。このカードは相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、手札から特殊召喚できる。攻撃は出来ないけどね。さらに『アックス・ドラゴニュート』を攻撃表示で召喚。バトル!アックスドラゴニュートでセットモンスターを攻撃!」
「私の伏せたモンスターは『レプティレス・ナージャ』だ!レプティレス・ナージャは戦闘では破壊されない!さらに!レプティレス・ナージャとバトルを行ったモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時に0にする!」
「く、だがアックスドラゴニュートは戦闘行うと守備表示になる!」
「ふ、用意周到だな!」
「メインフェイズ2に、墓地のレベルスティーラーの効果発動!自分フィールド上のレベル5以上のモンスターのレベルを一つ下げ、墓地から特殊召喚する!さらに速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在する時に、攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚した時に発動できる。特殊召喚したモンスターと同名モンスターを手札、デッキ、墓地から攻撃表示で特殊召喚する。レベルスティーラーを2体特殊召喚」
「私はデッキからもう1体のレプティレス・ナージャを特殊召喚する。自分からそんなザコモンスターを並べるとは。壁にすらならないじゃないか」
「勝利への布石その1ってとこです。多少のダメージは必要経費ってものですよ。カードを2枚伏せ、ターンエンド」
「その強がり、いつまで続くかな?私のターン、ドロー!先ずは『強欲な壺』を発動だ。2枚ドロー。私は手札から『超進化薬』を2枚発動!場のレプティレス・ナージャ2体を生け贄に、手札から『ジュラック・スピノス』と『ジュラック・ティラヌス』を特殊召喚!さらに『ジュラック・グアイバ』を通常召喚!ついでだ、速攻魔法『サイクロン』を発動!右側のカードを破壊!」
「チェーンしてリバースカードオープン!『ダメージ・ダイエット』!このターン受けるダメージを半分に!」
「ちっ、フリーチェーンのカードか、運が無い。まあいい、バトル!スピノスで攻撃表示のレベルスティーラーを攻撃!スピノスは相手モンスターを戦闘で破壊し、墓地に送った時、相手フィールド上に攻撃力300のスピノストークンを攻撃表示で特殊召喚する!」
連夜LP 4000→3000
「続いてグアイバで攻撃表示のレベルスティーラーに攻撃!グアイバが戦闘でモンスターを破壊し、墓地に送った時、デッキから攻撃力1700以下のジュラックと名の付いたモンスターを特殊召喚出来る!ただし、このターンは攻撃は出来ないがね。『ジュラック・イグアノン』を特殊召喚!」
連夜LP 3000→2450
「最後にジュラック・ティラヌスでスピノストークンに攻撃!」
連夜LP 2450→1350
「ふん。なんとか耐え切ったか。ターンエンド」
「エンドフェイズ時にリバースカードオープン!『
「ちっ!無駄な足掻きを…連夜くん、潔くサレンダーしたらどうだね?奇跡でも起こらない限り私の勝利は揺るぎないぞ」
「お断りします。僕はどんなデュエルでも最後の1枚をドローするまで諦めないので。それに、既に勝利への布石はほぼ揃い終わっています!」
「この状況で何ができると言うのだね。負け惜しみはよしてくれ」
「では負け惜しみでは無い事を証明しましょう。僕のターン、ドロー!これが最後の勝利への布石です!場のトフェニドラゴンとレベルスティーラーを生け贄に、現れよ!『破壊竜ガンドラ』!」
「攻撃力0だと?血迷ったか!?」
「おや、ガンドラの効果を知らないので?トフェニドラゴンが生け贄にされた時、自分の手札、デッキ、墓地からドラゴン族通常モンスターを攻撃力と守備力を0にして特殊召喚します。デッキから『エレキテルドラゴン』を特殊召喚!さらにガンドラのレベルを2つ下げ、墓地から2体のレベルスティーラーを特殊召喚!」
「今さらそんなザコが何になる!」
「ではお見せしましょう。破壊竜ガンドラの効果発動!ライフポイントを半分払い、フィールド上に存在するこのカード以外の全てのカードを破壊し、ゲームから除外する!」
連夜LP 1350→675
「な、何だと!?」
「フィールドを蹂躙しろ!ガンドラ!『デストロイ・ギガ・レイズ』!!」
ガンドラから放たれた無数の光線がフィールド上のカード全てを破壊し尽くした。
「さらにガンドラはこの時破壊したカードの枚数×300ポイント攻撃力が上がる。ただし、召喚したターンのエンドフェイズに墓地に行きますが。破壊したカードは10枚。よってガンドラの攻撃力は3000!!」
「そのためにワザとフィールドにカードを…だがキミは重大なミスをしている!レベルスティーラーは除外されたらもう特殊召喚出来ない!キミの墓地にはまだ1体残っているが、それでも合計の攻撃力は3600だ!私のライフは削れないぞ!そうなるとキミの場にはレベルスティーラーしか残らない!どの道私の勝ちだ!」
「言ったはずです、勝利への布石は揃い終わっていると。墓地の焔征竜ブラスターの効果発動!自分の墓地、または手札から炎属性、またはドラゴン族モンスターを2体除外することで手札または墓地に存在するこのカードを特殊召喚出来る!アレキサンドライトドラゴンとトフェニドラゴンを除外!現れよ、焔征竜ブラスター!」
「な、なん…だと…!」
「終わらせましょう。ガンドラとブラスターでダイレクトアタック!『デストロイ・ブラスター・カノン』!!」
2体の竜から放たれた熱線と光線が龍牙先生を貫いた。
「そ、そんな、バカなァァァァァ!!!」
龍牙LP 4000→-1800
「…それだけの腕ならば、実力のみでも十分すぎる結果が出せたでしょうに。下手な小細工は自身の身の破滅を迎えるだけですよ」
「ま、まさかお前…」
「
「く、クソッ…」
悔しそうにこちらを睨んでいる龍牙先生を横眼に、僕は応援席にいる皆の元へ歩いて行った。
「約束通り、勝ったよ十代」
「ああ、さすがだな!連夜!」
「でも、連夜くんは魔法使えたって事は、やっぱり偶然だったんすかね…」
「いや、龍牙先生の仕業だよ。先生の着けてる指輪から、デュエルディスクのシステムを麻痺させる電磁波が発生してた」
「えっ!?じゃあ何で連夜くんのデュエルディスクは大丈夫だったんすか!?」
「言ったでしょ?このデュエルディスクは海馬コーポレーションの最新のものだって。ああいう外部からの妨害に対するプロテクトは万全だよ。ついでに原因も究明出来る」
「あ、じゃあお前が俺の代わりに今回デュエルしたのって」
「そういうこと。万が一魔法が使えなかったとしたら、十代のデッキじゃ厳しいだろうし、何より原因が分からないだろ?」
「アニキはそれでも勝っちゃいそうっすけどね」
「…何かそんな気がしてきた」
「なあ連夜、お前のそのカード…」
「「「あ、三沢(くん・っち)いたんだ」」」
「居たよ!最初からずっと!ていうか一緒に観戦してただろうが!」
「あはは、ゴメンゴメン。で、そのカードってこれ?」
そう言って破壊竜ガンドラのカードを見せる。
「ああ、そのカードだ。凄いな、このカード、あの伝説のデュエリスト、武藤遊戯が使用したカードの1枚だろ?よく手に入ったな…」
「(え、そーだったの!?フツーにあったから何も考えずにいれちゃってたけど…)あはは、む、昔パックで当たって」
「何とも羨ましい限りだな。ドラゴン族デッキか?」
「えっとね、これ、本当は入試試験で使う予定だったのをちょっと改造して作ったんだよね…」
「あれ?でも連夜くんって入試試験では罠カードばっかじゃなかったっすか?」
「あれは間違えて持って来たって言ってただろ?なあ連夜、それがあの時の本来のデッキなんだろ?じゃああん時出来なかったし、今から俺とデュエルしようぜ!!」
「いやー、さっき回して思ったけど、まだまだ調整が必要だからね。また今度」
「ちぇー。結局デュエル出来ず終いかよー」
「龍牙先生ともデュエル出来なかったっすからね」
「でもあの人、小細工なしでもかなりできるよ。多分翔くん魔法使えてたとしても勝てたかどうか…と言うか下手すればクロノス教諭と同じかそれ以上だよ」
「本当っすか!?」
「連夜がそこまで評価するとはな…あれでまともな先生だったら、俺もぜひデュエルしたかったな」
「ま、実力あってもあんな先生は嫌だけどね。とりあえず校長先生のとこ行ってくる」
「報告か。お前も大変だな」
「先に寮戻ってるっすね。ほら行くよ、アニキ」
「おう。じゃ、また後でなー連夜」
「うん。また後で…さて、行くか」
今回の件を報告するため、僕は校長室に向かった。
後日、龍牙先生の教育実習が終了することが全校生徒に伝えられた。何人かの生徒がホッとした様な表情を浮かべていたので、やはり今回の被害者はそれなりにいたらしい。翔くんのカードも無事に戻って来たそうで、しきりに感謝された。
「アニキも連夜くんも、これで一安心っすね」
「え?何がだ?」
「ほら、龍牙先生が教師になったらアニキや連夜くんって絶対目をつけられるじゃないっすか。特にアニキなんか成績危なかったら退学にするって言われてたんすから」
「げっ…そういえばそんな事言われてたっけな」
「あはは、十代らしいや。でも、あの人は嫌いだけどあの人のデュエルは実は結構楽しかったんだよね…実力は本物だったし。またデュエルはしたいね」
そう笑いながら答えたが、この時の僕は、この一言が最悪の形で実現することになるとは思ってもいなかった…
どうもー。図1のようになります。です。前回の後書きで、次回あの人登場!とか言ってましたが…残念!!「ぶるぁぁぁぁ!!!」の人ではありません!あの人=龍牙先生の事です!この後の展開的に、どうしてもこのタイミングで登場させたかったんです…次回こそ、ぶるぁぁぁぁ!の人が登場します!お楽しみに!!
今回のデッキですが、ええ、もう出ないとか言ってたあのカオスドラゴンですよ。まあ、大分改造しましたけどね。むしろカオスの要素がほぼ無いですけど。だってガンドラぶっぱでヒャッハー!したかったんだもん!だからついでに今回は大分ネタ要素を突っ込んでみました!あなたはいくつ気付くかな?おかしいな…後の展開に繋がるシリアス場面作ろうとしたのにな…
追記
手札に困ったら強欲な壺で調整。…今回のこれはちょっとやり過ぎかな?