ありふれない解放者は世界どこでも最凶   作:マイティージャック

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2020/6/7 加筆
2020/6/8 誤字修正


プロローグ

 

男は最強と自負していた。何の因果か赤ん坊の時に鬼人(オーガ)族の頭領に拾われ、息子のように育てられた。5歳の時から、頭領や一族の人たちの指導のもと、男は己を鍛えた。偉大な頭領の背中を追いかけ、そして追い越す為に。妥協することなく鍛え上げ極めていった。17歳の時、種族的な特徴の差で、なかなか強くなれず、心が折れそうな時もあったが頭領が一言だけ

 

 

「この俺を超えてみろ」

 

 

頭領は寡黙で口数は少なく、よく言葉を勘違いされる。だが今回は直ぐに理解出来た。『うじうじと落ち込んでいる暇があるなら、さっさと鍛えろ。お前は俺の息子なんだからな』と、そう言っていると理解した。そっからは早かった。その言葉を糧に、ひたすら鍛え続けて3年、気づけば一族の中で頭領を除けば、最強となっていた。

 

 

翌年のある日、頭領から呼び出され

 

 

「これより、お前が一族の頭領だ」

 

 

頭領が一言そう言ったあと退出していき頭領補佐が、男が頭領に選ばれた経緯を話してくれた。それを聞いた男は

 

 

「非才の身でありますが、謹んで襲名致します」

 

 

と言って、襲名した。そこから3年間、襲撃してくる輩を撃退していったら、その余りにもの強さ、そして使う技から『鬼の跡目』か『砂鬼王(サキオウ)』と呼ばれ畏怖されるようになった。

 

 

そして翌年、男にとって忘れもしない事件がおきた。神の使徒と呼ばれる集団に鬼人族の滅亡を唐突に言い渡され、どういう事かと問いただそうとした瞬間、数えることが馬鹿らしくなるほどの大量の魔法が里に降り注ぎ、防御も間に合わず鬼人族は殺されていった。30分ほど経ったあと、男は目を覚まし驚愕した。男の目の前には男を庇うように、瀕死の状態で仁王立ちをしている先代頭領がいたからだ。うつ伏せていく先代を慌てて支える。

 

 

「■■■■よ…無事か」

 

 

「もういい!喋んな!」

 

 

「…愛する(カハッ)…■■■■よ。復讐に……囚われ…るな。糧…にしろ」

 

 

「きっと……お…前に…は仲間が…でき…るだろう。…だから」

 

 

「わかったから!わかったよ!!復讐なんぞに囚われないから!もっともっと強くなるから!!生きてよ!生き続けて見守っててよ!!お願いだからさ!!!」

 

 

「…生き続け…ること…は無理だ…が。見守るこ…とはで…きる。」

 

 

「一…族総…出でで…お…えの行…く…末を見守っ…い…ぞ」

 

 

「…らばだ。息…子よ」

 

 

男は泣きながら泣くのを必死に堪えて

 

 

「今までありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さん」

 

 

その言葉に満足したのか、はたまた拾ってから最初で最後の『お父さん』と呼ばれたことが嬉しかったのは定かではないが、笑顔を浮かべながら『ガリウス・ヴァレット』は息を引き取った。

 

 

先代や一族の皆を埋葬し終えた男は、使えそうなものをまとめ、旅に出た。1年後、ある7人の男女のチームに声をかけられた。チームのリーダーが

 

 

「私たちと一緒にこの歪んだ世界をぶっ壊さない?」

 

あまりにも胡散臭く、最初は断っていたが、2ヶ月にも及ぶしつこいまでの勧誘に男は遂に折れ

 

 

「わぁーたよ。仲間でもなんでもなってやるよ」

 

 

といい、仲間になった。その7人は『神代魔法』と呼ばれる魔法の使い手で、その7つを合わせると概念魔法と呼ばれる究極の魔法を作れるらしい。概念魔法で『神・エヒト』を打ち倒し、世界を正常にすることが目標だと言っていた。そして10年の歳月が過ぎ、遂に完成。その後も念入りに準備をし、エヒトのいる神域へ向かった。だが神の使徒達の邪魔や何より概念魔法がエヒトに効かなかったことで男たちは撤退を余儀なくされた。殿にリーダーが名乗り出るが、そこに男は待ったをかけた。

 

 

「リーダーが殿はダメだろ。殿は俺が務める。」

 

 

「それこそダメだよ!■ーくん!」

 

 

「能力的にも俺が相性がいいし、何より彼奴らにはドデカい借りがある」

 

 

「それに神代魔法を持っている、お前たちが死ぬのが一番まずい。であるなら、適任は俺しかいるまい」

 

 

リーダーの女性は目尻に涙を浮かべながら

 

 

「…■ーくん死んじゃダメだよ!絶対に!!約束だからね!!!」

 

 

「『鬼の跡目』や『砂鬼王』と呼ばれた俺が死ぬわけないだろ。少し待たせるが、必ず戻る」

 

 

そう笑顔で言うとリーダーは急に顔を赤くした。今までのこともあり、リーダーが自分のことをどう思っているか察したが、その事には触れず背を向けて一言

 

 

「行ってくる」

 

 

そう力強くいい、走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…オラッ!」

 

 

 男は荒い呼吸をしながら眼前の敵を屠る。幾度も倒しなお、湧いてくる敵。全員同じ顔、同じ表情のため薄気味悪い。だが男は倒れるわけにも、戦いをやめるわけにもいけなかった。父や一族の仇もそうだが、今ここで倒れてしまえば、敵は男の仲間を殺しに行くのがわかっていたからだ。だが敵はそんなことは知らんとばかりに

 

 

「…いきなさい」

 

 

 と、無慈悲に告げる。男は大きく息を吸い。

 

 

「こいやぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

己を鼓舞するべく声を張り上げる

 

 

 万を超える軍勢が迫ってくる。方や大剣を両手に構える者たち、方や銀翼をはためかせ魔法を絨毯爆撃のように放つ者たち、その全てがたった一人の男に向けて放たれる。男は全身を砂の流動体に変えて地面に手をつき、迎え撃つ。

 

 

砂漠の大波(デザート・ウェーブ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂と爆撃の衝突から三日が経ち、彼女は困惑していた。数も質も何もかが上回っているのに、男は倒れない。味方は男に触れられたとたん、次々と砂にされていき一万を超えていた軍勢は、わずか12人までその数を減らしていた。

 

 

三日月形砂丘(バルハン)

 

 

男が腕を横薙ぎに振るうと、3人まとめてミイラになった。別の1人が上から最上級魔法を数十発放つが、気づけば男の黒く変化した拳が目の前にあり、殴り飛ばされた。別の2人が大剣を突きつけ、男を分解しようとする。だが男は体を砂の流動体に変え上空へ脱出。腕を振り上げ

 

 

砂漠の金剛宝刀(デザート・ラ スパーダ)

 

 

砂の斧が展開され、男は腕を振り下ろし近くにいた他の2人諸共、4人を真っ二つにした。だが、これまでのダメージや疲労が体を蝕んでおり

 

 

「ゴフッ」

 

 

夥しい量の吐血を男はした。吐血した瞬間に、殴り飛ばされた個体を除いたメンバーが、挟撃を敢行。男をここで殺さんとばかりに魔法や大剣を男に畳み掛ける。吐血により反応が遅れ、流動体どころか腕のガードすら間に合わずモロに受けてしまう。左手が斬り飛ばされると共に男もそのまま吹っ飛んだ。敵は既に虫の息で片腕を斬り飛ばした。4人が勝利を確信し、トドメを刺さんとばかりに近づいたが、途中から全く前に進めなくなった。足元を見てみるとある一点を中心に地面が流砂し、脱出を試みるも、身動きすら取れなくなっていた。

 

 

砂漠の向日葵(グラウンド・ジラソーレ)

 

 

自分たちを中心に、巨大な渦が形成され

 

 

「流砂ってのは墓標のいらない天然の棺桶だ。安心して逝け」

 

 

男はそう言い放ち、死体すら残さず4人はこの世から消えた。

 

 

彼女は恐怖した。大剣で斬りつけても、魔法を撃ち込んでも、分解しても男が倒れることはなかった。気づけば残ってるのは自分だけだった。何とか立ち上がろうとしたが、砂で拘束され身動き一つ取ることができず、男が一歩ずつ近づいてくる。そうして、目の前まで来た男に触れられた瞬間…………彼女は物言わぬ砂になった。

 

 

 

 男は限界だった。体力や魔力はそうだが、()()()()尽き果てていた。よく見ると体が砂になってきているが、これは技能ではなく、その代償だった。

 

 

「………無理しすぎたな。リーダーにどやされそうだな、こりゃあ。」

 

 

「散々色んな奴から、碌な死に方はしないと言われてきたが……これなら満足だ」

 

 

 男は拳を天に掲げ

 

 

「ミレディ…みんな…後は頼んだ」

 

 

「……この世界の…人々…に…自由の…意思があらん…こ…とを」

 

 

 

 男…後の8人の解放者(反逆者)が一人、ユリウス・ヴァレットはそう笑顔で言い残し、砂となりこの世から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリウスの仲間たちは二手に分かれて情報収集をしていた。

 

 

「ユーくん無事かな…」

 

 

「ミレディ、彼なら上手くやるでしょ?すぐに合流できるわよ」

 

 

「…そうだな。奴なら逃げ切るどころか、全滅させていそうだしな」

 

 

ユリウスはいつもそうだった。鬼人族に育てられた影響なのか、逃走の2文字は知らず、勝つか負けるか、生きるか死ぬかの4択しか知らない。メンバー全員、そのおかげで助かった事があるので、なんとも言えないのだが。特にミレディは、吊り橋効果もあるがユリウスにほの字である。ユリウスが気づいた様子はない。

 

 

「…メル姉、ナーくん、そうだね。うん、きっとそうだよね!」

 

 

 そんな話をしていた矢先、広場に人だかりができていた。覗いてみると、数人の神殿騎士を連れた神官がいた。情報収集のため、広場に来た神官の話を聞く。

 

 

「エヒト様より神託が告げられた。8人の反逆者の一人、ユリウス・ヴァレットはエヒト様が遣わした使徒様により、滅せられた。繰り返す、反逆者ユリウス・ヴァレットはエヒト様が遣わした使徒様により、滅せられた。」

 

 

 神官の告げた言葉にミレディの頭は一瞬でパンクを起こし、意識が暗転した。

 

 

「…………メイル。ミレディを連れてこの場から離れろ。俺は残ってもう少し情報を集める。」

 

 

「……………わかったわ。無理しないでね。」

 

 

 悲しみからくる激情を何とか押し込み、ナイズのうなずきを確認したメイルは、ミレディを連れて広場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、全員で合流し終えたあと、アジトに戻り情報収集の結果を報告した。一致していたのは、仲間のユリウスの死だった。そのことで全員で泣いた。ミレディは余りにもショックで、3日ばかり部屋に閉じこもってしまった。

 

 

「必ず戻るって言ったのに。私の好きになった人は、なんで死んじゃうの」

 

 

過去にミレディを世話をしていた侍女がいた。その人物もとある事情により処刑され、その時も相当ショックだった。だが泣き続ける暇はなかった。こんな所で立ち止まっていたら、あっちにいる2人に笑われると思ったからだ。その後、各地に迷宮を各々造りあげ、未来に備えた。仲間たちの協力のもと、肉体を捨てたミレディは、自分たちの願いを託せる者が現れるまで待ち続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、800年後………

 

 

「待たせたな、ミレディ」

 

 

「待たせすぎだよぉ…このバカぁぁぁぁああ」

 

 

 800年の時を経て、男は帰還する。




好評だったら続けるかも。好評にならない確率は1000%だがな!
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