ありふれない解放者は世界どこでも最凶   作:マイティージャック

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お待たせしました!拙い文ですがどうぞ!


七大迷宮【氷雪洞窟】前編

 

 

あれから、幾つかの街を経由して六日。ようやく【氷雪洞窟】がある【シュネー雪原】にきた。出発してからの最初の街に着いとき、ミフネから大量の文句と苦情を言われたが、代案を出せ、と言ったら出てこず結果、現状のままとなった。侑李は見聞色を使い広域探知で【氷雪洞窟】の位置を割出そうとするが、吹雪のせいか探知が上手くいかず、思わず舌打ちをしそうになったがミフネが

 

 

「目的地ってあれじゃないの?」

 

 

指を指す。侑李が指れた方向を見ると峡谷が目の前に広がる。見聞色の探知範囲を峡谷のみに集中させると奥の方から、【メルジーネ海底遺跡】や【グリューエン大火山】、【神山】と似た波動を検知できた。

 

 

「……どうやら、この先にあるようだな」

 

 

「行くんでしょ?」

 

 

「たりめぇだ。その為にここに来たんだ」

 

 

侑李は力強く言うと、再びミフネをおんぶして峡谷の奥に進む。道中魔物がうじゃうじゃいたが片っ端からミイラにしていき高速で進む。一時間足らずで峡谷の奥に到着し、【氷雪洞窟】の入口前に立つ。

 

 

「寒いわね」

 

 

「確かに。これだけ厚着してるのにまだ寒ぃな」

 

 

二人は愚痴を零しながら【氷雪洞窟】内を進む。七大迷宮の一つ【氷雪洞窟】の内部は一言で言い表すなら、ミラーハウスだ。

中の通路はかなりの広さがあったが、全ての壁がクリスタルのように透明度の高い氷で出来ており、そこに反射する人影によって実際の人数より多くの人がいるように錯覚してしまう。結果、どうしても手狭に感じてしまう内部構造であった。

ヴァンドゥルは“芸術家”だったので、本人の趣味が混じっている可能性が大いにある。ヴァンドゥル(芸術バカ)の情報はさておき、この不思議な構造の洞窟内では雪が舞っているのだ。それも洞窟の奥から吹き抜ける風に乗って。しかも、この雪はただの雪ではない。

 

 

「やん。もう、また〜」

 

 

雪の一片がミフネの頬にピタリと張り付き、その部分を赤く膨れ上がらせる。この雪はドライアイス並みに極めて低い温度で出でているようで、触れるだけで即座に凍傷を起こしてしまうのだ。風に乗って降りかかるので、侑李がのしモチで防いでいるが、周囲の氷の壁に気を取られて、防御範囲からうっかり出てしまうミフネに凍傷と再生魔法を繰り返す事態になっていた。

 

 

「これも“解放者”の狙いなの?」

 

 

「いや、八割は趣味だな。それよりこれを上から羽織っとけ、幾分かはマシになる筈だ」

 

 

そう言って侑李は予備のコートとファーをミフネに渡す。ミフネは有難く受け取り装備していく。見た目は完全に不審者だが、こうでもしないと寒さで死んでしまうし、まだ寒い。体温は常時とはいかないが再生魔法で維持しているので問題なく進めている。ミフネは。

 

 

「あなたはいいの?体温を再生魔法で維持するの?」

 

 

「魔力をバカ食いする神代魔法を頻繁には使えんし、ユリウス(前世)なら普段、街を彷徨いてる格好でここを余裕で突破できるぞ。それにここで死ぬと嗚呼なるぞ」

 

 

侑李の視線の先には、眠るように目を閉じたまま座り、氷の壁の中に埋まっている男の姿がある。外傷がないので寒さに負けてしまったのだと容易に想像できる。ミフネはそれを見て身震いするが、気を引き締めて洞窟の奥へと目指していく。

道中は枝分かれした迷路のようであったが、見聞色のお陰で迷うことなく道程をクリアしていく。氷の壁には死体だけでなくトラップもあったが、魔物の襲撃もなく順調に進んでいった。

 

 

「……また魔人族の遺体か」

 

 

侑李はこれで五十人に達した魔人族の男、五人の死体を見つけて呟く。

 

 

「……えぇ。ほとんど魔人族ね」

 

 

「おおかた、大迷宮の攻略者が出て、その存在が浮き彫りとなって、国力増強なるだろう、という考えで挑む連中(バカ)が増えたのだろうな」

 

 

「攻略情報があればいけると踏んだんでしょうけど………そう簡単にはいかなかったようね」

 

 

「腕っ節もそうだが、てめぇの強い気概がなければ難しいからな」

 

 

気付けば侑李達は横幅十メートルはある大きな四辻に出た。侑李が見聞色で方角を確かめようとした矢先、見聞色の探知が反応した。

 

 

「ミフネ……何かが来るぞ」

 

 

「魔物?どこから?」

 

 

「……四方、全部からだ」

 

 

「……え?」

 

 

侑李の報告にミフネは警戒心を露にさっきまで通ってきた通路を見つめる。やがて……

 

 

ヴァア゛ア゛ア゛ア゛

 

 

何とも怖じ気を誘うような声が響き渡り、暗闇からゆるりと染み出るように霜をびっしりと張り付けた黒い軍服を纏った特徴的な耳の男性が現れた。

 

 

「こいつら……まさか氷壁の死体か?」

 

 

侑李の呟きに応えるように、全身を凍てつかせた人物が次から次へと通路の奥から現れていく。

 

 

「……魔人族以外もいるわね」

 

 

「……まるでゾンビみたいだな」

 

 

四辻からどんどん溢れ出てくるゾンビ擬きに、侑李は若干引き攣った表情で呟く。

 

 

「しかし、氷壁に埋まった遺体を利用しているとなると……本体がいると考えるのが定石ね」

 

 

「そうだな。その可能性は高ぇな」

 

 

ミフネの考えに肯定した侑李は

 

 

「何にせよ、やることは変わらない。敵は殺す。それだけだ」

 

 

侑李の言葉が合図となったのか、ゾンビ擬き達は緩慢な動きから一転、猛然と駆け出して侑李とミフネに迫っていく。

 

 

ヴァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!

 

 

洞窟内に不快極まりない呻き声が木霊する。大口を開けて歯を剥き出しにして突進してくるゾンビ擬き達は、まんまゾンビゲームだ。

 

 

「ひっ!気持ち悪い!!五色糸(ゴシキート)!」

 

 

リアルゾンビゲームにミフネはビビりながらも手に装着していた糸を最大30m出せる魔道具で攻撃を放つ。通路に展開された糸攻撃にゾンビ擬き達は見事に両断された。ゾンビ擬き達は、芯まで凍っていたようで、両断面ももまるで氷のようだ。それとほぼ同時に、侑李も自身の周囲に無双ドーナツを展開し

 

 

九頭餅(クズモチ)!」

 

 

を放つ。絶大な破壊力と面制圧を秘めたそれらの攻撃は、ゾンビ擬き達を容易く粉砕していくが、次の瞬間、散らばった破片や周囲の氷の壁を取り込んで寸分違わずに再生した。それを見た侑李は盛大に舌打ちをした。

 

 

「チッ!メルジーネのクリオネ擬きかよ!めんどくせぇ!!」

 

 

「何それ?そんなに面倒だったの?」

 

 

「…………………無限に再生して溶解性のあるゼリー状の体で構成されたクソ魔物」

 

 

「…………それ倒せるの?」

 

 

「俺は無理だった」

 

 

それを聞いたミフネはなんとも言えない表情(かお)をしていた。そんなミフネをよそに侑李は見聞色で魔石の探知をする。すると

 

 

「見つけた」

 

 

「何を?」

 

 

「こいつらの核となっている魔石。ここから500mくらい離れた位置にある」

 

 

「なら、まずはそこを目指しましょ?」

 

 

侑李が四辻の一角を見据えながら告げた報告に、ミフネは同意する。道中ミフネが思い出したかのように侑李にあることを質問した。

 

 

「そういえば、ユーリはどうやって探知してるの?スキル?」

 

 

「見聞色を使ってる」

 

 

「何それ?」

 

 

ミフネは聞いた事のない感じで答える。侑李はため息をつきながら

 

 

「………覇気は知ってるか?」

 

 

「はき?吐き気のこと?」

 

 

「違ぇよ。覇気ってのはな…………」

 

 

侑李による覇気の説明がはじまる。二〜三分程の説明が終わりミフネからの感想は

 

 

「ズルくないそれ?因みに私は覚える事ができるの?才能の有無で決まるみたいなこと言ってたけど?」

 

 

「本当に才能がいるのは『覇王色』だけだ。『見聞色』と『武装色』は余程地力がゴミじゃない限り誰でも覚えられる。強者は、だいたいこの二つを習得してる。まぁ、でも覇気の習得は今度だ」

 

 

「そうね。まずはここを攻略しないとねッ!」

 

 

そういってミフネは三体のゾンビ擬きを糸で両断する。侑李もつられる形で無双ドーナツを四方八方に大量展開し、ゾンビ擬きを殴殺していく。気付けば侑李とミフネは東京ドームと同じくらいの広さがある、ドーム状の大きな空間に出た。

 

 

「見つけたぞ。ここからなら十分に狙える」

 

 

侑李は武装硬化させた丸モチを展開し、氷壁の奥に埋まっている魔石に振りかざす。当然、敵も黙って殺られるわけもなく、天井の氷壁からアイスイーグルと呼ぶべき氷で出来た大鷲を大量に出現させ、豪雨の如く落下し始めていく。そのアイスイーグルの群れをミフネは糸による攻撃で侑李への妨害を防いでいく。

丸モチが魔石に衝突する瞬間、氷壁の中の魔石は突如動いて侑李の一撃をかわした。

 

 

「チッ……野郎衝突の寸前で躱しやがった」

 

 

「そうなると、周りの氷の壁全てが敵と思った方がいいわね」

 

 

ミフネが警告した直後、氷壁から今度は二足歩行の狼が、雄叫びを上げながら大量に生み出されたのだ。アイスワーウルフと呼ぶべき体長三メートルほどの氷の狼は赤黒く光る目を二人に向けている。

後方の入り口からもゾンビ擬きが溢れ出る中、魔石が埋まった氷壁に変化が訪れる。

 

 

ビキビキッ!バキバキッ!

 

 

魔石が埋まった氷壁は周囲の氷を取り込みながら、せり出して体積を増やしていく。いち早く形作られた顎門を開いて凄まじい衝撃波を伴った咆哮を上げるも、侑李の武装のしモチで難なく防ぐ。

その間に、その魔物が完全に形を整えて姿を現す。見た目は亀によく似ているが、当然体は全て氷で構成され、甲羅には剣山の如き氷柱が突き立っている。体長も優に二十メートルは超えている。

 

 

「どうやら、あれが最初の試練のようだな。魔石の破壊が先か、こちらが魔物にやられるのが先かという、な……というわけで行ってこい、ミフネ」

 

 

「え?嘘でしょ!?無理よ!!」

 

 

流れと展開から、てっきり殺気を膨らませていた侑李がアイスタートルと呼ぶべき大亀に挑むものだと思っていたミフネは、名指しされ間の抜けた表情と声で返してしまう。そんなミフネに、侑李はため息混じりの眼差しを向ける。

 

 

「ただ着いてきただけじゃ神代魔法は手に入らないし、俺自身ミフネの実力を把握してないからな。丁度いい相手が出来たわけだ」

 

 

侑李ほミフネに、さぁどうする?、みたいな表情で訴える。ミフネが一度肩を落とすが直ぐに気合いを入れ直し、コートとファーなどの防寒具を脱ぎ出し、戦闘準備に入る。

 

 

「周りは気にするな。ミフネはあの亀だけに集中してろ」

 

 

「えぇ、見せてあげるわ!私の力を!」

 

 

気合いの入った声をあげたミフネは手に装着してる魔道具に力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────その頃の奈落────────

 

 

右眼を蒸発させながらの辛勝してみせた魔王と嫁は世界の真実を知る。そして現在は地上に戻るため装備を制作と覇気の特訓中。なお数日後、嫁に食われたもよう。さらにその数日後、魔王は嫁に

 

 

「覇気ってなんだ?」

 

その問いに(ユエ)

 

 

「覇気はその人が持つ才能。特に『覇王色』は『王の資質』が重要。『覇王色』を持つものはなんかしらの『王の資質』がある。ハジメもその一人」

 

 

「俺は『覇王色』は持ってないぞ?」

 

 

そう言ってステータスプレートを確認すると技能欄に『覇王色』の文字があった。

 

 

「やっぱり。ハジメも持ってた」

 

 

「なんでわかったんだ、ユエ?」

 

 

「『覇王色』を持つもの同士はお互いに惹かれ合う性質がある、と言われてる」

 

 

そう言われた魔王(ハジメ)は新たな力に心を踊らせていた。




【氷雪洞窟】編はあと二話くらいで終わらせたい。……理由はお察しください。
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