ありふれない解放者は世界どこでも最凶 作:マイティージャック
使徒を殺し尽くし死んだと思っていたら、何故か赤ん坊になっていた。自分で言っていてあれだが中々頭が可笑しいと思う。
だが事実である事には変わらない。ここは魔法の魔の字もなければ、亜人族や魔人族すら居らず、この日本、強いて言えば地球は平和そのものだ。この第2の生を受けてはや17年。中学に上がってから今日までの間、様々なことをした。喧嘩は勿論、ヤのつく人達とも殺りあった。軍人の奴とも殺りあった。勿論壊滅ないし全滅させた。
怪我も擦り傷から刀傷、銃創すら負ったし、なんなら死にかけもしたが、俺の心を満たす事は終ぞなかった。そんな心が空っぽな状態で、俺は面倒な学校へ行く。何故面倒なのかといえば
「ひっ」
「やっべ、目が合っちまった」
など、様々な事を俺に言ってくる奴が多い。はっきり言って鬱陶しい事この上ない。言いたい事があるなら面と向かって言えばいい。そんな事も出来んのか彼奴らは。さらに教室は
「鬼灯!また遅刻か!今何時だと思ってる!」
「…るせェ」
「おい!鬼灯!聞いているのか!だいたいお前は………」
「(はぁ〜)」
横でキャンキャン吠えてるこの
「はぁーい。席に着いてください…って、鬼灯くん来てたんですね!来てたならまず職員室に来てください!遅刻の手続きとかあるんですからね!」
俺はそっぽを向いて無視する
「鬼灯くん聞いてますか?聞いてませんよね!?聞いてください!!」
「(うぜェ)」
そう思って俺は寝た
「うぅ〜。よくはありませんが授業を始めます!」
そして授業が終わり、昼休み。
「南雲君、珍しいね。教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」
「あー、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君たちと食べたらどうかな?」
エネルギーを10秒でチャージできるあれの空の入れ物を見せて断る南雲だが、そこは
「えっ!お昼それだけなの?だめだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」
そう言い自分の弁当を分けだす白崎。だがそれに待ったをかけるのが
「香織。こっちでいっしょに食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織のおいしい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
そこに、天之河たち幼馴染がやってきた。また学校の有名人が勢ぞろいになったということだ。
ただ、天之河の言ったことはちょっとずれていて。それでもって、白崎には天然属性が入っているわけで
「え?なんで光輝君の許しがいるの?」
「ブフゥ」
素で聞き返す白崎に、八重樫は思わず吹き出してしまった。そしてあまりのうるささに鬼灯が起きる。
「おい、さっきからるせェだよ。人が寝てる横でギャーギャー騒ぎやがって。何様のつもりだ?てめぇら?」
鬼灯が不機嫌に聞くと
「えっと、ごめんね。鬼灯くん」
「ごめんなさい。鬼灯くん」
と白崎と八重樫が謝るが天之河は
「俺は今南雲と香織と話してたんだ!部外者が口出しするな!」
「………あ?」
鬼灯が席から立ち上がり、天之河の胸ぐらを掴もうとしたその瞬間、天之河中心にあるものが浮かぶ。それは天之河たちには見知らぬものだが、鬼灯にとってはとても既視感のあるものだった。
「(これはトータスの魔法陣?!しかも概念魔法だと!どこのどいつだ?いや若しかすると彼奴らか?!)」
「みっ、皆!早く教室から出て!」
先生が叫んだ直後に光は膨れ上がり、その光は教室を埋め尽くした。世にも奇妙な白昼におきた集団神隠しであった。
光が収まると、俺たちは知らないところにでた。いや、詳しい場所は知らんが何処かは知っている。
まず目に入ったのは巨大な絵画、いや、この場合は壁画が正しいか。背景には草原や湖、山々が描かれており、中心には後光を背負った金髪の中性的な人物が描かれていた。おそらく、あのクソッタレの絵だろうか。
周りをよく観察すると、そこは広場のような場所で、大理石のような白い石材で作られていた。だが、大理石とはすこし違うような気がする。彫刻が多数存在しているのもあって、奴の神殿、というのがしっくりくる。
俺たちがいるのは、ドーム状になっているこの建物の奥にある、台座のようなところ。
周りをみると、先生を含めたクラスの面々がこの場にいた。幸い、けが人や足りない人はいないみたいだが。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ」
そこへ、妙齢の
よく見れば、台座の下には跪き、野郎に祈りをささげている
「私は、聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願いしますぞ」
「(やはりか)」
トータスと聞いて確信してはいたが、聖教教会と聞いて鬼灯は嫌でも確信した。そして心から歓喜した。心の穴が塞がったからなのだ。彼の心にぽっかりと空いた穴の正体それは、『父の背中を追い越す』そして『打倒エヒト』それが鬼灯のいや、ユリウスのルーツそして使命とも言えるものだった。
そう思っていたら、気づけば俺たちは先ほどとは違う大広間に通された。10mくらいある食卓があることから、会合に使う場所なんだろうか。
そこまで案内されている間、他のみんなはとくに騒ぐことはなかった。おそらく、現状をまだ呑み込めていないんだろう。クラスの精神的支柱である天之河が落ち着かせたから、というのもあるんだろう。
「(こういう時、無駄にある奴のカリスマが役に立つ。)」
そして、全員が席に着いたところで(ちなみに、上座に近いところに先生と天之河たち4人組が座っている)、聖教教会とやらの教皇である
簡単にまとめると、この世界は、主に人間族、魔人族、亜人族がいるという。生息域としては、人間族が北一帯、魔人族が南一帯、亜人族が東にある巨大な樹海の中でひっそりと暮らしているという。
現在はその中でも人間族と魔人族が何百年も戦争をしており、人間族は数で、魔人族は個々の実力で優れており、今まではその勢力は均衡していた。だが、ある時、突然その均衡は破られることとなった。その理由は、魔人族が魔物を使役し始めたのだという。
魔物とは通常の野生動物が魔力を取り込んで変異した異形の存在で、それぞれの種族で強力な魔法が使えるらしい。魔物は本来なら人間、魔人に関係なく襲い、使役できても1,2体が限度だったのだが、その常識が覆された。
結果、人間族は数の有利を失い、窮地に立たされてしまった。
この状況を打破するために、聖教教会の唯一神であるエヒトが勇者を召喚するという神託をだし、現在に至る、ということだ。
ちなみに、召喚された俺たちはこの世界の人間に比べて上位の力を秘めているらしい。
「あなた方にはぜひその力を発揮し、エヒト様の御意思のもと、魔人族を打倒し我ら人間族を救っていただきたい」
ただ、その時の
そしてクラスの誰かが
「すみません。一つ、質問してもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」
「確認したいんですけど、俺たちが元の世界に帰れる目途はあるんですか?」
ある意味確信的な質問だった。その解答は、というと
「・・・申し訳ありませんが、あなた方の帰還は現状では不可能です」
とのことだった。鬼灯はそれを聞いた瞬間、やっぱりな、と思った。
「ふざけんな!呼べたんなら返せるだろ!」
「早く元の場所に返して!」
と、様々な文句がでたり、パニックに陥る奴もいるが、
「魔神族を滅ぼせば、エヒト様が皆様を元の場所に返してくれるやも知れません」
今度は先生が噛み付いた
「ふざけないでください!それってつまりこの子達に戦争させるって事じゃないですか!私はそんなの認めません!」
と
「みんな、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ」
たしかに、それはそうだ。それに、俺たちにもどうしようもできない。ないものねだりをしても意味はない。だが天之河はやはり天之河だった。
「俺は戦おうと思う。この世界の人たちが滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんてできない」
奴のおべっかを全員が聞く
「俺は戦う。人々を救い、みんなが帰れるように。俺が世界もみんなも救ってみせる!」
世界を、みんなを救う?本当にそんなことができると思っているのか?
天之河の問いに、今まで何も言わずに沈黙していたイシュタルは即答し、その後は予め打ち合わせされたかの様にトントン拍子で話が進んでいく。更に天之河にはなまじカリスマがある事も災いし、今まで混乱状態だったクラスの面々も奴の姿に影響され、次々と参戦を表明していったのだった。
近日中にもう1話アップします