ありふれない解放者は世界どこでも最凶   作:マイティージャック

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改稿とかしてますが、文章の間隔を調節しただけなので気にしないでください


七大迷宮【グリューエン大火山】前編

【グリューエン大火山】今現在その山頂を目指して登山している。

 

 

「暑いし寒いな」

 

 

矛盾めいた事を言っているが現在は時間帯は深夜。砂漠の夜は寒く、山頂に向かうに連れて気温がぐんと下がる。そして【グリューエン大火山】は活火山である。至る所から蒸気は出ていて、場所によってはマグマが出てる箇所があるので、鬼灯に体にかかる寒暖差が凄まじいのである。

 

 

「ここか」

 

 

奇怪極まる多種多様な岩々が所狭しと存在する頂上でとりわけ群を抜いて奇怪な形とサイズの岩があった。十メートル近くはあるだろう岩へと鬼灯の視線は向けられた。

歪なアーチと言うべき、不可思議な形状の岩まさしく目印と言うべきその岩へと近づいていけば、その岩の下に大きな階段があるのを見える。恐らくは七大迷宮としての【グリューエン大火山】内部への入口なのだろう。

もう一度水を呷り、改めて視線の先を階段の先、迷宮内部へと向ける。

 

 

「…行くか」

 

 

鬼灯は改めて覚悟し、階段を踏みしめた。

 

 

 

【グリューエン大火山】その内部は過酷としか言えなかった。

魔物が強い、という訳では無い。何が過酷なのか、それはこの火山の内部構造だ。

まず、普通ならば有り得ない話だが、マグマが空中を流れている。マグマが宙に浮かんでそのまま川のように流れを作っていて、空中をうねるように流れている。赤熱化したマグマがそのように動き流れていく様子はさながら巨大な龍が何頭もこの火山内部を飛び交っているようにも感じられる。

そして、当たり前の話であるがこの内部は通路、広間、至る所にマグマが流れている。つまりはこの迷宮に挑む人間は地面のマグマと空中にあるマグマの両方を注意せねばならなくて、いや、それだけではない

 

 

「ッ!」

 

 

その場から跳び退けば、つい先程までいた場所に面していた壁から唐突にマグマが噴き出していた。

そう、頭上地上だけでなく壁面からのマグマという三方向を注意しなければならない。しかもこの壁面のマグマ、本当に突然噴き出して来るだけではなく、事前の兆候というものが無く、また見聞色に引っかかるわけでもなく事前に噴き出すのは分からない。

しかし、そんな壁面のマグマという障害も、如何にこの世界に干渉は難しいとはいえ、ずっと警戒しながら慎重に進むせいで、攻略スピードが落ちる。

周囲を流れるマグマによる茹だるような熱が絶え間なく鬼灯へと襲いかかる。

心頭を滅却すれば火もまた涼し、と言うがしかし、いずれ到るやもしれぬが、この全方面にあるマグマによる熱は決して無視できるものでは無い。現に熱でフツフツと汗が滲み始めており、頭から水を被ればさっぱりするだろうが下手に被ってそのまま茹だってしまえば元も子もない。

汗を拭いながら、着実に歩を進めていく。今はまだ魔物が現れていないから、問題は無いがもしも魔物が出てくる階層まで降りれば攻略スピードはより遅くなるだろう。

もしもこれが他の迷宮であるならば、砂の流動体によるゴリ押しも問題なかったかもしれないがここはマグマ流れる【グリューエン大火山】。ゴリ押して進んだ先で噴き出したマグマに巻き込まれて、そのままお陀仏になるのは火を見るより明らかで、その為に正攻法で攻略せねばならなかった。

 

 

「今どのくらいだ」

 

 

と呟きながら階段を降りきって変わり映えのしない光景へ視線を巡らせて───────

刹那、腕を砂の剣に変化させ斬撃を飛ばした。

そのまま、放たれた斬撃が空間を走り迫っていた火炎を両断した。火炎は両断された事で解けるように空気に消えていき、開けた視界で鬼灯の視線は真っ直ぐ火炎を放った犯人へと向けられている。

鬼灯から見て右斜め側にいる魔物。

マグマの中ではないがしかし、その全身にマグマを纏った雄々しい牛。雄牛らしく曲線を描いた鋭い双角に呼気には炎が混じっており、その表情は怒りを抱いているのだろう。

それも仕方がないという話だ。恐らく先程の火炎はあの雄牛の固有魔法だったのだろう。それを不意を突いたはずの自慢の固有魔法をあろうことか反応し両断するなど怒りを抱かずしてなんというのか。雄牛らしく地面を蹄で掻きながら頭部をやや下げて突進をする、がしかし

 

 

「悪ぃが、その程度のパワーなら屁でもねェ」

 

 

「ブモォ!?」

 

 

雄牛の突進を真正面から受け止める。そしてそのまま雄牛の体内の水分を一気に奪い、もの言わぬ砂に変え、魔石を拾う。

マグマの鎧がどうした。あの程度で火傷する事はないし、仮に危ないならば、近づかれる前に斬撃を飛ばすなりして殺せばいい。殺りようは幾らでもある。そこからも進み、魔物が本格的に出てきた。恐らくはここからが本番なのだろう。

進んでいけば、横合いのマグマ溜まりから唐突に雄牛がその姿を現したり、後方からマグマなどお構い無しに追いかけてくる群れなどと、並の冒険者ならばそのまま生命を落としかねない様な状況が幾度かあったものの、鬼灯は自分の立ち位置、マグマの位置や壁の位置を意識した動きで、何度も砂の斬撃や砂嵐(サーブルス)を放ち、回避していきながら雄牛を切り刻んでいきながら進み、階層を降りていく。

そこからは【グリューエン大火山】の戦いはより苛烈となった。

 

 

「錆落としには丁度いい」

 

 

階層を下がっていけば行く程に現れる魔物のバリエーションは増えていっている。

例えば、翼からマグマを撒き散らしながら飛んでくるコウモリに近い魔物や壁をマグマで溶かしてマグマ諸共飛び出てくる赤熱化したウツボのような魔物、その背の炎が灯った針を無数にこちらへと飛ばしてくるようなハリネズミに似ている魔物やマグマから顔だけ覗かせマグマを纏った舌をムチのように振るってくるカエルなのかよく分からない魔物。他にも頭上のマグマの川を泳ぎながら襲ってくる赤熱化した蛇。

それ以外にも様々などこをどう見てもマグマ、マグマ、マグマな炎系の魔物ばかりが時折別の魔物とまったく同じ能力を持って現れるなど、さしもの鬼灯も近づけばより一層暑くなる魔物には嫌気をさし、こちらを認識していなければ早々に移動して逃げ、逃げるのが難しければ斬撃や砂嵐(サーブルス)を放ち、岩ごとマグマを吹き飛ばしながら魔物を倒してきた。休憩しようにも一部の魔物はマグマではなく岩の中にも潜んでいる。

見聞色を用いれば、問題ないがしかしそれでは本当の意味では休憩出来ず、厳しい。では、どうすればいいのか……と考えていると次の階層へ繋がる階段へと辿り着きそこを少し降りた程度でその足を止めた。

 

 

「………休憩するか」

 

 

さしもの鬼灯も休憩無しにこの迷宮を攻略することは無理なのか、階段に腰掛ける。既に階段は比較的に熱が発していないのが分かっていた為に荷物袋より布を取り出しそれを折り畳み敷いて座る事で熱を少しでも遮断しつつ、塩漬けされた肉へとかぶりつきながら水で喉を潤していく。

吐息を漏らしながら、眼を細めながらまだ数十層はあるだろう下層を睨みつける。

魔物を倒す分には何も、問題は無い。この程度の魔物であるならば、例えこの火山という地形であったとしても近づかれる前に仕留められる鬼灯にとって問題は何も無いがしかし、やはりこの迷宮全土に広がる熱が確実に体力を削っていた。

今こうして、休憩している間も出来うる限りの熱を遮断しているというのに少なからず熱は残って襲ってきている。

水分と塩分の補給をせねば、魔物ではなく環境に殺される。

 

 

「酒飲みてぇ。ナイズの奴、面倒な迷宮造りやがって」

 

 

その後も文句をつらつら述べ、気を紛らわす鬼灯。文句を言い多少スッキリした鬼灯は立ち上がり進もうとした瞬間

 

 

三日月形砂丘(バルハン)

 

 

上空のマグマから飛び出してきた蛇の魔物に放ち、ミイラをつくる。

 

 

「油断も隙もねェ」

 

 

溜息まじりの文句を言い、再び進む。

ある程度階層を進んだ鬼灯はとある事に気づき、体力度外視で走り抜ける。それこそ文字通り韋駄天の如く走り抜けた。理由は単純で予想以上に環境による消耗が激しかったからである。水は勿論、食料も相当持ってはきていたのだが進む事に温度は上昇し、消耗品の消費が増える。今のままのペースで攻略すると、消耗品が底を尽き死ぬとわかりきっていたため、迫り来る魔物を片っ端から斬り飛ばしたり、砂嵐で吹き飛ばすなどをし、猛スピードで階層を突破していた。

階段を降りては駆け抜けて、マグマを飛び越え、マグマを回避して、マグマを切り裂いて、時折無視出来ぬ魔物へと斬撃と砂嵐を放つことで切り裂いて、ただひたすらなまでに、この【グリューエン大火山】を、駆け抜けていく。

これがゲームの様にマグマに落ちても最初から、などという優しいものだったらどれだけ楽だったか。マグマに触れれば間違いなく死ぬ。これは覆しようのない事実だ。

 

 

「…………フゥ」

 

 

階層を幾つか降りていき、鬼灯は階段でその足を止める。

そのまま崩れ落ちるように階段へと腰を落とし、鬼灯は息を吐く。重い、重い息だ。

その身に積もった疲労は未だ限界値ではない、それでも疲労は溜まっている。そもそもが無理があった。

ここに至るまで確かに休憩はしたが、そのどれもがこうして階段で出来る限り熱を遮断しての気配感知を行っての休憩。

誰がどう考えたって、それで疲労がしっかりと取れるはずがない。そんな中で疲労を体力を度外視するように駆け抜ければどうなるのかは分かりきっていた。残り少ない水を飲み干し、食料を食べ終えた鬼灯は

 

 

「次で最後くせぇな」

 

 

次の階層は今までとは何かが違うと直感で判断し、鬼灯は気合いを入れ直し、最後の階層に踏み込む。




グリューエン大火山は次でラストです
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