フランドールの旅   作:めそふ

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テストと模試で死にました
誤字報告ありがとうございます。助かります


昼夜逆転に挑んだ吸血鬼

 フランドールは1人、空を眺め続けていた。

 時刻は丁度日を跨いだ頃であり、先程まで共にいた4人は既に寝静まっている。

 気が遠くなる様な数の星々が夜空を照らし続けている。

 ずっと見続けていると、何故だか自分が夜空の中に浮かんでいるように思われて、有り得ない話ながらも、どうにもその星達に手が届きそうに思えた。

 普段外に出るどころか外の景色すらも見ていない彼女からすると、やはり空を見上げるという行為はそれだけで彼女を新鮮な気持ちにさせるのであった。

 何人かで空を見上げる事も良かったが、1人で物思いに耽りながら空を眺める事もまた違った意味で良いものだといった事をフランドールが考えていると、背後から気配を感じた。

 

「眠れないんですか?」

 

 フランドールが振り返って見ると、何処か寝惚け眼で彼女を見つめている文が立っていた。

 

「私は吸血鬼よ?夜に起きるなんて、寧ろ普通ですわ」

「それもそうでした。私が昼型であるものでつい」

「妖怪の癖に夜に寝るもんなのね」

「私ら天狗はそういう妖怪ですからねー」

 

 フランドールは文の言葉に軽く相槌を打って、もう一度空へと向き直った。

 何か感じる事があったのか文は、僅かに体勢を変える事はあれど空を見る事を止めようとしないフランドールの隣へと座りだす。

 フランドールは隣に座ってきた文をちらりと見るが、特に気にする様子もなく、また直ぐに空へと向き直った。

 暫くの間沈黙が続いていたが、どの位時間が経った頃か、ふと文が口を開いた。

 

「フランドールさん、貴方変わりましたね」

 

 文の言葉を受けて、フランドールは彼女の方へ目を向けた。

 

「そう思う?」

 

 一瞬驚いた様な表情を見せたフランドールだったが、すぐに文に向かって微笑み始める。

 

「ええ、私から見た貴方はもっと危ない奴って感じでしたしね。こうやって静かに一日を楽しんでいる姿なんて想像出来ませんでしたよ」

「ふーん、貴方にはそう見えたのね」

「そりゃあまぁみんな同じ事思ってるんじゃないですかね」

 

 あら、心外だわとフランドールはくすくすと笑う。

 別段気にしていない様に笑うフランドールの姿はやはり、文にとってはいつもと変わらない危なげなものに思えたが、それでも、彼女の内にある何処かで穏やかなものが育ってきているという事もまた感じられたのであった。

 

「やっぱり変わったと思いますけどねぇ」

「私は私よ。貴方が見ていた私も、今ここに居る私も、私として何ら変わりないもの」

 

 文の言葉を否定する様に答えたフランドールであったが、ただと一言加えて、もう一度口を開いた。

 

「まぁでも、確かに昔は空なんて興味もなかったからねぇ。貴方の言う事も完全に違うって訳じゃないのかもね」

 

 フランドールもそういった自覚が無い訳では無かった。

 そもそも、外に出る事にそこまでの興味を持っていなかった筈なのに、今では外を眺めながら湧き上がる思いや感情に身を任せる事を繰り返しているのだから、これで自覚していないというのは無理があると言って良かった。

 

「一体何が貴方を変えたのかは分かりませんけど、そんなにずっと外を見ていて飽きたりしないんですか?」

「んー、別に飽きたりはしないわ。こうやって外を眺めるのは私にとってはまだまだ新鮮な事だからね。それに、何百年も1人で暇を持て余してたくらいなんだから元々こういうのが合ってるのよ」

「そんなもんなんですねぇ」

「そんなもんよ」

 

 そうして2人の会話が終わり、フランドールはまた夜空へと目を向けた。

 文も何となくフランドールの方を眺めていたが、如何せん先程まで熟睡していた訳であり、ようやっと丑三つ時になる様な時間の為もあってか、彼女に睡魔が襲ってくる。

 これは逆らえそうにないなと大きな欠伸をしながら、彼女は立ち上がってフランドールに背を向ける。

 

「もうお休み?」

「えぇ、もう目が開きませんから」

 

 文は、フランドールに向かっておやすみなさいと一言告げて、部屋へと戻っていった。

 フランドールはそれに返答を返す事はなかったものの、文に向かってゆっくりと右手を振るのであった。

 

 

 

 

 

 

「あら、おはよう早苗」

 

 早苗が朝の7時半ごろに目を覚まし、居間に向かうとフランドールと文の2人は既に目を覚ましているようであった。

 

「あれ、2人とも随分早いんですね」

「私は記事のネタを探すのに朝から飛び回ってますから」

「私はそもそも寝てない」

 

 フランドールの寝ていないという声に驚いた早苗であったが、彼女が吸血鬼であった事を思い出し、それが至極当然であった事に気付く。

 

「なんだ、やっぱりあの後も寝なかったんですね」

「そりゃ、夜に寝るなんて中々出来ないわ。ほんとお姉様は良く出来るよねぇ」

「あの後?」

 

 早苗が疑問を口にすると、あぁそうだったと文が早苗に向けて説明を始めた。

 

「私が夜中の1時頃に目が覚めちゃって、何となく縁側の方に行ったんですよ。そしたらフランドールさんが飽きもせずにずっと空を見てたんですよ」

「飽きもせずって何さ」

「そこから2時くらいまで暫く2人で話してたんです」

「じゃあそこで文さんが寝てから今までずっと起きてたって事なんですね」

「うん、そういうこと」

 

 文の説明が終わり、納得した早苗は、ふとある事を思い出して立ち上がる。

 朝食の準備である。

 普段はこの時間帯に自分以外に起きてる者がいないので自然と朝食の準備へと入っていたが、今日に限ってはそうでは無かった為に少しの間ではあるが忘れてしまっていたのだ。

 

「さて、朝ごはんの準備をしなきゃ。ちょっと待っててくださいね」

 

 早苗は2人にそう伝えると、1人台所へと向かう。

 

「あの神様2人は起こさなくていいの?」

「大丈夫ですよ。私が朝ごはんを作り終えたら勝手に起きてくれますから。それに、作り終えてないとお二人とも機嫌が悪くなっちゃうんです」

 

 フランドールの疑問に答えた早苗は、お客さんが来てるのもあるし、お二人が起きてくる前に作らなきゃと1人気合を入れて台所に立つのであった。

 

 

 

 

「ご馳走様」

「お粗末様です」

 

 5人は朝食を食べ終え、各々の用事の為に準備を進めていた。

 各々とは言っても諏訪子以外の4人は昨日の話に出ていた動力部分への視察に向かうのであるが。

 一応早苗が諏訪子に対して一緒に来ないかと誘ったのだが諏訪子曰く、そういった仕事は神奈子のものだし、それに私自身そこまで興味がある訳でもないとの事だった。

 

「さて、私らは出るとするか」

 

 神奈子の一声によってそれぞれ準備を終えていた4人は、諏訪子に留守を頼みつつ玄関へと向かった。

 

「で、これからどうやってその動力部分とやらに向かうつもり?」

 

 外に出たはいいが、その場所への行き方が分からないフランドールは3人に向かって問う。

 文もどうやら同じ事を思っていた様でばつの悪そうな顔をしている。

 

「ん〜私も1回だけちらっと見た程度なので……。正直道のりを覚えてる自信が無いですねぇ」

 

 神奈子はそんな文の様子を見て笑い出す。

 

「心配要らないわよ。何回もそこに通ってる私が、道を忘れる訳ないでしょう?」

「それもそうですね。安心しました」

「ただ、ちょっと距離があるからね。いつもは飛んで行くんだけど、そこの吸血鬼は大丈夫なの?ほら、日光とか色々」

 

 神奈子の率直な疑問に、他の2人も頷く。

 歩くだけであれば日傘で何とかなりそうだが、空を飛んで移動するとなるとこれまた勝手が違うと思ったのだ。

 

「多分大丈夫だと思うけどねぇ。お姉様も出来てるんだし」

「なら良いけど」

「最悪、私の周りにだけ霧でも出しとけば大丈夫よ」

 

 フランドールがおおよそ大丈夫そうであるのを確認できた神奈子は、それじゃあ出発するかと3人に向けて言いながら飛び上がる。

 3人も神奈子に続く様にして飛び上がった。

 

 フランドールは暫くの間3人と軽く話をしていたものの、ふとこれが外に出て初めての飛行であることに気付く。

 視線を下に落としてみると、下から見るのとはまた違った、妖怪の山の雄大さを物語る景色が広がっていた。

 フランドールは思わず息を呑み込む。

 眼下に広がる緑一面の風景は、自分が知る何よりも美しく思えた。

 今までは特に用も無かった事もあり、飛ぶ事はせずに歩いていたのだが、上空から見る光景も地に立って見る光景とは異なる良さがあるということをフランドールは学んだのだった。

 

「フランドールさん、灰になってますからちゃんと日傘を差してくださいよ」

 

 突如として文の声が耳に入る。

 フランドールは、文が言ったように自分の身体を確認してみると、左足辺りが少しずつであるが灰となって消えかけている。

 慌てて日傘を持ち直し、魔力を集中させて欠けていた左足を再生させる。

 その様子を見ていた早苗が驚いた様子でフランドールを見つめていた。

 

「わ、凄いですね。吸血鬼の再生能力って」

「これくらいはどうって事ないわ。それにしても、私とした事が見惚れてこんな事にも気付かないなんて……」

 

 文は、動揺しているフランドールを珍しいと思うと同時に可笑しくも思ってしまい、つい微笑が漏れ出す。

 

「なによ、そんな気持ちの悪い顔して」

「いえいえ、フランドールさんもそんなヘマをするんだなとねぇ」

 

 フランドールは何度止めるように言っても、文が嘲笑を止める事は無かったので諦めて前へと向き直った。

 すると、神奈子が此方に向かって顔を向けた。

 

「おーい、そろそろ着くぞー」

 

 神奈子はそう言って、地面に向かって降り始めた。

 3人も神奈子に続いて降下を始める。

 

 4人が降り立った場所には、急な斜面によって流れが急になっている川とこの幻想郷には不似合いに感じる機械の様なものが見えた。

 

「あれがその動力部分ってやつ?」

 

 フランドールは目の前にある装置を指差して神奈子に聞いた。

 

「そうよ。あれが水力を用いた架空索道の動力装置」

 

 フランドールの問いに答えた神奈子は、動力装置へと歩いて行く。

 神奈子が動力装置へと近付くと、何人かの人影が姿を現した。

 その中の1人が神奈子と話をし始めた。

 3人も神奈子の方へと歩みを進めた。

 

「おや、今日は連れが多いね」

 

 神奈子と話していた者が此方に気付き、話しかけてきた。

 どうやらフランドール以外の3人は見知った顔らしく、それぞれ軽く挨拶を交わしている。

 

「んで、そっちの傘差してるのはどなた?」

「人に名前を聞くときはってね」

「これは失礼。私は河童の河城にとりさ」

 

 にとりと名乗った河童曰く、河童はこの動力装置のメンテナンスを担当しており、守矢神社とは取引関係であるという事であった。

 

「まぁそういうことさ。それであんたは?」

「私はフランドール。フランドール・スカーレットよ」

「スカーレット……あぁ、あそこの吸血鬼の妹か。天狗の新聞かなんかで見たことある」

「それ多分私の新聞ですけど」

 

 少しの間軽く話をしていたが、頃合いであると本題に戻った。

 神奈子が動力装置の状況について尋ねると、にとりは少し考える様な表情をして答え始める。

 

「そうだねぇ、修理自体は今日中に終わると思うけどまた同じ様な壊れ方をしないか確認したいし……。まぁ、そういった調整も込みであと3日掛かりますかね」

 

 にとりの言葉を聞き、早苗が何か少し考え事をしてから話し始めた。

 

「確かに、また同じ様な壊れ方をしないとも限らないわね……。私も確認させてもらっても良いですか?」

 

 にとりは早苗の意向を承諾すると装置の方へ向かっていった。

 早苗もそれに付いて行く様にして装着へと近付いていく。

 すると、早苗は途中で足を止めて3人の方へ振り返った。

 

「折角だから皆さんも一緒に来ませんかー?」

 

 唐突に早苗の誘いを受けたフランドールであるが、その誘いに首を振る事にした。

 

「生憎、私は流水を渡れないからね。そっちには行けないのよ」

 

 神奈子と文も早苗の誘いには乗らない様であった。

 

「私はそっちの方面にはからっきしだからね。早苗が行けば充分だと思うよ」

「私も同じ理由ですねぇ」

 

 3人の答えを聞いた早苗は、じゃあ行ってきますねと一言を残して前へと進んでいった。

 

 

 

 時刻はおおよそ正午となる頃であった。

 神奈子とフランドールは木陰で休んでいる最中であった。

 日が昇り、気温が上がってきたことから早苗を待つ以外特にやる事が無くなった2人は涼しげな場所で休もうとこの木陰を見つけて今に至る訳である。

 文は記事のためとか写真を撮るとかで、河童から事情を聞いたり、装置の写真を撮ったりといったことを続けている。

 

「それにしても暑いわね〜。何十年か前くらいにはもう少し涼しかったんだけど」

 

 神奈子は気怠そうに手を扇ぎながらフランドールに話しかけた。

 

「夏って年が経つごとに暑くなるもんなの?」

「今は地球温暖化ってのが問題になっててねぇ。簡単に言うと人間が畏れと信仰を捨てて科学を盲信した結果って訳」

「あぁ、成る程ね。早苗が核をクリーンなエネルギーって言ってた訳が分かったわ。温室効果ガスとやらを出さないことがクリーンって言われてもイマイチ良く分からなかったけど、要はその地球温暖化を防ぐ為なんでしょ」

 

 フランドールの言葉を聞いて神奈子は驚いた表情を見せた。

 

「驚いた。早苗の話とは全然関係ない話だったと思うけど良くそこまで理解できるわね」

「簡単よ。今までの話を組み立てればそのガスとやらが地球温暖化とか言う奴に関わるのは明白だからねぇ。過程を口にするのは面倒だけど」

 

 話終えて、一息ついたフランドールは唐突な睡魔に襲われる。

 正直に言ってここ最近はいつもより睡眠時間が足りていないのだ。

 フランドールは、私には昼夜逆転はまだ早そうねといった事を思いながら大きく欠伸をする。

 

「お、どうした?眠いの?」

 

 フランドールは霞んでいく意識の外に神奈子の声を聞いたような気がするが、何か反応を残す為の気力はもう彼女には残されてはいなかった。

 そうして彼女は誰かに身体を持ち上げられたような感覚を感じながら意識を手放すことにしたのだった。

 

 

 

 

 




天才フランちゃんは可愛い
この前智霊でさとりが幽々子におんぶされてたのを見たので僕もフランちゃんをおんぶさせたいと思います
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