とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第一階層
第一話


 思い出すのは医者から言われたある言葉だった。

 

『日常生活を送る分には問題ありません。しかし……左腕と右足の傷が深く、とてもじゃありませんが格闘技等ができる体ではありません』

 

 その言葉は俺、武蔵雄介(たけくらゆうすけ)の心を抉るには十分過ぎるほどの威力を誇っていた。

 俺は昔から格闘技は好きだったし得意だった。中学時代は総合格闘技で三連覇を成し遂げた。

 だからこそ、格闘技が二度とできないと言われると己の半身が奪われたような感覚に襲われた。

 それからの俺は胸に穴が開いたまま虚空な生活を送っている。歩けないわけではないし日常生活に支障はない。

 ただ、刺激がなくただ生きているだけの毎日を人形のように生きている。それが今の俺にとって当たり前の日常だった。

 

 

 

 ある日の夜。

 

「まさか気まぐれで応募した景品が当たるなんて思わなかったな……ゲームなんてあまりしたことないけど」

 

 俺の手元には『NewWorld Online』と書かれた今流行りのVRMMORPGのソフトとVRハードがあった。

 

「まぁ、当たってしまったもんは仕方がないか」

 

 『NewWorld Online』で思い出したがクラスメイトの白峯が本条を誘っていたな。

 本条も本条でゲームとかいなさそうな雰囲気だしやる、やらないは本人の自由意志だ。

 

「俺の場合はどうすっかな…」

 

 知人に譲るのもいいが折角だから一回やってみるのもアリかもしれない。肌に合わないならその時はその時だ。

 俺はハードに電源を入れて電脳世界にダイブした。

 

 

 

 目を開けるとそこは電脳世界、所謂ゲームの世界にいた。町の中ではなく、キャラメイクを行う場所にいる。

 最初に名前を決めなければならない。

 

「名前は……武蔵(たけくら)だからムサシ丸でいいか」

 

 意味もなく分かりやすい名前にしておいた方が良いと思ってこの名前にした。

 次に初期装備だが、剣に大盾等と意外にも種類が豊富であった。

 

「と言っても武器なんて持った事ないしな……」

 

 今まで殴るか蹴るか、締め落とすと言った動作しかしてこなかったためいざ武器を持とうとなると抵抗感が生じてしまう……

 

「杖で魔法ってのもありか……ん?」

 

 俺の目に入ったのは『格闘家』と言う手甲をモチーフにした装備だった。STRやVITが伸びやすいが射程が短く、癖が強すぎるうえに取り回しがお世辞にも良いとは言えない不人気装備だ。

 しかし、この格闘家は俺にとってありがたい装備かもしれない。

 

「まぁ、やるだけやるか」

 

 

 ステータをHPとSTRに多めに振って俺は『NewWorld Online』をプレイすることにした。

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