とりあえず格闘家で戦いたいと思います。 作:アズライルン
イズの依頼を終えたムサシ丸は運営から通信が来た。その内容は第近々二層の実装がされる。第二層に上がれる条件は指定のダンジョンをクリアする事。
通知の内容を知ったムサシ丸はレベリングやスキルの集め等を行って準備をしていた。
「(属性打撃って言うスキルを買えたし、ある程度は戦えるが…)まっ、出たとこ勝負だな」
指定されたダンジョンへ向かっていると三人組のプレイヤーが困った様子で入口に立っていた。一人は赤い髪にこれまた赤を基調とした服装の女性プレイヤーでもう一人は白い修道服を着た女性プレイヤー。最後はツートンカラーのローブを纏った男性プレイヤーだった。
「(あの三人、見た事あるな…)あの、どうかされましたか?」
目の前にいる三人のプレイヤーから既視感を覚えながらもムサシ丸は赤い髪の女性プレイヤーに声をかけた。
「き、貴様はイベント第三位の“
驚いた女性プレイヤーの第三位と言うワードでこの既視感の正体に気付いた。彼女達は第一回イベントで上位に名を馳せたプレイヤーなのだ。
因みにランキングではミィは五位、ミザリーは十一位、マルクスは九位である。
「確かミィさんとミザリーさんとマルクスさんでしたか?」
「あぁ、よく覚えていたな」
「まぁ、猛者の情報は一通り調べています」
ムサシ丸はミィ達が途方に暮れていたのかその理由を聞く事が出来た。彼女達も第二層へ行くために前衛を務めるプレイヤーと共にダンジョンに挑むつもりであった。しかし、その人がリアルで急用が出来てしまって悩んでいた。
「成程……(目的は俺と同じか。ここで俺とミィさんが言い争ってもお互い何のメリットも無いしパーティー組んでの戦闘もまだやっていないからこの際に覚えるのも悪くないな)なら俺が前衛を務めましょうか?前衛を張れる格闘家なので」
色々と考えたムサシ丸は前衛役を買って出たのだ。ミィ達はその誘いに目を丸くしていた。確かにミィ達のスキルは基本的に後衛で活躍するので
「私達は構わないがそちらに何のメリットがある?」
「俺はこのところソロでしか戦った事がないのでこれを機に得ようかなと思って」
基本的に一対一か一対多でしか戦った事のないムサシ丸はパーティー戦で行う連携をこれまで彼はした事がなかったのだ。
それ故に彼はミィ達と組んで連携と言う物を学ぼうとしているのだ。
「成程、私達で前衛役を貴様はパーティー戦の経験を得たいと言う訳か。分かった、ならば手を組もう」
利害一致でムサシ丸とミィ達は手を組む事を決めた。パーティーを組めた事に喜色を示すムサシ丸であったがここで一つの疑問が浮かんだ。
「ところでさっき俺の事を暴獣って呼んでいたのは何故ですか?」
「ご存知なかったのですか?貴方の二つ名ですよ」
「第一回イベントで狂暴な笑みを浮かべて敵プレイヤーを倒す姿が獲物を狩る猛獣に見えたから暴獣だって」
「……俺の笑顔、そんなに怖いですか?」
確かに戦っている際はテンションが高くなって口角が上がっているのは自覚しているが他の人達から見たら怖い物だとは思わなかった。
暴獣と言われる所以にちょっとだけショックを受けるムサシ丸であった。
臨時でパーティーを組んだミィ達は驚いている。何せ前衛で戦うムサシ丸が目の前から突進してくる猪のモンスターを何のスキルを使わずに殴り倒しているのだから。無論、彼の話は耳にした事があるが、実際に見たのでは感じる物が全然違う。
「実際に見ると凄まじいな」
「ええ、相手の動きに合わせて攻撃しています。剣や槍は勿論、大抵の近接戦闘用の武器は彼のカウンターの餌食になるでしょう」
「シンでもあの動きに対応できないと思う。第一回イベントで戦わなくてよかったよ。僕のトラップが効くかどうか分からないし」
ムサシ丸の実力に三者三様の意見を述べている。そんな中でムサシ丸が呑気にこんな事を言ってきた。
「にしても猪か……餃子の餡やハンバーグにすると美味いんだよな」
「えっ?牡丹鍋じゃなくて?」
「牡丹鍋も良いですけどミンチにしても割とイケます。それに高たんぱくで低カロリーだから身体づくりやダイエットにも良い。昔俺も食べていたし」
「そうなんだ。僕も試してみようかな」
「試すなら専門の店とかで注文した方が良いですよ。寄生虫とかの問題があるので」
「確かにジビエは寄生虫の話はよく聞くし、調べて頼むとするよ」
ムサシ丸とマルクスが猪肉について笑いながら話し合っているとミィとミザリーが猛獣のような目になっていた。いくらトッププレイヤーとはいえ、女性のためダイエットと言う言葉に弱いのだ。
「ミザリー、これは良い情報だな」
「ええ、これはとても良い情報を聞きました」
そんな会話をしながら進んで行くと今度は熊型のモンスターが遠距離攻撃をしてきた。これには拙いと思ったがムサシ丸は冷静に攻撃を弾くと拳を握りしめ、突進する。接近されたモンスターはすぐさま接近戦に切り替えたが三人はムサシ丸の方が早く攻撃が届くと思っていた。
しかし、ムサシ丸の行動は予想していない行動をとった。なんと握っていた拳を開きモンスターを抱え上げたのだ。
「そらよっと!」
そして流れるような動作でパワーボムを決めたのだ。
「まさかのプロレス技!?」
「打撃だと思わせてからのプロレス技……駆け引きが強いですね」
マルクスが素っ頓狂な声を上げ、NWOだけでなく他のVRMMOゲームでもやろうと思えば出来なくはないが率先してやろうとする人は少数派なのだ。
「ふぅ~このくらいの大きさなら投げ飛ばせるか」
肩を回しながら一息付くムサシ丸にミィはある質問をした。
「凄いプレイヤースキルだな。ムサシ丸は今までVRゲームをプレイした事があるのか?」
「いや、VRゲームを始めたのはこのゲームが始めてです」
まさかの返答に全員が目を丸くしたが次の発言で腑に落ちた。
「唯、ゲーム自体は始めてですけど幼い頃から格闘技をやっていたので相手の動きを先読みするのは慣れています」
「つまり、格闘技の経験を元にプレイしていたと?」
どうりで技の駆け引きが上手いはずだとミィ達は思った。相手の思考や動きを先読みして意表を突く。打撃と思えば投げ技や関節技が飛び、その二つを警戒すればそのまま打撃の餌食になる。第一回イベントのような内容なら間違いなく脅威だ。
「この戦い方にも欠点はあります。プレイヤー以外だと人型のモンスターかそれに近しい骨格のモンスターじゃないと関節技や投げができないから打撃技しか使えません。それに大きさにも限度がありますから」
「確かに猪型のモンスター相手に殴っていたな」
敵があまりにも巨大だったり、四つ足の物やスライムやゴーストと言った形があやふやな物だと取れる選択肢が減ると言うのは確かに欠点ではある。
「(それ引いてもプレイヤースキルが高すぎるでしょ!?)」
ミィは平静を保っているが内心ではビビッていた。彼女も自分より上の順位のプレイヤーに関しては調べていた。その中でメイプルとムサシ丸だけは情報が少なく分かっている事と言えば二人共初心者である事だけ。幸か不幸か件のムサシ丸がパーティーを組もうと提案してきた。盾役兼前衛役がいないからその提案には快諾したが実際に見たら予想を遥かに超えた化物プレイヤーだった。
進んでいるうちにボスのいる扉の前まで辿り着いた。
「盾役になりますけどギミック的な事に関しては三人にほぼ丸投げしますからね?」
「大楯使いではないがここまで優秀な盾役も早々にいないだろう。任せておけ」
「ムサシ丸のおかげで罠の消費していないから問題ない」
「回復は任せて下さい」
ムサシ丸の活躍で三人は意気軒昂と言った具合で闘志を燃やしている。そして扉を開けると一本の大樹がメキメキと音を立てて変化し、巨大な鹿の姿となった。
「手始めに…『炎帝』!」
ミィが火球を鹿に向かって放ったが鹿のボスモンスターは緑色の障壁を張って防いだ。
「ギミックか!」
「解除の時間を稼ぎます。『挑発』!」
ギミックによって防がれた攻撃に舌打ちするミィを見ていたムサシ丸は挑発を発動させて自分がヘイトを向けるようにした。
「『炎拳』、『炎脚』」
ムサシ丸は炎を纏った手足で飛んでくる蔦を悉く破壊した。ムサシ丸が対応しきれない攻撃が飛んできてもマルクスが反応する。
「『遠隔設置・土壁』!」
マルクスがその直撃を防いでくれた。また、減ったHPをミザリーが回復する。
「あざっす」
「HPの回復が必要なら私に言ってください」
「それに関しては問題ありません。けど、この障壁は鬱陶しい」
「どうやら角とそれに生えている果実ならダメージを与えられる。それに『噴炎』、『炎帝』!」
どうやらミィが障壁の解除法を見つけ出した。ミザリーによってMPを回復しつつ高火力かつ範囲攻撃で果実を焼き払い削っていく。
「こいつもおまけだ!『暴獣拳・魔の型』!」
虎・北極熊・蠍の幻影が出現し、その三体がムサシ丸の体に吸収され、冷気と炎を同時に放ち、左腕に蠍の尾を模したオーラで鹿に攻撃する。
「ボスが毒状態になりました」
「状態異常攻撃も出来るのか…」
敵の状態異常の報告にミィはムサシ丸に警戒心を抱いた。高火力のスキルな上に状態異常にも備わっている。他にも高火力のスキルがあるのだから気が気でないのは仕方がない。
しかし、鹿にある異変が起きた。鹿の足元に魔法陣が出現するとHPバーが2割まで回復し毒の状態異常を取り除いてしまったのだ。
「(こいつ、HPと異常攻撃を回復しやがった)下から何か来ます!」
「行動パターンの変化だな。危機察知能力も高くて助かる」
ボスの変化によって動きに警戒するムサシ丸はすぐにその場から立ち去る。それを見たミィ達が彼の危機を察知できる高さに感謝して彼に習うようにその場から去り、その直後に火柱が上がると同時に地面を突き破る勢いで先程より太くなった蔦が周囲を攻撃してきた。あと少し遅ければ大ダメージを負っていた。
「回復されてしまったが問題ない。果敢に攻めろ!『爆炎』!」
もうひと踏ん張りだとミィが爆炎を放つがここで問題が起きてしまった。太くなった蔦を掻い潜りながら放ったのはいいがそのせいで狙いが甘くなり、そのせいで爆炎の攻撃範囲から鹿がはみ出してしまったのだ。
「しまった!」
爆炎が外れてしまっては炎帝では決められないと思った矢先に蔦の上を移動していたムサシ丸が軌道の先に跳躍していた。
「『マジックリフレクター』」
スキルを発動させるとムサシ丸の脚に透明な膜が包み込む。そしてミィの爆炎を蹴って鹿の顔面に叩きつけたのだ。
「ええぇっ!?」
「う、嘘ぉ!?」
「まさかあんな使い方をするなんて…」
予想外の行動を取るムサシ丸に驚愕の声を上げたが件の彼から鋭い声が飛んできた。
「ラスト一発頼んます!」
「っ!『炎帝』!」
ボスのHPバーが予定より残ってしまったがこのくらいなら倒せる。ミィは残りのMPを全部使った炎帝で鹿を焼き払い、光の粒子に変えた。
「あのギミックは俺じゃ見抜けないわ」
「ムサシ丸、先ほどの行動は何だ?」
「マジックリフレクターの事ですか?」
「ああ、そのマジックリフレクターの使い方だ。持っているプレイヤーは何人か知っているがあんな使い方をしたのは始めて見たぞ」
「あれは本来なら相手の攻撃を反射して牽制する目的のスキルなのですが攻勢に用いられる事はないスキルなのです」
初手のギミックはゲームを全くしていない自分では解けなかったからミィ達がいて良かったとムサシ丸が思っているとミィが先程のマジックリフレクターの使い方について訊いてきた。不思議に思っていたらあれは本来なら防御系であり攻撃に使おうなんて誰も考えた事がなかったのだ。
「そうなんですか?俺はてっきり敵味方関係なく出来るなら可能だと思っていました」
「多分だけどテキストだけを見たら出来なくはないけど実行する人がいなかったから気付けなかったからが大きいと思う。それこそムサシ丸みたいな思考の柔軟性?って物が無いと気付かないし」
マルクスの説明でムサシ丸は自分が如何にとんでもないことをしていた事に唖然としていた。
「……マジか」
「しかし、これはある意味新しい発見だな。例え攻撃を避けたとしてもその直後に反射されて飛んでくるのだから回避は難しいだろう」
「そうですね。大楯使いの背後を奇襲したりと戦略の幅が広がります」
「問題はそれを実行するにはムサシ丸並のプレイヤースキルが要求されるって所だね。そこはトライ&エラーでやるしかないかな」
三人はムサシ丸のマジックリフレクターの使用にあれやこれやと話し合っている。話についていけないムサシ丸は愛想笑いしか出来なかった。
こうしてムサシ丸はミィ達と共に第二層へと足を踏み入れた。
「勘弁してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
一方の運営側は大幅なメンテナンスのためにスキルの修正のためにチェックしていた一人が発狂してしまった。
「どうした!?」
「ムサシ丸がやらかしやがった!!」
論より証拠と言わんばかりにミィの爆炎をマジックリフレクターで鹿の顔面に反射させたムサシ丸の映像を見せた。
「マジかよ…」
「確かにマジックリフレクターは魔法攻撃を反射できるけどまさか攻撃に転用するなんて…これは想定が……いでもないか」
「どういう事?」
「あのスキルは特別なスキルじゃないし取得しているプレイヤーもたくさんいるが単純に攻撃に使うと言う発想が思いつかなかったんだよ」
「「「「た、確かに……」」」」
言われてみれば納得する。マジックリフレクターはあくまで『魔法攻撃を威力半分で反射する』だけでそこに敵も味方も関係ないのだ。仮に他のプレイヤーが味方の魔法攻撃が反射されても偶然として片付けられてしまうのが常だ。
しかし、ムサシ丸はその偶然を意図的に使ったのだ。
「あの三人なんてどう活用させるかで話し合っているし。今後、マジックリフレクターを攻撃に転用するプレイヤーも増えるかもしれない」
映像のミィ達の姿を見て戦略に組み込もうとする気満々なのがひしひしと伝わる。そうなると下手な弱体化は反感を買ってしまう。
「だからマジックリフレクターにはクールタイムを設けるだけにしておこう。あの動きはムサシ丸だからこそ出来た訳で彼以外のプレイヤーはある程度の慣れが必要だ」
「それが無難だろう」
ムサシ丸の行動に頭を悩ませた運営側であったがその行動は新しい戦略の一つとして容認し、最小限の修正で済ませた。
属性打撃:属性剣の打撃版
Q:何故ムサシ丸はマジックリフレクターを使用する際に蹴っているのか?
A:ムサシ丸「蹴った方が正確に狙えるから」
ムサシ丸のテイムモンスターは
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メカっぽいオルトロス
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悪魔チックなTレックス
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空飛ぶ鯨
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その他