とりあえず格闘家で戦いたいと思います。 作:アズライルン
海辺に出たムサシ丸が出会ったのは第一回イベントで七位の『カスミ』を立っていた。
「アンタも金のメダルを持っている以上、戦う理由がないはずでは?」
「確かにそうかもしれない。だが、私にはある!」
そう言って抜刀したカスミが襲い掛かって来たがムサシ丸はその刃の軌道を読み、蹴りを放った。カスミはこちらの攻撃に合わせてカウンターが飛んでくる事は織り込み済みだ。しかし、問題はその攻撃が
しかし、カスミのHPバーは減る事はなかった。彼の蹴りは当たるか当たらないかのギリギリのラインで止めたのだ。
「まさかの寸止めか」
「こっちはアンタと殺り合うメリットがないもんでな」
ムサシ丸からしたら上位プレイヤーが金のメダルを持っている以上、此処で争っても意味がないと思っている。それ故かムサシ丸は寸止めで済ませたのだ。
「すまないな。不遇装備だと言われていた格闘家のプレイヤーが上位に入ったと聞いてな。どのような人物なのか気になった」
「要は俺の実力を試そうとしたわけか」
「その通りだ。いやはや、此処までプレイヤースキルが高いとトップ3に入るのは当然か」
「襲われた俺からしたら真っ平御免被りたい話ですよ」
カスミが刀を収めるとムサシ丸も蹴りの姿勢を解いた。どうやらカスミはムサシ丸の実力を知りたかったのだ。
「格闘家と言うのはかなりのプレイヤースキルが要求される装備でな。実際に始めに格闘家を選んだが合わずに初期装備を変更したプレイヤーの話もあるからな」
「(そう言えば、イズさんもクロムさんも似たような話をしていたな。この人の話を踏まえると格闘家は経験者かそうでないかで同じ装備のプレイヤーでもかなりの差があると考えた方が良いな)」
ムサシ丸は幼少の頃から様々な格闘技を仕込まれ、総合格闘技でチャンピオンになった経歴があるので格闘家と言う装備で戦うプレイヤーに対してかなりのアドバンテージと言えるだろう。
「出来れば此度の非礼は詫びたいのだが…」
「(実力を納得してくれるなら別にそこまでしなくても良いんだけどこの様子じゃ首を縦に振らんし……あっ?)なら、あれを一緒に攻略するってのはどうでしょうか?」
「あれとは?」
「さっきまでは無かったのに急に現れました」
ムサシ丸の視線の先には潮が引き、小島までの一本道が出来上がっている。
「隠しダンジョン…」
「失敗しても問わないので一回だけこのダンジョンを一緒に潜るって事で手を打ちましょう」
「それなら構わない」
こうしてムサシ丸はカスミと共に隠しダンジョンに挑むのであった。
一方の運営サイドは他のプレイヤー達の動向を見ながら今度のイベントや企画を練っている。
「おっ、これは珍しい組み合わせだな」
「どうした、どうした?」
映像の一つに小島へ向かうムサシ丸とカスミが映っていた。
「ムサシ丸とカスミが即席のパーティーを組んで
「あそこは二人以上のプレイヤーがいないと出現しない設定だったな。確かに組合せとしては珍しいな。……そう言えば、このダンジョンを作ったのはお前だったな?」
「あぁ、ある特撮をモチーフにしたボスを配置したし、攻略した報酬もそれ相応に良い物を用意した」
「ムサシ丸は偶に予想もしない突発的な行動をするが理由が分かりやすいし納得も出来る。カスミも行動自体は真面だから変な事は起きないだろう」
行動自体は意外と真面でこちらが納得できればあっさり納得できる二人なので特に問題はないと判断して運営側は成行きを見守る事にしたのであった。
件の海妖の洞窟に潜っているムサシ丸とカスミは襲ってくるモンスターを倒していく。ムサシ丸が挑発のスキルでモンスターの注意を引いて近接戦闘するモンスターを狩り、遠距離攻撃を主体とするモンスターをカスミが超加速を駆使して倒す。
「離島と言うだけあって水棲動物をモチーフにしたモンスターが多いな」
「クラゲや蟹やテッポウエビは分かりますが何でデンキウナギがいるんですかね?あいつ淡水で暮らす奴なんですが」
「そこは深く突っ込むのは野暮と言う物だ」
ムサシ丸は何故デンキウナギがいる事に疑問を思ったがカスミにその辺りには深く触れてやるなと言いつつ次の扉を開けると甲殻類をベースとしたモンスターが立っていた。
「あれは……シャコか?」
「腕の形状からしてモンハナシャコっスね」
シャコモンスターはこちらを見るや否やジグザグに動いて接近してきた。振り下ろして来た拳を二人は散開して回避する。
「(拳がメインの動きだな。攻撃力はそれなりに高いし一発目にしてきた攻撃、ありゃ貫通攻撃であると思った方が良いな。幸いにも相手は人型で動きも単調だから避けられるし技をかけられるな)『挑発』!」
ボクサーのような動きで襲い掛かって来たがムサシ丸にとってはカウンターし放題なので攻撃の合間を縫って拳を入れる。
シャコモンスターのほんの少しの
「(アームロックで破壊するとは…)『一ノ太刀・陽炎』!」
カスミはシャコモンスターの腕をアームロックで破壊したムサシ丸に辟易するものの攻撃のチャンスだと割り切り背後から斬りつけた。
「『暴獣拳・剛の型』!」
シャコモンスターがカスミに攻撃をしようとしたが既に懐に入っていたムサシ丸の拳が腹部に拳を入れて吹き飛ばすとマンモスを模した脚で踏みつぶし、最期は鮫のオーラと共に挟み蹴りを食らわせてシャコモンスターを光の粒子にさせた。
「暴獣拳を使う羽目になるとはな…中々に強い」
「今のモンスターは中ボスだな」
これまでの強さを鑑みてカスミは最終ボスではなく中間地点にいるボスであろう見切りを付けていた。
モンスターを倒しながら奥まで進むと扉ではなく大きな魔法陣があった。ムサシ丸とカスミは同時に踏むと周囲を海に囲われた場所に出た。
そこにはボスであろう10mを優に超える体長のシャチが悠々自適に泳いでいた。こちらに気付くと水弾を放ってきた。
「『マジックリフレクター』!」
シャチから放った水弾をムサシ丸は蹴り返す。どうやらこのボスモンスターは遠距離専門のモンスターのようだ。
「魔法攻撃は俺に任せてください。『挑発』」
「承知した。『超加速』!」
ムサシ丸がヘイトを向いている際にカスミは超加速によって一気に間合いを詰める。
「『二ノ太刀・斬鉄』!『四ノ太刀・旋風』!」
刀術と言うスキルを使ってシャチのボスモンスターにダメージを与えていく。第一回イベントでプレイヤースキルのおかげで順位がカスミより上のムサシ丸だが彼女も彼女で優秀なプレイヤーである。
「『暴獣拳・魔の型』!」
追撃としてムサシ丸はスキルを発動する。炎・冷気・毒の状態異常攻撃を受けてシャチのボスモンスターのHPは半分となった。そのタイミングでシャチのボスモンスターに変化が起きた。上半身はシャチのままだが下半身部分がタコの足となった。口からは青白い光が漏れている。
「おいおい、タコ足が生えるのは鮫だけで十分だろ!『挑発』!」
再度挑発のスキルを行使してタコ足の攻撃を自分に向けるようにしたムサシ丸は手刀で斬り、
「(タコ足に攻撃してもダメージはないし再生する……)カスミさん、シャチ本体に攻撃してください。タコ足に攻撃してもHP減らないんで」
「(あの攻撃に合わせてカウンターを入れ、分析したのか。凄まじい動体視力と洞察力だな)了解した」
「ムサシ丸、しばらくの間タコ足の攻撃の対処をしてくれ」
「了解です」
ムサシ丸にタコ足の攻撃を任せるとカスミはシャチのボスモンスターに向かって走り出した。
「(大技で一気に攻めるしかない。刀の耐久値が気になるがこのままでは足場が無くなる。それはムサシ丸も気付いている)」
このステージは時間と共に海水が徐々に浸食するギミックになっており、海水には触れる間だけAGIが下がる効果が付与されている。つまり、時間がかかればかかるだけプレイヤーが不利になるのだ。カスミもそれに気付いており、一気に勝負を決めようと間合いを詰めている。
しかし、シャチのボスモンスターはそれを待っていたような電撃を纏った水弾をカスミに放ったのだ。
「(拙い!この攻撃はかわせない!)」
見た目以上に攻撃速度が速く、この攻撃は速く自分の位置取りではこの攻撃はかわせない。
大ダメージを覚悟した時だった。
「『超加速』」
その言葉が聞こえた直後、ずっとタコ足の攻撃の処理をしていたムサシ丸が彼女の前に現れたのだ。
「何故お前が…」
「最短距離で走れるルートはとっくに
まるで読んでいたかのように魔法攻撃に対してマジックリフレクターを使用し、ボスモンスター相手に反射させた。
それを諸に喰らったシャチのボスモンスターは大幅にHPを減少しただけでなく痙攣していた。
「麻痺付きの魔法攻撃か。喰らったら面倒な事になっていたな。まぁ、これ以上時間をかける気はさらさらねぇよ」
そう言ってムサシ丸は痺れているシャチのボスモンスターのタコ足の一本を掴むと一本背負いの要領で空中に投げ飛ばした。
「なっ!?」
「こうすりゃ海水に浸る影響は考えなくても良いだろ」
そう、ムサシ丸はどうすれば海水の影響を無くして攻撃しなければならない事を思考していた。そして辿り着いた答えがこれである。
「全く、驚かされる行動ばかり取るな。でも確かにこれなら海水を気にする必要はない」
海水が邪魔なら空中に放り投げれば良い。あまりにも極論過ぎる論理を実行するムサシ丸に呆れたカスミであったがこれはこれでありがたい。
「『跳躍』!『終ワリノ太刀・朧月』!」
カスミは跳んでボスモンスターに近づくと自分が持っているスキルの中で一番高い攻撃力を持つスキルを使ってシャチのボスモンスターに当てた。やがてHPが0となってシャチのボスモンスターは光の粒子となって消えた。
ボスモンスターが倒されると海水に浸かっていた地面が元に戻り、宝箱が二つ置かれていた。
「入っているのはスキルロールと刀か。刀の方は私が貰っても良いだろうか?」
「問題無いっス」
一応剣道をした事あるが腕前がからっきしなのでカスミに装備を譲っても問題はない。
『
STR+30
【自己修復】
『水神の加護』
【自己修復:鞘に納めている間、耐久値が回復する】
『水神の加護:フィールドが水中または水の多い場所になると自動で発動する。水の中でも呼吸を気にせず陸上と同様に動く事が出来る』
装備を確認すると水中戦を想定した装備でありそしてスキルロールも水神の加護だったのでどっちを取っても同じスキルが手に入るのだ。強いて違いを上げるなら刀を選ぶと納刀している間だけ耐久値が回復するおまけがつく程度だ。
「完全に水中戦特化のスキルだな。首飾りにセットしておくか、使えない場所なら首飾りを外せば良いし」
ムサシ丸はスキルの内容を見て未だにスキルをセットしてない暴獣の首飾りにセットする。それと同時に紺碧のオーラがムサシ丸を包んだ。
「そういう仕様か。刀にも同じスキルが付与されているが耐久値が回復するのはありがたい」
カスミが取得している刀術には耐久値を犠牲にする物もあるので自己修復のスキルはとてもありがたい。試しに装備すると周囲の水がカスミを包み込む。
「おっと……ムサシ丸とは別の演出だな。ん?……ムサシ丸、何故顔を背けている?」
水が包み込んだのは一瞬で特に問題はないと思ったがムサシ丸が明後日の方向に顔を背けていたのだ。
「あの……カスミさん?今の恰好をよく見てください。かーなーり目に毒な恰好をしているので」
彼に言われた通りにカスミは自分の恰好を見てみるといつもの桜色の着物に紫色の袴だったが今は違う。遠目から見れば浅葱色の着物と
彼女自身のスタイルの良さと相まってムサシ丸の言う通り、男性プレイヤーにとっては目に毒な恰好をしていたのだ。
無言で装備を今使っている刀に戻すと元の恰好になり、蒼海の神刀・縹を再度装備するとハイカットのインナーが見える着物と袴姿になる。
「………ムサシ丸、この事は絶対に誰にも言わないでくれ」
「無論承知です」
蒼海の神刀は水中戦では無類の強さを発揮するし自己修復のスキルはありがたいのだが、この格好は恥ずかしい。
顔を真っ赤にしているカスミの要求にムサシ丸は素直に従った。
運営側サイド―――
「あちゃ~、そう来るか」
「海水に浸からないために一本背負いで空中に投げる。超越した論理が技と化した瞬間だな」
ムサシ丸とカスミが海妖の洞窟のボスモンスターを撃破されたシーンを観て各々の感想を漏らしていた。中ボスのシャコモンスターにアームロックをかけて腕を壊したり、ボスである海妖を一本背負いで空中に投げ飛ばすとはこちらの予想を超えた動きをした事に感嘆としていた。
「まぁ、ムサシ丸のSTRなら出来そうだけどまさかやるとはな…」
「尤もカスミがいてなんとかなった場面が多いし役割分担もきっちりしていた。ムサシ丸は無茶苦茶な論理でも自分なら可能だと思ったら即断即決で実行するからハラハラする」
「もしメイプルと一緒に行動していたら……」
「止めろ!そんなの考えたくもない!!」
天然で奇抜などんな行動を取るか分からないメイプルと無茶苦茶な事でも自分なら可能であれば平気で実行するムサシ丸。この二人が組んでしまったらどうなるか運営の一人が呟くともう一人が発狂してしまった。
このままではいけないと思った一人が報酬品について話をした。
「スキルの水神の加護だけどムサシ丸はオーラを纏っただけなのに蒼海の神刀・縹のあれは?」
「あれは俺の趣味だ。スキルとの差別化を図りたくてな」
「……クレームとか大丈夫なの?」
あんな羞恥心を煽るような恰好になるのによく採用されたなと思う反面クレーム対応しなくてはならないと頭を抱えてしまう。
蒼海の神刀・縹を男性が装備すると鎧兜になりプレイヤーによってはマイルドに変更されます
ムサシ丸のテイムモンスターは
-
メカっぽいオルトロス
-
悪魔チックなTレックス
-
空飛ぶ鯨
-
その他