とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

17 / 38
第十七話

 ボス戦を終えたムサシ丸とカスミが出てくると辺りは既に夜になっていた。

 海妖の洞窟を攻略した二人であったが二人の間に何とも言えない空気が流れていた。その理由は報酬の装備が特定の条件下とはいえ、女性の羞恥心を煽るような格好になると言う物であったのだから。

 

「(き、気まずい…そりゃ苦労して手に入れた装備がセクシーに全振りした感じになるなんて誰も思わないだろう)」

 

 運営は後でクレームを入れられても文句は言えないと思うのと同時に気まずい雰囲気をどうにかしたいと思っている。

 

「……ムサシ丸」

 

「は、はい。何でしょうか?」

 

 何かいい話はないのかと必死になって考えているムサシ丸であったがカスミから急に話しかけられた。

 

「先程のボスとの戦いで特大の魔法攻撃をまるで読んでいたかのように動いていたな。あれはどうやってやったんだ?」

 

「ああ、あれはカスミさんとボスの動きを常に視野に入れて行動していたんです。あの魔法攻撃だって来ると予見し貴女と敵の間に入れるポイントに最短距離で到達できるルートを見つけて実行した。それだけです」

 

 常に味方と敵の動きを把握して危険なポイントとタイミングを発見しては対処していた。ムサシ丸の話を聞いてカスミは目を丸くしてしまった。

 

「意外にも空間認識能力が高いのだな」

 

「納得してくれたのなら幸いです」

 

 優れた空間認識能力を有している事に呆れているカスミを見て先程までの気まずい雰囲気は無くなって一安心しているムサシ丸であった。

 

「もう夜か。夜襲を仕掛けるプレイヤーもいるだろう」

 

「流石に連戦は勘弁して欲しい」

 

 如何に体が疲れていなくても精神的疲労は感じているのでこれ以上の戦闘は勘弁願いたい。

 

「私はこのまま砂漠の方へ行ってみるがムサシ丸はどうするのだ?」

 

「俺ですか?俺はこの辺で休める場所を探して二日目に備えます」

 

「そうか。ならば此処でお別れだな」

 

「そうですね。あっ、フレンド登録良いですか?」

 

「ああ、構わないぞ」

 

 二人は互いのフレンド登録を済ませるとすぐに別れた。彼女と別れたムサシ丸が海沿いまで歩くと暴獣の首飾りにセットした『水神の加護』が発動し、ムサシ丸を紺碧のオーラが包み込む。

 

「カスミさんの一件で試す事が出来なかったからな。一回潜って確かめてみますか」

 

 そう言ってムサシ丸は夜中の海に潜った。『潜水』と『水泳』のレベルがXにしていたとしても限界が存在する。しかし、ムサシ丸は活動時間の限界が来ていないのを感じている。

 

「息ができるから喋っても窒息する心配もない。移動する時は泳ぐ動作で進めるけどちゃんと戦闘時は地面の時と同じくらい踏ん張りが効く。水神の加護、水中戦では本当に便利だな。……もし、カスミさんがこれを使ったらあれが無ければ完璧だったと思うだろうな」

 

 水神の加護の性能をひとしきり調べた後、再び森へと足を運んだ。試している際に銀のメダルを一枚見つけたのはここだけの話である。

 

「早く休憩できる場所探さないとな…」

 

 海面から出たムサシ丸は森に中を探索していると魔法陣を見つけた。ダンジョンの入口かと思ったが先程攻略した二つのダンジョンとは違うと物を感じてその魔法陣に触れた。

 

「此処は……図書館か?」

 

 魔法陣で転移した場所は古びた図書館のような場所であった。イベント前に購入したランタンを構えて慎重に歩を進めていく。モンスターの気配はなく、広い空間が存在しているだけであった。

 

「あれ?プレイヤーが来るなんて珍しい」

 

 不意に声が聞こえたので警戒レベルを上げる。やって来たのは癖のある赤髪で中性的な顔立ちのプレイヤーだ。服装は初心者用のそれで何より手ぶらであった。

 

「あぁ、僕は君に危害を加えようとは思ってないよ。ただ、ランタンの明かりがこっちに向かっているのが見えたから気になって来たんだ」

 

「……そうみたいだな」

 

 嘘ではないのだろうが警戒するに越したことはないのでなるべく深入りしない位置で彼を観察している。

 

「自己紹介がまだだったね。僕の名前は“カナデ”、よろしく」

 

「ムサシ丸だ。カナデと言ったか?お前は一体此処で何をしているんだ?」

 

「実はこの図書館を攻略している最中なんだ」

 

「攻略?モンスターの気配がないのにか?」

 

 てっきり休憩スポットだと思っていたムサシ丸であったがカナデは首を横に振って否定しある一室に案内すると机にはある物が置かれていた。

 

「これは……パズルか?」

 

「うん、しかも全面真っ白で絵柄もないミルクパズル」

 

 絵柄のない真っ白なパズルが机一面に散らばっている。そしてそのパズルのピースの数は1000を超えている。

 

「1000ピース以上あるのか…俺にはどれがどれだか分からん」

 

「そう?僕は覚えられたけど」

 

 カナデを見てムサシ丸は彼の記憶力とこんな攻略方法があるのだなとひたすら感心している。今まではモンスターを倒すだけかと思っていたが知力や記憶力が物を言う場所もあると実感しているのだ。

 

「ムサシ丸は何しに来たの?」

 

「俺はもう夜だから休憩できる場所を探して彷徨っていたらこの場所へ」

 

「へぇ~、となると攻略されるまで誰でも入り放題って訳か。でも、この図書館にはモンスターはいないから休憩スポットみたいな扱いをしている人が多いかも」

 

 この図書館の攻略方法がミルクパズルを解くだからカナデみたいな記憶力に自信があるプレイヤーか物好きではないとやらない。

 カナデの空気にムサシ丸は警戒心を解いた。

 

「敵意を向けて悪かったな。お詫びにこれを」

 

 そう言ってアイテムウィンドウから果物を三つほど取り出しカナデに渡した。

 

「良いのかい?」

 

「幾らリアルで二時間しか経っていなくてもこっちじゃ一週間。何か腹に入れておかないと頭が回らないだろ?それに……」

 

「それに?」

 

「此処ならフィールド内にあるダンジョンに関するヒントがあるかもしれないからな。それの礼だ」

 

 当てずっぽうでも良いが難易度の高いダンジョンの目星を付けておきたい。そこなら多くメダルや強いスキルがあると思ったからだ。

 

「そっか。それじゃごゆっくり」

 

「おう、そっちもあんまり根を詰めすぎるなよ」

 

 そう言ってカナデがいる一室から大分離れた場所で眠りに就いた。

 

 

 

 

 イベント一日目が終わり、二日目の早朝。

 時間で言えばまだ朝の四時を回った頃、ムサシ丸は目を覚ました。

 

「(まだ日が出ていない時間に起きてランニングするのだが、ゲームの世界でも今まで通りの時間に起きるとはな…)」

 

 つくづく慣れと言うのは恐ろしい物だと苦笑しながら起き上がって凝り固まった関節を鳴らす。

 アイテムウィンドウから果物類を出して軽めの朝食を摂り、目に付いた本を手に取って読んでみた。

 

「かの森に(しのび)の道を極めし者あり。姿なく、音もなく、近づく様はまさしく影…。もう一冊は離島に近づくべからず。海妖に狙われた者、水によって全てを砕かれ、脚に絡まれその命は泡沫に帰す(忍の道を極めし者はあの忍者クワガタの事で海妖はあのシャチの事か。となるとダンジョンの場所のヒントが隠されているのは間違いない)」

 

 この図書館にはダンジョンの場所のヒントが隠されていると確信を得たムサシ丸は片っ端から本を読み漁り、自分が気になる場所をリストアップしていくのであった。

 

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。