とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第十九話

 

運営サイド―――――

 

 

「先輩!対メイプル対策のモンスターを第二回イベントに組み込みました!」

 

「どんなのだ?」

 

 運営の一人が黒騎士の映像を見せた。

 

「メイプルの攻撃は全てスキル依存。この黒騎士は第二形態になると攻撃スキルに対して倍にして貫通する能力を持っています。後避けても追尾するおまけ付きです」

 

 メイプルが毒竜(ヒドラ)を放ってきたとしよう。メイプル自身は毒無効があるため毒状態にはならないがスキル自体の攻撃が貫通攻撃となり襲い掛かって来るのだ。しかも、追尾してくる徹底ぶりだ。

 

「そうだな。そのモンスターは俺達の悪意シリーズに匹敵する能力だ。これならメイプルだけでなく他のプレイヤーにも有効だ……一部例外を除いてな」

 

 運営の一人がある映像を出した。

 そこにはムサシ丸が黒騎士相手に打撃に投げ技を多用している姿が映し出されている。

 

「えっ?ムサシ丸?でもあいつだって攻撃系のスキル使いますよね?」

 

『こいつ相手に暴獣拳を使うのは危険だな。とてつもない反撃を食らいそうだな』

 

 どういった仕様になっているのか分からないながらもこちらの意図に気付き、彼自身の最大火力である暴獣拳を使うのを止めたのだ。

 

「ま、マジか……」

 

「今回に関しては相手が悪い。だって、あいつは基本的に持ち前の格闘技術だけで戦っているからな。現に暴獣の時なんてスキル無しの打撃戦で倒していたし」

 

 これまでムサシ丸が暴獣拳を使うのはここぞとばかりの時で普段から活用しているのは『マジックリフレクター』か『超加速』のみ。前者は魔法による遠距離攻撃対策に、後者は間合いを詰める補助にしか使っていない。そのため攻撃スキルが倍の貫通攻撃となって返ってくる仕様が無意味な物になってしまった。

 

「ナンテコッタイ…」

 

 運営の一人はメイプル対策として作り出したモンスターがムサシ丸と言うイレギュラーによってご破算となってしまい、膝から崩れ落ちた。

 

「ドンマイ、ドンマイ。今後はもう少し考えてみよう」

 

「と言うかボス相手にスキル無しで戦う事自体可笑しいんだけどな…」

 

「だ、大丈夫です……ま、まだ奥の手が……」

 

 一人が慰め、もう一人がムサシ丸の特異性に呆れている中で作った張本人はまだ諦めていなかった。

 

 

 

 

 一方のムサシ丸は悪戦苦闘している。

 

「硬ぇな。あれだけ打ち込んでもまだHP残っているのか」

 

 仕切り直しと言わんばかりに距離を取り、出方を伺うムサシ丸。相手の攻撃が大振りに近いので易々とカウンターが取れるのでダメージは負っていないが向こうの防御力が高いため向こうもダメージは予想より負っていない。

 

「(それでも二割くらいになったが……行動に変化が現れても可笑しくないな)」

 

 二割減った事で更なる変化があった。膨張していた体がまた全長が10m近くまで膨張し上半身の鎧が完全に砕け散り、背中から太い触手のような物が生えて異形の化物へと変貌した。

 

「騎士の要素を殴り捨てたな」

 

 軽口を叩いたが何か仕掛けてくる事が予見できた。恐らく、超加速使ってもやられてしまうとクラウチングスタートの構えを取った。

 

「一か八かの賭け、やられたそれまでだ」

 

 スタートを切ると同時に丸太よりも触手の大群が襲い掛かってきた。本来ならばこの攻撃でムサシ丸のHPは消し飛ぶのだが、なんとムサシ丸は生き残っていた。

 

「よっしゃぁ!」

 

 賭けに勝った事が喜びの声を上げたがまだ戦いは終わっていない。

 

「こんだけデカけりゃ余裕!」

 

 勢い殺さずに跳躍して放った飛び蹴りが黒騎士の眉間に決まり、黒騎士は自身のHPが0となって光の粒子となった。

 ボスが倒されたことで宝箱が出現した。

 

「もう少しSTRを上げた方が良かったな」

 

 相手のVITが予想より高くて予定よりも時間が掛かってしまった事に反省しもう少しSTRのステータスを上げるべきだと実感する。

 それと同時にスキル獲得のアナウンスが流れた。

 

復讐女神の贈物(ネメシスギフト):[ 復讐女神の贈物(ネメシスギフト)][復讐の一撃(ヴェンジェンス・ストライク)]』

 

復讐女神の贈物(ネメシスギフト):MPを消費し続ける間、自身に付与されるデバフがバフになる』

 

復讐の一撃(ヴェンジェンス・ストライク):対象から受けたダメージの合計値を10倍にした数値の防御貫通攻撃として攻撃する。複数から攻撃を受けた場合、受けたダメージの大きい方がこのスキルの対象となる』

 

「暴獣拳と同じ複合系のスキルだな。復讐って結構物騒なネーミングだな。宝箱の中身が銀のメダルも二枚獲得できたし結果としては上々か」

 

 ムサシ丸が一息ついて空を見上げると真っ暗になっていた。

 どうやら戦闘が長引いてしまって夜になったようだ。

 

「一日中此処で手掛かり探しと戦闘に費やしたのか…」

 

 通りで疲労の蓄積が半端ない訳だ。

 このまま登っても落下するだけなので偶然の見つけた横穴に入りそのまま夢の中へと旅立った。

 

 

 

 

運営サイド――――――

 

「これぞ、最期の手段。強力な貫通による範囲攻げ……えっ?」

 

「おいおい、今の加速は何!?超加速でも極振りプレイヤーじゃないかぎりできないぞ!!?」

 

「とりあえずさっきの映像をスローモーションで再生してくれ」

 

 黒騎士を作った運営の一人が奥の手を発動した事に歓喜の上げようとしたがムサシ丸の行動に面喰ってしまう。それもそのはず、極振りでもない限りあの猛攻を振り切る事ができないのに他のプレイヤーと比べてAGIが高い部類であるとはいえ、基本的にはSTR重視のムサシ丸があれだけの加速力を叩き出したのだから。

 運営の一人が驚かされたがすぐに冷静なりムサシ丸が見せたクラウチングスタートに秘密があると踏んでスローモーション映像を出して欲しいと指示を出した。

 

「見た感じ只のクラウチングスタートにしか見えないよな」

 

 スローモーション映像ではムサシ丸がクラウチングスタートで走り出して触手の群れを一気に駆け抜けている姿しかなかった。

 

「まさか……でも……分かったぞ」

 

「本当か!?一体どんな方法で加速したんだ?」

 

 運営の一人がムサシ丸の加速のカラクリに気付いたのか全員がその一人に注目している。

 

「あの加速はクラウチングスタートによって溜めた力を爆発させ、その反動で加速しているんだ」

 

「つまり、STR(筋力)AGI(素早さ)に変換したって事か?」

 

「あぁ、このゲームの自由度ならやろうと思えば出来なくはないがSTRが強ければ強い程目的の地点を軽々と突破するし急には止まれないから使い勝手は悪い」

 

「それなら超加速を使えば良いだけの話。ムサシ丸もムサシ丸で賭けだったわけだな。運がいいのか悪いのか…」

 

 無意識にこのゲーム自由度に目を付けて行動したのだろうがムサシ丸もムサシ丸で一か八かの状況であった。賭けに出たその胆力を誉めるべきか成功できた悪運に呆れるべきかで悩ましい所だ。

 

「マジックリフレクターの使い方と言いさっきクラウチングスタートによる爆速と言い、ムサシ丸は他のプレイヤーが真似できる事をポンポンと創造するから困るよな…」

 

 マスター出来るか否かは別にしてムサシ丸の行動は使えれば苦しい戦局を覆せる一手になりうる物なのだ。

 

「でもそのまま使うと相応のプレイヤースキルがないとできないからな。炎帝の国はマジックリフレクターを別の方法で自分の攻撃を反射して敵に当ているからな」

 

「ムサシ丸がやるのはあくまでも気づき程度。後は各プレイヤーがどのように応用するかで左右される」

 

「……そうだな」

 

 ムサシ丸の行動は傍から見れば可笑しな物だがステータス依存であり相応のプレイヤースキルがあればできるため今後も注視しなければいけないと思うと運営メンバーは頭を抱えてしまった。

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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