とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第二十三話

 第一層ボス戦で知り合ったミィ、ミザリー、マルクスと鉢合わせしたムサシ丸であったが第一回イベントで八位の『シン』が勝負を仕掛けて来たのだ。

 

「戦ってくれって俺はアンタ等と戦う理由がないのですが?」

 

「それは分かっている。ただ、第一回イベントでとあるプレイヤーに負けてさ。それで俺には何が足りないのか分からなくて少しでもヒントを得られればと思ってな…頼む」

 

 要は自分の足りない部分を見つける為に敢えてムサシ丸に挑もうというのだ。そう言う理由ならムサシ丸も承諾した。

 

「(カスミさんといい、シンさんといい、このイベントで上位プレイヤーとよく絡まれるな…)とりあえず、勝敗は寸止めか参ったで。判定は……ミザリーさんお願いします」

 

「分かりました。………では双方、準備はよろしいでしょうか?」

 

 公平を期すためにミザリーを審判役に任せてムサシ丸はシンから距離を取った。

 彼もムサシ丸に習うように距離を取る。 

 

「それでは………始め!」

 

「『崩剣(ほうけん)』!」

 

 開戦と同時にシンはスキルを唱えると一振りの剣が分解され無数の刃となった。一瞬だけ目を丸くしたムサシ丸であったがその視線はシンを捉えている。シンの号令で一斉に刃がムサシ丸に襲い掛かった。

 しかし、その刃がムサシ丸を届く事はなかった。崩剣が届く前にムサシ丸はただ、かわしたのではなく、シンとの距離を最短で詰められるルートを選択したのだ。

 

「なっ!」

 

 シンは慌ててバックラーでガードするがムサシ丸の狙いは最初から打撃ではなかった。拳はフェイントでムサシ丸は足払いをかけてシンの体勢を崩すと貫手を作り、シンの喉元に当たるギリギリの所で止めた。

 

「勝者、ムサシ丸!」

 

 ミザリーが左手を上げてムサシ丸の勝利宣言をした。

 

「やっぱ、近づかれると敵わないな」

 

「そうですか?俺は剣を飛ばした時に思ったのは馬鹿正直過ぎると思いましたが?」

 

「馬鹿正直過ぎる?」

 

 ムサシ丸の馬鹿正直過ぎると言う言葉にシンは首を傾げた。

 

「確かに『崩剣』は遠距離にも対応できるから強力です。しかし、全部を飛ばしたら『はい、これから貴方にこの刃を飛ばしますよ』って奇襲を教えているようなものです。一対多ならまだしも一対一だと馬鹿正直過ぎて容易に避けられる。そのため駆け引きが重要になる」

 

「そうか……俺に足りないのはそう言った駆け引きか」

 

 リアルで対人戦豊富なムサシ丸からの助言はシンからしたら寝耳に水であった。

 

「(確かに今まではスキルのまま使っていたけどそのまま使うのではなく応用しないといけないのか…)ありがとよ、おかげで何か見えてきた」

 

 何かを掴めたシンを見てムサシ丸はほっとしていた。

 

「よくシンの崩剣をかわせたね」

 

「あぁ昔爺ちゃん曰く、鉛玉は相手の目線や呼吸とかで軌道は予測できると。俺も興味半分でその訓練を受けたんだ。まぁ、飛んできたのは紙玉鉄砲」

 

「……その人、絶対人間辞めているでしょ」

 

 マルクスがシンの崩剣をどうやってかわしたのかを尋ねると幼少期の出来事を話した。

 それは幼少期のムサシ丸がとあるテレビ番組で次々と弾丸をかわす主人公を見て興奮しできるかと祖父が昔の職業で培われた経験によって拳銃のかわし方をムサシ丸に教え込んだ。

 その話を聞いたマルクスはムサシ丸の祖父にドン引きしていた。

 

「やはりムサシ丸のプレイヤースキルは凄まじいな」

 

「前衛としてこれ以上ないくらい頼もしいです」

 

 ムサシ丸のプレイヤースキルを知っているミィとミザリーは改めてその強さを思い知らされた。

 

「さてと、我々はこれで…」

 

「おい、なんか近づいて来てないか?」

 

 ムサシ丸の指差す方向には赤い大型のワイバーンが近づいてくるのが見えた。

 

「どうやら徘徊型のモンスターらしいな。しかも、ボスクラスの(ちょっと!ボスクラスのモンスターが徘徊するなんて聞いてないよ!?)」

 

 ミィの口調はいつもの通りなのだが内心ではパニックになっていた。そんな彼女を無視するかのようにワイバーンが火球を放って来た。

 

「マジックリ…」

 

「『崩剣』!『マジックリフレクター(・・・・・・・・・・)』!」

 

 ムサシ丸がワイバーンの火球を蹴り飛ばそうとしたがそれよりも先にシンが十八番の崩剣とマジックリフレクターを組み合わせて火球を反射させたのだ。

 

「アンタ、マジックリフレクターを習得していたのか」

 

「まぁな。と言っても流石にムサシ丸みたいにピンポイントで反射できないからこっちは手数で補っている」

 

「何と言うか多方面での反射は役立ちそうですね」

 

 ムサシ丸は持ち前の能力で反射させる相手の動きを先読みして反射させられるが一方向しかできない。しかし、シンの方法なら崩剣とマジックリフレクターを組み合わせる事で多方面の魔法攻撃を防げるのだ。

 

「こうなったら倒すしかない」

 

「盾役は俺に任せて下さい。『挑発』」

 

「助かる。ミザリーはパーティーのHP、MP管理。マルクスはムサシ丸をフォロー。シンは私と共に攻撃」

 

 急遽ムサシ丸が臨時のパーティーとして参加する事になってしまったが彼を(タンク)役にする事で攻撃役に一人追加できる。

 ワイバーンがムサシ丸に敵意を向け、火球を放つがムサシ丸はマジックリフレクターで反射し、飛んできた尻尾の棘を拳で破壊する。

 

「(空を飛べる相手だと後手に回るんだよな…。メルヴィルを覚醒させるべきか?いや、いまのあいつのステータスじゃこいつの攻撃に耐えられない)」

 

 魔法攻撃ならマジックリフレクターで反射できるが遠距離物理攻撃を得意とする相手だと後手に回ってしまうのがムサシ丸の欠点だ。

 テイムしているメルヴィルを呼び出す事も考えたが能力の差を考えて愚策として捨てた。

 

「(どうやって近づくか……ん?)」

 

 何とか打開策を逡巡しているとシンの操る崩剣が視界に入った。ワイバーンを攻撃している刃はワイバーンを包囲しながら空中を舞う。

 

「(刃の軌道は大体分かる。後はあそこまで届きそうな踏み台があれば…)あれならイケそうだ」

 

 次に視界に入ったのはマルクスが自分のために作ってくれた防御用の土壁だった。二つの鍵を手に入れたムサシ丸は何の躊躇いもなく実行に移した。土壁を踏み台にして一気に跳躍するとなんと崩剣の刃の一部を足場(・・)にしてワイバーンに接近してみせたのだ。

 

「おいおい、マジか」

 

「あんな事も出来るなんて…」

 

 シンは自分のスキルを足場に利用して接近するとは思ってもみなかったのか目を丸くしてしまった。

 そんな彼らを尻目にムサシ丸はどんどん近づき、遂には拳が届く所までやってきた。

 

「これでも喰らっとけ」

 

 ワイバーンの顔面にコークスクリューパンチを叩き込んだ。急な衝撃でワイバーンの体勢を崩してしまった。

 

「攻撃が止まった今なら『爆炎』!『炎槍』!」

 

 それを好機と見たミィが次々と炎系の魔法を連発する。HPの残りが半分を切ったところでワイバーンの体躯が更に赤くなり真上にオレンジ色の特大の魔法陣が現れた。

 これはヤバいとミィ達も感じているが何が飛び出すのか分からないため警戒している。ワイバーンは魔法陣から特大の火球を召喚して無差別に攻撃し始めた。この攻撃は直撃しなくても拙いと感じたのか全員マルクスが設置した城壁で身を寄せて凌ぐが時間の問題だ。

 勿論、ミィ達もこのままではいけないと思っているがワイバーンの攻撃は魔法攻撃だが何時、何処に飛ぶかは分からない。そのためマジックリフレクターを所持しているシンもタイミングを伺うのに精一杯だった。しかし、一人のプレイヤーが急に走り出したのだ。

 

「む、ムサシ丸!?」

 

 そう、ムサシ丸がマルクスの設置した城壁を飛び出してあらぬ方向に走り出したのだ。ワイバーンを見ずに走るムサシ丸であったがとある地点で脚を止め飛び上がった。

 

「『マジックリフレクター』!」

 

 なんと、ムサシ丸がオーバーヘッドキックの体勢で火球を蹴り飛ばしたのだ。反射した球体はワイバーンの右翼に直撃し地面に落下した。

 

「今度はノールックでオーバーヘッドかよ…」

 

「あれはムサシ丸しか出来ませんね」

 

「PVP要素あるけどムサシ丸とは戦いたくはないな…」

 

 ノールックかつオーバーヘッドキックで魔法を反射させたムサシ丸を見て辟易する。

 

「だがそのおかげで奴が地面に落下した。畳み掛けるぞ!『炎帝』!」

 

「そうだな。『崩剣』!」

 

「『ホーリースピアー』!」

 

「止めだ!」

 

 ワイバーンが地面に落下した事で攻撃が通りやすくなったミィ達は一斉に攻撃、最後はムサシ丸のアッパーカットでHPが0となって光の粒子となった。

 

 

 

 

運営サイド―――――

 

「あぁ、レッドワイバーンが……殺傷能力の高い攻撃スキルの数々に全ステータスをこれでもかと高くした俺達の悪意が倒された」

 

「やっぱりムサシ丸とミィが組むと大半のモンスターが可哀そうになるよな。それに他の三人が二人のアシストをしていたのが大きいな」

 

 このレッドワイバーンは運営側が第二回イベント専用フィールドを徘徊するボスモンスターとして高いステータスと理不尽とも言える殺傷能力の高いスキルを詰め込んだボスモンスターなのだ。

崩れ落ちている運営の人に別の人がどうしてミィらが勝てたのかを自分なりの答えを言う。レッドワイバーンを倒せたのはムサシ丸とミィのプレイスタイルの相性の良さとミザリー達が二人のサポートをしてくれたことが大きな要因であると話した。ムサシ丸が前衛で防御を担当し後衛のミィが高火力のスキルで攻撃を担当する形にミザリー、シン、マルクスが二人のアシストをした。その結果、レッドワイバーンを倒すことができたのだ。

 

「それはそれとして……ムサシ丸のプレイヤースキルは異常だわ。ノールックでオーバーヘッドに関してはもうやりそうだとは思ったけどこれは予想できなかった」

 

 シンの崩剣の刃を足場にしてレッドワイバーンに接近するムサシ丸の映像を観てため息を吐いた。オーバーヘッドキックに関してはいつか絶対にやるだろうなとは思っていたので特に気にはしていなかったが飛ぶ刃を足場にするとは誰も想像していなかった。

 

「こいつの報酬ってなんだっけ?」

 

「メダル四枚に炎系の魔法スキルが二つ、後は罠や武具の素材数点だな」

 

 レッドワイバーンの性能を鑑みて報酬を多めにしていると聞いて悪意シリーズであり徘徊するボスモンスターであると思うと納得した。

 

 

 

 

 レッドワイバーンを倒しその場所から宝箱が出現した。ムサシ丸がその宝箱を開けると中身はメダルが四枚、スキルスクロールが二つ、そして素材が数点入っていた。

 

「中身はメダルとスキルスクロールが二つと爪や牙に皮かこれ?」

 

「メダルとスキルと素材か。まぁ、モンスターの強さを考えれば納得がいく内容だな」

 

 レッドワイバーンの強さを考えたら納得できた。

 

「スキルは『飛龍炎(ひりゅうえん)』と『ホーリーフレア』か。ホーリーフレアはミザリーの方が使って貰った方が良いな」

 

「この素材は罠に使えそうだね」

 

「残るはメダルですね」

 

「メダルは半々でいいか?」

 

「丁度偶数なのでそれが良いですね」

 

 スキルはミィとミザリー、素材はトラッパーの異名を持つマルクスが獲得する事になるのだがメダルに関しても偶数であったため揉める事無く解決した。

 

「俺はこの辺をもう少し探索しますがミィさん達はどうするのですか?」

 

「我々は別の方向を探索する予定だ。それではまた会おう」

 

 どうやらミィ達とムサシ丸とは別方法に向かっていた所にシンとの対戦とあのワイバーンがやって来た。事がミィ達とムサシ丸は別の方向へ歩き出した。

 ムサシ丸と別れた後、四人は大きなため息を吐いた。

 

「にしても話には聞いていたがあんな動きは流石に真似できないわ」

 

「私も先程のムサシ丸の動きは驚きました」

 

「今回のイベントが探索型で良かったよ。もし、ムサシ丸と戦う事になったら無事じゃすまないし」

 

 ムサシ丸は高いプレイヤースキルに加えてマジックリフレクターでこちらの魔法を反射されるだけでなく瞬時に危ないポイント見極め、対処する危機察知能力。更には自身とこちらの距離を最短で詰める能力もあるからマルクスの言うように無事では済まないだろう。

 

「でもまあ、あいつの動きから色々と参考できる物が多い」

 

「何か掴めたか?」

 

「駆け引きや崩剣の使い道とかな。今後は色々と研究するよ」

 

 シンはムサシ丸との出会いで参考にできる物があったので喜色を浮かべている。そんな彼を見たミィ達は良かったとほほ笑んだ。

 

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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