とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

25 / 38
次で第二回イベントの話は終わりです


第二十五話

 六日目の朝。

 洞窟の中で目を覚ましたムサシ丸はアイテムウィンドウを見てメダルが取られていないかを確認する。幸いにも奪われていなかった。

 

「今日は一日中此処でメルヴィルのレベリングに勤しむか」

 

 外に出て戦ってもいいが昨日暴れすぎたのでプレイヤーが寄ってこない可能性もあるため今日は大人しくテイムモンスターのレベリングに精を出そう。そう考えたムサシ丸はこの洞窟の奥の部屋へ向かう。

 モンスターが出る奥の部屋へ行くには一端入口付近の広間を通る必要がある。広間に近づくに連れて他のプレイヤーの気配を感じる。

 

「メイプル!誰か来る」

 

「ど、どうしよう。まだ『悪食』の回数制限が回復してないよ」

 

「誰かと思えばお前らか」

 

 向こうもこちらの気配に気付いたのか警戒する声が聞こえたが逆に二人のプレイヤーの声を聞いて安心した。

 

「よっ、久しぶり」

 

「あっ、ムサシ丸君!」

 

 ムサシ丸が姿を現すとそこにいたのはメイプルとサリーだった。サリーも出てきたのが知り合いのムサシ丸であった事で警戒を解いた。

 

「どうしてアンタが此処に?」

 

「昨日、プレイヤー達を倒して銀のメダルが10枚になったから休憩がてらここに隠れていた」

 

「凄ーい」

 

「どうやって…」

 

「俺がこの山に来たときはプレイヤー同士の争いが多発していたからな。そこを狩らせて貰った」

 

 事もなげに言うムサシ丸であったが、メダルの争奪戦をするプレイヤーを凶暴な笑みを浮かべて獣如く狩りまくった結果、『暴獣の狂奔』と第二回イベント後に彼と居合わせたプレイヤーが口々に語っていた事に気づいていないのであった。

 

「そうなるとプレイヤー同士の争いが昨日よりも多くなるかも」

 

「イベントも終盤だからそう考えて良いだろう。……と言うか二人はどうしてここに?」

 

 サリーの考えにムサシ丸も賛同しつつどうしてこの洞窟に来たのか訊いてみるとメイプルとサリーもメダル集めのためにプレイヤーを狙おうとしたが他のプレイヤーがメイプルを見て一目散に逃げ出してしまい、メダル集めに支障が出てしまったためメイプルを洞窟の最奥に隠してサリー一人でメダルを集めようとしていたのだ。

 

「確かに良くも悪くも目立つからな、メイプルは」

 

「えぇ~そうかな?」

 

 苦笑いするムサシ丸と納得いかないと頬を膨らますメイプルを見て五十歩百歩と思わず口に出しそうになったが我慢する事に成功したサリーであった。

 

「悪いけどこの洞窟を使わせて貰っていい?」

 

「問題ないぜ。俺もこいつ(・・・)のレベリングするぐらいしかやることないからな」

 

 こいつと言う言葉に二人は首を傾げているのを見てムサシ丸はちょっとしたサプライズを思いついた。

 

「お前らに見せてもいいか。メルヴィル、『覚醒』だ」

 

 自分のテイムモンスターであるメルヴィルを召喚した。

 

「おぉ~、クジラだ。格好いい」

 

「まさかムサシ丸も持っていたなんて思わなかった」

 

「も?メイプル達も持っているのか?」

 

「うん!シロップ、『覚醒』!」

 

「私も朧『覚醒』」

 

 二人が覚醒と唱えるとメイプルから陸亀のモンスターの『シロップ』が、サリーから狐のモンスター『朧』が召喚された。

 このイベントで多くのプレイヤーと遭遇してきたが見た事がなかったためてっきり自分だけかと思っていたムサシ丸は面食らった。

 どうやって手に入れたのかサリーとムサシ丸は情報交換をする。

 

「まさかボスモンスターと戦う以外にもそんな方法で貰えるなんてね…」

 

「結構ギリギリだったがな。しかし、氷系の攻撃をしてくる鷲か…飛行している状態だと攻撃が届きそうもないな。いや、話を聞くに壁蹴って跳躍すればイケるか?」

 

 お互いの話の内容を聞いて苦労をしたのだろうと察せられた。

 

「ムサシ丸、メイプルの事をお願い。メイプルには念のために朧を護衛に付けているとはいえ、何があるか分からないから」

 

「了解。そっちも気を付けてな」

 

 そう言ってサリーはメダルを集めに洞窟の外へ出た。

 

「サリー大丈夫かな?」

 

「あいつなら心配いらないだろう。体の動きからしてこの手のゲームを相当やり込んでいるようだかな」

 

「そう言う事が分かるの」

 

「総合格闘技での経験で動きを見て相手がどれくらいやっているのかは大体分かるよ」

 

 サリーの実力を理解できたのは偏に似たような経験があったからである。

 

「ごめんね、ムサシ丸」

 

「イベント開始前にお互い戦闘をしない約束だからな別に構いやしねぇよ」

 

 サリーとムサシ丸はイベント開始前に交わした約束なので特に問題はないと思うがメイプルは納得できない様子であった。

 

「納得しきれないなら俺から一つ頼みを聞いてくれないか?」

 

「頼み?」

 

「メルヴィルのレベル上げをしてくれ」

 

「レベル上げを?」

 

 何故彼が自分のテイムモンスターのレベル上げを頼んだのかメイプルは首を傾げるがムサシ丸は続ける。

 

「メイプルが向かおうとしている部屋は十分置きにアリ型のモンスターが出現するんだ。本来なら今日はそこでメルヴィルのレベル上げをする予定だったのだが俺はサリーとの約束でこの場所から動けない。そうなるとお前以外いないんだよ」

 

「成程…」

 

「だからメイプルにはメルヴィルのレベル上げをして欲しいんだ」

 

「分かった!」

 

 納得してきくれたのかメイプルはシロップの他にサリーのテイムモンスターの朧とムサシ丸のテイムモンスターのメルヴィルを連れてモンスターの出る最奥に向かった。すると、メイプルが『ヴェノムカプセル』と言うスキルを唱えると奥の部屋へと続く通路が徐々に毒で侵されていく。

 

「こりゃ一種のダンジョンだな…」

 

 毒無効のスキルを持っているプレイヤーがいないわけではないためムサシ丸が広間で護衛として立ちはだかっている状態だ。なお、ムサシ丸相手の場合、VITが低いと所持している耐性スキルを無効化されるので高を括っているプレイヤーは致命的な一撃を貰う羽目になる。

 

「理不尽だらけのダンジョンモドキに挑戦する奴はいるかね?」

 

 不敵な笑みを浮かべ、指の関節を鳴らして敵を待ち構える姿はボスモンスターのようだった。

 

 

 

 

 あれから何時間が経過したのだろうか。

 時々来るプレイヤーを倒しつつ暇な時は腹筋や腕立て伏せをしながら過ごしているとサリーが戻ってきた。

 

「お待たせ」

 

「お疲れさん、首尾はどうよ?」

 

 ムサシ丸が問うとサリーは笑顔でピースサインをする。

 

「十枚集まった。でも、やっぱり持っているプレイヤーは少ないみたい」

 

「俺もそんな感じだったし持っているか否かはプレイヤーを倒さないと分からないよな」

 

 メダル狙いでプレイヤー同士の争いが起きていたがメダルを持っているプレイヤーは少ない。二人がメダルを持っているプレイヤーと出会えたのはある意味幸運と言えるのだろう。

 そんな会話をしていると毒の海をかき分けてメイプルが奥の部屋からやってきた。

 

「あっ、サリー戻っていたんだ。」

 

「これでメダルは二十枚。後は三人でテイムモンスターの育成しようと思っていたんだけど…」

 

「この毒塗れの通路じゃ俺もサリーもお陀仏になるな」

 

 二人共毒耐性は持っているがメイプルより低いので踏み入れた時点でやられてしまうのは目に見ている。

 

「折角ムサシ丸君がシロップたちのレベル上げに丁度良い場所を見つけてくれたのに…」

 

「仕方あるまいよ。それに此処をダンジョンだと思ってやってくるプレイヤーも少ないからな。現に何人かと戦ったからな」

 

 もちろん、全員返り討ちにしたがこの場をダンジョンと思ってやって来るプレイヤーがいないとは考えにくい。

 

「そうなると私とムサシ丸がこの場に残ってプレイヤーを相手にしてメイプルだけで朧達の育成をするしかないか」

 

「それが一番無難だろう」

 

「分かった……二人共気を付けてね」

 

 そう言ってメイプルはまた奥の部屋に戻り、残ったムサシ丸とサリーは来るかもしれないプレイヤーを待ち構えているとサリーがクスクス笑いをしている。

 

「どうかしたか?」

 

「いや、こうしているとメイプルが毒使いのボスで私とムサシ丸が中ボスみたいだなって」

 

「成程、獲得できるメダルが俺を含めると三十枚と金のメダル二枚か。破格も破格だな」

 

 しかし、それに見合うだけの難易度となっている。そうこうしているうちに新たなプレイヤーがやってきた。

 

「さてと、ダンジョンの中ボスみたくプレイヤーを倒すとするか」

 

「良いね。乗った」

 

 二人は笑みを浮かべて戦闘体制に入った。

 尤も、二人の笑みは敵プレイヤーからしたら死の宣告と同義である。

 

 

 

 

 この後もムサシ丸とサリーは洞窟にやってきたプレイヤーを悉く返り討ちにしている。まず、ムサシ丸が挑発で敵プレイヤーのヘイトを集めてサリーを動きやすくする。サリーの攻撃に気を取られると死角からムサシ丸の強力な一撃が飛んで来る。

 これだけでも十分過ぎるくらい強力なのだが、ムサシ丸が更なる大立ち回りを見せる。魔法攻撃をしようしたならばマジックリフレクターで反射する。また、超加速を使って距離を取ろうものなら発動する直前に相手の体勢を崩して転倒に追い込む。

 今までムサシ丸の戦闘スタイルを観ていなかったサリーは戦慄を覚えた。

 

「(総合格闘技での経験だけじゃない。柔術や合気道で培われた人体力学で相手の軸が簡単に崩れる瞬間をピンポイントで狙って私をアシストしている……)」

 

 敵の体勢を崩す技術も凄いが何よりも敵味方の動きを先読みする目と脳が逸脱している。

 

「(メイプルがゲーム初心者特有の突飛な考えで行動するのに対してムサシ丸は自身の経験と直感で行動する……まさしくPVPに特化した戦闘スタイル)」

 

 とんでもない事をするのはお互い一緒だが原理が全く違う。ムサシ丸の動きはまさしくPVP特化と言っても差し支えない物だった。

 ムサシ丸が最後のプレイヤーを倒すとサリーにある事を訊く。

 

「そういえば、今何時だっけ?」

 

「ちょっと待って……今は午後11時半」

 

「となると次で本日ラストか」

 

 後三十分でメイプルの『悪食』の回数制限が回復するためムサシ丸の言うように次で本日最後の相手足音が聞こえて来たので身構えると和装に身を包んだ女性プレイヤーが姿を現した。

 

「「カスミ(さん)!?」」

 

「二人共久しぶりだな。……まさかサリーとムサシ丸が知り合いだったのは驚いたが」

 

 そのプレイヤーはなんとカスミであった。

 

「簡単に言えばリアルで友人同士なの。ムサシ丸はカスミと知り合いだったの?」

 

「まぁ、第二回イベントで知り合った」

 

 ムサシ丸としてはその経緯を詳しく話しても良かったのだが『蒼海の神刀・縹』の件もあるので大雑把に説明した。

 

「私もメイプルも同じ。カスミはどうして此処に?」

 

「最終日が近いせいか外にいるとプレイヤーとの戦闘になる事が多くてな。隠れる所を探していたら…」

 

「偶然にも此処を見つけたと言う訳か」

 

 ムサシ丸の言葉にカスミは頷く。

 サリーもムサシ丸もカスミと戦う理由もないのでこの洞窟にいる事を許可する。

 

「所でメイプルはどうした?」

 

「メイプルなら奥の部屋にいるぞ。会いに行ってもいいがその際は毒塗れの通路を通らにゃならんぞ」

 

「……それは流石に遠慮する」

 

 メイプルに会おうとしたカスミであったがムサシ丸が指差した通路を見ると毒々しい通路があったので断念した。

 

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。