とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第三十話

 ギルド『楓の木』が結成されて早数日が経った。カスミは現在、一人でスキル探しをしている。ムサシ丸が『野生解放』と言うスキルを入手し、その翌日にメイプルが彼とほぼ同じタイミングで『身捧ぐ慈愛』を手に入れた。前者は5分間だけVITが半減する代わりにSTRとAGIが3倍になり、後者はHPを代価にして『カバー』が働くエリアを作る事が出来る。因みにメイプルのVITは何も装備していない状態で1000は超えているとの事。

 この二人に触発されたのかカスミは以降新たなスキルがないか頻繁に外に出ていた。

 

「楓の木の中で私の強みは安定感か」

 

 バランスという点ならSTR重視のムサシ丸と肩を並べる事が出来るがムサシ丸の欠点はリーチの短さだ。暴獣拳のような高火力のスキルはあるが格闘家故に攻撃範囲は狭い。そのためには素早く間合いを詰める必要がある。

 

「しかし、その方法の一つにSTRを利用するとは…他にも味方の魔法使いが使う攻撃魔法をマジックリフレクターで反射して攻撃すると言い、ムサシ丸はメイプルとは違った意味で驚かされるな。私も試しにやってみたが少々コツがいるものの超加速を温存できるのはありがたい」

 

それはムサシ丸が編み出した地面を蹴る瞬間にSTRを意識しその反動を利用して加速する方法。ムサシ丸は『小回りの効かないスタートダッシュで超加速があるなら素直に超加速を使った方が良い』と言っていたがやってみると意外と役立った。

 

「カナデは今日中に終わらせたいクエストがあると言っていたしアジタートも気になった事があると言って出て行ったからな。私も何かスキルが欲しい物だ」

 

 メイプルと同じ大楯使いのクロムが切羽詰まった表情をしていたのを見て自分もうかうかしていられない。そう思い外に出てみたが中々見つからない。

 

「スキルか……相性の良いスキルがあると良いがあれ(・・)みたいな感じになるのは避けたいな」

 

 彼女の言う【あれ】とは、『蒼海の神刀・縹』のこちらの羞恥心を煽るようなセクシー過ぎる衣装になるスキルの事だ。スキルは優秀なのだがあれは人前では発動させたくない。

 そのように考えているととある巨木を見つけた。町から然程離れていない場所にあるのだがほとんどプレイヤー無視して素通りしてしまったのだ。

 

「(あれは……特定のプレイヤーにしか出現しないクエストかダンジョンか?もしそうならこれがメイプル効果か?…)だが、折角の機会だしダメ元で行ってみるのも良いか」

 

 折角見つけたのだから見逃すという選択肢はない。そう判断したカスミはその巨木へと歩を進めた。巨木は楓の木のギルドハウスの外観と酷似しているが窓もなければ扉もない。あるのは不自然に彫られた模様。

 カスミは巨木に近づいてみたが何も反応を示さなかった。試しに模様に触れると模様が一瞬だけ光出すとその部分が崩れ、中から地下へと続く階段が姿を現した。

 

「如何やら当たりのようだな」

 

 このような手の込んだ事をしているのだから報酬は期待しても良いだろう。地下へと続く階段は螺旋状になっている。カスミは周囲を警戒しながら進んでいくがモンスターが出会う事はなかった。

 

「モンスターはいない。となるとムサシ丸のようないきなりとボスと戦うと言う可能性があるな」

 

 ダンジョンについてムサシ丸と話していたが彼の装備はとあるダンジョンで手に入れた物でそのダンジョンではモンスターは道中に出て来なかったそうだ。

 

「(あの話を踏まえるとこの場所もムサシ丸がクリアしたダンジョンと同じタイプなのかもしれないな…)」

 

 考えながら進むと大きな扉がある場へと出た。厳かに佇んでいるがその奥から異様な空気を感じる。

 

「どうやらムサシ丸と同じ状況になりそうだな」

 

 戦闘になった時のために装備している刀を確認する。これまでの道中でモンスターが出て来なかった事とイズがメンテナンスしてくれたおかげで耐久値は万全だ。

 

「鬼が出るか蛇が出るか……いざ!」

 

 扉を開けると入口の通路と中央の岩場以外は全て地底湖に浸かっている。残っている陸地には巨大な銛を持った5mぐらいの魚人が立っていた。

 

「やはり、いきなりボス戦か!」

 

 戦おうと刀を抜こうとしたが勝手にアイテムウィンドウが開き、装備していた刀から蒼海の神刀・縹へと強制的に変更された。

 そのせいで普段から装備している桃色の着物と紫色の袴姿から淡いオレンジ色のハイカットインナーが見える浅葱色の着物と深縹色の袴姿となった。

 

「装備の強制変更か。しかし、またこの姿に……」

 

 今はソロで活動しているがやはりこの格好は恥ずかしい。しかし、ボスモンスターは待ってくれない。やるしかないと割り切ったカスミは魚人ボスモンスターに攻撃を仕掛ける。

 

「『四ノ太刀・旋風』!」

 

 斬り上げと斬り下ろし二回連続放った後、魚人ボスモンスターの銛の一突きを躱す。その際に魚人ボスモンスターのHPを確認してみたが想定していた程のダメージを与える事が出来なかった。

 

「(HPは高いがVITは高くはなさそうだな)」

 

 攻撃も銛の突き、口からの水弾、刃物のような鋭さを持った鱗を飛ばすと言ったシンプルな物だ。敵の攻撃を避けては攻撃するを繰り返していくと漸くHPが半分を下回った。魚人ボスモンスターは手にしていた銛を地面に突き立てると地底湖の水かさが一気に増えてボス部屋を満たした。その水量は息継ぎする空間が完全に無くなるほどに。

 『潜水』と『水泳』のスキルレベルが高いカスミも息継ぎが出来る場所を潰されてしまい、焦ってしまう。

 

「(ま、拙い、戦闘が長引けば息が……)出来る?しかも、水中にいるのにちゃんと姿勢が安定している……まさか!」

 

 何故水中で息が出来たり姿勢が安定出来たのか疑問に思ったが手にしている刀を見てある事に気付いた。

 

「(成程、通りで私だけが見つける事が出来た訳だ。このダンジョンは蒼海の神刀・縹…と言うよりも付与されている『水神の加護(・・・・・)』を持っている前提で作られている。幾ら泳ぎが得意なプレイヤーでも息継ぎ出来る空間が無ければやられてしまうからな)」

 

 運営も意地の悪い仕掛けを思いつく物だと呆れる。しかし、水中でも陸上と同じ動きが出来るのは十分なアドバンテージだ。

 魚人ボスモンスターもこのままただで終わるはずもなく縦横無尽に泳ぎ回っている。

 

「例え、速度が上がったとしても軌道さえ分かれば問題ない。ムサシ丸に習ってフェイント技術を習得したらどうだ?『始マリノ太刀・虚』!『二ノ太刀・斬鉄』!」

 

 突進の速度は速いが今のカスミにとってはそんなに脅威ではない。何せ回避能力に長けたプレイヤーや単調の動きに悉くカウンターを決めるプレイヤーが同じギルドにいるためカスミにとって直接的な攻撃は容易に捌ける。

 カウンターに近い形で振り下ろされた一撃は魚人ボスモンスターの頭に決まり、ボスは光の粒子となって消えた。戦いが終わると部屋を満たしていた水が徐々に減り、元の状態となった。

 

「ふぅ…水神の加護、あの恰好さえどうにかしてくれたら最高なのだがな」

 

 水中での戦闘が格段にやりやすくなるもののこちらの羞恥心を煽るような恰好になるのは勘弁して欲しい。

 ボスを倒すと現れたのは宝箱ではなく青く光る拳大の石。カスミはそれを手に取ると石は砕け、縹へ吸収されるとスキル取得のアナウンスが流れた。

 

『狂瀾怒濤:水中、水の多い場所だとスキルの威力が3倍になる』

 

「縹を強化するためのダンジョンだったのか。やはりと言うべきか水に関するスキル内容だな。縹は水中戦特化の装備と考えると戦闘する場所で効果を発揮する刀が存在しているかもしれない…私も変な方向に舵を切ってしまったな」

 

 これは嬉しいと思うべきか憂うべきか頭を悩ませるカスミ。

 だが、その予感は的中する事になるとはこの時の彼女は知る由もなかった。

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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