とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第三十一話

 時は進み、楓の木のギルドホーム内では第三回イベントのために準備をしていた。その間にクロムがユニーク装備を手にしたり、メイプルが『発毛』と言うスキルを手にしてカスミを困惑させたのはまた別の話である。

 第三回イベントは牛のモンスターを狩り、ドロップする特定のアイテムを獲得してその個数を競う内容でイベントとしてはオーソドックスな内容と言えよう。

 

「出来たわよ」

 

「うわぁ~」

 

「二人とも似合っているぞ」

 

 使った羊毛の数だけドロップ数が上がるためイズはメイプルとサリーの今の装備をベースにしつつ羊をイメージした装備を作ったのだ。

 理由はイベント補正が付くからだがもう一つ理由があり、それはもこもこした装備のメイプル達が観たかったからだ。そして二人以外にもイズが作ったイベント用の装備を身に着けたプレイヤーがもう一人いる。

 

「イベントのためとはいえ……これは可愛い過ぎる。もう少し違ったデザインにならなかったのか?」

 

「ならなかったの。もこもこ装備のメイプルちゃん達が見たかったから

 

 カスミもメイプルとサリーと同様に羊をイメージした装備をしている。メイプルとサリーと同じなのだがカスミの場合、タイトなドレスの形状をしているため体のラインが出ている。何とかならないのかと問うたがイズはどこ吹く風でならなかったと答えた。

 メイプルとは違った路線の装備をしているためかムサシ丸はカスミに新鮮味を感じているとメイプルとサリーから非難の視線を感じた。

 

「ムサシ丸、私達とはちょっとリアクション違くない?」

 

「だってカスミさんっていつも和装だから洋装だと新鮮に感じるんだよ。もし、スポーティーな格好しかしていない俺がフォーマルな恰好をしているとどう思うよ」

 

 ふくれっ面になる二人にムサシ丸がそう返すと納得してしまう。ムサシ丸が某有名なスポーツウェア会社のジャージ姿になっている姿は容易にイメージできるがフォーマルな格好をしている姿は全くイメージ出来ない。

 

「カナデとアジタートの装備も作ったわよ。二人のプレイスタイルに合ったステータスを向上させてあるわ」

 

「良いね、イズ。気に入ったよ」

 

「私も気に入ったわ」

 

 トランプのダイヤをモチーフにしたコートやキャスケットと普段着に近い装備を身に着けたカナデ。アジタートはカーキ色のパンツにこげ茶のブーツ、トップスは白のシャツに若緑色のベスト。そして深緑色のフード付きのマントを羽織りっている。何より目立っているのが。矢筒を固定している緑・赤・黄色の宝石の付いたベルト。

 これはアジタートがとあるクエストを受け、単独でクリアした報酬として貰った装備だ。そのクエストは運営が用意した悪意シリーズで『破壊不能』と『属性付与(ソウル・エンチャント)』と言うスキルが備わっている。

 

「鎧は僕には似合わないからね」

 

「私は素早く射撃できる場所まで動きたいから動きにくいのは勘弁かな」

 

 魔法使いのため鎧が必要性のないカナデに体の動きを阻害するのが嫌なアジタート。デザインやプレイスタイルに合わせてくれたイズにとても感謝している。

 

「良いな……」

 

「そこは仕方がないっスよ」

 

 イズお手製の装備にワイワイと話しているメイプル達。そんな会話に入れないムサシ丸とクロムは傍観するしかなかったのであった。

 

 

 

 

 第三回イベントはギルド報酬と個人報酬があるので楓の木のメンバーは各々の別行動で牛型のモンスターを追うと言う方針で行動する事になった。

 アジタートは木の上から牛型のモンスターを狙う。草原ではプレイヤーが多いため木の多い場所で狩ろうと思ったのだ。その牛型のモンスターは攻撃するとそのプレイヤーを追いかける仕様で生半可な攻撃だと返討に遭うのだ。

 

「『色付与(カラーエンチャント)(ブルー)』、属性付与(ソウルエンチャント)幻想(ルナ)!」

 

 そうスキルと唱えると青と黄の光を纏った矢が放たれると分裂し矢とは思えない軌道で複数の牛型モンスターを倒しまくっていた。

 

「色付与は矢に様々な効果を付与されて属性付与は矢に三つの属性を付与されるスキルか。ブルーとルナは相性が良いみたいね」

 

 他にも試したい組み合わせがあるのでアジタートはこのイベントが終わるまでソロプレイをするつもりだ。

 

「にしてもこのイベントはウチのギルドには些か不向きよね」

 

 遠距離攻撃が出来る自分とAGIの高いサリー、カスミ、ムサシ丸は問題ないが他のメンバー、特にクロムやメイプルにとっては不向きなイベントと言えるだろう。

 

「尤もメイプルちゃんは何かしらのスキルは手に入れそうね」

 

 確証は無いがカスミが目を離している間に『発毛』のスキルを手に入れた事からまた面白そうなスキルを手に入れるのではないかと思っている。

 

「私は私でこのイベントで色々と試して行こうかな」

 

 アジタートは周辺にいる牛型のモンスターがいないと判断するとまた別の狩場に赴いた。

 

 

 

 

 一方のムサシ丸は超加速とSTRを利用したスタートダッシュを駆使して牛型のモンスターを倒していく。

 

「モンスター自体はそんなに強くないが草原だと他のプレイヤーでごった返しているな」

 

 ギルド内では上から数えて早いムサシ丸だがAGIを重視するプレイヤーからすると遅い部類である。

 そのためムサシ丸も色々と工夫しているがそろそろ限界を感じている。

 

「俺の場合、間合いを詰めないと攻撃できない。そのためにも俺も牽制で良いからアウトレンジのスキルが欲しいな」

 

 クロスレンジが基本のムサシ丸に間合いを詰めるための術はあっても常に動き続ける遠距離攻撃型の相手への対策は必須だと考えている。

 

「無い物強請りだとしても仕方が無いが欲しい物は欲しいよ…な!」

 

 そう言って牛型のモンスターの脳天にかかと落としを決める。ドロップしたベル型のアイテムを回収する。

 

「俺だけでなくメイプルも対策されていそうだな。俺と同じく弱点がはっきりしているし」

 

 アウトレンジが弱点のムサシ丸と毒対策されると攻撃手段がないメイプル。自分の弱点をどのように克服しようかと考えているが今はイベントに集中する事にしたムサシ丸であったが一人のプレイヤーが大勢の牛型のモンスターに追われている場面を目撃した。

 

「(追われているのか?)此処で見捨てるのも後味が悪いな」

 

 助けようと思った瞬間、紅蓮の炎が牛型のモンスターの軍勢を飲み込んだ。この炎をムサシ丸は見覚えがある。

 

「(この炎は……)第二回イベントぶりか」

 

「ムサシ丸もこの近くに来ていたのか」

 

 その炎を放った人物とはミィだった。

 

「貴様も炎帝の国に招き入れたかったがまさか他のギルドに入っていたとはな…」

 

「それはすみませんね」

 

 プレイスタイルが噛み合っているためムサシ丸を自分のギルドに誘おうとしたミィであったが既に楓の木に所属した後だったためあえなく断念した。

 

「所でさっきのプレイヤーは大丈夫なのだろうか?」

 

「あぁ、彼なら私のギルドのメンバーでな。今みたいに牛を集めながらマルクスの罠や私の魔法で一掃する方法だ」

 

「大規模ギルドならではのやり方だな。ウチじゃ真似できないな」

 

 人海戦術によるアイテム集めは小規模ギルドである楓の木では不可能なやり方だ。

 

「しかし、ムサシ丸の所属しているギルドは中々の粒ぞろいと言う噂はよく聞くぞ」

 

「俺らのギルドってそんな風に見られていたのか」

 

 思えば自分を含めた第一回イベントで十位以内に入っているプレイヤーが四人に異常なプレイヤーがいるため粒ぞろいと称されても可笑しくはない。

 そう考えていると左右の角の色が違う牛型のモンスターが二体目の前にいた。このモンスターはイベントの事前情報に乗っていた高得点が貰えるレアモンスターだ。

 レアモンスターはこちらに気付くと一目散に逃げて行った。どうやらプレイヤーを見かけると逃げるようだ。

 

「(超加速だけじゃ間に合わない。次のイベント(・・・・・・)まで取っておきたいが仕方がない)『野生解放』!『超加速』!」

 

 野生解放を発動させると瞳が青くなり、瞳孔が縦長になる。それだけに留まらず左眼からライムグリーンの炎が灯った。そしてとんでもない速度でレアモンスターを追い始めた。その姿はまさしく獣でレアモンスターに追いつくと貫手で急所を貫いて倒す。

 これにはミィも驚いたがすぐにレアモンスターに標的にして『フレアアクセル』でレアモンスターを追従し発動が早い炎槍で倒した。

 

「やっぱ、火力がエグイな」

 

「今のスキルは…」

 

「VITを対価にAGIとSTRを上昇させるスキルだ。本当なら次のイベントまで取っておきたかったがな」

 

 高いポイントを獲得できるチャンスを逃したくなかったムサシ丸は使った。本来ならば次の第四回イベントまで使う事はなかった。

 

「次…第四回イベントのギルド対抗戦か。確かに隠しておきたいのも分かるな」

 

 ライバルギルドのため情報はなるべく伏せておきたい気持ちは分かる。

 

「私はこれで。次の第四回イベントではお互い全力で戦おう」

 

「その時は恨みっこ無しでお願いします」

 

「分かっている(ムサシ丸っていつも正々堂々としているし性格も良いし私から見ても好きなんだけどな……)」

 

 毅然とした態度を取るミィであったが内心ではムサシ丸の性格の良さに好意を寄せていた。

 なお、その好意はムサシ丸には一ミリも伝わっていない。

 

「所でこの巻物ってスキルの巻物と違うな」

 

「確かに色も違うし何より開かないな」

 

 獲得したスキルスクロールは色も違うし開けない。調べてみるとその理由がはっきりした。

 

『ギルドの湯・意気軒昂:ギルドホーム専用。一日一回、HPとMPの上限が10%上がる。ただし、設置は生産職でないと出来ない』

 

 つまりこれはギルドホームにしか適用される代物で生産職でないと開かないようになったていた。

 

「一日一回だけとはいえ、HPとMPの上限が上がるのは嬉しいな。生産職のプレイヤーも私のギルドにいるしな」

 

「俺もギルドメンバーに生産職がいるな」

 

 会得した物はギルドホーム専用の物あると判明したムサシ丸とミィは別々の場所でモンスターを狩るのであった。




アジタートの新装備
幻霊のベルト:STR+10 DEX+20
『破壊不能』、『属性付与(ソウルエンチャント)
・属性付与:武器に三種のいずれかを付与する。


幻想(ルナ)』:武器に幻想の属性を付与。付与された武器の軌道を自在に変えられる

(ヒート)』:武器に熱の属性を付与。武器の攻撃力上昇

疾風(サイクロン)』:武器に疾風の属性を付与。武器の速度上昇

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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